ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第三十九話「アラスカでの決戦、後編」④

西側の敵部隊をほぼ全滅させたがそれには犠牲もあまりにも大きすぎた。生き残った人員はジェイド達の死に強烈な悲しみを受けていた。が、

 

「司令、北極方向よりこちらに接近中の多数の反応確認。これは……メカザウルスです!」

 

「こんな時に来たかっ」

 

三人は想定していた敵の増援部隊を知り緊張が走る。何故ならジェイドやジョージなど主力になりえる要の人員をほとんど失ってしまったためである。

 

「先にテキサス艦が到着するか、それとも敵増援が先か――」

 

「敵増援が先に到着した場合、今の戦力で持ち越えるのはもはや神業の域ですよ」

 

と、誰が考えてもこのままでは勝ち目がないのは分かっていたが早乙女は。

「それでも勝利を信じてやらねばならん。少佐達の犠牲を無駄にすることだけは絶対にするな!」

 

と、彼はまだ希望を捨てていなかった。その時、竜斗から通信が入る。

 

“ジョナサン大尉がもう戦える状態ではありません。収容と治療をお願いします!”

 

「了解だ。直ちに受け入れ準備だ。マリア、大尉を頼む」

 

「わ、わかりました!」

 

格納庫を上げて竜斗はジョナサン機を収容させ再び外に出ようとした。

その時、早乙女から敵増援があることを告げられる。

 

“もし増援が先に到着すれば我々に勝ち目は殆どなくなるかもしれんが竜斗はどう思う――?”

その問いに竜斗は迷わずこう答えた。

 

「何を言っているんですか!それでも僕達がやらねば……勝たなければ少佐達が浮かばれません、僕は最後の一人になろうと勝利を信じて戦います!」

 

力強くそう答えた竜斗に三人は驚きそして、全員に通信越しでこう伝える。

 

「少佐達を失ってた悲しみは僕も同じです。しかし、少佐達は勝利を信じ、最後の最後まで戦いました。なら僕達もそれに応えるべきです、まだ負けたわけではありません、少しの可能性がある限り戦いましょう!」

 

こんなまだ成人しておらず、そして若い今時の少年からは考えられない大義の演説はベルクラス、そして生き残った西側の全員に再び戦意を戻させるのには十分であった。

「……その通りだな、こんな時に弱気なら少佐達が安心して眠れねえぜっ」

 

「ああ、それに俺達は西側の敵は全滅させたんだ。

なら次は東側の敵を、そして敵増援がこようと何としてでもテキサス艦が来るまで持ちこたえるぞ!」

 

各員から戦意高揚の雄叫びが響き、そして全員が心を一つにしていく。

 

「皆さん、自らの命をなげうってくれた少佐達の犠牲を絶対に無駄にするワケには行きません。

勝利のために今こそ命を燃やす時です!」

 

「よくいった竜斗!我々も捨て身の覚悟で、そして全員心を入れ替えて決死の思いで行くぞ!」

 

「勝つ気がある限り必ず僕達人類に勝利の神が微笑みます、これより東の部隊の援護に向かいます、皆さん僕に続いて下さい!!」

 

 

《ウオオーーーー!!》

 

中心で希望に満ちた竜斗の力強いかけ声、そして左手に持つゲッタートマホークを天に突き刺すゲッターロボのその神々しい姿が起爆剤となり再び活性化を果たす全員。その光景にマリアとニールセンは驚いていた。

 

「竜斗君……本当にスゴいわ……」

 

「ああ……なんて爆発力と率先力を持つ子じゃ……」

 

そのまるでリーダー、いや指導者として立ち回る彼の様子を早乙女は微笑ましい表情で見守り、そして無事に生き残ったアレンの二人は、今の彼の姿に共通した考えを持っていた。それは、

 

(君はもしかすれば人類の救世主(メシア)として光へと導ける唯一無二の存在かもしれん――)

 

 

