~男女あべこべな艦これに提督が着任しました~   作:イソン

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やっと着任式が終わった・・・・・・。

複数の人物を一つにまとめて書くのってとても難しい。

だけどとても勉強になります。


そういえば・・・・・・。


一週間に二、三更新と言ったな。あれは嘘だ。


第五話 あべこべ艦これ~着任式、そして~

 「さて、そろそろかな。長門くんの着任式は」

 

部屋の壁にかけられた時計を見て、彼女はふとつぶやいた。漆塗りの執務机には山積みになった書類がおかれ、今しがたまで彼女が執務をこなしていたことがわかる。

 

彼女は軍に就役していた。この世界はでさほど珍しくはない女性の軍人として。やはり軍でも男という存在は少ないため、女性がその大半を占めている。

 

彼女自身、まだ物心つき始めたころ、男性の数自体そこまで少なくはなかった。といっても、男性保護法はできており見る機会自体少なかったため、今とそれほど変わらないのかもしれないが。

 しかし、彼女はほかの女性とは違う。それは、

 

 「失礼するよ。夕食できあがったから、一緒に食べよう?ミツ」

 

 「あぁ、そうしようか。コマ」

 

 コンコンと、扉をノックして入ってきた男性に夕食の時間かとミツと呼ばれた女性――米内は腰を上げた。

 コマと呼ばれた男性はそれを見て苦笑いする。

 

 「根を詰めすぎなんじゃないかい?せっかく今日は非番なんだ。少しぐらい休んだって罰はあたらんでしょう」

 

 「そういうわけにはいかないさ。世界は動いている、こうしている間にも。私は不器用だからねこれ以外の生き方を知らない」

 

 「知ってるよ、まったく……」

 

 食べなと、コマはお盆に載せていた丼を机に置いた。彼女はどうせこのまますぐに仕事に取り掛かるのだろう、であればわざわざこのまま持っている理由もない。

 

 米内は苦労をかけるねと言いながらコマが持ってきた丼の蓋をあけた。直後、甘さと醤油の風味がきいた香りが立ち上り閉ざされていた器から一気に湯気が立ち上る。

 大好物の親子丼だ。

 

 「あぁ、これこれ。やっぱりコマの作る料理が一番だね。はぐっ」

 

 その言葉に嬉しさを覚えながらも、はしたないよとコマは窘めた。しかし、言っても聞かないのは毎度のことであるためさほど期待してはいないが。

 

 「あぁ、でも。長門くんの作る料理もなかなかだったな。機会があればまた食べてみたいものだ」

 

 「そうだね。だけど、よかったのかい?せっかくの男の子をあんな女性だけの鎮守府に送りこんでしまって。私も経験があるから言うけど、艦娘達も女性だよ」

 

 「大丈夫だよ、問題ないさ。彼ならやってくれると信じている……それに」

 

 「それに?」

 

 箸を置く。そして偶然拾った貴重な男である長門を思い浮かべ、こういった。

 

 

 

 

 「その方が楽しそうじゃないか」

 

 そう言って人妻は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女三人寄れば姦しいという言葉がある。その他にも女三人寄ると富士の山でも言い崩す、女三人寄れば市をなす、女三人寄れば囲炉裏の灰飛ぶ、女三人寄れば着物の噂する等々。

 

色々な表現があるが一様して言えるのは『やかましい』ということだ。

 

目の前の光景も、この言葉がぴったりと当てはまるだろう。

 

 

「お、男ネー!提督ぅー、私金剛って言いマース!」

 

「は、初めまして提督!私は金剛お姉さまの妹分、比叡です!」

 

「わ、私は霧島と申します」

 

「は、榛名です!頑張ります!」

 

最初に食堂に入って目に飛び込んできたのは入り口近くの机にそれは座れないだろというぐらいのレベルでぎゅうぎゅうに詰まれた艦娘達が長門を凝視している姿だった。

 

そして一瞬の沈黙、その後は先に述べたとおりだ。

 

「宜しくクマー!クマは球磨だクマー、ほんとに男の人とはたまげたクマ!」

 

「多摩っていう……にゃ。なんだろう、提督さん……お膝丸くなりたい……」

 

「木曾だ。新しい提督が男とは驚いたが、これから宜しく頼む」

 

「き、木曾が喋れてるクマ!事件クマ……ん?」

 

「あ、あぁ、やめろよ姉さん!ボイスレコーダーを勝手にとるなよ!」

 

