ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第五話「朝霞戦」②

――上空約一五○○メートル。恐竜帝国第十二恐竜中隊、十七メカザウルス、メカエイビス混成部隊は竜斗達のいる朝霞駐屯地に向かっていた――。

 

無数の飛行型メカザウルスと、『メカエイビス』と呼ばれる重装甲と多武装で施された、機械化された巨大な怪鳥。メカザウルスより約二倍近い全長を持っている。

そしてキャプテン・ラドラの駆る『メカザウルス・ゼクゥシヴ』もその小隊内混じっていた。

 

「あと十七分で朝霞駐屯地へ到達する。おそらく地上人類軍も我々を感知し迎撃態勢にあると思われる。各メカザウルス戦闘準備」

 

やはり彼、ラドラが小隊の指揮をしていた。

だが中隊司令官である彼がわざわざ出向いていいのだろうか。

 

“ラドラ司令、絶対に無理はなさらずに”

 

「ああ。朝霞駐屯地におそらくいるであろうゲッター線駆動の機体と浮遊艦の偵察を兼ねて、この『メカザウルス・ゼクゥシヴ』と『メカエイビス・タウヴァン』の実戦テストを行うためだ。

ガルマ、『メカエイビス・タウヴァン』の調子はどうだ?」

 

“……スゴい出力です。これなら地上人類軍もなすすべはありませんよ――”

 

するとラドラは数秒間を置き、副司令官であるキャプテン・ガルマにこう話した。

 

「ガルマ、私達はなぜ地上人類を殲滅する必要があるのだろうな……?」

 

“……ラドラ司令?”

 

「……私達爬虫人類は帝王ゴール様に忠誠を誓い、命令は絶対に従う。だが、そんな私でも理解し難いこともいくつかある。なぜ人類と共存するという選択肢をあえて消そうとするのか……」

 

“ラドラ様、なにをおっしゃいますか。我々爬虫人類は地上人類と相容れぬ存在。

その理由はあなたも、もちろん知っているのでは?”

 

「…………」

 

ラドラは目を瞑り、黙り込む。が、すぐにキリッとした目を取り戻す。

 

「さて、雑談はこれくらいにして……各員につぐ、ゲッター線駆動の機体と浮遊艦は私とメカエイビス隊が相手をする。

その以外のメカザウルス隊は地上の敵部隊と交戦してくれ。決して無理をするな、互いに守りあうことを頭に入れておけ」

 

――そして朝霞駐屯上空ではすでに発進したベルクラスが、メカザウルス隊の来る方向へ向き、迎撃態勢をとっていた。

艦内の格納庫でも竜斗の乗った空戦型ゲッターロボが今、満を喫して発進しようとしていた。

 

「新型メカザウルスかあ……なんか怖いけどここまで来たらやるしかないか!」

 

やはり恐怖心があるようだが、すでにタカをくくっているのか前ほどビクビクしていない、彼も少し成長したということか。

 

“竜斗、発進するぞ”

 

「了解!」

 

外部ハッチが開かれて、光が差し込む。しかし今回は快晴でなく、雲が多い。

システム起動したゲッターはすぐ膝を曲げて発進体勢を取る、そして――。

 

「石川竜斗、空戦型ゲッターロボ、発進します!」

 

彼のかけ声でカタパルトテーブルが射出。上空に飛び出すと背部のフライトユニット『ゲッターウイング』が左右に展開、大空へ飛翔した――。

 

“竜斗、来たぞ!”

