【完】真・ハイスクールD×D夢想 覇天の御使い   作:ユウジン

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救いの唄

一誠、木場、小猫は町外れの教会に着く……

 

「さてどうする?」

「あそこに堕天使の三人がいたってことは間違いなくこっちが来るのもバレてる……だから……」

 

一誠は手に氣を集めるとそれを球体にした。

 

「いっちょ派手にやってやろうぜ!」

 

一誠の氣弾はそのまま教会の扉を吹っ飛ばした。それを木場と小猫は興味深そうに見た。

 

「すごいねぇ。純粋な破壊力なら部長や朱乃さんに並ぶと思うよ」

「一誠先輩」

「ん?」

 

小猫が話しかけてきた。

 

「今のってなんですか?」

「氣だよ。知らない?」

「仙術ですか?」

 

その名前は知らないので一誠は首を振った。

 

「そうですか……」

 

すると中から白い服を着た連中がライトセイバーみたいな剣を手に出てきた。

 

「さて一誠くんばかりに任せるわけにいかないね」

 

そう言って木場と小猫が走り出した。

 

ここに来る道中で説明は受けていた。悪魔には二つの種類がある。純粋な悪魔と、別の種族から【悪魔の駒(イービル・ピース)】と言うチェスの駒を模した駒で転生した転生悪魔の二つ……

 

そして転生悪魔はその駒によって能力があるらしい。例えば木場は騎士(ナイト)の駒でそれは速さ……圧倒的な速さの体現者となり目の前の木場も次々と斬っていく……

 

 

対する小猫は戦車(ルーク)……これは木場とは対極の能力だろう。内容は頑丈さとパワー……そのせいかさっきから敵が面白いように跳ぶし攻撃が効いていない。

 

「なんだこの小さい奴……メチャクチャつえぇ!」

「小さい……」

 

何か一気に吹っ飛ぶ距離が伸びてません?まあ年毎の女の子に小さいとか言う方が悪いな。北郷家 家訓第11項《女性にスタイルや身長の話題は慎重に選んで出すこと。選択ミスると死ぬから》 だしな。

 

「こっちに人間やっちまえ!」

 

そう言ってライトセイバー斬りかかってきた。だがそれを少し横にとんで躱した一誠はカウンターを決めた。

 

「ぐげ……」

「そんな剣の腕で俺は斬れねぇよ。俺が普段相手にしてたのは春蘭母さんの娘だぜ?春蘭母さん程ではなかったけど十分俺より強いしな」

 

そんな呟きは相手には聞こえなかった……

 

「これで全部かな?」

 

足止めにもならない相手達を一瞥して一誠たちは中に侵入した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

レイナーレは十字架に張り付けたアーシアを見た……彼女は意識を奪ってある。元は教会を追放されたあと計画のために見つけ出し引き入れただけの少女だ。計画とはアーシアの聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)を引き出し自らのものとする……これが成功すれば堕天使でも神器(セイクリットギア)を奪い使うことができる。元々神器(セイクリットギア)は神が人間のために作ったものなので例外なく人間の血がないと修得できない。だが所有者から奪えば話は別だ。だが一誠のように体の外に顕現する武装型なら奪いやすいがアーシアのような体の内部に存在するタイプは奪いにくい。だがレイナーレは偶然だがその方法を見つけ出し術式を組み上げれたのだ。元は魔法と呼ばれる技術体型を応用したものだがこれもまた偶然でレイナーレはこれを使うことができた。もしかしたら魔法の才能はあったのかもしれない。

 

「……」

レイナーレは集中する……するとアーシアの体が光った。

 

「あぁ!」

 

アーシアの体が跳ねた。

 

「……」

 

するとレイナーレの体がビクッとして発動が止まってしまった。

 

「く……」

 

実はこれを既に十回ほど繰り返している。

 

今更悔やんでいるのか?悩んでいるのか?一誠は良い奴だ……だからこそもう巻き込みたくない。だからすぐには動けないだろうが急所は外す絶妙な角度で突き刺したのだ。お陰で一誠は当分動けないはずだ。その間にアーシアから神器(セイクリットギア)を引き抜き姿を消す……それで良いはずだ。それが本来の道……正道であり王道だ。ここのところがおかしかったのだ。自分は堕天使……汚れた漆黒の翼を生やす天使なのだ。今更笑える日々を?今更暖かいご飯を?今更太陽の下を?バカを言っちゃいけない……そう決めた筈なのに……

 

「泣いて……るんですか?」

「っ!」

 

いつの間にか目を覚ましたアーシアの言葉にレイナーレは違うと叫ぶ。

 

身は既に闇に堕ちた……今度は心を闇に捨てるだけだ……そう決めたのだ!

