ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第三十九話「アラスカでの決戦、後編」③

「アラスカの味方の数が突然、激減しています!」

 

「何!」

 

移動中のテキサス艦内でモニタリングしているリンク達はその異常事態に目を疑っていた。

 

「先ほどまで優勢だった戦況が再び覆されつつあります!」

 

「北極圏方向よりアラスカへ進行する無数の反応を確認、これは敵部隊の増援です!」

 

このままではドラグーン・タートルのと一騎打ちどころではなくなりかねない事態へと陥っていた。

 

「どうするリンク、我々は一時撤退して態勢を整えるかっ」

 

「バカな、ここまで来て撤退などと、全てを水の泡にできますか!」

 

「だがこのままではまずいんじゃないのかっ?」

 

「………………」

 

……今、自分達にできることは向こうの陣営がそれでも何とか持ちこたえてくれることを信じ、祈ることしか出来なかった。

 

「ホハハハ、流石のお前たちもこの二人の前には赤子同然だな!」

 

ジャテーゴは二人を投入したことにより戦況が一辺したこの光景に高笑いし、各クルーは二人の想像以上の武勇ぶりに歓喜し、興奮していた。

 

「これはスゴい……ジャテーゴ様、あの二人は一体何者なんでしょうか!」

 

と、一人の部下が質問すると彼女はニヤリと不気味の笑みを浮かべた。

 

「あの二人は私の忠実なるかわいい側近。その正体は私がとある製法で造り上げた『レヴィアラト』である」

 

彼女からの答えに誰も驚愕を受けて、思わず「ええっ!」と声を上げた。

 

「レヴィアラトといえば……聖典ユイラに登場する神々『レイグォール』にそれぞれ仕えていたとされる従者のことですか?」

 

「左様だ。最も本物に模した、所謂レプリカではあるがな――」

 

誰も信じられないような顔をしている。それはそうだ、神話に登場する人物でありそれが現実に存在するなどと思っても見なかったことだ。

 

「しかしあれは伝説上の生き物では……?」

 

「現実に存在しないとでも思っていたのか?見ろ、前にいる二人の力が現実だ。私は独自で地球の至るところにある、先祖たちの残した古文書や遺跡を見つけ、解析して分かったのだ。

レヴィアラトの正体とそして非常に苦労したが現実に『造れる』ということをな!」

 

と、豪語した彼女だが伝説上だけに存在した人物を造れるとは一体どういうことなのか――。

 

「もう絶対許さねえ、たとえこの身が朽ちようと俺達がテメエをぶっ殺してやる!!」

 

「全員、スティーブンとジョージの弔い合戦だっ!!」

 

殺された二人に対する激しい怒りがブラック・インパルス隊、竜斗やアレン含めた西側の部隊全員の闘志を燃えさせて今まで以上に勢いと士気が活性化、団結力を一気に固めてヤシャに立ち向かう。

 

「このクソヤロウ!!よくもジョージをーーっっ!!」

 

ジョナサンも今まで見せたことのないような鬼の形相、激しい怒りを顕わにして、ヤシャへ突撃していく。

 

「うあああああーーっ!!」

 

ジョージというゲッターチーム達に尽くしてくれた大の恩人を、自身の身代わりとなって戦死した悲しみをヤシャに対する怒りに替えて竜斗は大粒の涙を流しながら尽力して戦う。

 

「ええい、ちょこまかと!!」

 

ヤシャを各機の高機動力を生かしたマニューバで翻弄するがその恐ろしいまでの頑丈さはほとんどの武装に意味を成さなかった。

 

「あれはサオトメ一佐達か!」

 

そんな中、彼らの元にベルクラスが駆けつけるも早乙女達はそのデータにない異質の敵に愕然となり、緊張が走った。

 

 

「これより私達も援護に入る。マリア、全砲門をあの謎の巨人へ」

 

対地ゲッターミサイル、そして同じく艦首部下に追加搭載された四門のプラズマビーム砲を地上のヤシャに向けて一斉砲火して雨のように降り注そがせた。

 

「うがああっ!!」

 

雄叫びを上げて抗う彼は再びジョージを葬った時のような手のひらに火球を作り出して真上に滞空するベルクラスへ放とうとした。が、

 

「させるもんかあ!」

 

アルヴァインが右臑部からビーム・ブーメランを取り出して全力投擲。

高速回転するブーメランへさらに竜斗はライフルを構えてエネルギー弾を撃ち込み、軌道を無理やり変えて見事、ヤシャの眼球に直撃させた。

「ギャアアア!」と汚い悲鳴を上げながら目を押さえてたじろぎ、隙ができた所を再び全員の一斉射撃を浴びせる。

だがそれでも、かすり傷がつくかどうかであまり効果がなさそうである。

 

「並大抵の火器では通用しない……ジョナサン、待ちに待った核弾頭を使え!」

 

「よっしゃあっ!!」

 

ジェイドがついに核の使用を許可し、本人は大張り切りしていた。一方で、竜斗もこのまま埒があかないと早乙女へ通信がかけていた。

 

「司令、僕ももう一つのエリダヌスX―01を使用します、帰艦の準備をお願いします!」

 

“よし、戻ってこい竜斗!”

