ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第三十九話「アラスカでの決戦、後編」⑥

「ジャテーゴ様、ついに本隊からの敵増援が到着しました」

 

「おおっ、やっと来たかっ」

 

ついに北極方向から数千という数のメカザウルスが到着して彼らタートルのクルーに少しばかりの安心が芽生えた。だがそれと同時にモニターに新たな反応が写り込むのもすぐだった。

 

「ジャテーゴ様、南東方向五キロ、左舷より巨大な熱源反応確認……これは……っ」

 

すぐさまモニターを切り替えて映したそれは自分達がこれまで見たことのない、巨大でしかも浮遊してこちらに近づいてくる戦艦の姿だった。

 

「て、敵艦です!!」

 

「なんだと、今までどうして気づかなかったんだ!」

「レーダーの反応はありませんでしたので恐らくジャマーが発振されていたのだと――」

 

彼らに焦りと緊迫が走る一方で、満を期して最後の舞台に躍り出たテキサス艦では、

 

「時は満ち足りか――」

 

「諸君。これよりテキサス級空陸両用攻撃戦艦は今作戦の最終段階に入る。

もう一度言うが、今作戦はこの戦争においての山場であり、我々人類の勝利を勝ち取る起点となることを私は信じている。

諸君はここまでよく貢献し、働いてくれたことに心より感謝している。

我々は今、アメリカの歴史に名を刻もうとしている、そして最後に人類の生存、そして平和のためであると最後まで願う。諸君らの健闘を祈る!!」

 

テキサスがついにタートルの前に姿を表し対面する。互いの存亡、誇り、信念をかけたアラスカでの戦いのトリである最後の一騎打ちが始まろとしていた。

 

「リンク司令、タートルの遙か後方からメカザウルスの大軍団がっ!」

 

「グラストラ核対艦ミサイル発射管全て開門、全弾発射スタンバイ。そして近くの味方機全員に退避命令――」

 

味方機全員へ核攻撃の退避をするよう命令し、一斉に離れる各機。

 

「味方機全機、安全圏に退避完了」

 

「撃てっ!」

 

テキサス艦の左右弦上板部の発射管から計二十発の核ミサイルがうなりを上げて噴き出し勢いよく遥か前方に飛び伸びていく。

「前方より飛来物が、大型ミサイル群です!」

 

「なに!」

 

増援部隊が気づいた時にはすでに遅し、二十発の核弾頭が到達して爆発。この世の終わりと思わせるような強烈な閃光と共に強烈な爆焔と衝撃波、そして熱線が幾千というメカザウルスの大群もろとも呑み込み、ついにはアラスカ全土に広がろうとしていた――。

 

「増援と思われるメカザウルスの大群は全て消滅。あとはタートルのみです!」

 

テキサスは突如降下を始め、タートル一点目掛けて進撃していく。

 

「これより本艦はタートルへ突撃する。バスターカノン砲を直ちに展開、発射用意!」

 

艦中央上部内から折り畳まれるように格納された超ド級の大砲がタートルへ向けて真っ直ぐ水平展開し固定、発射態勢に入る。

 

「敵艦がタートルへ急接近、突っ込む気です!」

 

「こちらも応戦して撃沈させよ、絶対に近づけさせるな!!」

 

タートルも各マグマ砲、機関砲、ミサイル発射管全てを開門して迎撃態勢に入り、生き残った敵味方の誰もがこの勝負の行方を追っている。

 

「やはりこの手だったか……っ」

 

「……リンクめ、死ぬ気かっ!」

 

「ということはキング博士も……」

 

「…………」

 

……ついに互いの距離が迫り、この戦線のフィナーレを飾る、雌雄を決する最後の戦艦同士の一騎うちが今始まった。

 

「バスターカノン砲、撃てえ!」

中央部の巨大な砲内から膨大に増幅された複合エネルギーの塊が真っ直ぐ突き抜けてドラグーン・タートルの艦首部側面を撃ち抜き、貫通していき遥か先の山岳地に直撃し大穴を開けて貫通した。

だが同時にタートルから大量のマグマ砲、ミサイルが雨のようにテキサス艦へ降り注がれて装甲が次々に破壊されて内部にいた人員が巻き添えをくらい、そして消し飛んでいく。

 