そしてまだ戦える機体は一丸となって全滅に瀕している東側の陣営へ援護しようと空を高速で駆けていった。

 

「みんな……みんな……突然現れた悪魔のせいで次々に死んでいく……っ」

 

ラセツの猛攻によって、辺りは大量の機体の残骸とオイル、そして人間の肉塊が一面に散開しており見るもおぞましい地獄のような状況にエミリアはもはや戦意喪失状態だ。

 

「しっかりしてよエミリア!みんなが決死で戦ってるのにあんたがそんなんじゃ失礼だよお!」

 

愛美が彼女を引っ張って勇敢と立ち向かうがラセツには全く攻撃が当たらず。

 

「くそお、この化け物め!」

 

ルネのジャンヌ・ダルクも戦乙女の形態になり地上で立ち向かっている。右手にレイピアのような細剣、左手にはアーチェリー状に変形させて接近戦に持ち込もうとしていた。

 

「はあっ!!」

 

アーチェリーからプラズマの帯びた矢を次々に連射していくがラセツは右手に持つ長剣で目にも見えぬ速さで振り回し、全て切り払った。

 

「私に攻撃を当てようなどと無駄なことだっ」

 

左手の一差し指で剣刃に星形の陣を描くと、紫色の邪悪なオーラを纏った。

 

「滅せよ!」

 

剣を高く振り上げるラセツはジャンヌ・ダルクへ向かって振り込もうとした時だった。

 

「!?」

 

背後からプラズマ弾、ミサイル、散弾、無数の弾丸が向かってくる。

彼はすぐさま攻撃を止めて振り向き、その俊敏さを生かして弾の霰をかいくぐる。

その視線の先にはテキサスマックとケツアルコアトルが各武装、火砲を向けている。

 

「くそ、なんてクレイジーなヤツだ!」

 

「兄さん、こうなったらあの化け物に全弾発射よっ!」

 

「オーケイ、味方機は射線軸上から退避しろ!!」

 

ラセツ一人に照準を合わせて、二機の武装を全て展開、開門した。

 

「ケツアルコアトルの弾薬がこれでラストだから、絶対に当たってよね!」

 

「行くぞメリー、フルファイアっっ!!」

 

展開した全武装のトリガーを引こうとした時、ラセツが突如目の前から姿を消し、彼の指が止まった。

 

「甘いわァ!」

 

二機の頭上に移動したラセツが剣を振り切り真空波を発生させてケツアルコアトルとテキサスマックの連結部を砲身ごと分断し、さらに左手で巨大な火球を作り出してケツアルコアトルにぶつけた。

 

「きゃああァっ!!」

 

「メリーっ!!!」

 

大破はしなかったものの機能停止して地上に墜落していくケツアルコアトル。

 

「兄さん、あたしは大丈夫だからそれよりもあいつを!」

 

テキサスマックはすかさず被っていたテンガロンハットを盾として左手に持ち、右手に専用のライアットガンを持ち構えてラセツと対峙する。

 

「吹き飛べ、この悪魔め!!」

 

ライアットガンから大量の小さな弾が前方広範囲にばらまかれるがラセツは左手を前に出して燃え上がる火の壁を発生、弾は溶けて燃え尽きる。

 

「ちいっ!」

 

実弾が効かないならばと、ライアットガンをポンチョにしまい、中から二丁のプラズマ・エネルギーライフルを取り出して直列に合体させた。

銃口から火を吹く、増幅された高出力で大きいプラズマ弾がラセツへ飛び出していくが軽々と避けられる。

 

「何でも同じことだ!」

 

「なっ!?」

 

急接近したラセツがすかさず剣でライフルのバレルを真っ二つにし、今度はテキサスマックへ殺気のこもった赤い螺旋上の瞳を向けた。

 

「終わりだ」

 

その時、地上から二つの大型ミサイル、そして無数の小型ミサイルが飛び交いながらラセツへ向かってくる。

 

