【完】真・ハイスクールD×D夢想 覇天の御使い   作:ユウジン

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崩れる歯車

「ぷはぁ!」

 

一誠は牛乳を飲みきると一息ついた……現在一誠は地下2階にある風呂から上がったばかりである。ついに試合が明日ある……ゼノヴィアはレーティングゲーム初参戦だ。一誠もだが……

 

「さて……明日も早いし寝るか……」

 

一誠は欠伸ひとつして寝室に向かおうと階段を上がる……すると地下一階のトレーニングルームから人の気配……なんだ?

 

そう思い中を覗くと……いた、

 

「ん?一誠か」

「お前まだやってたのか……ゼノヴィア」

「まあね」

 

トレーニングルームで練習用の剣を振っていたゼノヴィアは一誠を見る。

 

「もう明日だぞ。無理しない方がいいんじゃないか?」

「…………どうしても不安がぬぐいされないんだ……アーシアは私を友人だといってくれた……それにたいして私が返せるのは勝利だけだ……勝ってアーシアに言い寄るディオドラを叩き返すことだけ……だがどうしても怖い」

「そうだな……」

 

一誠も自分の左手を見る……すっかり前回の特撮テレビで落ち込んでしまったドライグはここのところふて寝してる。そんなにショックか……俺もだよ。

 

「俺も何処かで負けたら……って考える。でも俺たちはやれることやるしかないんじゃないか?なぁに、いざとなったら俺が眷属ガン無視で速攻ディオドラを真っ先に潰せばいい。並みの上級悪魔には負ける気はしないぞ?何せ最上級悪魔と一ヶ月山に籠ったんだからな」

 

そう言うとゼノヴィアはクスクス笑った。

 

「そうそう。そうやって笑ってた方がいいよ」

 

一誠がそう言うとゼノヴィアは剣を下ろす。

 

「ありがとう。少し気が楽になった。一誠にはいつも助けられてばかりだね……一誠にも何か返したいな」

「別に気にするな……俺は別になん打算があって言う訳じゃない」

「それでもだ……とは言え一誠は私たちを頼ってくれないしね……」

「え?そう言うことは無いと思うけど……皆仲間だと思ってるぜ?信頼してるぞ?」

 

一誠がオロオロしながら言うとゼノヴィアは肩を竦める。

 

「冗談だよ」

「なんだ……」

 

一誠はフッと肩を下ろす。ゼノヴィアはまた笑った。

 

「私ももう寝よう……一誠の言う通り気を張っても仕方ない」

「そうだな……おやすみ」

「ん?一誠、頬に何かついてるぞ?」

「む?どこだ?」

「私がとろう」

 

そう言ってゼノヴィアの顔が近づきそして……

 

「ん……」

「え?」

 

チュッと頬にゼノヴィアの唇がくっ付けられた……

 

「冗談だ。悪魔の言葉をあんまり信じるとこう言うことになるぞ?」

 

と魔性の笑みをゼノヴィアは少し浮かべて笑うと手を振って去る……してやったりって顔をしていたぞあいつ……

 

「あのやろう……」

 

突然のこと過ぎて悪寒も来ないときたもんだ……と言うか脳の処理が追い付いてない……完全にやられたぜ……

 

なんて思いながら一誠は寝室に向かっていったのだった……無論そのあと理解が追い付いてきた為意識がサヨナラしたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……じゃあ会場に向かいましょうか……」

「よし」

 

一誠達は現在冥界の選手控え室にいた……ここから控え室についている転移魔方陣で転移して向かうため選手であるリアス先輩が率いるグレモリー眷属と一誠は魔方陣に入る。この魔方陣は時間になると自動的に発動するため遅刻厳禁なの余計な話だろう。

 

「では気を付けてくださいね」

 

と見送るのはアーシアと、

 

「あいつは絶対ブチ殺すのよ!」

 

とメルトダウン寸前の原発みたいなレイナーレである。

 

「……時間よ……――っ!」

 

時間になって魔方陣が発動……だがリアス先輩や眷属の面子は顔色が変わった。何事だ?

 

「魔方陣の発動がおかしいわ!全員気をつけて!」

 

言われてみれば確かに何か機械の暴走みたいな感じで魔方陣が動いている!

 

「アーシア!レイナーレ!」

 

咄嗟に一誠はアーシアとレイナーレを見た……すると何故かその二人も含めて次の瞬間全員が転移した……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……」

 

一誠達が出たのは広い荒野だった……遠くに神殿みたいなのも見える。

 

「魔方陣がエラーを起こしたのかしら……でも……――っ!皆!あれを!」

 

リアス先輩が叫び空を見ると無数の魔方陣が現れた。そこに登場する多数のどう見ても敵だ……

 

「くっ!」

 

敵はこちらに攻撃を開始する。それを朱乃さんが魔方陣を出して防いでいく……

 

「あれは確か旧魔王の一族の魔方陣……他にも多種多様ね……この光景……確かギャスパーのときの……」

「そう、禍の団(カオス・ブリゲード)だ」

『っ!』

 

全員が声の方を見た。するとなんとそこにはディオドラとそれに捉えられるアーシアがいた。

 

「アーシア!」

 