 

竜斗は一旦そこから離れて上昇、ベルクラスへ戻っていく。

 

「エリダヌスX―01についてはワシが格納庫にいって装着させてやろう」

 

「ありがとうございます、博士」

 

「礼などいらん。それにあれはアルヴァイン用にちいと特殊化した二号機でのう、ワシでないと取り付けられんようにしてあるからな――」

 

と、言い残しニールセンは艦橋からただ一人出て行った。

格納庫に到着したアルヴァインの元にニールセンが現れて、竜斗はコックピットから降りて合流した。

 

「おや、泣きはらしたような顔だが一体どうしたんじゃ?」

 

その理由を伝えると彼もすぐに納得した。

 

「……そうか。ジョージがのう」

 

「………………」

 

「では竜斗君、その悲しさをエリダヌスX―01に敵にぶつけてこい。そしてジョージのカタキをとってやれ!」

 

「はいっ!」

 

「では、今よりエリダヌスX―01をアルヴァインに装着させるぞい、君はコックピットに乗って言われた通りに機体を動かしてくれ」

 

竜斗は言われた通りコックピットに乗り込み、ニールセンは作業アーム用レバーに移動して操作開始、片隅に置いてある、何故かグリップとトリガーが取り外されたエリダヌスX―01の砲身を掴み持ってくる。

 

“竜斗君、セプティミスαをこちらに近づけてくれ”

 

指示通りに差し出すとニールセンの巧みな操作により、エリダヌスX―01の無いグリップ部にライフルを滑らせるように直接に差し込んで接着させたのだ。

 

「これは…………」

 

“ワシがアルヴァイン用に特殊改造した二号機だ、セプティミスαと合体させることでアズレイのモノよりもさらに威力と射程距離が増しているハズだがアズレイ以上に砲身のオーバーヒートも激しいじゃろう、扱いに気をつけろ。

これであの怪物を思う存分、ぶっ飛ばしてこい!”

 

彼はこの巨大兵器を見て何かを思い出す、それはまるで大雪山戦役でも使った兵器『GBL―Avenger』のことを。

あの時も本当に不安だらけだったが結局何とかなったし、そして今回も――そしてジョージの無念を晴らす思いが混ざり、彼の内なる勇気がまるでマグマの如く湧き上がった。

“よし、装着完了だ。発進しろ竜斗君よ!”

 

「了解っ!!」

 

エリダヌスX―01を装着したアルヴァインはカタパルトに移動、外部ハッチの前に立ち発進態勢を取る。

 

(少佐、必ず……必ず俺達があなたの仇を!)

 

カタパルトが射出されてアルヴァインは外に飛び出すとすぐさま地上へ急降下していった。

 

「くそ、なんでこんなデカい図体のくせに早く動けるんだ!」

 

ヤシャと各部隊が激しい攻防戦を繰り広げ、ジョナサンは核弾頭入りのバズーカを展開したいがその間にヤシャの激しい猛攻を前にその暇がなかった――。

 

「消し飛べサルどもおっ!」

ヤシャが右手に握り締め力を溜め、全力で地面に叩きつけた時、眩い閃光と共に核と思わせるような強烈な大爆発が起こり、発生した衝撃波と熱線は辺り一面を全て吹き飛ばしたのだった。

爆風をモロに受けて消し飛び、または吹き飛ばされて空中分解する機体が多数、何とかそれを免れた機体も多数だがほとんどはもはやボロボロな状態であり、これ以上戦えるかどうか疑うほどであった。

ジョナサン機、そしてジェイド機も例外ではなく地上に落ちてギシギシ揺れてひれ伏せていた。

 

「くっ……ジェイド、大丈夫か……っ」

 

「何とかな……だがもうマトモに戦えんほどにダメージを受けている……」

 

コックピットで小規模の爆発が起こり、彼らの被っていた防護用ヘルメットも破壊されて破片が顔中に刺さり、見るもゾッとするほどに血だらけであった。

 

「このままじゃあの二人に顔向け出来ねえぜ……こうなったらイチかバチか核全てを抱えて特攻してやる!」

 

と、ジョナサンは覚悟を決めて最後の力を振り絞って立ち上がる。

 

「まだ動けるなら直ちに退避しろジェイド、あとマナミにこう伝えておいてくれ、あの世でもお前をずっと幸せを願って見守っているとなっ!」

 

バズーカに全ての核弾頭を積み込み、構えてヤシャの前に立ったジョナサン機……だがその時。

 

「待てジョナサン、あれは!」

 

「竜斗か!」

 

見上げた夜空から怒涛の勢いで急降下してくるアルヴァインの姿が。

 

「もう絶対に許さないからなあ!」

 