最初の金剛姉妹が火付けとなったのか、一斉に我よ我よと長門の元に艦娘達が迫りよる。

それまるで蟻のように。一部、狼が混じっているが。

 

「ふむ、あなたが提督か。私は那智、そして姉妹の――」

 

「お、おほほほほほほ!私めは足柄と申します。どど、どうぞ、提督。これから宜しくお願いしますわ。何かわからないことがありましたら私めに言っていただけたら手取り足取り教えてさしあげ」

 

「カツ丼がなにいってるのやら」

 

「ちょっと那智ぃぃ!?あ、いや、違うんですの!これはですね!」

 

その他にも駆逐艦、軽巡、重巡など様々な艦娘達が我先にと長門へ挨拶をする。

 

みなどれもが鼻息荒く、目を爛々と輝かせながら。

 

しかし、これ以上入り口で止まっているわけにはいかないだろう、叢雲に目を向けると顔を赤くしながらもこちらの意図に気付いたのか長門の腕を取って歩き始めた。

 周りから叢雲に向かってただならぬ視線を感じ取った気がするが。

 

「こ、ここがお立ち台よ。着任式の挨拶、お願いするわ」

 

そう言って、叢雲は台から降りる。長門はありがとうと一言お礼を言うと、叢雲の頭にある艤装が真っ赤になった。

 それを見ていた他の艦娘達が冷やかしに入るのを見て、さっさと始めた方がいいかと察した長門は一つ咳を置いた後、話し始めた。

 

「あー、諸君。どうやらいくつか伝達の不備があった様で戸惑っている者もいると思うだろう」

 

 一区切り置く。全ての艦娘達がこちらに眼を向け、少しの動きも見逃さないようにしている。それを見た長門は、どうやら自身の挨拶に集中してくれているのだろうと見当違いの考えを頭に思い浮かべた。

 

「私の名は長門。今のでわかるものもいるだろう、戦艦長門と同じ名をいただいた者だ。これから、君たちと共に深海棲艦を倒すため、君たちの提督としてここ、呉鎮守府に着任することとなった。見ての通り私は男だ。君たちの中でも男という存在を見たものはあまりいないだろう、そう聞いている。しかしだ、男だからといって別に気にする必要はない。これから共に生きていくんだ。堅苦しいのは性に合わなくてね、普段通りに接してほしい。最後になるが、未だ未熟者の私ではあるがこれから宜しく頼む」

 

 以上だ、と付け加え長門はマイクのスイッチを切った。

 

 瞬間、歓声が響き渡る。

 

 あるものは涙を流すもの。

 

 あるものはこれから起こるかもしれない提督との生活を思い浮かべ、恍惚とした表情を浮かべるもの。

 

 あるものは下半身を押さえてうずくまるもの。

 

 極め付けには気絶するものまで現れるぐらいだった。

 

 それもそうだろう、今まで紙の中でしか見る事が出来なかった存在が目の前にいるのだ。

 これが感動せずにいられようかと、彼女たちの心は今一つになっていた。前提督が今までなしえる事が出来なかった艦娘達の心を一つにすることが、長門という存在に会えただけで。

 

 そして、それを見た長門は彼女たちと全く別の考えを頭に思い浮かべていた。それは初めて眼を覚ました時、看護師に襲われそうになった時の感覚と酷似している。

 これは危ない、何か得体のしれないものが長門の身体を這っているような――。

 

 (あれ、これもしかしなくても貞操の危機じゃね?)

 

 

 長門はようやく自分が置かれている立場が把握できた。しかし、夜はまだ長い……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、夜は長い。着任式が長門の思っていたものより簡単に終わり、すぐさま宴会となっても。

 

(解せぬ、着任式の定義がゲシュタルト崩壊するぞ……。挨拶一回で終わったじゃねえかどうするんだこれ。なんかもう宴会の雰囲気になっているし)

 

「それでは、新しい提督の着任を祝って乾杯をしたいと思います。不肖ながら、挨拶は私大淀が務めさせていただきます。それでは皆様、乾杯!」

 

広がる乾杯の音頭、そして歓声と共に始まる宴。それを宴会の中心にいる長門は適当に相槌を打ちつつ、心あらずといった感じでいた。

 

(今ならわかる……。米さんめ、本当は面白いとかふざけた理由でここに配属したな……)

 

 長門は男だ。それは何が起きても変化することはなく、というか変化してほしいものではない。だが、今ばかりは女でもよかったかなと思っている。

 

 ちらり、と。笑顔を浮かべながら食事を取っている艦娘達を見る。それに気づいた者が幾ばくかいたのか。こちらを見てお辞儀をする、それにこたえるような形で長門も軽くお辞儀をすると唾を飲み込んだ。

 

 (なんでこんなに肌の露出が多いんだよ……!せめて少しは恥じらいをだな……!)

