~男女あべこべな艦これに提督が着任しました~   作:イソン

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着任式といったな、あれは嘘だ。

書きたいことが多すぎて書きまくってたら着任式までいかないんですが。

いや、きっと次こそはいける。

思った以上に見てくれる人が多くてありがたい限り。

頑張っていきます。


第四話 あべこべ艦これ~不幸姉妹は幸福姉妹?~

 「お、男の人・・・・・・!?」

 

 その一声は誰のものだったろうか。しん、と静まり返った食堂。艦娘達はおろか厨房で調理をしていた妖精達までもが時が止まったかのように雷の方を見ていた。

 

 それを見て雷はぐるりとあたりを見回した後、何かまずいこといったかしらと冷や汗をかいた。

 その後ろではぶつかってしまった電を起こしながら、龍田が間に合わなかったと顔をしかめる。

 

 「あれ、え、えーと。わ、私、何かまずいこといったか――」

 

 しかし、雷の言葉は最後まで言うことができなかった。瞬間、響き渡る絶叫。そう、絶叫だ。歓喜の声などではない。初めて男性が鎮守府に来ている、それもこれから

長い間、提督として着任し身近な存在となる出来事に艦娘達は一種の恐怖のようなものを感じた。

 

 

 

 「ホワッツ!?お、男ですか?どどどどど、どうやって拉致してきたんデース!?」

 

 「やばい」

 

 「あぁ、比叡お姉さまの口調が!?」

 

 「だだだ、大丈夫です。霧島の分析にお任せください!。私が愛用している『ノーガードで男の見つけ方!』さえあれば対応なんてばっちりです!」

 

 「お、男だってクマ!ここ、こうしちゃいられないクマ、会うときの練習するから後はまかせたクマ、多摩!」

 

 「ま、まかせたニャ、北上~、大井~」

 

 「いや~、驚きだねー。びっくりだねー。どうしよっか?大井っち」

 

 「と、殿方・・・・・・そんな、ほんとに・・・・・・、へっ!?わ、私は別に興味なんてないです、北上さん一筋ででですもの!」

 

 

 阿鼻叫喚とはこのことを言うのだろう。瞬く間に広がった波紋は一度立ててしまえばなかなか戻ることはない。

 

 その光景を見て雷は自分の一言がここまで大事になるとは思っていなかったのか、急いで弁明を始める。

 

 「あ、ち、違うの!あのねっ」

 

 「雷さん!提督が男の人っていうのは確かな情報なんですか、青葉、気になります!」

 

 「あっ、ちょっ」

 

 しかし、口から出ようとした言葉はメモ帳を片手に鼻息を荒くした青葉に迫られとめられてしまった。

 

 「いやっ、あのっ」

 

 「どこでみたんですか!?初めて見た男の人の感想は!?他に誰か見たって人はいらっしゃいますかね。あっ、その提督の第一印象も聞いてみたいです。さあさあさあ!」

 

 「ふっ、うぅぅぅ」

 

 「やめねぇか!こんのパパラッチが」

 

 ごんっ、と。雷に向かって取材を始めようとした青葉の頭に立派なたんこぶが出来上がった。予測していなかった意識外からの攻撃に青葉は頭を押さえてうずくまってしまう。

 

 あまりの節操のなさにみかねてしまったのだろう、騒ぎの中でも雷のところに青葉が来ていたのを見逃さなかった天龍が愛刀の峰で青葉の頭を叩いた。

 

 それと同時に叢雲もため息をついて椅子から立ち上がった。本来であれば、こうなる前に事前に説明を行おうと思ったがこうなってしまってはどうしようもない。

 原因となったここにはいないあきつ丸に文句を言いつつ、叢雲は本来提督が作戦を説明する際に立つお立ち台にあがった。

 

 「あー、あー。聞こえるわね。ほら、みんな静かにしてちょうだい!今からこの件に関しての詳しい説明を行うわ」

 

 マイクの電源をいれ、音の出を確かめながら叢雲は辺りを見回した。まだうるささはあるものの、さすが霧島が用意したマイクだからだろうか。そこらへんの物より

はるかに高性能なマイクは食堂の奥まで響き渡り、全員がお立ち台に目を向けた。

 

 野獣の眼。

 

