ダンジョンに英霊を求めるのは間違っているだろうか 作:ごんべえ
ヘスティアは変わり果てたホームの姿に驚いていた。
3日前までただの崩れかけた教会だったのが今では見た目も中身も立派な教会である。
「おお~~、ベル君、どうなっているんだこれは」
すっかりきれいになったホームの中を見渡す
「これ全部アーチャーさんがやってくれたんですよ」
ヘスティアはアーチャーのの両手を握り上下に激しくふり、
「ありがとう、僕は君が眷属にいてくれてうれしいよ」
手を放しきれいになったホームの中をちょこちょこと見て回る。
「マスター、先ほど使っていた短剣を少し見せてもらっていいだろうか」
アーチャーにそう言われ背中からナイフを取り出した。
「すばらしい、ヘスティアこれは神の作った武器だな、誰の作品だ?」
いまだにちょこまかとしていたヘスティアは呼びかけられてその足を止めアーチャーのもとにやってきた。
「やっぱり君はすごいね、ヘファイストスに頼み込んで作ってもらったべル君のための短剣だ。
ベル君以外には使えない、僕の血と汗の結晶、まさに二人の愛の結晶だね」
そう言いベルに抱き付く、そこでベルは気付いてしまった。
「ヘ、ヘファイストス様の作品!! それってとんでもなく高いんじゃ…」
「なるほど炉の神の作品か、一度会ってみたいものだな」
ベルの驚愕をよそにアーチャーは興味深げに短剣を見て続けている。
「えっ、3…年、…20回ローンだったかな、あははは」
彼女はぼそぼそっと答えた。
「はっきり言ってください、僕ものために使ってくれたお金ですから、僕が払いますから」
「え~と、35年の420回ローン、 あ~~いくらだったかな~~2億ヴァリス? あははは」
ひたすらヘスティアはごまかしつつ答えた。
そのあまりにもの想定外すぎる金額にベルが崩れ落ちる。
「2億、2億、1日4000ヴァリス稼いだとして…指が足りな~~~~~い」
ベルは途方もない金額に人格が壊れそうになっていた。
「うむ、1日4000ヴァリスだと136年だな、420回ローンで1日16000ヴァリスといったところか随分、お友達思いな神だな」
小耳にはさみ、口をはさみつつも目と手は未だに剣から離れない。
「大丈夫だよ、ベル君、これは僕とヘファイストスの契約だ、君やファミリアには全く迷惑はかけない、
毎日ヘファイストスのところでアルバイトをするということで話はついているんだ、だから何も心配しないでくれ」
そう言い芋虫になりかけているベルのそばに座り込み慰める。
少し元気を取り戻しベルはあることを思い出す。
「そうだ、アーチャーさんもすみません、せっかくもらった剣なのにもう壊してしまって」
ちょっと後ろめたそうにベルが謝った。
「気にするな、ああいう使い方をしろといったのは私だ、それにこのナイフに比べればあんなもの鉄くず、いやただの爆弾だ」
アーチャーは短剣をベルに返し
「”投影、開始”」
アーチャーの手には今渡したばかりの剣と全く同じ形を短剣が現れた。
「きみ、今のは、というかそれは何だ」
「ヘスティアには初めて見せたな、これが私の能力、”投影”だ」
簡単に前にベルにした説明をした。
「より正確にいえば見た武器を作ることができるのだが、マスターこの短剣をそれで切りかかってきてくれ」
ベルはやや遠慮気にアーチャーの持つ短剣を自分の持つヘスティアナイフで切り付けた。
衝撃があるとベルは身構えていたがあっけなく相手の短剣はガラスのように砕けてしまった。
「全く同じに投影したつもりであったが…、このように神の作りだした武器は投影することはできない。
姿かたちが似ているだけのただの張りぼてだ」
すこし自信があったのか砕けてしまったという結果にやや落胆しつつアーチャーは前にベルに渡したのと同じ短剣を投影し渡した。
「それがあるからいらんかもしれんが爆弾だと思って持っておくといい」
「そんなありがとうございます、大事につかわせてもらいます」
ベルは剣2本を大事そうに腰にしまった瞬間、
「あああーーー!!!! どうしよう2-----億-------ヴァリス」
先ほどまで騒いでいたことを思い出し今度は暴れだした。
「落ち着かないかベル君」
「そうだぞ、マスターが一刻も早く強くなれば2億バリスなぞあっというまだろう」
それを聞き転げまわっていたベルは立ち上がり
「ですよね、じゃあ行ってきます」
ベルは勢いよく勢いよくホームを駆け出して行った。
「彼が僕の眷属、と言っても恩恵は授けてないんだけど、アーチャーだ」
とヘスティアがヘファイストスに紹介した。
「アーチャーだ、貴殿の作る武器に興味があって紹介していただいた」
「武器を作ってくれと頼み込んで、次には人の紹介か、君はつくづく私に面倒事を持ってくるわね」
執務室の椅子に深く座り座り明後日のほうを見ながらため息交じりにヘファイストスは答えた。
「君には本当にすまない、でもいや、これは実際に見てもらったほうがいいだろうね。
