ゲッターロボ―A EoD―   作:はならむ

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第三十六話「二人」⑤

そしてルネ、アレンも先発隊と合流してすぐさま左右に展開する。

 

「これよりメカザウルスの掃討を開始する」

 

アレンの乗るこの極細のシルエットのSMB『アーサー』は、ステルヴァー以上に空力制御に優れた機体。

その一発でも攻撃がかするだけで大破しそうな薄い装甲である分、高機動性を有している。

両手のマニュピレータが変形し、細長い剣状になり、青白いプラズマエネルギーが刃に沿うように発振。

両手のそれは空戦型ゲッターロボのプラズマソードそのものである。

 

目の前でマグマを吐き出している翼竜メカザウルスに狙いを付けて、背部のスラスターをフルスロットルで一気に突撃。

 

「!?」

 

そのメカザウルスが気づいた時には既に首が胴体と離れており、その横で右腕を振り切るアーサーの姿が。

機能停止したメカザウルスはそのまま遥か下の地上へ墜落していくのを確認すると、アーサーは超高速で動き回り、次々と周辺のメカザウルスの首を刈りきっていく。

ついには残像すら発生しているほどでメカザウルス達はこの機体の速さについていけない。

そのアーサーのパイロットであるアレンはいつも通り平然と、そして冷静としており機体の高機動に対して全く参っていない。

 

メカザウルス達がアーサーに一撃入れようと束になって四方八方から襲いかかるもアポジモーターを駆使して変則的且つ高速で飛び、包囲網から脱出。すぐさま後ろに回り込んで同じく両手の高出力のプラズマエネルギーの刃で切り落としていった。

どうやらこの機体、アーサーはプラズマエネルギーの刃以外の兵器、飛び道具の類は一切持たない近接戦闘特化の機体のようだ。

 

「アレンに負けてられないわね!」

 

一方、ルネも乗るこの白鳥のような戦闘機も同じくこの大空を美しく飛翔し、機関砲やプラズマ弾を発射して攻撃している。

 

数機のメカザウルスが大口を開け、醜い雄叫びと鋭い牙を向けてルネの機体に突撃してくるが軽やかに上昇して回避した。

 

「このジャンヌ・ダルクを見くびらないでよ!」

 

すると白鳥の姿だったこの機体に変化が。ステルヴァーのようにその場で主翼と後部が人間の腕、足、そして機首が兜を被る女性型の頭部へと変形を遂げた。

その姿はまるで純白の甲冑を着込んだ「戦乙女」のようだ。

左腕がまるで洋弓、いわゆるアーチェリーのような形に変形すると前腕部内から細い金属矢が三本飛び出して弓にかけた瞬間、矢にプラズマエネルギーを纏い青白い光の矢と化した。

 

そのまま落下しながら下のメカザウルス達に照準をかけて三本の光の矢を同時に放った。

一瞬でメカザウルス達に深く突き刺さり、纏うプラズマエネルギーがメカザウルスの内部で暴発して大爆発し、肉片と装甲の残骸は地上へ落ちていく。

 

白鳥の姿と違い浮遊できず落下する『ジャンヌ・ダルク』は再び白鳥型の戦闘機に変形して空を美しく羽ばたいていく――。

「ほう、素晴らしいギミックを持つSMB達だな。これからまたゲッターロボを作る時の参考にしよう」

 

二機のSMBの戦う姿に早乙女はすっかり見とれて夢中になっている。

 

「……司令、今はそれよりも現状を何とかしませんか?」

 

「あ、ああっ、すまない」

 

マリアに呆れられる早乙女は首を横振り我に帰る――。

 

――高度六千メートルの空域において、ルート通りに進行する護衛のメカザウルスと母艦、そしてそれを食い止めようとする地上人類軍のSMBによる激しい攻防戦が繰り広げられていた。

ベルクラスの甲板上でアズレイは、再びエリダヌスX―01のエネルギーチャージが完了し、標準をちょうど横切る恐竜母艦一隻に狙いをつける愛美。

 

「あれを撃ち落とせばいいのねっ」

 

ブレないように銃のストックを右肩に押しつけて両手で銃身をがっちり固定、トリガーを引いた時、一瞬で母艦の装甲に大穴が開き、次第に内部から小さい規模の爆発が起きている。

しかし愛美はこれで終わりとせずにエリダヌスX―01以外の内蔵火器で休まず追撃。

ミサイル、プラズマ弾、ゲッタービームを無防備に集中放火を浴びた母艦は地上へ落下しながら爆発し、装甲や内部の物を空中にばらまいていき、下の雲の中に入って隠れて直ぐに爆発し強烈な閃光が放れた。