一誠は氣弾を溜めようとするがこの位置ではアーシアまで巻き込みかねない。アーシアは人間だ。下手な爆風に巻き込めば一誠じゃないので命に関わる。

 

「あなたまさか禍の団(カオス・ブリゲード)に通じたの!」

 

リアス先輩が激昂しながらディオドラをにらむ。だがディオドラは楽しそうに笑うだけだ。

 

「だってこっちの方が楽しそうだしねぇ。自分の好きなことをできる。だから少し転移魔方陣に細工しておいたんだ。アーシアは優しいからきっと見送るはずだしね。さぁ皆の衆、これから僕と勝負と行こうか。僕はこれから彼処の神殿にいく。君たちはそこに来るまでがまず第一段階だ。もしあんまり遅いとアーシアと契っちゃうからね。あ、赤龍帝……契るって何かわかる?まさかそんな純情ボーイじゃないよね?」

「ディオドラァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

一誠は叫びながら飛び出しそうになるが別方向からの敵の攻撃が激しく飛び出すのも危険だ……これではアーシアを救出する前にこっちが打ち落とされる。

 

「と言うわけで待ってるよ。まあこっちにこれるかも謎だけどね」

「待ちやがれ!」

「一誠くん!危険だ!」

 

祐斗に引き留められそのままアーシアを連れてディオドラは消える……

 

「くそ!」

 

一誠は歯を噛み締めた。だがまずはこれをどうにかするしかない……となれば禁手化(バランスブレイカー)で一気に壊滅させようか……と思ったとき、

 

「ふぅむ……さすが若いと言うのはいいことじゃのう。プリっプリのいい尻じゃて」

「きゃあ!」

『んな!』

 

そこに忽然と現れたには隻眼の老人じゃった……ただもんじゃない……が、

 

「おいこら爺!何リアス先輩の尻さわってんだ!」

「なんじゃ嫉妬か赤龍帝」

「違う!……って俺のことを……」

「ふむ……自己紹介したいがちと五月蝿いの……ホッ、と」

 

すると老人は杖で地面を突くと皆を囲むように結界が張られた。

 

「まあ手短に言おう。儂は北欧の主神・オーディンじゃ。そしてこの状況じゃがゲームを禍の団(カオス・ブリゲード)に乗っ取られた。今ゲームの運営者と各勢力の面々が迎え撃っている。しかしこのフィールドに張られた結界は頑丈じゃのう……儂一人入るのが限界だったわい」

 

そう言ってオーディン爺さんは通信機みたいなものを配る。

 

「全員耳にいれておけ、アザゼルと通信できるはずじゃ。さて……あとは儂がここの相手をするから行って良いぞ……たまには健康のために動かんといかんからの」

 

その言葉を聞いて皆は目で合図すると神殿の方に走り出す。

 

「相手は北欧の主神だ!撃ち取ればなが上がるぞ!」

「ふぉふぉふぉ……相手の強さもわからん愚か者じゃな……グングニル!」

 

次の瞬間……禍の団(カオス・ブリゲード)の構成員達は消し飛んだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【オーディンの爺から受け取ったみたいだな……】

「おいアザゼル!いったいどう言うことだ!」

 

一誠は叫ぶ……

 

【ここ最近の上級悪魔の突然死、そこから今回ディオドラ・アスタロトが禍の団(カオス・ブリゲード)を手引きし事を起こすと言うのは読めていた。何せ赤龍帝のレーティングゲーム参戦……多くの悪魔が注目してたし事実この場にも現魔王の関係者が多く観戦している。旧魔王派が多く所属する禍の団(カオス・ブリゲード)にとって今回ほど襲撃したいタイミングはないんだよ。だからそれを逆手にとった……どうしても裏切り者とかを燻り出したかった……】

「そして俺たちを囮に……?もし死んだらどうする気だよ」

【そんときゃ俺がどんな処罰でも受けたさ。俺の命で済むなら迷わず出した。今回の作戦を立案した作戦の責任くらいとるさ】

「……まあ今はそんなのはどうでもいい。アーシアがディオドラに拐われた!」

【何?マジかよ……分かった。直にここは戦場になる……俺も戦ってるがアーシアは助けるからお前達は隠れてろ……って行って聞くお前らじゃねぇわな……】

 

アザゼルの言葉に一誠達は当たり前だろうとうなずく。アーシアは仲間だ。それを救うのも自分たちの仕事だしディオドラは自分たちを指名していた。呼んでいた……ならいかねばアーシアが何されるか分かったもんじゃない。

 

【分かった。お前らは裏切り小僧のディオドラを潰してこい、ただしこれだけは覚えておけ……今回の作戦はかなり穴があった。何せ襲撃が漏れていたんだからな。だが逆に言えば多少露見してても問題ない作戦と言うことだ。死ぬなよ……って囮にした俺が言っても説得力ないな】

「まあそうだな……覚えておけよアザゼル……帰ってきたら一発殴ってやっからな」

【…………ああ、分かったよ。じゃあぶん殴れるようにちゃんと帰ってこいよ】

「ああ……覚悟しとけよ」

 

一誠達は通信を切る。

 

「じゃああの神殿に侵入したらそのまま突き進みましょう。どうせ来るのは露見してるわけだしね」

 

リアス先輩の言葉に皆はうなずく。そして神殿に入る……するとあのディオドラの声が消えてきた。

 

【来たみたいだね。ああ、もちろんこの声そこに飛ばしてるだけだから探しても意味ないよ。因みに居場所はこの奥さ……と言うわけでグレモリー眷属の諸君。ゲームをしよう】

 

一誠の額に青筋が走る。ゲームだと?