「右舷上部各ミサイル発射管、左舷中部空対空機関砲、第九、十三、二十エンジンルーム、艦後部空冷装置大破!」

 

ガタガタに揺れるブリッジではタートルからの艦砲攻撃の雨の中でも目を背けない。

 

「吶喊用エネルギーシールドを展開して構わず前進、主砲だけは絶対に当たらせるな!」

艦首部から覆う、鋲状のエネルギーの膜が発生して一歩も退かずに一点集中で突撃していき、まだ生きてる艦砲全てで応戦する。

 

「敵艦の勢いが止まりません、このままでは激突します!!」

 

「ぐぬう!!」

 

艦砲射撃同士の激しい戦闘を離れた場所から見ている誰も彼もがその総勢な光景、そしてテキサス艦が行おうとする攻撃に唖然となった。

 

「た、体当たりする気だ!」

 

「リンク司令!!!」

 

当然、竜斗達もその光景に瞳を震わせてただ呆然と見ているだけであった――。

 

「うおおーー!!」

 

「アメリカ、そしてヒューマンズビクタァァァァア!!」

 

 

 

さらにスピードを上げてタートルへ迫るテキサス艦、果たして勝負の行方は――。

 

「ああっ!!ついに……っ」

 

「突っ込んだ……っ」

 

「ドゴオっ」とけたたましい轟音が響いた。エネルギーシールドを張ったテキサス艦の艦首がついにタートルの左舷中央部を捉えて装甲を突き破りどちらも行動が止まった……だがその凄まじい衝撃は各艦の乗組員のほとんどを吹き飛ばし、壁や地面に叩きつけられて潰れて辺り一面は血まみれと化している場所ばかりだ。

 

「くっ、サルどもめ……こんな手を使いおって……」

 

大破したタートルのブリッジ、ほとんどの者が圧死されているこのおぞましい状況で何とか無事だったジャテーゴはゆっくり立ち上がるとそこに同じく無事であった部下がすぐに駆けつけた。

「ジャテーゴ様、ここはもう危険です。直ちに退艦を!」

 

「無論、そのつもりだ」

 

ジャテーゴは最後まで尽くして死んだ者達に何の祈りすらかけもせずに、そこから堂々と、颯爽と後にしていった。

 

「リンク司令!」

 

テキサス艦のブリッジもタートル同様に一面は血の池のような状況であり、同じく頭から血を流すも無事であったリンクは部下に起こされた。

 

「わ、私は大丈夫だがキング博士は!」

 

彼は立ち上がり、ふらふらしながら辺りを探すと倒れ込むキングを発見した。

 

「博士、博士!!」

 

「う……まだしぶとく生きてるわい……」

なんと奇跡的に外傷はあまりなく無事であった。

 

「直ちに無事の人員と共に退艦願います!」

 

「い、いやじゃ……ワシはここで死ぬつもりだ……余計なことをするなっ」

 

「…………!!」

 

リンクは切羽詰まった顔で無事の者に高らかに伝えた。

 

「これよりテキサス艦は主砲でタートルに最後の攻撃を与える。生きている全ての者は直ちに退艦せよ、ケガ人も保護することも忘れるなあ!」

 

無事な者はケガ人を背負い、それぞれが脱出経路へ駆け出していく中、リンクはキングをすぐに持ち上げて逃げようとする人に明け渡した。

 

「リンク……キサマァ!!」

「博士、何度も言いますが、あなたがここで死ぬなんて誰も願ってませんからっ」

 

怒るキングにギリッと歯ぎしりを立てるリンクは今までに見たことほどに怖い表情だったが、すぐに平常心を取り戻して振り切る。

 

「……すまん、博士をよろしく頼むぞ」

 

「はいっ!」

 

「リンク――――!!!」

 

一緒に運ばれていくキングを見送ると彼は通信機に行き、ベルクラスへ通信をかける。

 

「聞こえますかサオトメ一佐!」

 

“はい聞こえます。そ、そちらは大丈夫ですか!!?”

