【完】真・ハイスクールD×D夢想 覇天の御使い   作:ユウジン

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裏切りの唄

「………………」

 

一誠はレイナーレの料理によって起こした腹痛から復活に手惑い仕方なくレイナーレは胃薬を買いに近くのドラッグストア目指す……薬自体はすぐに手に入った。そこからの帰り道……

 

「ん?」

 

レイナーレは民家から僅かに漂ったよく嗅いだことがある匂い……血の匂いに眉を寄せた。

 

「これは……」

 

するとドアが開いた。そこから出てきたのは白髪頭の十代後半くらいの男だ。

 

「あれぇ?レイナーレさんじゃあありませんかぁ?」

「フリード……」

 

レイナーレは顔を強張らせた。

 

この男はフリード・セルゼン……頭のネジが何処かにぶっ飛んだはぐれエクソシストだ。

 

だが強い。少なくとも自分では相手にならない。しかも狂ってる。

 

「何してるんですかぁ?」

「なんだっていいでしょ」

そのまま去ろうとすると、

 

「北郷一誠……でしたっけねぇ~?」

「っ!」

 

レイナーレはフリードを睨む。

 

「彼まだ殺せてないんですかぁ?まあ俺っちには関係ないっすけどね~」

「色々あんのよ」

「惨めに負けたって色々とは言いませんけどね~」

 

レイナーレはカァっと頬が熱くなった。

 

「何でそれを……」

「三人が言ってましたけどぉ?」

 

バレてたのか……とレイナーレは苛立つ。さっきのやり取りでバレてないと判断したがそれは間違いだったらしい。

 

「まあそれも別にいいんですけどぉ~そろそろ計画の件もあるんで帰ってきてくださいな~」

 

フリードはレイナーレへにじり寄る。

 

「そうじゃないとぉ……俺っち直接迎えにいっちゃいますよ?」

「っ!」

 

レイナーレは即座に理解した……この言葉の意味は一誠に危害を加えると言うことだ。

 

「もしかしてもう降りたくなっちゃいましたぁ?ダメですぅ……今さら尻尾なんか巻かせませんよぉ~それになんですか?地に堕ちた堕天使様が今更光に行きたくなっちゃいましたぁ?ダメですねぇ……イケませんねぇ……いずれ破綻しますねぇ……いずれきっとあんたを重荷に感じますぜ……あいつは人間なんですからねぇ」

レイナーレは聞きたくなかった……だがフリードは続けた。

 

「あ、聞きたくありませんでしたぁ?ならサーセン俺っちKY何で」

 

そう言ってフリードは背を向けた。

 

「それじゃバイビン」

 

フリードは離れていく……その背をレイナーレは見ていることしかできなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、相変わらず腹が痛いままだったが一誠は学校を休んで半日寝てたら治ったので外を歩いていた。レイナーレはなんか考え事で出てこなかったので一人だ。

 

「ん?」

 

すると視線の先に通ったのは金髪の少女……

 

「《アーシア?》」

「《一誠さん!?》」

 

アーシア一誠を見る一瞬安心した顔をした……どうしたんだ?

 

「《よう。昨日ぶりだな。》」

「《はい》」

 

アーシアは太陽のような笑みを浮かべた。

 

「《でも今日はどうしたんだ?》」

「《ちょ、ちょっと……》」

 

アーシアは困ったような表情をした。それを見て一誠は、

 

「《このあと予定は?》」

「《いえ何も……》」

「《なら遊びにいかないか?せっかく晴れ日より。笑おうぜ》」

 

それを聞いてアーシアは一瞬呆然とした。

 

「《でも私……》」

「《金なら俺が出すし安心しとけって》」

 

何か悩みがあるのは一誠は瞬時に理解していた。だからか少々強引に誘う。

 

「《分かりました。今日はよろしくお願いします》」

「《おう、任せておけ》」

 

そう言ってアーシアを同伴して歩き出した……背中に刺さる殺人光線は無視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのあとアーシアとは色んなものを見て回った。クレープを食べたりゲーセンでUFOキャッチャーやったりただ町中を見たり……アーシアはあまり世間に詳しくないのか全てが珍しいらしく目を輝かせてた。

 

そして日が落ち始める時間……二人は公園に来ていた。そういえばこの公園はレイナーレに襲われた場所である。

 

「《楽しかったです……ありがとうございました》」

「《いや良いんだ……》いつ!」

 

一誠は腹を抑えた。またいたくなってきた。

 

「《大丈夫ですか!?》」

「《は、腹がね……》」

 

するとアーシアの手が緑色の光を灯しだし一誠の腹に当てられる……するとあっという間に痛みが収まった。

 

「《これは……》」

「《神器(セイクリットギア)……神様からの贈り物です》」

 