彼らの見つめる先からおびただしい数の軍勢、キャプテン・ラドラ率いる第十七メカザウルス小隊がついに姿を現した。

そしてラドラも遥か前方に浮遊するベルクラスの姿を、モニターからまるで新しいおもちゃを眺めるような興味津々の目で見ていた。

 

「……あれが例の地上人類の浮遊艦か、こちらの母艦より大きい。ゲッター線反応二つ確認……おもしろい」

 

ラドラにニィっと笑い、操縦レバーをさらにぐっと握りしめた。そしてついに両軍は接触し戦闘開始。各メカザウルスは対空砲火が降り注ぐも臆せず降下、地上にいる多数のBEET部隊と交戦する。

 

――BEETは日本製SMBであり、ゲッターロボの大元になった機体である。この機体の売りは汎用性にある。

様々な兵装やオプションを換装でき、陸はともかく空、海上全てをこなせるという特性を持っている。

尖った性能がほとんどである各国SMBとは一線を画す機体であり、そしてコストパフォーマンスもいいため実は各国から注目を浴びている機体である。

欠点は汎用性重視のために突出した面はなく器用貧乏なところか――。

 

次々に降りていく飛行型メカザウルス隊にBEETは各兵装の砲門を上空に向けて、照準を合わせる。

「各機、発射用意。これよりメカザウルスを掃討を開始する!」

 

このBEET小隊を統率するは、朝霞駐屯地第三十三SMB小隊長、黒田悠生(くろだゆうせい)。

幹部候補生で入った彼はつい最近、一尉に昇級したばかりの弱冠二十九歳の小隊長であり、まだ青臭く未熟の面はあるが、SMB操縦技術に卓越しており、誰よりも平和を愛する気持ちは負けない人物である。

 

「十分引き寄せろ。弾薬、エネルギーを無駄にするな」

 

――メカザウルスが射程圏に入った時、

「第三十三SMB小隊射撃用意、撃てっ!」

彼の号令と共に、無数のプラズマ弾、ミサイル、高射砲、駐屯地内に張り巡らせた対空砲による一斉攻撃が多数のメカザウルスに襲いかかる。

直撃したメカザウルスは次々に撃墜されるが回避した機体は、発射の隙間を見つけて次々とマグマを吐き出して地上に降り注ぎ、多数のBEETに直撃。

超高熱に耐えきれるずに溶けてしまった――。

 

「くっ……」

 

地上に着陸したメカザウルス達はすぐさま近くのBEETへ猛攻を仕掛ける。

ラドラの命令に反映してか、二体一組になり連携を取るなど戦術面を利かせており、そして至近距離でドロドロのマグマを口から直接浴びせる機体もあれば、その特殊金属の鋭い爪や牙で原始的に引き裂き、噛み砕く機体と様々。

 

一方、BEETも右腰部のナイフホルダーから、プラズマエネルギーの刃を発振する大型エネルギーナイフ『プラズマ・ソリッドナイフ』に持ち替えて応戦するがプラズマエネルギーの出力が弱く、まともにメカザウルスの頑丈の装甲の前にはかすり傷ぐらいがやっとである。

次々に撃破されていくBEET。

なんとか生き残る黒田だが次々に命を散らす自分の部下達の前に彼は、

 

「すまん……だが安心しろ、どうやらオレもすぐに後を追うことになるようだ……っ」

 

覚悟を決めて、二本のプラズマ・ソリッドナイフを二刀流し、前方で暴れまわる二足歩行型メカザウルスへ突撃していく――。

 

「一機でも多く倒す、それがオレが死んでいった部下達にできる精一杯の手向けだ!」

 

メカザウルスも彼の機体に気づき、雄叫びを上げて両者は交戦開始。

彼の卓越した操縦技術に連動して、とても従来のBEETの動きとは思えない俊敏な反応を見せる。メカザウルスの振り回す爪を軽くいなして、大きく空振りしたその隙に、左片方の眼部にナイフを全力で突き刺す。

 

汚い悲鳴を上げるメカザウルスに、BEETの後ろ腰に装備した丸く黒い鉄球のようなモノ『対メカザウルス用グレネード』を取り出して、メカザウルスの大きく開けた口の中に強引に押し込んだ。

安全ピンを瞬時に抜き取り、素早く離れた時、そのメカザウルスは数秒後に頭部が粉々に粉砕されてマグマが噴水のように吹き出した。

 

「四機目撃破、次は……なっ!」

 