 

「私は大丈夫だ。これよりテキサス艦は最後の攻撃を行う、ベルクラスや生き残った各機を使って脱出する乗組員達を直ちに迎えにきてやってくれ!」

“了解、しかしあなたはっ?”

 

「…………」

 

“司令、まさか……っ”

 

リンクは微笑み、早乙女へビシッと敬礼した。

 

「……サオトメ一佐、ニールセン博士、そしてキング博士の三人は間違いなくこれから必要となる人間だ。私はあなた方三人、そしてゲッターチームに希望を全て託します――」

 

通信が切ると副官などのクルー達が彼の元に駆けつける。

 

「司令、バスターカノン砲のエネルギーチャージ完了しました」

 

「ありがとう。君たちも退艦してくれ。ベルクラス、各機が迎えに来てくれる」

 

「いえ、私達は艦もろとも運命を共にするつもりです!」

 

 

「ばかな、命を無駄にするんじゃない」

 

 

 

「しかし……」

 

「時間をやる、直ちに退避しろ!!私からの絶対命令だあ!!」

 

怒鳴りつけるような命令が響き渡り、彼らは断腸の思いでそれに承諾し、敬礼する。

 

「頼りない自分をここまで支えてくれた皆に心から感謝し礼を言う、本当にありがとう」

 

と、彼も笑顔で敬礼で返した。

そしてクルー達は去っていき一人遺されたリンクはゆっくりと主砲発射用ボタンの前に立ち、深呼吸して待機する。

 

「もう少しで、全てが終わる――」

 

外ではベルクラスと各機が迅速とテキサス艦に赴き、艦から逃げ出てきた各乗組員の保護に必死だった。

「う、うう…………ウエっ……っ」

 

その異常な緊迫感と焦り、そして乗組員に混じった見るも背けるような怪我をした人達の姿にエミリアはついに耐えきれず、えずき出してついにその場でヘルメットをつけたまま「ゲエッ」と嘔吐してしまう。

 

「エミリア!?」

 

「アンタ大丈夫!?」

 

二人は彼女の異変に心配になり顔を覗かせると彼女は咳き込みながら嗚咽していた。

 

「……今こんな、失礼なことをしたらダメだってわかってる……覚悟だってちゃんと決めてた……けど、けど……!」

 

彼女に心身とも限界がきていることを知る。誰もが心情を理解し、誰も彼女を責める者はなかった。

 

「もう、大丈夫だから……アタシ最後まで諦めずに、弱音吐かずにちゃんと頑張るから……もう気にしないで早くこの人達を助けよっ」

 

「エミリア……っ」

 

彼女も汚れたヘルメットを脱ぎ捨て、口を拭い払い最後の力を振り絞って逃げ惑う乗組員達の保護に尽くした。

ベルクラスへ怪我人と年配の者を最優先で限界まで収容し、残りは各機に詰め込み全員の保護は完了した。

 

「よし、直ちにここから退避しろ。テキサスがタートルにトドメを刺す、巻き添えを受けないように出来るだけ遠くに行くんだ!」

 

一目散に離れていくベルクラスと各機をブリッジのモニターから見届けたリンクは安らかな笑みを放つ。

 

(ここでそれぞれの信念を持ち死んでいった敵味方含めた者達よ、私はお前たちが無事安らかに眠れるように最期まで祈ってやるからな)

 

もはや彼はまるで聖人と化しており、死んでいった仲間や果てには敵側の人間にも慈悲の祈りをかけて、主砲発射へのカウントダウンが始まった。

 

「……一〇、九、八、七、六、五、四、三、ニ、一」

 

彼は全力を持って発射ボタンを力強く押し込む。

 

(終わりだ!)