 

「やったわっ」

 

これを良しと感じた愛美は、再びエリダヌスX―01のエネルギーチャージを始める。

しかしメカザウルス達もの強力な兵器の存在に気づき、破壊しようと束になってアズレイへ急接近する。

 

「いやあっ、キモイからこないで!」

 

逃げたいけど逃げれず、嫌いな爬虫類の大群を目の当たりにした彼女の悲鳴が聞こえる。

だがその時、四方からプラズマ弾やミサイルなどの弾頭がメカザウルスに降り注ぎ一瞬で撃墜された。

周りにはブラック・インパルス隊員のステルヴァーと中破したジェイド機がライフルを構えて飛び回っていた。

 

“マナミ君は各母艦の破壊に専念してくれ!危なくなったらすぐに私達が援護に入るから安心しろ”

 

「サンキュー、ジェイドさんとみんな!」

彼女もエネルギーチャージ中に使える火器を駆使し、接近するメカザウルスを次々に撃ち落としていく。

ステルヴァー各機は状況に分けて人型、戦闘機型に変形して戦う。ジェイド機も変形ができなくなり戦闘力がガタ落ちしているがそれでも自分の腕で補い、何とか戦い抜いている。

 

「なかなか当たらない……っ」

 

隣の甲板上にいるルイナスは必死でメカザウルスに狙いをつけるが照準が幾度もブレて、命中精度が安定せず、エミリアは痺れを切らしている。

目まぐるしい数のメカザウルスがルイナスに何度も襲いかかり、各シーカーが何とか手助けしているものの、エネルギー残量もあるので全く追いついておらず。

間近に迫ったメカザウルスの一対一ならドリルで撃破できるのだが、中には頭のいい奴がいて間合いを取り動き回りながらそこからマグマ弾、ミサイルで攻撃してくるのもいる。

足が固定されて避けることができないルイナスは被弾ばかりし、シールドがあるので今はまだ無事だがこのままではいつエネルギーが切れて完全な無防備になってもおかしくない。

 

「このまま攻撃を当たれば……ここから動きたいけど……」

 

彼女はもし固定が外れ動けるようになればどれだけ楽かと思うが、同時にここは地上ではなく数千メートル上空という、ルイナスにとっては逃げ場のない状況である――。

 

“司令、攻撃が全く当たりません!どうすれば?”

困ったエミリアは救いを求めて早乙女に通信を取る。

 

「司令、やはりアルヴァインやアズレイのように精密な照準装置を取り付けてないルイナスでは厳しいのでは?」

 

すると早乙女はマリアにこう質問する。

 

「前に計ったエミリアの動体視力は?」

 

「ええっと、確か両眼とも問題ありません」

 

「よし」と相づちを打ち、すぐにエミリアに通信を取る。

 

「エミリア、ルイナスは元々射撃するために開発されてもなければ、君もそういうのに慣れてないし、それに状況が状況だから命中が困難になるのは分かる。

だが、それでもここでコツを掴めば多少は当たりやすくなるはずだ」

“どうすれば?”

 

「前の戦術講座で『偏差射撃』というのを教えたはずだ――」

 

“……確か、動く目標物に対して発射した弾丸が辿り着くまでの差異を計算して行う射撃のことですよね”

 

「そうだ。だが今のこんな状況で、今まで接近戦主体で来た君にいきなりやれと言っても出来るわけがない。

だからいいコツを教えてやる、その一つに『誘導』だ」

 

“誘導……とは?”

 

「シーカーや内蔵火器を利用して敵をまんまと照準に入らせるよう誘うことだ。

例えばプラズマ弾を数発牽制で撃ち、自動的に照準が入る位置におびき寄せたりとかな。

他にはシーカーで相手を包囲して動けなくさせたり、ドリル部分のアンカーを発射して当たればなおよし、当たらなくても相手が回避して移動する位置を先回りして照準をつける……など、いくらでもやり方がある」

 

“…………”

 

「先ほど私が言った、『臨機応変に対応できるように頭を柔軟にしろ』と言ったのも、そういうアイディアを思い浮かばせるのに必要なことだからだ。

……まあ、今はたくさん言ってる暇はないが、とりあえず私から言えるアドバイスはこれだけだ。

あとは君のセンスに託すぞ」

 

“分かりました、やってみます”

 

「君なら出来ると信じている。頑張れよっ」

 

 

通信を終わり、プツンと切れるとエミリアは彼のアドバイスを何度も頭の中で再生して染み込ませようとした。

 

(そうだ、アタシだってここまでちゃんとこれたんだから出来るハズだ――)

そう自分に言い聞かせて自信を持たせようとする――。

 

ルイナスはガーランドGを前方にこちらを向き、動きまわっているメカザウルスへ向けてプラズマキャノンを展開。

三、四発わざと外れるように照準をずらして撃ち込む。

 

するとそのメカザウルスは牽制にたじろぎ、その場で停止した。

 

(もしかして今――かな?)