右手に持つ巨大兵器エリダヌスX―01を両手で持ち構えてエネルギーチャージ、そして照準を迷いなくヤシャに向ける、阿修羅の如き形相の竜斗。

 

「ジョージ少佐の……いや、今まで殺された仲間の恨みだ!!」

 

チャージ完了したエリダヌスX―01から発射された膨大な出力の複合エネルギー弾が一秒もかからずにヤシャの腹部に見事直撃し爆発音と共に巨大な風穴を開けたがそれどころかさらには地面にも直撃して深く抉り地形を変えていた。

 

「あ、があ…………っ」

 

悶絶して膝をつくヤシャへもう一発撃とうとするが、砲身がオーバーヒートを起こしており冷却に入っていた。

「お、おのれ……忌まわしき猿どもめえ…………!!」

 

突如、瀕死のヤシャの右手に強烈な熱量が発生、それが急激に上昇していきそして大玉のような光球を形成していく。

 

「これでこの一帯全ては消し飛ぶ。誰一人とも生き残れん、最後に勝つのは俺だあ!!」

 

我を失い、最後の悪あがきをしようとするヤシャに周辺にいる誰もが唖然となり硬直していた。

 

“各員、直ちにそこから退避しろ!”

 

早乙女が全員に指示し、やっと我に変えるが時すでに遅しであり、まるで光球が太陽のように膨れ上がっていた。

これがもしこの場で爆発すれば間違いなく自分達の持つ核弾頭以上の爆発で多大な被害が出るだろう……だが、

「させるかあ!!」

 

ジェイド機が棒立ちのジョナサン機からバズーカを奪い取り、ヤシャへ走っていく。

 

「何するジェイド!!!」

 

「竜斗君、ジョナサンの機体を今すぐ抱えて皆とその場から一気に離れろ!」

 

「少佐!!?」

 

「私が今の内に核で食い止める、直ちに退避しろ」

 

それを聞いて竜斗、いや誰もが耳を疑い震え上がった。

 

「そ、そんなあ、なぜ少佐が!!」

 

「……私の機体はもう逃げれるような力はもう残ってないし、誰よりも先に動いた私がこれ以上、被害を出さないためにも出来ることはこれしかないっ」

「しょ、少佐……」

 

「それにジョナサン、そして君達の力はこの戦いの後でも絶対に必要となる。

竜斗君はすでに私が教えれる全ての操縦技術を、そして優れた操縦技量を身につけたことでもう思い残すことはない。

君にこれからの事を、そして私の夢を託すぞっ!」

 

 

最後まで希望に溢れた表情のジェイドから全てを悟り、そして読み取った竜斗は目頭を熱くして無言のまま、すぐさまボロボロと化したジョナサン機を持ち抱えた。

 

「降ろせ竜斗、ジェイドを、あいつを見捨てるのかよ!!?」

 

「………………」

 

「待てよテメエ、俺だけ生き残らせるつもりかよジェイド!!!」

しかし彼は応えることなくそのままベルクラスのいる高度に上がっていき、そして他の無事な機体もあえなくそこから一斉に退避していき、この場はバズーカ抱えたジェイドのステルヴァーとヤシャの二人に取り残された。

 

「ジョージ達、待ってろ。今からそこにいくからな」

 

確実に当たるように突撃していくステルヴァーに気づいたヤシャは足を大きく上げた――。

 

「私と共に地獄へこい、この化け物め!」

 

振り落とされる足がステルヴァーに向けられて引力に従い落下した時、核弾頭バズーカのトリガーを引いた。

 

(アマンダ、ロイを頼むぞ――)

 

連続で発射された核弾頭全てが弧を描くように飛んでいくと同時に勢いのついたヤシャの足がステルヴァーへ振り下ろされて「グシャ」という無機質な音が聞こえた――その瞬間に核弾頭全てがヤシャに直撃したのだ。核特有の眩い閃光と共に真っ赤な半球状の爆発が起こり、そして衝撃波と熱線が四散した――。

「……あの正体不明化け物と共にジェイド少佐の反応、消滅……そんな……っ」

 

「少佐、見事だった………………」

 

「ジェイドよ、いやジョージ達含めお前達の功績はアメリカの歴史に永遠に刻まれるだろう。ゆっくり眠れ……」

 

核爆発で生じたキノコ雲の方向へベルクラスの艦橋から早乙女達三人は複雑な表情でありながらも敬意を払って敬礼していた。

 

「ジェイド……なんで、なんでお前まで……」

 

何とか難を逃れたアルヴァインとジョナサン機。ジョナサンはジョージはおろか、ジェイドまで失った悲しみにまるで子供のように顔を真っ赤にして泣きじゃくっていた。

 

「……お前のカミさんと子供に……なんて伝えればいいんだよお……」

 

 

一方で竜斗も顔中が涙と鼻水でグシャグシャでありながらもその眼には光を失ってはいなかったのだ。

 

(少佐の遺志を継いだ以上……俺は何があっても前へ歩かないといけないんだ……絶対に……)

 

そう心に決めていた――。

 


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