それはさておき、今回は非常に文量が少ないです(前回の二分の一くらい)。長いのを期待している人は、レッツ・ゴー・バック!
【第10話】
十四人の異邦人
[036]
――30分前。
「今日はちょうど店が休みだから、ダイアゴン横町を見て回っておいで。ついでにホグワーツで要るものを買って来なさい」
「とは言われたものの」
リゼがリストを見ながら言う。
「まずは地図を手に入れなくちゃな」
「えー!? 行き当たりばったりでいいじゃん! 偶には迷うのも買い物の醍醐味だよ?」
ココアが言う。
「あんた馬鹿? こんなとこで迷子になったら、私達どうなるか分かったもんじゃ無いわ」
シャロが言う。
「なんで? 楽しそうじゃん!」
「私達、魔法使えないでしょ? いやまあ使えるのかもしれないけどさ、ここ周りの人達みんな魔法使えるでしょ?」
「それがどうかしたの?」
「だーかーらー! 何されるか分かんないってこと! 下手に変なとこに迷い込んだりしたら、いきなりどっかから魔法かけられて、兎だかなんだかに変えられちゃう可能性だってあるんだからね!」
「ええ、兎!? 私、兎に変えられたい!」
「駄目だこいつ」
「ふふ……取り敢えず、この辺を散策してみましょう。あんまり遠くに行かず、近くの店をまわりましょう。私達の常識がある程度通じるなら、これだけ広いところには大抵、地図が置かれている場所は何箇所かあるものよ」
千夜がにこやかに言う。
「そうだな、それがいい――って、ココア!?」
見ると、いつの間にかココアが走り出していた。
「地図を探すより、人に聞いた方が早いよ! あそこにいる人達に聞いてみよう!」
「おい待て! さっきまで何話してたのか忘れたのか!? ここは私達にとっては危険な場所で――」
「危険だからって尻込みしてたら、それこそ買い物も出来ないよ! 勇気を出すんだよ!」
「勇気と無謀は違うって言葉知ってるか!?」
「あの、すいませーん!」
「お、おい!」
「流石ココアちゃん、対人スキルが桁外れね」
「無謀スキルも桁外れだけどね」
「私達ここが何処だかよく分からないんですけど、もし良ければ、地図のある場所を教えてください!」
「結局地図頼りじゃないか!!」
[037]
ウィーズリー家とラブグッド家の話し合い(?)は30分に及んだ。似たような境遇だから何なのだとう話ではあるが、しかし、互いにどうやってもとの世界に帰ればいいのか分からない状況。帰す方法を模索するためには、互いに協力し合い、帰る方法を探索するのが最善の策である。
「それじゃあ、私とパーシー、アーサーはお祝いを買いに行くわ。サプライズっていうのも考えたんだけど、やっぱり本人が選んだ方が一番良いわ」
「感謝します、母さん」
「では、私は魔法薬の材料を補充してこよう――ああ、君達、魔法薬の材料ならうちにあるから、買う必要はないぞ」
「イエッサー! デース!」
魔法銀行『グリンゴッツ』を出たウィーズリー一家とラブグッド父娘、+αは三つの班に分かれることとなった。
モリー、パーシー、アーサーはパーシーのお祝い品を買いに、ゼノフィリウスは魔法薬の材料を買いに行く。
というわけで、残りの14人はというと。
「フレッド、ジョージ! しっかり彼女たちを見ておくのよ! 貴方達が一番年上なんだからね!」
「大丈夫だよママ。心配しなくてもいい」
「大丈夫だぜママ。あいつらなら一人でも歩けるさ」
「ルーナ、くれぐれもはぐれるんじゃないぞ。絶対に、一人で行動してはいけない、いいね?」
「うん、分かった」
フレッド、ジョージ、ジニー、若葉、萌子、真魚、直、ルーナ、忍、アリス、綾、陽子、カレン、穂乃花の計14名は、新学期に要るものを買いに行く。大人が誰かつくべきかと考えたが、いくら子供といえど14人の大除隊を襲う者は流石にいないだろう。それにフレッドとジョージも居る。という考えのもと作られたのが、この3班である。
「それじゃあ、2時間後に、ここでおちあおう――みんな、呉々も、はぐれるんじゃないぞ。特にフレッド、ジョージ、お前達ははぐれるというよりいつもすぐに離れる――今回は、やめなさい」
「「Yes, my father」」
彼等にしては素直に従う。先程の精神的ダメージがまだ残っているのだ。
「それでは、解散!」
「あの、すいませーん!」
突然の声。見ると、向こうから桃色の髪の少女が走ってきていた。
「ん、どうしたんだい?」
アーサーが聞く。
「私達ここが何処だかよく分からないんですけど、もし良ければ、地図のある場所を教えてください!」
[038]
「ああ、地図なら――」