 

 価値観の違いだろう、米内より話を聞いていたためいくらかは頭の片隅に入れてはいたが、ここまでひどいと感じたのはここが初めてである。

 駆逐艦や軽巡あたりはまだいい。見た目的にも長門が釘付けになるほど露出しているものは多くない。だがしかしだ。

 長門は声を上げて言いたい。空母、戦艦辺りの服装はどうなっているのだと。

 

ちらりと。長門はもう一度空母たちが座っている席を見た。そこは他の艦娘達とは違い、机の上に山となった量の料理が並べられている。それを瞬く間に食べ、おかわりまでしているのだから彼女たちの燃費の悪さが見て取れる。

 いや、そうじゃない。見てほしいのは彼女たちの服装だ。

 

正規空母である加賀や赤城など、に関しては問題ない。どちらかといえば白い袴を身にまとい、艶やかな黒髪を長くのばし日本人特有の小顔は大和撫子のように清楚な姿だ。

 しかし、雲龍型の服装はいただけない。

 大きく開いた胸元にはちきれんばかりの双丘。それだけならまだいいだろう、しかし彼女たちはスカートも短ければお腹など丸見えでしまいには上肢と下肢の境目が見えるんではなかろうかというありさまだ。そしてその服装を気にせず、動いたりするのだ。

 

そして、戦艦達もなかなかの曲者揃いだと交互に長門のグラスにお酒を注ぎこもうとする艦娘達をいなしながら見る。

 

先ほどあった扶桑姉妹たちは割愛しよう。どうやら心ここにあらずといった形でいるし。

 

問題なのは大和型の二人だ。

 

他の戦艦達も異様にスカートの丈が短い気がするが、この二人はそれを凌駕している。

 

まずは大和、海軍のセーラー服を改造したかのような彼女の服は丈が短いのはもちろん、その豊満な胸部を主張するかのように身体のラインに合わせた服を着ている。

歩くたびに胸が揺れ、少し風が吹けば見えてしまいそうな服だ。

 着任式の際に挨拶に来た時も走ってこちらへ来た時は一瞬胸を凝視してしまった。

 

 一生の不覚である。

 

そして、

 

(こいつだよ問題は……!)

 

大和型の中でも一番危険な雰囲気を醸し出している武蔵。先ほどからこちらをちらちらとみているのが覗え、危険だと感じた長門はなるべくその視線に気づかないようにしていた。

 

はっきり言ってしまおう。彼女はスカートしかはいていないに等しいのだ。

 

なにいってんだこいつはと叩かれても仕方がないのかもしれない。長門自身、こんな服装みたことないのだから。

 いや、これは服と呼べるのだろうか。布と呼ばれるものはスカートと首元の部分のみ。本来なら胸の部分を隠すであろう布はひらひらと揺れており、服としての原型をとどめていない。そして、二つの双丘は細長い布を巻いているだけ。

 

 (俺は見てない……。俺は見てない……)

 

心頭滅却。火もまた涼しだ。煩悩があるからだろう、このような事を考えているのは。

 そう考えた長門は気持ちを切り替えようと隣にいる叢雲に話しかけた。どうやら、彼女たちの中で話し合いがあったのか、それとも秘書官だからか。少しいざこざはあったものの、長門の隣には叢雲が座っていた。お酒も入り少しご満悦なのか微かに頬を染めている。

 

 「そういえば叢雲。この食堂にいるのは全員なのかな?」

 

 「むぐっ。ち、違うわよ。この鎮守府ではローテーションを組んでるの、朝昼夜に分けて新しい海域の攻略、攻略済み海域の巡回等をやってるわ。今日は確か……川内型と長門型、軽空母組、古鷹型と高雄型の人たちがでているはずよ。それがどうかしたかしら?」

 

 「いや、着任式で会えなかったからね。挨拶をと思ったんだが、そうか。ならば次回に回すとしよう」

 

 「それはいいのだけれどあなた、せっかっくの宴会なんだから楽しみなさいよ。辛気臭い顔して……せ、せっかくの、良い顔が台無しなんだから!」

 

 頬を染めながら、叢雲は決まったと内心思った。相手の心配をしつつ、容姿を褒める隙のない2段構え、これであれば男といえど叢雲に対し好印象を持つはず――

 

