~男女あべこべな艦これに提督が着任しました~   作:イソン

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こんなに同志がいるんだ・・・・・・。こんなにうれしいことはない・・・・・・


第二話 あべこべ艦これ~フフフ、怖いか?~

艦娘といっても、ただ艦娘というくくりがあるわけではない。

数をあげればきりがないが、主に戦艦、空母、重巡、軽巡、駆逐艦、潜水艦などなど。

ほかにも派生として航空戦艦や重雷装巡洋艦など、ひとくくりに収めるにはいかないほど多種多様な艦種の艦娘達が存在する。

 

艦娘には種別ごとに装備できるものが違い、また得意不得意も分かれている。

戦艦であれば火力に特化されているし、空母であれば艦載機を飛ばして制空権を確保する役目などもある。

 

そんな中で、駆逐艦は他の艦と比べると最小の部類に入る。

 

だからだろうか、艦娘となっても駆逐艦達がとても幼い少女たちの姿をしているのは。

 

 

 

 

 

(…………気まずい)

 

あれから硬直し真っ赤になってしまった叢雲が再起するのにいくらかの時間を有した後、平常を取り戻したのか最初のときと

変わらない様子で長門を鎮守府へと連れて行ってくれた。歩いている間、頭に取り付けられていた艤装がピコピコと激しく動いていたが。

 

 

 

 

「やっぱり、男性なのです…」

 

「ハラショー……はじめてみたよ」

 

「男性って……ほんとにいたのね!」

 

「わ、私ぐらいのレディーになると喋りかけたことぐらいあるんだから!」

 

「じゃ、じゃあ、暁ちゃん。先に話しかけて……」

 

「な、い、今はその時じゃないのよ!レディーなんだから!」

 

「ハラショー……」

 

「響、さっきからハラショーしかいってないわよ……」

 

「ちょっと!提督にばれちゃうじゃない、もっと声を小さくしないと…」

 

 

 

なんともほほえましい光景だろうか。まぁ、最初から気づいてはいたがこうやって興味があるものに集まって仲良く話し込んでいるところをみると艦娘ではあれど幼い少女たちなのだと実感する。

 

(ここでばれてましたーなんて言った時にはなくなこりゃ)

 

部屋に到着した後、鎮守府の案内は別のものがすると叢雲に言われ、ずっと待機しているがいかんせん新しい提督が男だと知らなかったためか

処理に追われているのかはわからないが一向に戻ってくる様子はない。

 

 話を聞く限りほとんどの艦娘たちが出撃と遠征に出ているのだとか。今日の夜には戻るのでその時に着任の挨拶をと叢雲から言われているので

さしてこの状態が続いても問題ないかと長門はひとつため息をついた。

 

 ふと、駆逐艦達が言い争っているのを横目に長門は司令室にひとつだけ取り付けられている窓の向こう側を見た。少しずつではあるが沈んでいく紅の太陽。

その水平線に小さな黒い影がある。どうやら他の艦娘達が戻ってきたのだろうか。

 

 時間もふと見れば、すでに17時を過ぎていた。着任の挨拶が19時あたりと聞いているから、間違いないだろう。まもなく他の艦娘たちもぞくぞくと戻ってくるはずだ。

 

 そのとき、扉の前がよりいっそう騒がしくなる。どうやら駆逐艦達以外に他のものがきたようだ。

 

 「なんだ、お前ら。司令室の前で集まりやがって」

 

 「あらー、天龍ちゃん。確か、今日じゃなかったかしら。新しい提督が来るってお話」

 

 「あー、そんな話あったな。ってことはあれか、今新しい奴が司令室にいるってわけか」

 

 「し、静かになのです!司令官にばれちゃうのです!」

 

 「ハラショー…」

 

 「響……」

 

 「そうよ、大声出しちゃうとばれちゃうじゃない!」

 

 「いや、お前たちの方が声でかいじぇねえか……」

 

 

 確かに。だけどそういうのは言わないのが優しさというものだぞ、と長門は思いつつうなずく。

 

 しかし、本当にあきつ丸は自身の事を何も言っていなかったのだと実感する。

 

 (あいつ……、今度あったらただじゃおかん)

 

 今はいないあきつ丸に向かって悪態をつく。なんでも、あきつ丸は陸軍所属であると同時に艦娘でもあることから海軍の橋渡し存在として時折鎮守府に資材を運ぶ

役目を持っているらしい。

 それじゃあまた会えるなと、今度あったときに覚えてもらえるよういったが言ったと同時にあきつ丸の顔が一瞬で真っ赤になり、叢雲の目から光がなくなりその後が怖かったのは余談だが。

 

 

 

 「んーだよ、入っちまうぞおめーら」

 

 「そうねー。せっかく新しく着任する方がすぐ目の前にいらっしゃるんですもの。顔を合わせなきゃねー」

 

 どうやら駆逐艦達の健闘むなしく、天龍ともう一人、さきほどの話から察するに駆逐艦達のお姉さん的存在であろうか。その二人が司令室へ入ってくるらしい。

 

 

 よし、と長門は気合を入れた。前の世界、前世では総じて平凡と言われてはいたものの、こと挨拶に関しては親からみっちりとしごかれたせいか自信はある。

 

 父からは海軍式の挨拶を。母からは女性を口説くための挨拶を。後半がなにやらおかしいが。

 

 