「地図が無ければ、私達と一緒に来ればいいじゃない、デース!」
突然の襲来者に面食らうことなく、カレンが言う。
「え!? いいの!?」
「勿論デス! 人数は多い方が、楽しいデス!」
「ちょ、勝手に決めちゃ駄目よカレン! え、えっと……カレンはこう言ってますけど、どうでしょうか?」
ゼノフィリウスに聞く。
「どうでしょうとは? 結構じゃないかね。カレンの言う通り、人数は多い方が良い。子供だけの集団行動は、団員が多いに越したことは無いさ」
「だって」
「いや、だってって……!」
「良いんじゃないか? 別に間違ったこと言ってないじゃん?」
「ま、まあね。そうだけど……私が言いたいのは、突然現れた見知らぬ人を加えるのは……ちょっと、こう……危なくない?」
「危なくないよ! それに、私達はもう見知らぬ人同士じゃない、友達同士だよー!」
「真魚が好きそうなのが出てきたな」
「うん、ああいう奴好きっすよ」
「おいココア! ちょっと待て!」
向こうから、ツインテールの少女が走ってくる。
「あ、みんなー! 遅いよー!」
「あのなあ! 一人で動くなって言ってるだろ!?」
「!?」
ツインテールの少女が言う。すると、ツインテールの少女が反応した。
「ど、どうした? 綾」
「え!? い、いや、別に……なんか、こう、声が似てるって思ったというか……」
「あー、成る程ー。確かに、綾とそっくりだな!」
「あややと瓜二つデース! ……一箇所を除けば」
「ええそうですよ胸は無いですようるさいわねカレンのバカー!!」
「人様に迷惑掛けてるんじゃ無いわよ……全くもう」
金髪ボブカットで癖毛の目立つ少女がやって来た。
「きゃははぁきゃははあきゃは!!! 金髪!! 金髪少女!!」
忍が暴走を始めた。
「ひっ!? な、何ですか!?」
「金髪!! 金髪!! お願いします、少し触らせてください!! ひゃはは!!」
「な、何よあんた!? やめなさいよ! やめて! コッチ来ないで!!」
「シノ、落ち着いて! 迷惑だよ!」
「いいえ! 迷惑ではありません! 何故なら、私は金髪に囲まれる運命だかひゃはははぁ!!」
「狂人ー!!」
「ふふふ、楽しそうねシャロちゃん」
同じくやって来た黒髪の少女が言う。
「ち、千夜! 助け――え? 何? 何で私を羽交い締めにしてるの? え? ちょ、ちょっと、ちょっとちょっとちょっと待ちなさい待ちなさいってばぁ!? 千夜!? あんたあっち側ァ!!?」
「だって面白そうだもの……!」
「この鬼畜ー!!」
「……凄えことになってきたな」
「……ああ、制御出来るかどうか分かんねえぜ」
新たに4人が現れたことにより、場のカオスは更に加速した。
「逃げるか」
「逃げよう」
双子は逃げた。
「フレッド、ジョージ? 何処へ行こうというのだね?」
双子は逃げられなかった。
「兎に角だ、君達は18人で行動するんだ、いいね?」
「え? い、いえ! 迷惑でしょうし、すぐに退散します」
「ははは、困った時はお互い様だよ、えーっと?」
「理世です。天々座理世」
「リゼ。迷惑なんかでは無い。君はしっかりした子のようだから、彼女達に着いて行ってくれると、私も助かるんだ」
「そ、そうでしょうか」
「ああ、だから、君達も一緒に行くといい」
「……了解です、Sir」
「!?」
「えっと……じゃあ、よろしく頼むぞ」
「え、ええ。こちらこそ……」
「やっぱり似てる……」
「Doppelgangerって奴だよ。パパ言ってたもン、最近増えてるって」
「Oh 納得デース」
「誰がドッペルゲンガーだ!!」
「あ、あんた達と一緒に行動するのは良いけど……良いけど……」
「うふふ……」
「あはは……」
「こいつらどうにかしてくれない!!?」
「金髪〜金髪〜」
「シャロちゃんほほえま〜」
「あ、あの! い、一緒に行くってことは……私達、友達、ですわよね!」
「んー? 何言ってるの? 私達はもう友達だよ! 偶然を通り越した運命によって導かれた友達同士だよ!」
「と、ともだち――」
「出会って3秒で友達、それが私のモットーだよ!」
「こ、こんなに友達が――もう、思い残すことはありません――さよなら」
「わ、若葉ちゃん!? 起きて! 気絶しないで! 起きて!」
「大変っす! 螺子巻かないと!」
「お前はブリキの人形か!?」
とまあ、そんな訳で。
ついに異世界から来た14人は、記念すべき邂逅を迎えたのだった。
[039]
ダイアゴン横町。
魔法使いや魔女が必要とする、ありとあらゆる魔法道具が売られている横町。今回彼女達は煙突飛行ネットワークを利用してやって来たが、ロンドンにあるパブ『漏れ鍋』の裏庭にある壁の特定の煉瓦を杖で叩くことでも来ることができる。
