ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第三十九話「アラスカでの決戦、後編」⑦


アラスカでの戦いから数日後――。

テキサス基地に戻った生き残りの者達でこの戦いで殉職した隊員達のささやかだが葬式を行った。

竜斗達も喪服を着替えて参列し、遺体もなく、ただ写真の入った額と手向けの花、彼らが残していった物品が並べられている台を見てもの悲しくなった。

 

「少佐…………っ」

 

エミリアは慕っていたジョージの死に深く悲しみ、泣き崩れることが多く、そんな彼女を竜斗、愛美が支えるのがほとんどだ。

 

「ジョナサン開けてよお!マナよっ!」

 

三人トリオで唯一生き残ったジョナサンは、怪我人と共に軍病院に運ばれた。

当然竜斗達、特に愛美は一番早く面会に行ったが「今は一人にさせてほしい」との一点張りであり、愛美、家族ですら彼の深く傷ついた心に溜まった悲しみに入り込められず泣く泣く引き下がるしかなかった。

 

 

「アマンダさん……」

 

「竜斗君……」

 

そして、竜斗はというと基地にてジェイドの妻アマンダと息子のロイと面会し、彼の勇敢な死に様を全て伝えた。

 

「ママ、パパ……パパは……」

 

と、自分の父親の死がまだ理解できてないロイの言葉は二人の心に深い重りを落とす。

 

「リュウト……リュウトっ」

 

彼の足にしがみついてきたロイに頭を優しく撫でてそして抱いてあげるのであった。

 

(ロイ君ごめんね……君のパパを守ってやることは出来なかった……僕が不甲斐なかったばかりに……)

 

表情が一気に暗くなっていく竜斗にアマンダは。

「竜斗君、これを……」

 

彼女から何やら便箋とブラック・インパルス隊を表す、翼を大きく広げた黒ワシのエンブレムキルトを渡される。

 

「これは……」

 

「戦いの前日夜、夫から渡された物です。自分にもしものことがあったら竜斗君にこれらを渡してくれと伝えられました」

 

「少佐が……?」

 

便箋を開けて中から出てきた手紙を開くと英語で書かれた文章と汚くも「竜斗君へ」と日本語で記されている。

もはや英語を理解できている竜斗はゆっくりとその文章を目読していく。

 

『竜斗君、君がこの手紙を読んでいるということは私はもうすでにこの世にいないということだろうが、戦死者の家族は国が保障してくれるのでアマンダとロイについては心配しなくていい――』

即興、速筆で書いたのかあまり綺麗な字とは言えないが彼は読んでいくにつれて目頭を熱くし、瞳を震わせている。

 

『――君は私の想像を超えるほどに成長し、そしてもう私に頼らなくてもきっと君なら解決していけるだろう、私はそう確信した――君には将来の夢がないと言ったが、何でもいいから何かしら夢を持つべきだ。

こんな暗い世の中だからこそ人は夢と希望を持って生きなければならないし、そしてこれからの人類の未来を担っていくのは君達若人だ、だから君も大志を抱いて大空へ羽ばたいていけ、私が最期まで願っていた夢のように――』

 

最後まで読み切った竜斗の目から涙が滝のように流れて、その場で声を上げて泣き崩れたのだった。

 

「少佐……少佐……っ」

 

すると今度はロイが竜斗を慰めようと頭を優しく撫でるその姿にアマンダもついに涙を流していた。

「……ありがとうロイ君。君も、お父さんのような素晴らしい人間に絶対になるんだよ……っ」

 

ジェイドの残した言葉を深く噛み締める竜斗はとある決意を心に決めた――。

 

「アラスカ戦線での功績が讃えられて私達に免罪が降りた、日本に帰れるぞ」

 

「本当ですか!」

 

「やったあ!」

 

「やっと帰れるんだっ!」

 

それから一週間後、早乙女からついに自分達の母国に帰れる事実を告げられて喜ぶ三人。

 

「出発は明日の午後。それまでに荷物整理と基地の人達に別れの挨拶をしておけ。

あと今から外出して朝霞駐屯地のみんなにお土産を買いにいくか?」

 

「はいっ!」

 

この日はアメリカにいられる最後の日として三人は休息も踏まえて心おきなく楽しんだ竜斗達だった。

そして次の日の午後、ついに帰国することになる竜斗達に沢山の基地の人達とお世話になった方々が見送りにきていた。

 

「テキサス基地は新しい所長が入ってくることになったのでご安心を。

そして私達は、殉職なされたリンク前所長達の遺志をついで各連合軍も引き続きこちらで頑張っていきますので日本を頼みますぞ」

「エミリア、そしてミズキ、日本に帰ってもお元気でね」

 

「竜斗、またアメリカに来ることがあったら絶対遊びに来いよな、日本からのお土産期待してるぜっ!」

 

一番よく頑張った三人へ全員から讃えられ、健闘と祝福を浴びて照れて、別れに惜しみ泣き、そして笑顔で、短い間だったが共に行動し闘った彼らとワイワイ絡み、挨拶を交わした。

 

「エミリア君達にまた会える日を楽しみにしているよ、日本に帰っても達者でな」

 

「大尉、あなたには本当にお世話になりました、お元気でっ」

 

エミリアとリーゲンは握手を固く結び、より友好、さらにこれからの健闘と幸運を祈りあった。

 

「石川三曹、また共同する時があればよろしく頼む。帰国後も元気でな」

 

「こちらこそアレン中尉、あなたもお元気でっ」

 

珍しく笑顔を見せるアレンと握手する竜斗は互いの健闘とこれからの幸運を祈り挨拶した。

 