 

【お互い選手を出し合って行くんだ。一度だしたら僕のところまで使えないのがルール。あ、そこの堕天使ちゃんも出していいからね?後は好きにしていいんじゃないかな?あと第一試合はポーン八体とルーク二体を出す。あ、ポーンは全員クィーンに昇格してるけどいいよね?何せそっちには赤龍帝もいて眷属も強力なことで有名なんだからさ】

 

一誠は掌に爪が食い込んで血が滲む……どこまで人をバカにすれば気が済むんだ?だが向こうにはアーシアがいる以上要求は飲むしかない。

 

すると一誠達がいる場に十人現れる……ディオドラの眷属だろう。

 

「誰が出ます?」

「なら、ゼノヴィア、小猫、ギャスパーに……」

「私が出るわ」

 

といったのはレイナーレ……

 

「レイナーレ?」

「ほんとはディオドラをぶっ刺したいけど……それは一誠に譲るわ。その代わり一誠が全開の状態でディオドラのところに行けるようの露払いをする」

 

レイナーレの言葉にリアス先輩は頷いて今回の出場選手が決まった。

 

「そうだ一誠。アスカロンを貸してくれないか?」

「ん?良いけど何するんだ?」

 

一誠はアスカロンを出すとゼノヴィアに渡す。

 

「開戦の合図は派手な方がいいからね」

 

と、ゼノヴィアは言った……そして出場する面子がディオドラの眷属の前にたつと先手をとったのはゼノヴィアだ……ゼノヴィアの相手をするのはルークの二人……だがゼノヴィアは慌てることなくデュランダルとアスカロン交差させた。

 

「アーシアは私を友達だと言ってくれた……魔女だと……異端だと言った私に何事もなく接してくれた……だから私も友達として助けよう!だからデュランダル!力を貸してくれ!応えてくれ!アーシアを失わぬように!デュランダァアアアアアアアアアル!!!!!!!!」

 

するとデュランダルから強い聖なる光が発せられアスカロンと共鳴する……周りの彫刻とかまで余波で壊れていくぞ……

 

「デュランダルは暴れ馬だ……静寂を纏わせるには時間がかかる……だから私は破壊力と切れ味を増大させる!さぁいこうデュランダル!アスカロン!私の親友を助けるために応えてくれぇえええええ!!!!!!」

 

そう言って両刀を一気に降り下ろすゼノヴィア……その圧倒的なまでの聖なるオーラはディオドラのルークを吹っ飛ばした……なんつう破壊力……しかも悪魔が相手だから更に強力だ。

 

「ゼノヴィアに負けてられないわね!」

「はい」

「行きましょう!」

 

そう言って次の飛び出したのはレイナーレ、小猫、ギャスパーの三人……

 

「まずはあの吸血鬼を……」

 

そう言って八名の悪魔はギャスパーを狙う……流石に停止能力はバレてるか……だがその目の前に光の槍が襲いかかる。

 

「くっ!」

 

悪魔にとって光は弱点だ……レイナーレの光は悪魔の牽制に十分すぎる。

 

「怯えるな!所詮は下級堕天使だ!対した量の光の槍は作れない!」

「はん!……一体何時の話かしらぁ?」

 

黒い笑みを浮かべたレイナーレ……その背に生える漆黒の堕天の翼……それは……一対ではなく二対ある。

 

「残念ながら夏休みの間に昇格したの。総督からの扱きよ?成長がないわけないでしょ?」

 

そう言ってレイナーレの周りに無数の光の槍が現れる。アザゼルが出すのに比べて明らかに本数は少ないが八本以上の槍……それが一斉に襲い掛かった。

 

「ちぃ!」

 

悪魔達はそれを魔力で払う。直接は無理でも払うだけなら簡単だ……が、

 

「見えました!」

『っ!』

 

払った際に起きた砂塵が晴れた瞬間八人纏めて視界に入れたギャスパーは予め採っておいた一誠の血を飲んでおき力を解放……それによりポーン達は時間が止まった……

 

まさか光の槍が陽動とは思わなかったんだろう……まあ悪魔に大ダメージを与える光を中心に組んでくると考えるのも普通かもしれない。

 

「終わりです……」

 

そして猫耳尻尾モードの小猫は前々からこっそり練習していたが今回アーシアを救うためついに使う覚悟を決めた仙術の力を解放し八人体を次々触れてすり抜けた……そして時が動き出すも……

 

「あ、あれ?」

 

相手は何故か何故か動けなかった……外傷はない……だが動けない……

 

「仙術は相手の中に作用します……あなた方の筋肉を動かないように麻痺させただけですが……当分動けません」

 

四人は視線を交差させると頷いて宣言する。

 

『(私)(僕)達の勝ちだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後相手をギャスパーの催眠術で眠らせるとロープでグルグル巻きにし魔力を練れないようにしてから一行は先を目指す……そして次の開けた場所に出ると……確か映像で見たときに覚えたがディオドラのクィーンとビジョップが一人ずつだ。

 

「なら私がいきますわ」

 

と言ったのは朱乃さん……すると、

 

「私も出るわ」

 

そう言って先輩も出ていく。

 

「あら部長も?頼もしいですわね」

 

オカルト研究部の部長・副部長コンビ……これなら安心か?と思ってると小猫に裾を引っ張られた……何事?