 例えならばこの言葉以外言い表せないわね、と叢雲はあまりの気迫につばを飲み込んだ。見た感じ、駆逐艦組や軽巡組はそれほどでもないが大型艦あたりからのプレッシャーが

とてつもない。

 

 「そ、それじゃあ説明するわ。質問とかは受け付けるけど、質疑応答に関しては最後に行うから。いいわね?」

 

 ギロリと。今すぐにでも手を上げそうだったパパラッチに蛇のにらみをきかす。

 

 ぐるりとあたりを見渡し、どうやら反対はないと感じた叢雲は喋り始めた。まるで生死を分けるかのような雰囲気に包まれた中。

 

 

 

 

 だからだろうか、誰も気づくことはなかった。食堂の入り口近くに座っていたはずの不幸姉妹がいなくなっていることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大日本帝国が栄えた時代、日本海軍の象徴として親しまれた艦がある。

 

 

 戦艦長門。

 

 旧長門国を名前の由来に持つ大日本帝国海軍の戦艦、長門型戦艦の1番艦だ。第二次世界大戦前は日本海軍の象徴としても親しまれ、敗戦後は米軍に接収され、原爆実験の標的艦となり沈没した艦でもある。

 

 ちまたでは長門より戦艦大和という存在が昨今では有名だろう。

 

 しかし、大和等は第二次以降の産物でありその存在自体が極秘とされていたため、戦艦といえば長門や陸奥の長門型戦艦が日本では有名だった。

 だが、艦娘の間では戦艦といえば大和や武蔵といった戦艦の方が印象が大きい。それもそうだろう、彼女たちの記憶は個々によって違いはあれどほとんどが太平洋戦争時まで活躍しているのだから。

 

 けれども青年長門は知らない。

 

 彼は違う世界から来た存在、同じ戦争を繰り返してはいるが青年自体にそのような記憶はないのだ。

 

 子供のころに憧れ、そして末端であるが戦艦長門に搭乗し、アメリカとの最終決戦にてその艦自体ごと爆薬とし敵艦隊を壊滅させ日本に勝利を捧げた長門と最後を共にした記憶しか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「やはり、この司令室にも軍で見たものと同じものしかないか。わかってはいたけどさ・・・・・・」

 

 棚に収まれていた各艦娘ごとの資料、『長門型』と書かれた本を閉じ長門はため息をついた。

 

 長門が初めてこの世界に来たとき、彼は今で言う宮崎県日向市で発見された。体のあちこちに裂傷や火傷跡があり、生きているのが不思議な状況だったという。

 その後、彼を発見したのが米内という女性で軍の関係者だということもあり、すぐさま軍の病院へと搬送。一ヶ月ほど、意識が戻らず生死の境をさまよった。

 

 そのうち一週間ほどは、目を覚ましたときに下のズボンを手にかけ、鼻息を荒くしよだれを垂らしていた看護婦の姿に絶叫し、傷が開いてしまったせいだが。

 

 「ほとんどは俺自身が歩んできた歴史と同じ、しかし、日本はアメリカに負けすべての艦は存在しなくなってしまった・・・・・・か。こうやって見ると、ほんとに異世界に来たんだな」

 

 棚に本を納め、窓から入る月の光を見て思う。

 

 「だけど、頑張るしかないさ。俺が住んでた日本なんだ。たとえ世界が違ったとしても、こうやって生を受けた限り。米さんにも恩を返さないとな」

 

 こうやって提督として着任できたのも米内さんのおかげだしな、と苦笑いしながら。

 

 

 長門が目を覚ましたとき、その看護婦を除けば病室で会ったのは医師と米内だけだった。そのときの第一声は今でも覚えている。

 

 『異世界から来た君に頼みがある』

 

 

 どうやら、長門が倒れていた際に身にまとっていた軍服の中にあった手帳を読んだらしい。長門が航海の内容を書き、そして最後に別れの言葉を書いた手帳を。

 

 その後はとんとん拍子だった。行き場のない長門にどこかへ行くあてがあるわけでもなく、状況を確認する際に米内が発した男が極端に少ないという言葉を聞き、

 前に見た看護婦の存在からその言葉が信憑性があるものだと確信した長門はこのままふらりと外に出たら貞操が危ないと気がついた。

 

 米内の言葉に甘え、親戚の息子という姿をもらい軍に就役。前の知識と新しい知識を頭に詰め込み、またたくまに主席へと上り詰めた。そして、今に至る。

 