 

「私……見てしまったんです……」

「え?」

 

アーシアは連れ去られ意識を奪われる直前……見てしまったのだ。一誠を突き刺したあと……レイナーレは確かに泣いていた……

 

「だから……赦したんでしょうね……」

「っ!」

 

自らに刃を突き立てても……一誠はレイナーレを許した。何故?多分……彼はバカなんだろう。底無しに優しくて……それでお人好しで……泣いていたら女性恐怖症の癖に手を出して……

 

「一誠……」

 

ポロポロとレイナーレの目から堰を伐ったように涙が出てきた。本当はもっと一誠とご飯を食べたかった……色んな所を見てみたかった……話してみたかった……そして何より……一緒にいたかった……

 

でも迷惑はかけられなかった。掛ければ何れ一誠は自分を重荷に思うときが来るかもしれない。堕天使と言うだけで敵を呼ぶ……それだけでも嫌われる……そんな自分は一誠のような光と一緒にいる資格なんてないと思った……

 

そう思って……そう誓った筈なのに……もう捨てた筈なのに……自ら壊した筈なのに……自ら放して離れた筈なのに……

 

(会いたいよ……一誠……)

 

それがレイナーレの本心だった。元来の彼女はそう言う性格なのだ。甘えん坊で……自分を認めてほしい。そう言う奴なのだ。だからこそ一誠は無意識にそれに気付いたんだろう……気付いたからこそ彼女を自分の部屋においたんだろう……彼女の居場所に自分がなろうと思ったんだろう。

 

「……謝りたいよ……」

 

もう遅いけど……勝手かもしれないけど……許されないかもしれないけど……自分の我が儘だけど……レイナーレはもう一度一誠に会いたかった。あって今度こそ家族になりたかった……

 

「あれれぇ?もしかして今って三流ドラマで流行りそうな展開ですかぁ?」

「っ!……フリード……」

 

レイナーレは声の方を見る。

 

「アヒャヒャヒャ!おいおい自分から殺しにかかっといて今更許されたいとか考えちゃった?バァカ。そんな人間いる分けねぇだろうが!人間って俺っちみたいに自分がって好き勝手な生きもんなんだよ。お前みたいな裏切り者助けに来るバカなんざいねぇ!」

「……」

 

レイナーレは光の槍を作り出すとアーシアを縛っていた鎖を砕いて落とした。

 

「それにぃ……逃げたら俺っちあいつ殺しちゃうよ?」

「だったらその前にお前を殺すだけだ!」

 

そう言って光の槍をフリードに向けて放った……だがそれをフリードは簡単に回避した。

 

「こっちだ!」

 

レイナーレはアーシアを引っ張って走り出す。

 

「逃がすかよ」

「がっ!」

「レイナーレさん!」

 

腹に走った痛み……因果応報と言う奴なのか奇しくも一誠に自らが槍を突き立てた場所と同じだった。

 

「が……ぐぅ……」

「やっぱ祓魔弾は堕天使には効きが悪いねぇ」

 

フリードは拳銃をレイナーレに向けながらこっちに来る。

 

「お前が俺様に勝てるとでも思ってんのかよこの雑魚がさぁ?」

「逃げろ……」

 

レイナーレはアーシアに逃げるように言う……だがアーシアは首を振ってレイナーレの傷を治癒する。

 

「おぉ、それって堕天使にも効果あるのかよ。俺っち驚き!じゃあお前から死ね!」

「くっ!」

 

レイナーレはアーシアを突き飛ばしながら転がってフリードの銃弾を避けて柱に隠れる。

 

「なに抵抗しちゃう?良いよ良いよぉ……俺っち興奮するねぇ」

 