 

砲口がカッと光った瞬間、タートル、そしてテキサスの内部から大爆発が起こり、各施設、そして逃げ遅れた者、リンク、いやこのアラスカの戦いで渦巻く全ての負を丸ごと、その閃光へと中に包まれ消えていき、それがアラスカ全土を揺るがすほどに激震させたのだ。

その最中、何機かの飛行型メカザウルスが間一髪タートルから飛び出して北極方向へ飛び去っていくのが見えた――。

 

「やっと、全てが……終わったんだ……っ」

 

「ああ……っ、俺達人間の勝利でな……」

 

「アラスカはな。だがまだ……」

 

まるでこの地を照らす太陽のように輝きながら爆発する、このアラスカでの激戦の終わりを告げる巨大な花火をあげる二隻へ、遠く離れた場所で生き残った者がそれぞれ様々な思いを込めながら眺めていた。

 

「キング……」

 

「………………」

 

ベルクラスの艦橋にてニールセンとキングの二人が対面する。

しかし、どちらも無事を祝うどころか複雑な表情をしている。

 

「お主、最近なにがあった?」

 

ニールセンの質問に答えようとしないキングについに腹を立てた彼は右手を握り締めて顔面に叩き込んだ。

 

「博士!」

 

側にいた早乙女は息を切らしながら再び胸ぐらをつかみ殴ろうとする彼の引き止めに入る。

 

「キサマァ、ワシの質問に答えられんほどにボケたのかあ!?」

 

すると鼻血を出したままうずくまるキングは嗚咽していた。

 

「ただの……ワシがお前に対する劣等感から生み出た嫉妬じゃよ……っ」

 

「なに…………?」

彼の本音を聞き真実を知ると、ニールセンは身震いし、再び彼に掴みかかった。

 

「殴りたいならもっと殴ればいい、それで死ねればどれだけ嬉しいか!ワシは本来はテキサス艦で命を散らすはずだった、生きる気をなくしたただのジジイじゃ!」

 

しかしキングは全く殴ることなく、そのまま彼から手を離した。

 

「どうした、怖じ気づいたのか!」

 

「いや……お前がそこまで思い詰めていたと思ったら、やりきれなくなった……」

 

「…………」

 

「だがワシだって、ワシだって、ここまで来るのにどれほど苦労したか……っ」

 

へたり込むニールセンはその場でこれまでの過去を追憶して話す。

「……確かにワシは世紀の天才だと周りから言われた。

だがそれは表向きの話で裏ではワシに対して嫉妬深い奴らから嫌がらせ、妨害を幾度なく受け続けて最悪命さえ奪われかねんテロ行為まで色々あったが、ワシは公表せず全て闇に葬った。

何故ならそいつらの気持ちを理解出来ていたからワシにはどうすることも出来んかった」

 

今まで聞いたことのない事実を彼から聞かされて驚愕を受ける。

 

「天才とは確かにいい思いをすることが沢山あるが、同時に他人から憎まれたりする恨まれたりする罪深き呪われた人間、ワシもよく普通の人間に生まれたかったと、そしてそれによって世界を滅ぼしたいとどれだけ思ったことか。

 

その一つにワシには誰一人友達なぞおらず常に孤独を味わっていた、特別扱いされて気味悪がれて理解されず……誰もワシに近寄ろうとしなかった。キング、お前が現れるまではなっ」

 

同じ思いを受けてきた早乙女は「やはり自分は博士の血筋を持つ人間、これも運命か」と再認識した。

 

「わしがここまでこれたのはキング、お前のおかげだと思っていた、お前だけがわしを対等に見てくれ、好意的に接してくれたお前と出会わなければ間違いなくこんな呪われた人生に失望して自殺、もしく壊れたかもしれん。

ワシは……ワシは……お前だけは唯一無二の親友だと思っていた……なのにお前まで……このバカヤロウ……!」

「ニールセン……」

 

唯一の友だと思っていたキングにまで裏切られたようなその悲しみに打ちひしがれニールセンもがその場で声を上げて泣き出してしまった。

 

「すまんかった……お前がこんなワシを親友だと思っていたなんて……お前の気持ちを全く理解出来なくてすまんかった。

思えばワシも、何だかんだお前とコーヒー飲みながら色々雑談や研究について話し合ったり、酒飲みながら宴会したりと、一緒でワイワイ楽しくやっていたのが一番人生で充実していたと思う。

ワシはそんなお前の気持ちを裏切ったからには相応の報いを受けるべきじゃな」

 

彼は立ち上がり、服を手で払いたたき上げたその顔には先ほどまでの死人のような顔ではなく若返ったような精気のに溢れた男の顔である。

 