 

 

 「しっかし、すごいよな。米さん、見た感じお偉いさんの秘書みたいな感じだったのに。軍に関係者を持ってるとは・・・・・・。人妻恐るべしってところか」

 

 あまり無口で面倒くさがり屋で食事もろくに作れなかったため、長門が毎日作ったりしていたが。

 どんな人にも得意不得意はあるもんだなと、一人納得する。

 

 

 

 「ん・・・?」

 

 そして、気づく。先ほど月の光が窓から入っていたといったが、月が昇ってくる時間帯まで資料に没頭していたことに。

 

 

 やばい、と長門は急いでかけておいた軍服を取ると袖を通しながら入り口へと向かう。着任初日に式に遅れたとあってはかなり第一印象が悪い。

 それもこの鎮守府には100以上の艦娘たちがいるのだ。今後共にやっていくために最初から印象を悪くすることはできない。

 

 

 

 

 だが、ドアの取っ手に手をかけたときに扉の向こう側からコンコンと規則正しいノック音が響いた。

 迎えが来たのだろうかと長門は思い、あけようとした扉から少し離れる。

 

 「・・・・・・ん?」

 

 しかし、いつまでたっても扉が開かれることはなかった。扉の反対側にはいるのだろう、先ほどからなにやら言い争いをしている声が聞こえるのだから。

 

 

 

 

 

 「ね、ねぇ山城。やっぱり私があけなきゃだめかしら?や、やっぱり無理よいきなりなんて・・・・・・」

 

 「扶桑姉さま、やるべきです。昔聞いた情報では、殿方と会話をすることで私たち艦娘は運があがるらしいんです。この手を逃すわけにはいかないわ・・・・・・」

 

 「で、でも。無理よぉ・・・・・・、足が、震えて」

 

 「欠陥戦艦とか艦隊にいる方が珍しいとか、いいたい放題言われていていいんですか?大丈夫です、山城もついてますから・・・・・・た、たぶん」

 

 「そ、そうよね。姉妹一緒にいけば大丈夫よね、それじゃ開けて頂戴、山城」

 

 「えっ、わ、私がですか!?ふ、不幸だわ・・・・・・」

 

 

 

 

 (今こっちからあけたらどうなるのかなーこれ)

 

 どうやら外で言い争っているのは扶桑と山城らしい。あれだけ大きい声で言い争っていると丸聞こえではあるのだが、どうやらどちらが扉を開けるかで忙しいようだ。

 

 (しかし、扶桑と山城ね・・・・・・)

 

 記憶を探し出す。

 

 確か扶桑と山城は日本海軍の戦艦で、扶桑型戦艦の1番艦と2番艦だったはずだ。日本独自の設計による初の超弩級戦艦で両者とも独特な形状が印象に残っていたのを覚えている。

砲塔上に水偵用カタパルトを設置する際に向きの関係で、艦橋基部が拡張できなくなった事で独特な形となっていたと資料で読んだことはあるが。

 長門の記憶では戦艦の中で各々気になる戦艦をあげろといえば、扶桑の名前がでてくるほど、その形状が独特である。

 その妹艦山城に関しては姉の扶桑があってか、スマートになったらしいが。

 

 

 

 「よ、よし、あけるわよ・・・・・・」

 

 (あっ、やっとか)

 

 どうやら決意したのか、姉のほうである扶桑が扉を開けるようだ。長門も初の戦艦組みに初対面なため、気を引きしめた。米さんいわく、艦娘は艦種によって胸部装甲が大きく変わるらしいし。

 

 

 再度コンコンと、規則正しいノックと共にゆっくりと、ほんのゆっくりとではあるが司令室の扉が開かれた。

 

 「し、失礼いたします・・・・・・」

 

 「し、失礼します・・・・・・」

 

 まるで罰を受けたかのようにおびえた表情をしながら、扶桑姉妹が司令室に入ってきた。そして、司令机の前に立っている長門を見た瞬間、固まる。

 

 

 

 「あ、あの、あ、あのあの」

 

 「あ、ああぁ。あのですね、あの」

 

 

 (あのしか言っとらんがな)

 

 扉の前で固まったまま、扶桑達は後悔した。

 