 

エミリアは止まっているメカザウルスに今度は照準を合わせて間を開けずにプラズマ弾を発射すると、メカザウルスは目の前に向かってくる青白い光弾に驚き、瞬く間に直撃を受けて貫通。胴体のど真ん中に大穴が開きその場で爆散して肉塊と化した。

 

「や、やったわっ!」

 

まともに命中したことに歓喜するエミリア。

自信のつき、気を良くした彼女は色々と方法を模索する。

 

同じくガーランドGに内蔵した小型ミサイルの束をメカザウルスの群れに前方に撃ち込み、分散させる。

逃げ回る一気のメカザウルスの方向を先回りしてそこに照準を固定し、入りかけたメカザウルスへプラズマ弾を撃ち込むと見事に命中して撃墜した

 

「コツを掴めば面白いねコレ!」

 

さらに自信をつけた彼女は色々考えて自分なりのやり方を試みる。

早乙女のアドバイスの通り、アンカーを射出したり各シーカーを囮として利用して誘導したり――そういった中で彼女の命中率は最初と比べてほとんど当たるようになるまでに至っていた。

「やはり、やればできる子だな。よしよし――」

 

艦橋で早乙女はまるで父親のような優しい笑みを浮かべて納得している。

 

しかしそんな中、ルイナスを放っておくまいと大量のメカザウルス達が群れを組み成しルイナスへ狙いをつけて雪崩のように一気に押し寄せてくる。

 

「ひいっ!」

 

流石のエミリアもこれには恐怖を感じて強ばり動きが止まってしまう。

しかし接触する一歩手前の所でメカザウルス達の首が全て胴体から離れてそのまま力無くして地上へ落下していく。

 

またその後ろについてきたメカザウルスの群れにミサイルなどの弾頭が降り注ぎ次々に破壊されていく。

“大丈夫かい、ゲッターチームの女の子”

 

エミリアはモニターで周りを見るとアレンのアーサー、ルネのジャンヌ・ダルク、そしてマウラーとステルヴァーの姿が見える。通信を受信するとモニターにはパイロットスーツとヘルメットをつけているルネとアレンの姿が映る。

 

「あなた方は……どうもありがとうございます」

 

“油断するな。まだまだ来るぞ”

 

そして割り込むようにもう一つの通信を受信し、モニターに映すとジョージの姿があり彼女は大いに喜んだ。

 

“大丈夫かエミリア君?”

 

「少佐!」

 

“今から私達は君とベルクラスの援護に回る、一緒に頑張ろう”

 

それを聞き、彼女は一瞬の安堵感に浸った。

 

「リュウトは今どうしてますか?」

 

“今はとある強力なメカザウルス一機と激しい空中戦を繰り広げてる。

最初はジェイド、私とジョナサンがそいと戦っていたのだがステルヴァーで持ってしても太刀打ちできなかった。

しかし彼の乗るゲッターロボはそんなメカザウルスとほぼ対等で渡り合っている、やはり彼はすばらしいよ”

 

ジョージ達でも敵わなかったそのメカザウルスが一体どんなヤツなのか興味を抱く彼女。

 

「どういう相手ですか?」

 

“今、そのメカザウルスの映像を送る”

ステルヴァーからデータを受信し、開くとモニターに映るは前に見たことのあるメカザウルスであるのはすぐに彼女は分かる。

「もしかして……前に日本でアタシ達三人でやっとの思いで撃退したメカザウルスじゃないかしらっ」

 

彼女の読みは当たっていた――だが、この映像のメカザウルスはその機体をさらに強化した『リューンシヴ』であることは彼女は分かるハズがなかった。

 

“知っているのか?”

 

「はい。日本にいる時に対峙したメカザウルスで、その頃の私達では三人がかりで挑んでやっと撃退したほどでした――」

 

“……確かにあのメカザウルスの性能は今までのと違い、桁違いだ。

それに恐竜らしく凶暴で野蛮な行動とは反対に我々人間の乗るSMB同様に理知的な雰囲気と行動、そして他にも色々似ている点があるな……”

 

するとエミリアは突然ハッとなる。

 

「もしかしたら……」

 

“どうした?”

 

「あのメカザウルスに乗っているパイロットは誰なのかリュウトは知っているかもしれません――」

 

――と、エミリアはそう答えた。

 


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