 

「どうした?」

「少しお話が……」

 

と小猫に朱乃さんが強くなる方法を教わる……そんなのでいいの?

 

「あ、朱乃さん……」

「なぁに?一誠くん」

 

ホンとにこんなんでいいのかなぁ?

 

「その人たちに完勝したら今度の日曜日……一緒にデートしましょう!……ってこれでいいの?俺とのデートで朱乃さんが強くなるわけ……――え?」

 

突然も稲光……見てみれば朱乃さんの全身に雷が迸る……な、何事でござんす?

 

「ウフフフフフフフ……一誠くんとデートできる!」

「ひどいわ一誠!私と言うものがありながら!」

「私の愛が一誠くんに通じた証ね。諦めなさい」

「デ、デート一回で雷を迸らせる卑しい朱乃に言われたくないわ」

「あらあら嫉妬する女は醜いですわよ?」

「何ですって!」

 

あの……喧嘩しとる場合ではない気が……ほら、向こうの相手も怒っていらっしゃいますよ?

 

「貴女方いい加減にしなさい!私を目の前に男の取り合『五月蝿い!!!!!!!!』――っ!」

 

相手に襲いかかる雷と滅び……二人の何倍にも増大した魔力に為す統べもなく相手は倒された……すげぇあっという間……と言うか何だこの勝ち方……相手も何があった状態の顔で気絶してますよ?しかも口論は終わらず……

 

「大体あなたは一誠の何を知ってるの!私は一誠を触りまくってるから分かるわ!」

「それだけでしょう?私は一誠くんを受け入れる覚悟を何時もしてますわ」

 

バチバチ迸る視線のにらみあい……

 

「良いわ、アーシアを助けた後にゆっくり話し合いましょう」

「そうね、じっくり話し合いましょう」

 

意見が一致したようだ……そう言えば北郷家家訓第四項【女の喧嘩には下手に手出し口出しするな……痛い目に会うぞ】とのことだったが……成程、今回の相手がそういうわけですね。よくわかりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて残るのはナイトが二人か……でも最後に何でナイトなんだろう……映像で見たけどそんなに強くなかった。祐斗やゼノヴィアの方が強い。だがそこに現れたのは……

 

「やぁやぁお久し~」

「フリード!」

 

そう、そこにいたには白髪の神父、フリードだった……

 

「俺っちしぶといのが取り柄でしてね~生きてござんした!でもアザゼルからリストラ喰らって今は禍の団(カオス・ブリゲード)に所属してまーす!」

 

だがなぜこいつがここにディオドラのナイトはどうした?

 

「もしかしてナイトをお探し?残ねーん……俺っちが食っちゃいました」

 

…………は?何をいってんだこいつ……食っただと?

 

禍の団(カオス・ブリゲード)のやつら俺を改造しやがってよ……合成獣(キメラ)だってよぉ!」

 

メキメキ音をたてながらフリードの体が肥大化していき変色する……明らかに既に人ではない……何と言うこともできない生き物だった……

 

「そう言えば知ってるかぁ?ディオドラ・アスタロトの女の趣味……」

「何?」

「ディオドラはなぁ……教会に通じた女が好きなのさぁ……そう、シスターとかな」

「……………………………………」

 

一誠は自分の体が冷えていくような感覚がした……まて……まさか……いや、やめろ……そんなまさか……

 

「さっき君たちが倒してきた女も元は聖女とかさ……家で囲ってる女もそう。元をただせばぜーんぶシスターさ。最高の趣味だよねぇ!そしてある日ディオドラ・アスタロト君は自分の好みに最高に合致する女の子を見つけちゃった……名前は……アーシア・アルジェント……でも中々警備が固くて上手いこと連れ出せそうにありません……そこで一芝居ってわけでございます。重症の悪魔になって彼女の前に現れて治療されてしかも誰かに見せちゃえば彼女の信用は地に堕ちてしまうんじゃねってね」

 

何だよそれ……アーシアは後悔してないって言ってたんだ……誰かが傷ついてたから治した……それだけなのにあの野郎の芝居の一つだったのか?そんなのないだろ!そんなのあんまりだろ!