そう言ってアーシアは一誠と一緒にベンチに座る。するとポツリポツリと語りだした。何故話そうと思ったのか分からない。だが一誠もアーシアも気づいてないが一誠は整った顔立ちだけじゃない。女性恐怖症ではあるが実家で女に囲まれてたせいか女性が安心する声のトーンを無意識に出しているし根っこは紳士だ。それでいて無駄に飾ることもしないため女性の心理的な壁を取り払うのが上手いのだ。

 

「《私は教会で育てられました》」

 

アーシア・アルジェントは親を知らない。物心ついたときから神に仕えるシスターの卵として育った。

 

そこでは同世代の子供たちもいて無論贅沢な暮らしはなかったが幸せな暮らしだった。だがある日……何が切っ掛けだったか忘れてしまったが目覚めたのだ……神器(セイクリットギア)に……名は【聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)】……能力は傷や体に負ったダメージの治癒だ。

 

それが周りにバレたときからアーシアは聖女と呼ばれるようになった。生活は一変した。変わってしまった。変えられてしまった……神の遣いと称され崇め奉られる日々……アーシアはそれをどこかで重く感じた。当たり前だろう。彼女は普通の感性を持った女の子であった……多分……それでバチが当たったんだろう。ある日道端に倒れた男を助けた……そしてそいつは悪魔だった。

 

周りの反応は一変した。魔女と呼ばれ異端と呼ばれ……誰よりも神に仕えた少女は追放された……

 

「《なんだよそれ!》」

 

一誠は自分でも驚くほど苛立っていた。聖女と呼び利用するだけ利用してポイ捨て……その教会の人間がもし目の前にいるならフルパワーでぶん殴ってる。

 

「《一誠さん……》」

「《何が魔女だよ……どこをどう見たら魔女に見えるんだ》」

 

一誠はベンチに座り直す。

 

「《でも一誠さんは怖くないんですか?この力が変に見えませんか?》」

 

すると一誠は何をいってるんだこいつは……という目をした。

 

「《どこが変なんだ?他人の傷を直せるなんてすごい能力だ》」

 

少なくとも一定時間自分の能力を二倍のこっちの神器(セイクリットギア)よりずっといい。

 

「《まるでアーシアの優しい心が具現化したような力じゃねぇか。全然変じゃない。アーシアだって魔女なんかに見えない。ただのかわいい女の子だ》」

「《一誠さん……》」

 

ポロリ……とアーシアの目から涙が出た。それを一誠は慌ててハンカチを出して拭く。

 

「《ありがとうございます……見ず知らずの私に……》」

「《見ず知らずじゃねぇよ》」

 

一誠はそこを否定して言い切った。

 

「《友達だ、俺とアーシアは友達だよ》」

「《友達……》」

 

一誠は頷く。一緒に遊んで一緒に笑って一緒に話した……どうということなく見えるかもしれない……でも一誠がアーシアを友達と呼ぶには十分な理由だった。

 

「《だから何かあったら絶対に助ける……だから俺を呼んでくれ》」

 

アーシアに深くは敢えては聞かない。でも何かあったら自分の名を叫んでほしい。

 

「《そしたら絶対に助けるから》」

「《一誠さん……》」

 

アーシアはボゥっと一誠を見た……だがそこに、

 

「伏せろ!」

 

一誠は慌ててアーシアを掴んで引っ張る……アーシアといたベンチに光の槍が刺さった……

 

「誰だお前らは……」

 

一誠はアーシアの前に立ちふさがるとそこには三人の漆黒の羽を羽ばたかせた者が来た。

 

「貴様は北郷一誠か……」

「まさかここで出会うとは……」

「奇遇ってやつっすかねぇ」

 

一誠は三人を視界に捉えながらアーシアを見る。

 

「《誰だ?》」

「《その……》」

「逃げたんで捕まえに来ただけだよぉ……北郷くん」

 

そう言って一誠の前に男が出てきた。

 

「オッス俺はフリード!ってこのネタ分かりますかねぇ」

 

一誠は瞬時に戦闘分析を終える。一番ヤバイのはフリードと名乗った奴だ……だが逆に言えば他はたいした感じじゃない。しかも相手は此方を舐めてるし……

 

(良くわかんねぇけど……こいつら倒して一旦離脱だな……)

 

そう決めてると……

 

「一誠……」

 

声には聞き覚えがあった。

 

「レイナーレ……」

 

背後からの声に声だけで返す。

 

「丁度良い……そこのアーシアって女の子なんだけど……」

「うん。知ってるわ」

「そうか、知ってるか。ならこいつを連れて……――――あれ?」

 

突然背中から腹に掛けて走る痛み……と言うか熱?