完全に狂ってる……レイナーレはアーシアの光を受けながらどうするか考える……フリードは異常だ。

 

「逃がさないぜ!」

「この!」

 

痛む腹を抑えてアーシアを引っ張りながらフリードが降り下ろしたライトセイバーを回避して離れる。

 

自分では勝てない……ならどうするか……そう考えてクスリと笑った。

 

「レイナーレさん?」

「私さぁ……この状況を逆転させる方法思い付いたよ」

「……あ」

 

アーシアも思い付いたようだ。いや、こんなの作戦とは言えない。と言うか願望……願いであり……希望。

自分が口にして何になるのだろうか……分からない。でも想うんだ……願うんだ……そして叫べ。

 

「もう終わりか?じゃあ死ねよ」

 

フリードが銃を向けた……だがレイナーレとアーシアは笑って言葉を紡いだ。

 

『助けて……一誠(さん)!!!!』

 

次の瞬間弾ける壁……そこから出てきたのは氣弾……それによってフリードは吹っ飛ばされた。

 

「あ……」

「ああ……」

 

レイナーレとアーシアの前に立った駒王学園の制服に身を包む男……

 

「呼んだか?二人とも」

 

北郷一誠はニッと笑いながらサムズアップを見せた……だが直ぐにその表情は崩れた。

 

「レイナーレ!どうしたその傷は」

「ちょっとね……」

 

レイナーレは視線を外す……

 

「一誠……私……」

「なにも言うな……」

 

やさしく……だがはっきりとそういいきった。

 

「言わなくて良い……」

「一誠……」

 

そして一誠は立ち上がった……その眼はマグマが煮えたぎっているように見えた。

 

「大丈夫?」

 

そこに木場と小猫が来た……

 

「木場、小猫……そこの二人をつれて下がっていてくれ」

「だけど……いや、分かった」

「此方です」

 

木場と小猫はレイナーレとアーシアを下がらせる。何故言うことを聞いたのか……本来であればあのフリードと一人でぶつけるなんてあってはならない。と言うか一誠は今は平気そうな顔をしているが腹を怪我しているのだ。

 

だがそれでも二人は一誠を止めなかった……簡単だ。今一誠は怒っている。必死に強靭な理性で抑えてはいるがその眼は激しい怒りを燃え上がらせていた。一誠の中で何か別のスイッチが入っていた……

 

「おいおいまさか助けに来るのかよ……何ですかこの三文芝居わよぉ!!!!」

 

フリードはライトセイバーと拳銃を一誠に向けた。

 

「なんとでも言ってろよ……ただひとつ忠告だ……神様に祈りだけはすませとけ……」

 

ドクン!っと一誠の左手に神器(セイクリットギア)が顕現した……だがそれだけじゃない……神器(セイクリットギア)がミキミキ音を発てていた……

 

「俺ってここまで怒れるって初めて知ったよ……」

 

ドグン!っと神器(セイクリットギア)が脈打つ……

 

「あんだぁ!てめぇそんな女一人死んだって誰も困んねぇだろうがよぉ!!!!俺のお楽しみ邪魔すんじゃねぇよ!空気読みやがれ自己中野郎!」

 

それを聞いて一誠は笑う。

 

「そうだな……俺は人間なんでね……自己中で自分勝手で身勝手で……だから俺はてめぇに家族と友達傷つけられて腹が立ってっからよ……俺の怒りを沈めんのの付き合いやがれぇ!!!!」

 

《Dragon Booster!!!!!!!!!!!!》

 

一誠の神器(セイクリットギア)が手甲の形状から前腕に伸びて籠手の形状へと変わった。まるで一誠の怒りに呼応するようだ……

 

だが元々神器(セイクリットギア)は持ち主の覚悟や興奮によって強化したりする。しかしそれにしては形状が大きく変わったが……

 

《Boost!!!!》

 

神器(セイクリットギア)から声が出ると力が上がった。

 

「オラァ!」

 

一誠の拳……だがフリードはギリギリで躱すとすれ違い様に斬ろうとして来る。それを一誠は籠手で止めるとフリードに頭突きを叩き込んだ。

 