 

「そして教会から追放され消沈した彼女なら自分のところに靡くだろう……そう考えていたそうでございます。いやぁ!ホンと最高のイカレ野郎だぜ!上げて落とす何てもう僕ちん興奮して夜も眠れません!」

「……………………」

 

グラグラと一誠の中でマグマが煮えたぎる……今にも噴火しそうな所で祐斗が前に出た。

 

「君の怒りはディオドラ・アスタロトまで取っておくべきだ……あれは僕がやる」

 

そう言うと祐斗は聖魔剣を作り出し歩を進める。

 

「お前はあん時の腐れナイトさんじゃあありませんかぁ!お前のお陰で俺っちこんな素敵な体を手にいれちゃいましたよぉ!つうわけで楽しませてく…………あれ?」

「君はもう居ない方がいい……」

 

フリードが気がつくと自分の体が突然崩れていき、祐斗は自分の背後にいた……

 

「は?……え?嘘だろ……俺はナイト二人分の力も……」

 

首だけ残ったフリードは呟くが祐斗は冷ややかな目で見る。

 

「なら僕は君が食らったナイト二人より強い……それだけだ」

「かは……お前らはわかってねぇ……お前らじゃディオドラは倒せたっていずれ勝てねぇ相手が出てくる……禍の団(カオス・ブリゲード)には赤龍帝より強いやつだっているんだぜ……お前らはいつか死……」

「黙れ」

 

フリードの頭に祐斗は聖魔剣を突き刺し静かにする。

 

「続きは地獄の門番に吠えてるといい」

 

流石イケメンの貫禄ってね……あいつホンと強くなったんだな……グレモリー眷属の中だったら多分純粋な強さはトップだろうな……

 

「さぁ、行こう!」

 

一誠達一行は最後の扉を開けた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーシア!」

 

一誠達が入るとそこには目を赤く腫らしたアーシアがいた……ん?何だろう……アーシアの雰囲気が変わった気がする。

 

「やぁ、来たね」

「ディオドラ……」

 

一誠はディオドラを睨み付けた……それを見てもディオドラは余裕の表情……

 

「お前まさか話したのか……」

「ああ、そうだけど?」

 

何だこいつ……よほど死にたいのか?そんなにぶちのめされたいのか?なら叶えてやろうか?

 

「全部教えたよ……君たちにも見せたかった……教会の女が落ちる瞬間はいつ見ても興奮するよ……」

「…………………………」

 

ボコボコ音をたてて一誠の腸が煮えていく……

 

「本当わね、そこにいる堕天使がアーシアを殺したところでその堕天使と仲間達を殺して彼女をビジョップに転生させるつもりだった。なのに殺さないわ挙げ句人間が乱入してきてしかもそいつは赤龍帝……僕の計画は滅茶苦茶だ……でも許すよ。お陰でもっと強く落とせたしね」

「………………」

 

一誠はこのままぶちのめそうと腰を落とした……だが次の言葉に耳を疑った……

 

「何を怒るんだい?()()()()をどう扱おうと僕の自由だろう?」

「…………え?」

 

一誠はアーシアを見た……ポロポロ涙を流しながらアーシアは俯く……そして現れるのは黒い翼……

 

「ディオドラ……貴方無理矢理転生させたのね!」

「別に良いじゃないか。有能な者をわりと無理矢理転生させたりする悪魔は多い。グレモリーやシトリー、あとサイラオーグみたいなのはまだまだ少数派だ」

 

そんなリアス先輩の会話は一誠には入ってこなかった……

 

「あ……あ……」

 

彼女は言ってくれたはずなのに……約束してくれたのに……

 

【一誠さんと同じようの年を取ってお祖父ちゃんとお祖母ちゃんになって……二人で縁側でお茶を煤って猫を膝にのせて……私はそういう風に一誠さんと一緒にいたいです】

 

と……一緒の時を刻みたいと……そう言ってくれたのに……守ると約束したのに……どんな害も払うと言ったのに……

 

「そう言えばアーシアはまだ処女だよね?赤龍帝のお古は嫌だな」

 

黙れよ……

 

「あ、でも赤龍帝から寝とるのも楽しいかもね」

 

周りはディオドラに怒ることすら忘れた……なぜこの男は気づかない……一誠の目は既にディオドラ・アスタロトという男をどう絶望させようか考えてる目だ……もう辞めろ……これ以上龍の逆鱗に触れるな……

 

だがそんな思いも虚しく最後の一押しをするという愚行をディオドラは犯した……

 

「君の名前を呼ぶ彼女を無理矢理だくのも良いかもしれないね」

「よほど……死にたいようだな」

 

《Welsh Dragon!Balance Breaker!!!!》

 

一誠は赤い鎧に身を包むと前に出る……誰も一誠に加勢しようとかなんて考えない。ただそれを見送る……ディオドラに対して呆れや怒りを通り越し既に哀れみすら覚える……この男はどこまでも馬鹿なお坊っちゃんだ。

 

「すごいオーラだね!でも僕にはこれがある!禍の団(カオス・ブリゲード)の長、オーフィスの血からを宿した蛇。これを使えば……」

 

そう言って蛇を飲み込むとディオドラの力が上がる。だが一誠はそんなのは関係なしに間合いを詰めた……ディオドラは近づかれたことに気付いてない

 

「ハハハ!すごい力だ!これで君も瞬殺ばべっ!」

 

何時までくっちゃべってんだ……一発入れられたぞ……

 

「ば、馬鹿な……速すぎ……」

「そうか?」

 

一誠はディオドラの胸ぐらを掴んでボディブロー!