振り向くとなんと別のメカザウルスが待ち構えており、頭部を噛みもぎ取られてしまった。

コックピットが胸部にあったのが幸いだが、頭部は操縦制御系回路を詰め込んだ場所であったためにその場で身動きすらとれずそのまま倒れ込んでしまった……。

それをチャンス言わんばかりか、メカザウルスは口を大きく開けてBEETに向ける。

黒田もモニターから見るメカザウルスの口腔に見えるは円い穴、マグマ砲が黒煙を上げて今にも発射されようとしていた。

 

「くそ……っ」

 

このまま機体ごとマグマを浴びて、火焔地獄の味わった末に死ぬ想像をする彼だった――が。

 

「なっ!」

 

突然、メカザウルスが横に蹴り飛ばされて、叩きつけられるようにゴロゴロ転がった。

 

“だ、大丈夫ですか!”

 

そこにいたのはなんと竜斗の駆る空戦型ゲッターロボだった。

 

「これが早乙女一佐の開発したSMB、ゲッターロボか……っ」

目の前に立つ銀色の装甲に覆われたゲッターロボは無骨な格好だが、彼からはまさに救世主のように見えた。

通信モニターが入ると操縦座席にすわる竜斗の姿が映る。

 

“ケガは……ありませんか?”

 

「大丈夫だ。それよりも周辺のメカザウルス達を!」

 

 

ゲッターロボはライフルをメカザウルス達に向けて、次々と水平射撃を行う。

出力を強化されて、貫通力を備わったプラズマ弾が次々にメカザウルスを撃ち抜いていき、撃破していく。

しかしゲッターの背後を狙ったメカザウルスが突撃してくる。しかし、竜斗は気づいていたのか振り向き、左腰のゲッタートマホークを取り出して横一線に振り込み、真っ二つにした。

「まだゲッターエネルギーとプラズマエネルギーの残量は大丈夫だ。

装甲のおかげで各部位の損傷はなし、と。

これならまだライフルだけでいける――けど動きが鈍い感じが……仕方ないか、こんな重装備してるもんな――」

 

前の戦闘と違い随分と落ち着いている竜斗は流石である。

 

“……とりあえずあなたを避難させます。ゲッターロボに乗り移れますか?”

 

BEETのコックピットにゲッターロボの手を近づけ、ハッチを開ける竜斗と黒田。

黒田はすぐに手の上に飛び乗るとゲッターロボのコックピット前に移動し、乗り移りすぐに後部へ移動した。

 

「本当にすまない。君、名前と所属、階級は……」

――と黒田から聞かれるが、

 

「所属と、階級ですか……実は僕、まだそうゆうのはありません……」

 

「え……じゃあ君は一体誰なんだ?」

 

「僕は……石川竜斗です。元高校生なんですが、色んなことがあって早乙女司令からゲッターロボのパイロットに任命されたんです……」

 

非常識な事実を知ったあまりに、そしてそんなことをしている早乙女に対して呆れ返る黒田。

 

「あ、けどもう少しで僕も階級がつくらしいので心配しないでください……」

 

そんな問題じゃないだろう――と黒田はそう感じる。

 

“竜斗、こちらも今非常に危険な状況だ。ちいと海側に移動したがすぐに戻ってこい”

 

早乙女から通信が入ると、黒田は慌てて彼に問いかける。

 

「一佐!」

 

“お、黒田か。どうやら竜斗に助けられたようだな”

 

「どういうことですか、自衛官でもない高校生をSMBに乗せるなんて!」

 

“マリアとほぼ同じことを言ってるな。その理由は、この危機的状況を乗り越えたらいくらでも言う。その前に死んでしまっては理由もクソもないだろ”

 

「…………」

 

相変わらずのマイペースぷりを発揮する早乙女である。

 

「早乙女司令、とりあえず今は残りの地上にいるメカザウルスを殲滅してからベルクラスの援護に移ります、よろしいですか?」

 

“ああっ、迅速にな。こちらのシールドも持ちそうにない――”

 

ゲッターは残りわずかになったメカザウルスに向かって、ゲッタートマホークを掲げて走りこんでいく――。

 




ちなみにメカエイビスとは恐竜帝国版モ〇ルアーマーのようなものだと思ってください。

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