 確かに、扶桑達だけに限らず艦娘達は男性とあった経験がまったくといっていいほどない。しかし、曲がりなりにも所属は軍だ。

 しかも最前線で戦う彼女たちに軍は最大の敬意を払っている。そのため、娯楽用品として男性の写真が載った雑誌などを目にする機会は多々あるのだ。

 それも扶桑達、いや軽巡ぐらいからであればちょっとした上半身だけ裸の雑誌やらなんやらが少しぐらいは。

 

 まぁ、ほとんどの艦娘達がそれを見ただけで一日眠れないぐらいになるのだ。しかし、扶桑達はそれを克服した。

 最初は気絶から始まった。姉妹そろって気絶してしまい、提督にそれを見つかってこっぴどく怒られたときもある。

 

 だが、扶桑達はあきらめない。すべてはいつか、男性と会うことが一度でもあったときに自身をアピールすることができるようにするため。

 

 だがしかし、現実は非常であった。

 

 

 「やぁ、君たちが扶桑と山城かな?」

 

 

 「ひゃいっ!」

 

 「ふゃいっ!」

 

 男性特有の少し響く、バリトンボイスの声。しかし、低すぎず少し変えれば女性と言っても大丈夫そうな中世的な声。

 

 その声を聴いた瞬間、扶桑と山城の中で電流が走った。これはいけない、このまま聞いていれば立っていられなくなると。

 

 「そ、そ、そうよ。私が山城、そしてこちらが私の姉の扶桑姉さま」

 

 「はっ、はい!私が姉の扶桑ですっ!」

 

 「あ、あぁそうか。至らないところはあるかもしれないが、これからよろしく頼むよ。もしかして、君たちが食堂まで連れて行ってくれる案内係なのかな?」

 

  その言葉になにそれ知らないと姉妹は足が震えながら、驚愕した。

  つまり、この目の前にいる提督はこういっているのだ。自分たちが食堂までのシルクロードも霞むような長い道のりを一緒に歩いていくのだろうと。

 

 断らないといけない。そう山城は判断した。姉の扶桑はおそらくあと数分でもいればノックダウンしてしまうだろう。

 自身も危ないところではあるが、まだいける。

 

 「あの、こ、これはですね」

 

 「いやー、助かったよ。叢雲から迎えが来るとは聞いていたんだが、まさか姉妹揃ってわざわざ迎えに来てくれるなんて。さぁ、時間も押してるようだしいこうか」

 

 「は、はいぃぃ」

 

 否、断れるはずがない。少しずつこちらに歩いてきて手を差し伸べた提督を見て山城は思った。

 

 

 

 

 

 

 その後のことを扶桑姉妹はこう言う。

 

 司令室に入ってから食堂まで向かう間、記憶があやふやで定かではなかったと。

 

 

 

 そして提督はそのときの状況をこう言う。

 

 

 「生まれたての小鹿のようだっていう表現があるけど、ほんとに見れるとは思わなんだ。というか、食堂に行くまでの間でキラキラするとは」

 




ということでメインは不幸姉妹。

作者はいまだに改2にできてません。あともうちょい・・・・・・。

コメントいただき、まことにありがとうございます。文章を書くためにはじめたものですがこうやって見てくれてる人がいてくださってとてもうれしいです。

頑張ります・ω・



以下。

・『ノーガードで男の見つけ方!』
霧島さんは史実でほぼノーガードに近い戦いをしたことがあることで有名。
頭脳(物理)は伊達じゃない。通用するかどうかは別ですが。

・球磨は練習中
クマーは比較的早めにできた艦ということもあり、後半は練習のために使われることが多かったとか。練習大事。

・野獣の眼
やべぇよ、やべぇよ・・・・・・。

・宮崎県日向市
航空戦艦の時代ではありません。違います。
実はここが海軍発祥の地らしい。せっかくなのでここをチョイス。

・米内さん
オリジナルと思いきや、実はこのひと史実では海軍大臣で日向市に発祥の地の碑を
立てたとかなんとか。同じく発祥つながりで。もちろん女性になってます



ぜんぜん進まないけど、書いてて楽しかったからいいかなと思ってしまっている。
主人公長門の今後は少しずつストーリーにて。


最初はここまで男性に耐性なくていいのかなーと思っていたけど書いてて
案外いけそうなので基本的にはこのままで。艦娘によっては大丈夫そうな人たちについては描写を変えていきます。


それではまた。

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