「ワシは宣言する、命が続く限り生きてニールセンと共に研究に全てを費やす。でなければ、せっかくわしを生かしてくれたリンクに申し訳が立たんからな」

 

再び生きる希望を持ちえたキングはニールセンに手を差し伸べた。

 

「こんなワシだがこれからもまた一緒に付き合ってくれよっ、我が友よ」

 

「キング……ああっ!」

 

和解する二人に早乙女は安心して、夜明けの光が挿し始めた広大なアラスカの地をモニターからずっと見つめた――。

 

(リンク司令、あなたが私達に託した希望は……絶対に消させはしませんからどうか安らかに……)

 

彼はリンク、いやアラスカの地から生きて帰れなかった者達へ祈るのであった――。

 

 

 

――ついに終わったアラスカ戦線。事実上、僕ら地上人類の勝利であるがジェイド少佐、ジョージ少佐、そしてルネ少尉など……その他多大な犠牲を払った戦いであり、僕ら含めて生き残った者の心に深い傷を負わせた。

……いつになったら戦争が、この戦火渦巻く混沌とした世界に光りが差し込むのか……僕達は果てしなく遠い明日へ、未だに見えない闇の向こうに息を切らして走っていたのだった――。

 

 

「ジャテーゴ様、マシーン・ランドへ到着しました」

 

部下と共に命からがら北極圏の帝国に生きて帰ったジャテーゴはメカザウルスから降りるとそこにゴールの側近が駆けつける。

 

「ジャテーゴ様、よくご無事で。ゴール様がすぐさま顔を出すようとのこと」

 

「わかった。今から向かう」

 

彼女はこんな状況にも関わらず急ぐことなく堂々と歩いていく。そして王の間に入るとすでにゴールが玉座に座り、待ち構えていた。

 

「ジャテーゴよ、よく無事に戻ってきたな」

 

「兄上……」

 

久々の兄妹の対面であるにも関わらず、気を張り詰めたような表情の二人であった。

 

「申し訳ありません、私の不甲斐なさから第三恐竜大隊を壊滅に追いやったことは誠に遺憾であります」

 

と、素直に謝るジャテーゴにゴールはため息をつく。

 

「罰を下すなら何なりと――」

 

「いや、ワシは最後まで必死に戦った妹のお前の健闘を讃えて何の罪も問わん。それよりもジャテーゴ、いや恐竜帝国全域に伝えることがある」

「はっ、それは何でしょうか?」

 

ゴールはゆっくり立ち上がり、息を深く吸ってこう告げた。

 

「これまでに検討した結果、我ら恐竜帝国は地上人類と停戦協定、そして和平を結ぼうと思う!」

 

その宣言は周りの人間に驚愕を与え狼狽、どよめつかせた。

 

「ただでさえ少ない爬虫人類にこれ以上戦火を広げて犠牲を出すことは出来ない。そして多数の民に調査した所、もう戦争を拡大させたくない、彼ら地上人類と仲良くしたいと答えた者が結構いることが分かったのでそれを検討した結果だ。

それ以外の者も受け入れられない、混乱する者も多数だと思うが分かってほしい。

これより帝国全域、各地に点在している各中隊、大隊、そして向こうの首脳陣にどうにかして伝達し、その準備に入る。そこでジャテーゴはどう思う?」

 

 

待ってましたと言わんばかりにジャテーゴも迷うことなく頷いた。

 

「私も兄上と同じくこれ以上の同報の死に深く傷つき、特に今戦闘にて戦争の愚かさ、儚さを知り、正直疲れました。

私にそれを全面的に担当させてくれれば全力と知恵を持って協定のために尽力致そうと思います」

 

見えすぎた嘘ばかりのたまわるジャテーゴだったがゴールはジャテーゴの真意を見抜けず感心して相づちを打った。

「よくぞいってくれた。ジャテーゴ、お前なら要領よく、そして上手くいくと信じておる、それらの権限はお前に託すぞ」

 

「は、有り難き幸せ!」

 

「頼むぞ、ジャテーゴ!」

 

頭を下げて背を向けて去るジャテーゴの顔からはドス黒いほどに卑しい笑みを浮かべていることにゴールは分かるハズもなかった――。

 


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