僕はバイトの時間だからもう行かないといけない、すまないね」
それ以上の小言を聞くのを逃げるがごとく素早く執務室を去って行った。
「で、君は私に何を見せてくるんだ?」
アーチャーをその隻眼で値踏みするかのように見つめた。
見つめられたアーチャーは手を前にかざし一本の短剣を投影して、彼女の前に置いた。
「これは…いや、一見私が打ったヘスティアナイフだが、魂がこもっていない、
普通の人ならごまかせるだろうけど、私の前ではバレバレだ。
いきなり出てきたけどそれあなたの能力?」
そう言いアーチャーに返そうと机に置かれた短剣を差し出す。
アーチャーはそれを受けとらず、その酷評に肩をすくめながら、
「ああ、それは私の能力によって作り出したものだ。
見た武器はなんでも複製することができる、ただ神々の武器だけは作ることができない。
その理由の一端だけでも知りたいと思って貴殿に会いに来た」
差し出した短剣を引っ込め隠し棚のほうへ行く。
「理由ね、まあ、単純なんだけどね」
彼女が棚の本を押すと棚は横にずれて、その奥にある隠し工房が姿をあらわした。
そして、そこにある金敷に短剣を置くと軽く槌で叩かれ短剣は瞬く間に光の粒子となった。
「やっぱりね、これがヘスティアナイフのコピーってこともあるだろうけど一番は、さっきも言ったけど魂がこもってなのよ。
人間が打った武器にも魂がこもるけど、神が作った武器はそれ以上に想いや魂がこもる。
それがあれば例えヘスティアナイフのコピーであろうとこの程度であればこうはならなかったはず」
そう言われたアーチャーはしばらく考え込むように目をつむる。
「魂、想い、そういった工程も再現しているはずなのだがまだ足りないということだな、果たして再現しきることができるのか」
工房から出てヘファイストスは椅子に腰かけ、
「どうだろう、うちで鍛冶師として修行してみないか、少しは勉強になるだろう?」
暗にヘファイストスファミリアに勧誘しようとしていた。
「ありがたいが断らせてもらおう、私はマスター、ベルを裏切ることはできないからな。
お礼と言っては何だがよければ受け取ってほしい」
アーチャーはコートからマジックポーションを取り出し一気飲みすると机の上に、
”
”
”
”
”
を投影した。
「これはさっきのとは違って完成度が高いわね、感じる力もすさまじい、でもただのお礼にしては多いわね」
一本一本を手に取り確かめながら言う。
「話が早くて助かる、こんなまがい物だ、全額とは言わないがあれの代金を幾分か負けてもらえないだろうか?」
「そういうことね、私の鍛冶師としての建前もあるし、ヘスティアとのこともある、ただにはできない。
けれどもこの5本にはかなりの価値がある…、
わかったわ、ヘスティアのただ働きを1年に負けてあげまる、ただし一つ約束して欲しい、
その能力で武器を複製して市場に流通させないこと」
強く最後の一言を強調し、彼の眼を見つめ言う。
「ああ、言われなくてもそのようなことはしない、これはそれなりに魔力を食う、
戦闘以外のところで魔力を消費するのは私としても本位ではない」
「そうであればいい、私の家族が心を込めた武器がこうもあっさり複製されるとやる気をなくしたり反感を買ったりしてしまう。
それに市場価格もおかしなことになってしまうかもしれん」
その言葉に家族への思いやりとファミリアの長としての思惑が見えた。
「それはすまなかった、少々思慮が足りなかった」
「構わないよ、私は面白い力を見ることができた。それに君はまだ私には追いつけていない」
そう言い不敵な笑みを見せた
「確かに今は…、だがここにいる以上、いつか貴殿の作品を完璧にコピーして見せよう」
赤いコートを翻し執務室を出ていった。
「待っているぞ、君のその挑戦を、
嬉しそうに誰もいない虚空にぽつりとつぶやいた。
アーチャーとヘファイストスとの絡みをやりたかったのでこんな感じに
最初は魔剣を投影しまくって渡すというゲスイのも考えたけど
こんなものならいいかなぁ~っと
こんなのヘファイストスさまじゃな~いって人はごめんなさい
でもぶっちゃけアーチャーがその気になれば凛もやろうとしてたけど
多分2億ヴァリスぐらい簡単に返せるんだよなと思いました
(その頃には市場が恐ろしいことになってると思うけど)
今回は特にほぼオリジナルだったので最後まで読んでいただけたかたありがとうございました
2015/06/30
ちょっとルビ入れ
アスカロンがFateに出てたこと知らんかった
神造兵器について指摘を受けたので
ぶっちゃけダンまちの世界においてヘファイストスは力を制限されているので
彼女の作った武器の完全投影は無理ではないと思います
ただ話の都合上、現在のほうが面白いかなと思い(たぶん不都合ないし)
このようになっています
不都合が出てきたら投影できるようになる話を書こうかなと思います