「ぐぉ……!」

「………………」

 

《Boost!》

 

「この野郎!」

 

フリードは拳銃を向けたがそれを首を傾げるだけで一誠は避けると手を氣で被ってフリードで腹をぶん殴った。

 

「がほっ!」

 

フリードは限界まで目を見開いて痛みに耐えた……

 

《Boost!》

 

(凡そ10秒で次の倍が来るな……)

 

一誠はそんな中でも冷めた思考をしていた。体は燃え上がるように熱い……だが心はどこまでも冷たく……

 

「クソッタレ!」

 

銃口を突き付けてきたが横から掴んで逸らして外させた。

 

「この!離せ!」

 

フリードの剣が来た……だがそれをさっきと同じく籠手で止めた。すると、

 

《Boost!》

(成程……攻撃しなきゃ倍化は掛け続けられるのか……)

 

そう思いながらフリードの手を拳銃ごと握りつぶした。

 

「ギャアアアアア!!!!」

 

フリードは流石にひっくり返って悶えた。

しまった、力加減をミスった。

 

「悪い悪い。力加減を間違えた」

 

《Boost!》

 

(しかし攻撃する度に倍化をし直しなのは面倒だな……)

 

そう思うと、

 

《Boost!……Explosion!》

 

ドクン!っと何かが固定された感覚……まさか……

 

「このやらぁ!」

 

フリードは剣を降り下ろした……だがそれを右手の人差し指と中指で挟んで止めると籠手の左手でぶん殴った。

 

「げべぇ!」

 

顔をぶん殴られてまた派手に吹っ飛んだ。すると今度は力の倍化はそのままだった。

 

(まるで俺の考えを読み取ってるみたいだ……)

「くそがぁ……くそがぁ!!!!」

 

フリードは立ち上がった。ここまで追い込まれたのは初めてだった。だからこそ彼のプライドをズタズタにしたのだが……

 

「死にさらせぇ!」

 

剣が迫る……

 

「ちっ!」

 

一誠は横に飛んで躱す……だが顔をしかめた。さっきから好き好んで回避が最低限な訳じゃない。腹が痛いのだ。血が出てきた気がする。だから派手に動けない。だが一誠には関係なかった。とにかくこのフリードの剣もあるし此方も武器が必要だ。

 

「一誠君!これを!」

 

すると木場が剣を投げてきた。

 

「助かる!」

「受け取らせるかよ!」

 

フリードが妨害するが氣を足に込めてジャンプしてフリードを飛び越えると木場が投げてきた剣をキャッチして構えた……若干軽いが別に振りずらい訳じゃない。そして、

 

「安心しろ……この一発で終わらせてやる……」

 

一誠は構えながらそう宣言した。

足を前後に開き剣を剣道で言う八相の構えと呼ばれる型に近い構え……

 

「よく見てそして喰らっとけ……魏の大剣と称された人から受け継いだ最強の豪剣を!!!!」

 

一誠は剣に氣を纏わせ疾走する……その背中には赤い衣と片目に着けた蝶の眼帯トレードマークとした魏の最強の剣士が写っていた気がした。

 

「クソガァ!」

 

フリードも対抗して剣をぶつけた……だがそれはあっさりと折られた。

 

「マジすか?」

「ウルゥア!!!!」

 

フリードに刻まれる斬撃……

 

「がふっ!」

 

フリードは糸が切れた人形のように倒れる……

 

「なんだよ……それ……」

 

フリードはそのまま突っ伏した。

 

「夏侯惇 元譲直伝……」

 

ピシッっと音をたて木場のくれた剣の刀身が砕けた。

 

「【打打擲(ぶちちょうちゃく)】……って言うんだけどやっぱり春蘭母さんや姉さんほど上手くいかないんだよな」

 

一誠の呟きは当たり前だがフリードに聞こえるはずはなかった……




うーん……とりあえず納得して投稿したけど無理がないかなぁ……難しいです。




さて今回が使った技は格闘ゲーム版の恋姫の春蘭のゲージ技ですね。良い子は実際にやっちゃ行けません。因みにコツは「ドン!っと走ってドガン!!!!っと剣を降り下ろす!」です。

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