尚、パブ自体目立たないところにあるため、マグルがここへ来るのはまず不可能である。
[040]
ゼノフィリウス、アーサー達と別れた18人は、どこから先に行くか決めかねていた。
以下、会話パート。
「これからどうするデス?」
カレンが切り出す。
「よし、まずは、ギャンボル・アンド・ジェイプスいたずら専門店だ!」
「ああ、あそこは色々面白いもんが売ってるぜ」
双子は言う。
「マジっすか!? 行きたい行きたい!」
「いたずら専門店か! 楽しそー!」
早速目的を見失い釣られる陽子と真魚。
「おい、釣られるな」
「そうよ! お小遣いもだいたい必要分だけだし、まずは要るものから買いましょう」
「えー! つまんないー!」
「そうデース! 見るだけデスからー!」
「頭固いっすよー! もっと柔らかく!」
「もう、子供じゃあるまいし――いや子供だけど――リ、リゼさん!」
綾がリゼに振る。流石に容量切れである。
「私に振るのか!? ま、まあ確かに、先にやるべきことはやっといた方がいいよな。娯楽は後に回すべきだと思う」
「ほ、ほら! リゼさんだってそう言ってるでしょ!」
「えー」
「えーじゃない!」
「それでは、ローブを買いにいくのは如何でしょう? 一応、ここは魔法使い達の場所ですから、まずはここに馴染むのが先決だと思いますわ」
そう提案するのは若葉。
「わ、私も!」
「そうね、私も若葉に賛成……郷に入っては郷に従えってね」
「うふふ、じゃあ私はシャロちゃん側ー」
「私もシャロちゃん側ですー」
下心しかない忍と千夜。
「あんた達はこっちくんな!」
「意見別れてるねー」
一方、こちらはルーナと穂乃花。
「ルーナちゃんは、行きたいところとか、無いの?」
「別に無いよ。強いて言うなら、ダイアゴン横町の地下にあると言われる秘密結社『ダークネスドラゴンパーティ』のアジトに行きたいな」
「……う、うん。また、今度ね」
「じゃあ杖! 杖欲しいデース!」
「お、それいいな!」
新たな案が発生。
「まずいわ! どんどんカオスになってる!」
「流石にこの集団を纏めるのは無理か……」
「ど、どうしよう!」
「ふふん、ここは私に任せなさーい!」
ここに来てココアが登場。
「ココア! 出来るの!?」
「大丈夫、私に任せて!」
「凄い! なんだかココア、みんなの『お姉ちゃん』みたいだね!」
「あっ、その言葉は……」
「お、お姉ちゃん……?」
「え?」
「もっと呼んでアリスちゃん! お姉ちゃんって! お姉ちゃんって! お姉ちゃんって!!」
「にゃあああああ!?」
「アリスちゃん本当可愛い! もふもふしちゃうよー!!」
「にゃあああああ!?」
『お姉ちゃん』という言葉がココアのトリガーを引き、ココア暴走。
「駄目だわ! 言い方悪いけど変人しか居ないわ!」
「くそ、まともな奴はいないのか!?」
色々と酷い綾とリゼ。
「わ、若葉ちゃんはまともだよ!」
「いえ、そんな……」
「わ、若葉! そうだ! 若葉が居た!」
「やったわ! 救世主よ!」
「では、くじ引きします?」
「くじ引き! いいな、それ!」
「でもくじがありませんわ」
「駄目じゃない!」
「うふふ、うっかりです」
「こいつも駄目だ!」
「酷いですっ!?」
空気を読まぬボケを放つ若葉。そして沈没。
「そうだ、フレッドさんとジョージさんはどうなの!? 年上の鶴の一声で!」
「いや、あいつらは駄目だ、最初の一声で関係無いところへの誘惑を始めたのはあいつらだからな」
最早年上に対する敬意などあったものではない。
「じゃあ、年下の意見だ!」
「ル、ルーナの意見は!?」
「え、ええと……秘密結社『ダークネスドラ」
「わかったわもういい!」
時間を無駄にしていく18人。
「そ、そうだ! ジ、ジニー! ジニーはどう思うの!?」
「え!? えっと……そうだ、半分に分けたらどう? そうすれば、全員の意見を尊重できるし……って思ったわ」
「「「あっ」」」
それは、モリー達の言い付けを真っ向から破るものであったが、全員の意見を尊重するなら、これ位しかこの場を収める方法が無かった。
[041]
チーム1は、リゼ、綾、若葉、シャロ、萌子、忍、アリス、千夜、直。
チーム2は、フレッド、ジョージ、真魚、陽子、カレン、ルーナ、穂乃花、ジニー、ココア。
真面目に行くチーム1と、遊びつつ行くチーム2。グループ1はともかく、グループ2は無事必要な品を買えるのか。続く。
第10話 十四人の異邦人でした。
なんか、もう一個加えたい作品出てきたんだよなー……どうしよう。まあ、流石にここで追加するのは急が過ぎるがね。