「邪魔が次から次へと……っ!」

 

ラセツはすぐにそこから離れて逃げるように飛び回り、剣と超能力を使って撃ち落としていく。流石に苛立ちはじめた彼の視線を下に向けると、そこには愛美の乗るアズレイから各内蔵したミサイル管から煙が上がっている姿が。

 

「もう許さないんだから、そのオカマみたいな顔した悪魔はマナがボコボコにしてやる!」

 

「ほう、貴様は例のゲッター線を使う機体か。それなら相手にとって不足はない!」

 

目的の獲物を見つけたかのように目の色を変えて全力でアズレイへ突進してくるラセツ。

 

「我らが不倶戴天のゲッター線を使うヤツらめ、貴様らの首をジャテーゴ様の土産にしてくれる!」

 

「来るなら来なさい!みんなのカタキ、何としてでも倒してやるんだから!!」

 

一騎打ちになる二人。だがラセツはいきなり「はあっ!!」とけたたましい大声を上げると強烈な衝撃波を発生させてアズレイを後ろへ吹き飛ばした。

「やああああっ!!」

 

仰向けに倒れ込むアズレイは急いで起き上がろうとしたが、そこにはすでにラセツが目の前で剣を高く振り上げていた。

 

「そのコだけはやらせないよっ!」

 

突然、ジャンヌ・ダルクが横から滑り込むようにアズレイの前に大の字に立ち塞がったその時、ラセツの剣が縦一閃が振り込まれた――。

 

「ああ………………っ」

 

「アンタ達は……絶対に死んではいけない……アタシ達の分まで生きて……ね」

 

ジャンヌ・ダルクのが真っ二つに切れた瞬間に大爆発した。

「しょ、少尉ーーっ!!!」

 

戦意喪失し動けないエミリアを守るようについていたリーゲンの叫び声が響き渡る。

 

 

「うそ…………なんで…………っ」

 

愛美は絶句した。なんで自分のために、今まで嫌がっていた自分のために身を投げ出して死んだのか……そして、こんな突然現れた一人の人間相手に自分達SMBの部隊が何をしても全く通用せず、なすすべなく皆やられていくあまりにも信じられない強さに……彼女ですらもはやもう絶望を感じていた。

 

「なんで…………なんで……っ!」

 

ガクガクと震える身体、瞳から涙が溢れてボロボロと落ちていく。だが、無慈悲にもラセツの魔の手はすぐそこに迫っていたのであった。

 

「人間愛とはキレイでそして儚く悲しいものだ、だが心配するな。お前達もいずれ会える、地獄でなあ!!!」

再びラセツは剣を振り込み、今度こそはとアズレイにめがけていた。

 

「マナミ君!!」

 

グシャグシャに泣き続け、動こうとしない愛美にリーゲンは慌ててシヴァアレスを急発進、助けに駆けつけようとするがこれでは間に合いそうになかった。

 

「今度こそ終わりだ!」」

 

ラセツの剣がアズレイへ振り切……その時だった、

 

「水樹ィ!!!」

 

上空から竜斗の乗るアルヴァインがトマホークを振り込んでラセツめがけて向かってきていた。ラセツは慌ててそこから離れると同時にアルヴァインは勢いを殺して地上へ降り立った。

 

「大丈夫か水樹!!」

 

「い、イシカワ……っ」

 

「もう俺達が到着したから安心してっ、大丈夫だから」

 

安心させるよう優しくそして力強い口調に彼女はどれだけ救われたであろうか――。

そして西側が生き残った部隊も介入していく光景に東側は驚愕と、次第に歓喜の声を上げた。

 

「エミリアも大丈夫?」

 

「リュ……リュウト!!」

 

エミリアも彼が駆けつけたことに気づいて我に帰った。

 

「西側のメカザウルスはもう全滅させたから二人が心配で駆けつけたんだ。ベルクラスももうすぐ来るよ」

 