 

「れい……なーれ?」

 

一誠は自らの体を光の槍で貫くレイナーレを見た……

 

「やっぱり私はこっちなんだ……こっちで生きなきゃならない運命だ……忘れてないだろ?私はお前を殺しに来たんだ」

「ああ……そういやそうだったなぁ……」

 

カハハ……一誠は笑った。ヤバイ結構いたい……

 

「恨み辛みはいつか地獄であったら……あ、私は地獄にもいけないんだった。堕天使だからね」

「恨み辛みは無いんだけどな……」

「っ!」

 

レイナーレは止めろと心で叫んだ。優しくするな……私を赦すな……呪詛を呟いてくれ……見捨ててくれ……そうじゃないと決心が揺らいでしまう。一誠には危害を喰わせさせたくない。だから自分の手を汚した。誰かに一誠を殺されるなら……自分が一思いに殺すはフリードにやられたら一誠は少なくともきれいな顔では殺されない。だから自分は恨まれ役に準ずることにした。

 

「さよならだ……」

 

光の槍を抜く……ドバドバ血が出た……すると一誠はレイナーレに凭れた……

 

「お前も……俺を呼べよ……助けに……いく……から……」

「っ!」

 

レイナーレは一誠を突き飛ばす……そのまま一誠は動かなくなった。

 

「《一誠さん!》」

 

アーシアが近づこうとしたがドーナシークに捕まった。

 

「ほんじゃ撤退~」

「《一誠さん!》」

 

全員が撤退していく……最後にレイナーレは一誠を見た……

 

(さよなら……一誠)

 

レイナーレは飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイナーレ!アーシア!」

 

一誠は飛び起きる……腹に走った痛みに顔をしかめてるとリアス先輩が来た。

 

「ここは……」

「オカルト研究部の部室よ」

 

確かに良く見てみればそうだった……

 

「どうしてここに?」

「あなたが学校を休むから何かあったのかと思って使い魔に探させてたのよ。奇跡的に内臓は傷ついてないわ」

「そうですか……」

 

一誠はハッとする。

 

「リアス先輩……」

「何かしら?」

「最近キナ臭い動きあるっていってましたよね?」

「……そうね」

「本拠地……わかりますか?」

「知っていたとしても教える必要はあるの?」

 

一誠の体から氣が……リアスの体から魔力が溢れる……

 

「その傷……レイナーレにやられたのでしょう?」

 

一誠は嘘を言っても仕方ないので頷く。

 

「彼女はあなたを裏切ったわ……間違いないわね?」

「そう見えるかもしれませんね」

「それでもあなたは家族だって言うの?信じるの?」

「家族だからですよ。家族だから俺を刺したのに理由があるんだろうって思うんです。それに考えてみてくださいよ。もし殺す気だったら心臓とかを貫いたはずです。意識的にか無意識か……それわかりませんけどレイナーレは俺を殺す気は絶対になかったんだと思います」

「一誠……」

 

一誠は立ち上がった。

 

「それにアーシアとも約束したんです。何かあったら助けるって」

 

一誠は服の襟をただす。

 

「北郷家 家訓第十項【人との大切な約束は命を懸けて守れ……だが女との約束は魂も懸けろ】……何でね。」

 

リアス先輩は何も言えなかった。

 

「貴方は……変人ね……と言うかバカかもしれないわ」

「かもしれません、ただ俺は感じたんです」

 

レイナーレもアーシアも……一人ぼっちだったんだろう。孤独だったんだろう……だからかな……

 

「寂しいよっていってるように聞こえたんです……暖かみを求めてるように感じたんです……なら俺は助けようと思うんです。そこで怪我してるとかあーだのこーだのと考えて計算できるほど俺は頭良くない……人間出来てないんです。感情的で激情型なんですよ……だからちょっくら命を懸けて来ます」

「……ホント、人間というのは面白いわ」

 

一誠が言うとリアス先輩が指をならした。

 

すると他の皆も入ってきた。

 

「分かったわ。但し祐斗と小猫も連れていきなさい。私と朱乃は用事があるから」

 

外を見ながら言うといきなり魔力の弾丸を放ち壁が消失した……

 

「乱暴な姫だ……」

 

そう言って現れたのは堕天使三人組……

 

「行きなさい!」

「ありがとうございます!」

「行こう」

「はい」

 

一誠、木場、小猫は走って外に飛び出した。

 

「大丈夫か?」

 

一誠はリアス先輩を見ながら言うと木場が答えた。

 

「大丈夫だよ。部長は【紅髪の滅殺姫(ルインプリンセス)】って呼ばれてるからね」

「偉く物騒な名前だ」

 

一誠は言いながら更に速度をあげる。

 

(待ってろよレイナーレ!アーシア!)


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