 

「ごぶっ!」

 

ディオドラは血を吐くが一誠は構わず地面に叩きつけた。

 

「がべっ!ぶべっ!」

 

ディオドラは転がりながら一誠を見る……

 

「ぼ、僕はアスタロト家のディオドラだぞ!お前みたいな薄汚いドラゴンの人間に負けるはずがない!」

 

そう言って魔力を放つ……避けても良いけど……周りが危ないか……じゃあ氣を出して……

 

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

「え?」

 

ディオドラは唖然とした……何故なら一誠の氣弾が放たれた次の瞬間自分の魔力は消し飛び後ろの壁が吹っ飛んだのだ……そして一誠は悠々と歩いてきた。何がアスタロトだ……これならタンニーンのおっさんやヴァーリの魔力の方が桁違いだったぞ。

 

「ひぃ!」

「オッラァ!」

 

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

一誠は倍化させた力で蹴りを放ちディオドラを蹴り飛ばす。

 

「べぶぇ!」

 

変な声を漏らして吹っ飛ぶディオドラ……

 

「な、何で……僕はこの力でサイラオーグにも勝つ予定なんだぞ……」

 

うわー命知らず……お前その程度じゃサイラオーグさんなんかに返り討ちだよ……そんなぬるま湯のお坊っちゃんにはあの人は荷が重すぎだ。

 

「ふん……」

 

笑ってやるとディオドラは激昂する。

 

「何がおかしい!」

 

そう言ってまた魔力……だから痛くも痒くもねぇって……

 

「ウルァ!」

 

一誠の蹴りあげ……それはグチャっという音をたててディオドラの股間に入る……

 

「■▽▲●★◆■□▼〓◇△◆★▼▲!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

声になってない悲鳴をあげてディオドラは転げ回る。まあこの痛みは男しかわからんよな……でもこれで女には手は出せねぇよな?

 

「ひぎぃ……何でこんなことにぃ……ひっ!」

 

一誠はディオドラの胸ぐらを右手で掴んで持ち上げると左手に氣を溜める。

 

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

「オラァ!」

「べびぶし!」

 

顔にメリメリめり込む一誠の拳……母からならった技?使わねぇよこんなクズなんぞに……技が腐る。

 

「いだい……いだいよぉ……」

 

ディオドラは吹っ飛ぶとそんなことを呟きながら泣く……泣いてももう遅いけどな……

 

「ヒィ!」

 

一誠が近づくとディオドラは逃げようとした……だが転んだ……

 

《Blade!》

 

「え?」

 

何でか立てない……何で立てない?そして見てみると……

 

「イギャアアアアアアアアア!!!!足がぁ!僕の足がぁああああああああああああああああああ!!!!僕の足がぁあああああああああああああああ!!!!!!!」

 

ディオドラは腿の辺りからバッサリ切られて切り離された両足を見て叫ぶ……

 

そして一誠はアスカロンをしまいながら足を切り落としたディオドラの傷を踏みつける。

 

「ギャアアアアアアアアアア!!!!いだいぃいいいいいい!!!!!!!死んじゃう!いだいよぉおおおおおおお!!!!!!!」

「死なねぇだろ……これくらいなら……」

 

そう、なまじ人間よりはるかに頑丈だからこそ意識も失わないし死にもしない……分かっていて一誠ももう逃げられないように足を切り落とした……

 

「オォ!」

 

そして一誠はディオドラを持ち上げると再度倍化して、ぶん殴る。

 

「けっぺぇ!」

 

ディオドラの顔が一誠のグーの形に凹んだ……

 

「ふん!」

 

もう一回持ち上げて倍化させて殴る……

 

「ぺぷぇ!」

 

歯が折れた?いや、砕けた。自慢の歯並びはグチャグチャだ。

 

「いだ……いよぉ……しん……じゃう……よぉ……」

 

必死に這いずって逃げようとするが一誠の歩く速度の方が速いに決まってる。そして持ち上げられて倍化させたパンチ……

 

「けぴ!」

 

鼻が折れた……と言うか陥没した……

 

「ひ……ひ……」

 

ディオドラは一誠を見て逃げようとするがもう殴られ過ぎて逃げる体力もない。

 

「ウラァ!」

 

グシャっと一誠はディオドラの顔を蹴りつける。

 

「へぎっ!」

 

転がってディオドラは涙をボロボロ流しながら一誠を見る。

 

「も、もうやめれくへ……ゆるひてくへ……なんでもするから……」

「なら許されようと思わないでいてくれ」

 

そう言ってまた踏みつけるように蹴っ飛ばす。ディオドラが悲鳴をあげた……

 

「な、なんでぇ……おかしい……こんなのおかしい……おまえはにんげんなのに……せきりゅうていだからってあきらかにおかしぃ……」

「残念だが……俺は自称人間だからな」

 

と、皮肉げに言ってやり一誠は蹴り飛ばす。

 

「いだい……も、もうだめだ……い、いくらほしい……?いくらでてをうってくれる?それとおんな?ぼくのじっかにはいいおんながべびっしゅ!」

 

まだ言うか……こいつはとことん腐ってんな……金や女で解決できる場合じゃないぜ?お坊ちゃん。

 

「げぼ!がは!もうむり……やめて……ください……もう……むべびぃ!」

 

手を踏んづけてやった……メキャっと変な音をたてて変な曲がりかたになってる……砕けたか?しかしこいつの口はよく動くなぁ……

 

「らぁ!」

「ごゅ!」

 

なので顎を蹴り上げて砕いてやった……もう顔なんか元の部分がないぞ?