 「おら!天龍型1番艦、天龍だ。駆逐艦を束ねて、殴り込みの水雷戦隊を率いてるぜ。ふふふ、こわ……」

 

 「軽巡洋艦、天龍型2番艦の龍田よ。ごめんなさいね、提督さん。天龍ちゃんがいきなり迷惑をかけ……て……」

 

 

 ばんっと、扉を開けて司令室に入ってきた二人。天龍型の1番艦と2番艦、天龍と龍田、天龍は最初は勢いが大事だと威勢よく、龍田は天龍の行動にため息をつきながら。

 しかし、両者とも最初の威勢はなんとやら。提督専用の椅子に座っている新しい司令官を見た瞬間、まるで人形のように固まってしまった。

 

 その光景にやはり威勢はいいが緊張しているのだろうと思いつつ、長門も礼をする。

 

 

 「初めまして、だな。私の名は長門。今日から新しく君たちの指揮を執る者だ。まだまだ未熟者ではあるが、君たちに失望されないよう精一杯頑張っていく所存だ。どうか宜しく頼む」

 

 その挨拶に一瞬びくりと体を震わせる二人。それ見た長門は自身の挨拶が未熟だったかと一瞬冷や汗を流した。

 

 「あっ、ああ!俺の名は天龍だ、ふ、ふふふ、こわ……こわ……」

 

 「あっ、あらー?あらあらー?」

 

 「ど、どうした二人とも。何か至らないところでもあったかな?」

 

 どうやら不快にさせてしまったのだろうか、と長門は焦る。昔から女性に話しかけるたび目を合わせてくれなかったり、逃げてしまうことが多かったためか、

 長門はまたやってしまったのかと一人勘違いをしていた。

  二人がこれまで男性を見たことがないというのも知らずに。

 

 どうしたものかと悩んだとき、ふと二人の奥、扉のほうから顔をのぞかせている少女と目が合った。日本ではめずらしいであろう銀髪の髪に白い帽子をかぶったその姿は

駆逐艦にしては少々大人びた雰囲気を漂わせている。

 

 「……ハラショー」

 

 「は、はらしょー?」

 

 何かの暗号だろうか。いや、聞いたことがある。確かどこかの国の言葉で――

 

 「お、おっおう!響じゃねえか!いやー奇遇だなこんなところで!だめだぞ、提督とは夜に挨拶できるんだからな!まったく響はあわてんぼうさんだなーあははははは、し、失礼しましたああああああ!!」

 

 「あ、あらー!そ、そうね。ほら、他の子たちも提督に失礼でしょう!?戻りましょうね~!」

 

 脱兎のごとく、とはこのことをいうのだろうか。ハラショーを合図にまたたくまに天龍は響という少女を抱え上げ、部屋からでてしまった。

 それに続いて、龍田も部屋をでる。

 

 

 

 「あっ……!」

 

 

 しかし、運が悪かったのだろう。天龍の元へ向かおうとした瞬間、足元の魚雷に躓いたのかゆっくりと扉がしまっていくのを見ながら龍田はその場で転んでしまった。

 龍田がまさか転ぶとは思っていなかったのだろうか、それとも緊張のあまり見ることができなかったのか。龍田が出たのを確認せずに扉をしめてしまった。

 

 残ったのは司令室に長門と龍田の二人。

 

 

 

 

 

 

 

 (気まずい……)

 

 

 「うっ、……うぅ」

 

 まさか転ぶとは思っていなかったのだろう。思い切り顔を強打したようで、涙を浮かべながらうずくまっている。

 

 「だ、大丈夫か?すまない、私の挨拶が未熟で……。ほら、安物だがこれを使うといい。せっかくの綺麗な顔が台無しだぞ、顔を拭くといい」

 

 「ふぇっ、あ、あら~?」

 

 すっと、長門はハンカチを差し出した。それを見た龍田が一瞬痛みを忘れたかのようにこちらを見上げ、そして――

 

 

 「あ、あらあらあらあらあらあらあらあら。あ、ありがとうございます提督失礼します申し訳ございません天龍ちゃあああああああん!!」

 

 

 すさまじいスピードでハンカチを受け取った後、器用に流れるような動作で一礼をしながら扉を開け帰っていった。

 

 

 

 

 残されたのは長門ただ一人。

 

 

 今の現状をなんていうのだろうか、駆逐艦達が覗いていたと思ったら軽巡の二人組みがきて普通に挨拶をしたと思ったら顔を真っ赤にして逃げるように出て行った。

 

 

 ひとつ、間をおき思いついたのかぽん、と手を叩いた。

 

 

 

 

 「あー、あれだ。うん、とりあえず着任の挨拶を考えるか」

 

 

 とりあえず、長門は深く考えるのをやめた。

 

 

 

 その後、どんなときでも提督からもらったハンカチを大事に持っている龍田の姿が見られ、その理由を聞かれたときに頭のわっかが高速回転したとかなんとか。




天龍がメインだと思った?残念、龍田がメインでした!

天龍の前で強がって入るけど、初の男性を目にして頭がいっぱいいっぱいで
動くことができず、あげくに天龍においていかれて涙目になってしまう
龍田さんかわいい。そんな話がかきたくて1話使って着任の挨拶までいかんかった。


反省はしている。後悔はしていない。

今回は文字数少なめ、大体3000文字以上を目安に読者がある程度見れて話が
区切れる感じで書いてきます。

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