二人はそれを聞いて安堵につくが、竜斗は次に二人にとって思いもよらぬ事実を口出した。

「二人共よく聞いて、敵の増援がもうすぐアラスカに到着するらしい」

 

「え……ウソ…………っ」

 

「ど、どうするのよ、こっちの部隊はほとんどあの変なオカマ野郎にやられちゃったのよ!!」

 

その時、ちょうどシヴァアレスも二人の元に駆けつける。

 

「おお、竜斗君、よく無事で!」

 

「大尉もよくご無事で!」

 

「いやあ、あまり役立てなくてすまないと思っている。あと西側の部隊は大丈夫だったのか?」

 

「………………」

 

その事に竜斗は口ごもってしまう。

 

「そう言えば西側の部隊がやけに少なく感じるが……っ」

 

「……西側の部隊も突然現れた巨大な怪物にほとんどもう……」

 

……嫌な予感がよぎる愛美、エミリア、そしてリーゲン。

 

「ジョナサンは、ジョナサンは!!?」

 

「大尉は何とか助かってベルクラスに運んだ。けどジェイド少佐とジョージ少佐、そして大半の人達は……っ」

 

その事実に三人は言葉を失った。

 

「まさか……少佐達までやられたというのか……っ」

 

「……はい、残念ながら……」

 

初めて知った三人の心に雷が走るような衝撃とどうしようもない悲しみが。

 

「そ……そんなあ…………少佐達がもうこの世にいないなんて……っ」

一番心に深く傷ついていたのは何を隠そうエミリアである。愛美のようにすでに顔が真っ赤で涙と鼻水でボロボロであった。

 

「もうイヤだイヤだイヤだイヤだ!!なんでこんなに親しい人達ばかりいなくなるの!?アタシもうこんなのイヤだあ!!!」

 

と、悲痛の声で喚くように叫び訴えるエミリアに竜斗は、

 

「いい加減にしろよエミリアっ!!」

 

と、珍しく彼女に厳しく喝を入れる竜斗に全員は驚いた。

 

「そうやって泣き叫んだって少佐達が戻ってくると思うか?寧ろそんなんじゃ少佐達は安心していられないよ。

俺達の今すべきことは少佐達、いや戦死した人達の犠牲を無駄にしないためにも何としてでもこの戦いに勝つことだろう!」

「イシカワ…………っ」

 

「リュウト…………」

 

「俺はたとえ一人になろうと勝利を信じて戦い抜く。

だから皆も悔しい、悲しい思いをしているなら、少佐達の無念を晴らしたいと思うなら、今だけも涙をこらえて敵を討つんだ!」

 

彼からの希望に満ちた発言は二人に凄まじい衝撃とそして消えかけていた光が灯り出した。

 

「イシカワ……あんた一体どうしちゃったのよ。凄く気が強いじゃない?」

 

「うん……本当に別人になっちゃったよね、リュウトは」

 

「うむ、逆境に強い子だな、君はっ」

 

「え……それは……あれっ?」

 

照れ込む彼に、三人はようやく笑顔が戻ったのだ。

 

「二人とも、ゲッターロボの力を最大限に活かせば絶対に負けないよっ、俺が二人、いやもうみんなを死なせやしないからちゃんと気を持って!」

 

「石川にそんなことを言われちゃ、そうしなざる得ないわね。ゲッターチームのリーダーだものね」

 

「う……うん!ワタシも少佐達が安心して眠れるようまたガンバルよ!」

 

そしてついにゲッターチームが再び合流して、それぞれが各武装を構えて前に動き出した。

 

「俺達ゲッターチームが全員揃ったからにはもう好きにさせないからな。みんな、準備はいいか!」

 

「ええ、いつでもいいわよ!!」

 

「アタシ達の底力をあいつらに見せてやるんだから!!」

 

最後の最後まで諦めない、その一つの思いを希望にした三人の士気、そして気合いは最大に達した。

 


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