 

「あが……が……」

 

顎が砕けてうまくしゃべれないらしい。良いことだ。これで少し静かになる。

 

「うぉおらあ!」

 

ベキィ!っと腕も蹴りでへし折っておこう……あと壊せる場所あるかなぁ?と転げ回るディオドラを見ながら一誠は目障りなので体を踏みつけて動けなくした……

 

「あぎぎ……」

 

ディオドラの顔は恐怖に歪む……

 

「ぜ、ぜぎろゅうで……は……あま……い……おと……こじゃ……」

 

誰に聞いたんだ?それ……あぁ~でも俺って確かに甘いかも……戦いの時に油断してたりわりとするし相手に対して本気出せなかったりするかも……うん。実は自覚あるんだよね……結構その辺はさ……でも……実際俺の本性は結構残酷だぜ?でもそんな顔してるより俺は皆と笑って平和にいたいんだよ……それをわざわざお前みたいなやつがぁ……壊すんだよな……

 

「俺は確かに甘いよ……でもなぁ……家族を……妹を……手を出されて冷静にしてられるほど俺はまだ……大人じゃねぇんだよ!!!!」

 

ガゴン!っと打ちおろした拳はディオドラの顔の真横を通りクレーターを作る……

 

「喧嘩売るときは……相手をよく選ぶことだな……」

 

これ以上は興が冷めるだけだ……もうやめよう。殺したい気はある……でもなんかこれ以上続けたら別のなにかが出てきそうなんだ……自分で言うのもなんだが今の自分はアーシアを悪魔にされて少し精神的に不安定だ……

 

「良いのか一誠……殺しておいた方がいいんじゃないか?もう虫の息ではあるが……」

 

とゼノヴィアが聞くが首を振る。

 

「こいつも一応現魔王の血筋だからな……冥界の法律に任せた方がいいし……殴るのにも疲れた……」

 

こういうやつは……殴る方も精神を消耗するんだ……こう言うクズは……殴ってもこっちが萎えてくる……それよりアーシアだ。

 

「アーシア!」

 

一誠は鎧を解除してアーシアに駆け寄ると捉えていた縄を解いて……

 

「ごめん……」

「あ……」

 

一誠はアーシアを抱き締めた……

 

「ごめん……本当にごめん……約束したのに……守るって言ったのに……ごめん……ほんとにごめん……」

 

一誠の目からポロポロ涙が流れていく……

 

「……一誠さん……」

 

だがアーシアは向けたのは笑顔……

 

「助けに来てくれて……ありがとうございます」

「――っ!……アーシア……」

 

一誠は一層強く抱き締めた……

 

「信じてましたから……助けに来てくれるって……それにあやまるのは私です……一緒の時を刻みたいと言っていたのに……刻めなくなっちゃいました……」

「なら……一万年分思いで作ろう!俺頑張っても後百年くらいが限界だけどたくさん作ろう……!な?」

「……はい」

 

それを見てリアス先輩は生きてるのが不思議なくらいのディオドラの元にたつ。

 

「ディオドラ……」

「ぐ、れもり……?」

 

ディオドラの顔の前に落とされたのはリアス先輩のビジョップの駒……

 

「トレードしましょう?嫌とは言わせないわ……私としては貴方の眷属と言う事実をゼロコンマ一秒でも早く解消しておきたいの……嫌といったら……滅ぼすわ」

「ひぎっ!」

 

完全に身も心も砕かれたディオドラに抵抗する力はない。大人しくトレードに応じた……

 

「さ、これでアーシアもグレモリー眷属の一員ね。まさかこんな形で貴方が加入するとは思ってなかったわ」

「え、ええと……これからよろしくお願いします」

 

と、辿々しく挨拶するアーシアを見て皆は笑う。ああ、やっぱこうじゃないとね……

 

「じゃあ後は任せて俺たちは離脱しようか」

「あ、その前に少しお祈りを……」

「おいおい、ダメージ入るぞ……今度ミカエルさんに頼んでアーシアも見逃してもらえるようにするか……でもあれって特別だよな……」

 

そんな頭を抱える一誠を見ながらアーシアは少し離れると手を合わせる……うぅ!頭がいたい……でもどうしても祈りたいこと……

 

(主よ……お願いを聞いてくださいますか?悪魔になった私のお願いを聞いてくださいませんか?どうか一誠をお守りください……そして、一誠さんとこれからも楽しく暮らせるように……)

 

そう祈った一人の少女の願い……その少女は……光に包まれ消えた……

 

 

『え?』

 

 

 

 

 

誰にも何が起きたのか理解できない……しようもない……

 

「愚かで脆弱な男だ……」

 

そう言って降り立ったのは一人の男……冷たいオーラをまとったその男は一誠君達をみやる。

 

「お初にお目にかかる偽りの魔王の妹よ……私はシャルバ・ベルゼブブ……真の魔王の血族だ」

 

旧魔王派……恐らく今回の首謀者だ……でも一誠には届いていない……

 

「さて、貴公らには死んでいただこう。理由は簡単、現魔王の血筋だからだ」

 