 しかし、彼女は気づいていない。実は自分が発した言葉が最後の方になると消え入りそうになっていて聞こえなかったなど。

 頭の中では理解しつつも身体が言うことを聞かない、彼女はまだ幼い少女なのだ。

 

 「そうだな、せっかく私のために開いてくれたんだ。楽しまなきゃ――」

 

 「ヘーイ、提督ぅー!叢雲だけじゃなくて私ともおしゃべりしてくださいデース!」

 

 突然だった。グラスを持っていない腕の方にとてもやわらかい何かが押しつけられたと感じた瞬間、長門のすぐ横に金剛が顔を赤くしながら寄り添っていた。

 近くで感じる吐息に、酔っているなと長門は苦笑いする。

 

 「アー、提督って腕がたくましいんですネー……。うふふぅ、すごいデース」

 

 かなり酔っているのだろう、先ほどの戸惑いはどこへやら。猫のように爪を立て、絶対に離さんとばかりにしっかりと腕をホールドした。

 

 痛い、とてつもなく痛い。艦娘の握力がやばい。比喩ではなくみぢみぢと腕が絡めとられている。

 

 「絶対に離さないデース・・・・・・」

 「ちょっと、何してるのよ!提督から離れなさい!」

 「そうだクマ!そこはクマの所だクマー!」

 

 「ちょっ、まっ、あだだだだだ!!」

 

 金剛の行為を見たのだろう、隣にいた叢雲と虎視眈々と長門と話す機会を伺っていた球磨が我先にと逆側の腕と背中にのしかかる。

 

 「いや、ちがう!そうじゃないだろっ、あだだだだだ!!」

 

 そこは金剛を引き剥がすところだろうが!と長門は悪態をつく。このままではいけない、物理的に腕がもげる可能性もそうだが、美少女達3人に囲まれた状態は男である長門にとって貞操の危機である。

 

 「提督ぅー・・・・・・」 

 「離れなさいよぉ・・・・・・」

 「グマー」

 

 とその時、長門に助け舟を出したのは意外な人物だった。

 

 「だめですよ皆さん、提督は本部からわざわざこちらまで来てくれてるんです。そこで離さないと・・・・・・あれ、今後は仕入れませんよ?」

 

 そう言った瞬間、長門にしがみついていた三人が一瞬で元の席へと戻った。電光石火とはこのことか、と長門は痛む両腕をさすりながら助け舟を出してくれた少女を見る。

 それは日本ではかなり珍しい撫子色の髪だった。白衣をセーラー風にアレンジしたのか、ところどころ水色の模様が見て取れ、スカートは行灯袴をメインにアレンジしているのか、こちらもセーラー風だ。頭には白い鉢巻きを巻いており、そこはかとなく人当たりのいい雰囲気を醸し出している。

 

 「ありがとう、助かったよ。えぇと、君は?」

 

 その言葉に少女はしまった、と苦笑いした。

 

 「申し遅れました。私は明石と言います。提督、これからよろしくお願い致しますね」

 

 「ほぅ、君があの・・・・・」

 

 明石、それ史実において連合艦隊唯一の工作艦だったはずだ。

 生まれは佐世保、中でも最も大きな艦で米国海軍の工作艦を越えるために作られたといわれている。

 工作艦とはクレーン・溶接機・各種工作機械などを装備し、艦船の補修・整備を行うための艦であり、いわば「移動工廠」といっても差し支えない性能を誇る艦だ。

 もう一隻、明石の他にも工作艦はいたはずだが歴史として名高いのは明石だろう。

 

 しかし、艦娘というのはなんて不思議なのだろうか、と長門は思う。日本で生まれたはずなのに髪が撫子色とは。案外、その米国の海外艦とやらから来ているのかもしれない。

 

 「艦の修理だけではなく、鎮守府の電気系統や艦娘のケア、提督がご要望とあればどんなものでもそろえて見せます!なーんて、まぁ主にここの雑用係といったところです」

 

 「いや、そんなことはない。君のような存在がいるおかげで、成り立っているものがあるさ。そういうのは誇っていいと思うよ」

 

 その言葉に明石は頬を染める。

 

 「あ、あははは。そう言っていただけるとありがたい限りです。・・・・・・それで提督、お時間は大丈夫ですか?提督のために開いた宴会とはいえ、明日から執務があるのでは」

 

 「ん、あぁ。もうそんな時間なのか」

 