「それから女性陣の君達、ルネの仇を取ってくれて心から感謝している、本当にありがとう」

 

エミリア、そして愛美は彼の謝礼に優しく微笑み返した。

 

 

「これであの人も安心できるといいですねっ」

 

「ああっ、きっとあいつも喜んでいるよ――」

 

――そしてついに彼らに帰国の時間が経つ。

 

「それではもう行こうか」

 

「はいっ。三人共、日本へ帰るわよ」

 

 

「「「はいっ」」」

 

ベルクラスに乗り込み、発進し遥か空に浮上していく。そして下からは見えなくなるまで沢山の人達が手を振り、拍手する姿が見えた。

 

「やっと日本に帰るのか……駐屯地の人達は元気かなあ……」

 

「早く会いたいよね、今の内に日本語に慣れとかなきゃ」

「そっか、今まで英語だらけでマナ達も合わせてたからね」

 

三人は休憩所の窓から遥か先にある母国、日本に思いを馳せていた。

 

「……そういえばミズキ、ジョナサン大尉とはどうだったの?」

 

愛美は落ち込まず、前向きな明るい顔でこう言う。

「昨日、「明日、日本に帰るの」って伝えたら会ってくれたけどジョナサンは「ジェイド、ジョージ達の戦死したショックで酷く落ち込んだ俺の姿をマナミに見せたくなかったし、しばらくの間は立ち直れないと思うけど、必ず心身ともに元気を取り戻して、絶対にマナミに会いにまた日本にいく」って言ったから……マナ、アイツを待つことにした」

 

「ミズキ……」

 

「そりゃあ大切な友達を失ったら誰でもああなるよ、マナだって同じ思いを味わったんだから分かる、だから――」

 

目頭を熱くさせている愛美を暖かく見るエミリアだった――。

 

「それはそうとエミリアはもう大丈夫なの?」

 

「うん。いっぱい泣きはらしたし、それに泣いてばかりじゃ少佐達は安心してられないからね、だから大丈夫だよ」

 

「俺達が少佐達の後を継いで頑張っていかないとなっ。大尉も絶対にまたいつもの明るい調子に戻ってくれるよ、信じよう」

 

「うん。さて、日本に帰ったらどうしようかなあ――」

 

「まずコーヒーが飲みたいのう」

 

「いや、日本なら緑茶じゃろうて」

 

「そうですね……あれっ?」

 

三人は何か違和感を感じ、横を見るとニールセンとキングが横並びに立っていたことに驚き上がった。

 

「博士達、まさか来ちゃったんですか……?」

 

 

「なんでおじいちゃん達がベルクラスに?」

 

「ホハハ、サオトメからの頼みを引き受けたんだよ、なあキング」

 

「ああっ、しばらく日本に滞在するつもりだから、向こうに無知なアメリカ人の年寄りをよろしくな、三人よ」

 

と、笑いながらそう答えるニールセンとキングに沈黙する三人は駐屯地内でやかましく、そして賑やかになりそうだ、とそう思っていた。

 

「しかし司令の頼みとは?」

 

「それはな――」

 

その時、何故か艦内に警報が鳴り響く。こんな時に敵が攻めてきたのかと焦る竜斗達。

そしてブリッジでは、何かの反応がこちらへ接近してくるのを確認した早乙女とマリアはすぐにモニターを確認した。が、

 

“ヘイ、ゲッターチーム!ユー達がアメリカの領空圏を出るまで見送りに来たネ!”

 

その反応とはテキサスマック、ジャックとメリーだったことに二人は安心に浸った。

 

「君達……なぜ?」

 

“見送りもありますが、そこに父も乗っていませんか?”

 

「ああ、キング博士か。乗っているよ、呼んでこよう」

 

と思ったちょうどその時に三人とニールセンとキングがブリッジに入ってきた。

 

「すまない全員、急接近してくる物体が現れたので確認したらジャック君とメリー君だった」

 

竜斗達はその場でずっこけるも一安心する。そしてキングはモニターに映る二人を見つめる。

“オヤジ、しばらく日本観光を楽しんできな。俺達は心配しなくてもちゃんとやっていくから”

 

“ええっ、また会える日を楽しみにしてるわっ”

 

キングは彼らに「ケッ」と軽く舌打ちした。

 

「お前らはまあた、旅という名で遊びほうけるつもりか?」

 

“いや、俺らはしばらく軍の間で働くことになった、向こうも先の戦闘で人員不足だしな”

 

“今まで自由きままにしてきた分、精一杯働くつもりだから心配しないで。それよりも父さんこそのんびりしてきなよ”

 

「…………」

 

ついに働くという宣言を告げる二人にキングは、

 

「……お前達、また会える日を楽しみにしてるぞい、元気でなっ」

とキングも安心して彼らへしばしの別れの挨拶を交わした。

 

“グッドラック、ゲッターチームっ!”

 

“それじゃあ、シーユーアゲイン♪”

 

アメリカの領空圏を出たベルクラスを見送り、テキサスマックは本土へ引き返していった。

 

「また、彼らに会えるといいですね」

 

「ああっ――」

 

大海原に飛び出したベルクラス、全員が希望を抱いて遥か先の日本へ突き進んでいった。

 

――僕達はつかの間の休息を感じていた。

生まれ故郷である日本に帰った僕達に待ち受けているのは誰もが、いや世界が震撼するような出来事が起こることに今、誰もが知るよしはなかった――。

 




アラスカ戦線編は今回で終わり、次からついに後半部の新編に入ります。

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