 明石の言葉にふと腕時計を見てみると、おおよそ22時ごろだろうか。確かに、考え事をしていたせいで

時間が過ぎるのを忘れていたらしい。

 長門は辺りを見回した。いつのまにやら、最初の数と比べだいぶ少なくなっている。どうやら駆逐艦達や軽巡の子らは戻ったのだろう。もう少しいろいろ回っておけばよかったかと少し後悔する。

 

 「他の方々はほとんどが明日非番ですからね。提督もこのまま付き合っていると朝までなってしまいますよ」

 

 「ははは、それは怖い。・・・・・・そうだな、そろそろ私はここでお暇させてもらおうか」

 

 「それじゃあ、私が提督の部屋までご案内致します。叢雲は・・・・・・どうやら無理そうですし」

 

 そう言って明石は後ろのほうで金剛、球磨と喧嘩をしている叢雲を見た。どうやら、あの後口喧嘩が始まっていたらしい。とめようかと長門は思ったが、どうやらそれを肴に他の艦娘達が酒を楽しんでいるのを見てまぁいいかと呟いた。

 

 「それではお願いしようかな、明石」

 

 「えぇ、お任せください。提督」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明石につれられ部屋へと向かう間、長門は思う。

 

 どうしてこの世界に来たのだろうかと。長門自身、大して有名な人物でもなければ何かが秀でているわけでもないのだから。

 

 (世界の針は止まっている・・・・・・)

 

 この世界は深海棲艦が現れたときからその歩みを止めている。それは進化していく人類としてひとつの壁であり、乗り越えなければならない存在。

 だからこそ、艦娘達が現れたのだろうか。進化を促すひとつの存在、その末端として。

 

 海はとてつもなく広大だ。それこそ、人類が今までの時を費やしても全てを把握できないぐらい。

 だが、一つだけ言えることがある。

 

 「世界の針は止まっている・・・・・・」

 

 「提督、ここが提督の部屋で・・・・・・何かおっしゃられましたか?」

 

 「ん、あ、あぁ、なんでもない。わざわざすまないな明石」

 

 「いえいえ、提督のお役に立てるのならお安いものですよ。また何かありましたらお呼びください。いつでも駆けつけますので!」

 

 「ふふ、そうだな。そのときは頼むよ」

 

 扉を閉める。しっかりと鍵をしめ、長門は上着を脱ぎ捨てそのまま布団へ倒れこんだ。

 

 そう、一つだけ言えることがある。

 

 

 

 

 

 世界の針は止まっている。

 

 

 

 ならば、針が止まっているのなら直せばいい。それがどれだけ時間がかかるのかはわからないが、人類には直そうとする力を持っているのだから。

 

 だから、もう少しここで頑張ってみよう。長門は腕を上げた。鍛えられあげたわけでもない、そこらへんの兵士とさほど変わらない普通の腕。だけれど、今この腕に世界の針を動かすための力がある。振るわなくてなにが男だ、男ならば一生に一度は大きい事をやってみるしかない。

 

 

 「だから、頑張るよ。長門・・・・・・」

 

 彼が行く先はどうなるか、それは誰にもわからない。だが、あの時に見た光景と言葉と共に長門は歩み続ける。

 

 

 

 

 

 暁の水平線に勝利を刻みなさい。

 

 




たくさんの方々に見ていただけているようでとてもありがたい限りです。

これからも頑張って書いたいきたいと思います。

ようやく着任式が終わったので次回からは一話に一人をメインとして書いていきます。


以下。

・コマさん
史実では米内さんのお嫁さん。この世界では男性。

・気絶するもの
男に抗体がない人はさがれ!

・宴
ひゃっはーさん入れたかったけどこれ以上入れると地の文が少なすぎて安っぽい感じになりそうだったのでぼつに。またいつか。

・価値観の違い
やっとこさあべこべ要素が。いつも思います。なぜゲームでも彼女たちはあんなに
面積が少ないのかと。きっと艦これはあべこべ世界だった可能性が微レ存。

・絶対に離さない
艦娘さんたちは身体能力がとても高め。ちなみにコンゴウさんの爪立てはフィギュアで艦装が手みたいになるのを見てて、思いついた話。

・暁の水平線に
艦これ公式ホームページでも乗ってる言葉。
これを入れたくて後半シリアスになってしまったような。



たくさんのご感想、評価をいただき誠にありがとうございます。

リハビリのつもりで始めたこの小説がこんな風になるとは思っても見ませんでした。

なにぶん、性格ゆえか見直しはするものの誤字脱字等もあるかもしれません。

その際は遠慮なくご指摘のほど、お願いいたします。


それでは、また。

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