シャルバの目は憎悪に彩られている……余程現魔王に恨みがあるらしい……

 

「そう……ならばなぜ私ではなく……アーシアを!」

「より強く絶望させるためだよ……魔王もその血筋も強い絶望を胸に死んでいってもらわねば、我らの気が収まらない」

 

たったそれだけ?たったそれだけの下らない理由で?ふざけるな……冗談じゃない……

 

「今ごろあの女は次元の狭間だ……無にでも当てられて消滅しただろう」

「ふざけるな!」

 

リアス部長の体から滅びの魔力が……他の皆もそれぞれ構える。一誠くんは……

 

「クヒヒ……」

 

笑っていた……目はどこまでも暗く淀み……笑っていないが口許だけで笑っていた……ひどく不気味な笑みだった……

 

「なんだアーシア……かくれんぼかぁ?どこにいるんだぁ?」

「っ!」

 

まずい……一誠くんの中で何かが壊れてしまったんだ……元々さっきの行動で理解できたが一誠くんはディオドラのアーシアさんを眷属にして悪魔にされてしまった……自分の手が届かなかった……それゆえにある種の責任を感じたんだろう……それ故に一誠くんはかなり不安定になっていた……それがアーシアさんが消されたことで完全に均衡を崩してる!

 

「先輩ぃ……アーシアがいないんですぉ……帰るって言ったのにぃ……今度ケーキ焼くって約束したんですけどねぇ……体育祭も頑張るっていきこんでたんですよぉ……ああ、帰ったらカメラも買わなきゃなぁ……」

 

見てられなかった……一誠くんの中にあった歯車が音をたてて崩れていく……そして、

 

「アーシアを……」

「かえせぇ!」

 

飛び出したのはレイナーレさんとゼノヴィア……二人は光と聖剣を携えシャルバに襲いかかる……

 

「雑魚が」

『がっ!』

 

二人は吹き飛ばされた……仮にも旧魔王の血筋……恐らく強化もしているだろうがディオドラとは比べ物にならないほど強かった……

 

「アーシアを返せ……私の……友達を……」

「そうよ……返しなさいよ……私の……妹分を……」

 

だがそんな二人を無視してシャルバは一誠くんをみた。

 

「下劣な転生悪魔に汚物同然のドラゴン……グレモリーも姫は趣味が悪い。おいそこの赤い汚物。あの娘は既に次元の狭間で死んだだろう……諦めて絶望の縁に沈むといい」

 

一誠くんはただ黙ってシャルバを見た……そしてゆっくり立ち上がるとシャルバの方に歩き出す……

 

「一誠……あつっ!」

 

一誠に触れようとした瞬間体を高密度に覆う氣がリアス部長を弾いた……

 

《リアス・グレモリーよ……警告だ……すぐに離れろ》

「ドライグ?」

 

いきなりのドライグの言葉に皆は呆然とする……だが、

 

《そこの愚かな悪魔よ……シャルバといったか?お前は選択を……》

 

次の発せられた言葉は一誠くんの声とドライグの声が重なっていた……

 

「《間違えた》」

 

圧倒的なオーラ……禁手化(バランスブレイカー)状態になった一誠くんの周りから老若男女の声が重なり背筋が凍るような呪詛が呟かれる……

 

 

『我、目覚めるは――――』

〈始まったよ〉〈始まってしまうね〉

 

 

アザゼル先生が一度だけ呟いたことがあった……

 

一誠くんは優しいと……それ故に敵に殺意を抱くことが少ない。例え自分が怪我を負っても仲間を傷つけられなければ激昂しない……それ故に相手に負けないために強くなろうとする傾向がある……と、タンニーン相手でもヴァーリ相手でも倒すことを目標にしても殺すことは目標になっていないと……相手を殺すことに拘っていないと……不殺主義ではない。ただ無意識にそうだと……それが逆に一誠くんの器の大きさを表してると……

 

 

「覇の理を神より奪いし二天龍なり――――」

〈いつだって、そうでした〉〈そうじゃな、いつだってそうだった〉

 

 

でも今回は違った……明らかに一誠くんは途中でなんとか思い止まったが殺す気だった……殺意を抱いていた……多分……今までで初めてだと思う。明らかにいつもとは違う一誠くん……明らかにでも同時に一誠くんとは違うなにか別のものも作用している気がしたんだ……

 

 

「無限を嗤い、夢幻を憂う――――」

〈世界が求めるのは――〉〈世界が否定するのは――〉

 

 

一誠の頭には言葉が響く……

〈お前は所詮なにも救えやしない〉辞めてくれ……

〈お前は所詮弱い人間〉違う……

〈なにもできやしない〉俺は……

〈所詮は口だけ……なにも救えやしない〉違うんだ……

《お前はなにかを救えたのか?いつだってそう……何処かで何とかなるだろうという思いがどこかにある……それ故にお前はいつも後手……》それは……

〈だが恥じなくていい……お前は人間だ……だから俺たちが力を貸そう〉力を?

〈さぁ……力に身を任せよう……全てを滅ぼそう……〉そうか……力を……

 

(ああ……そうだな……シャルバ(あの男)を殺すために力を……)

 

「我、赤き龍の覇王となりて――」

〈何時だって、力でした――〉〈何時だって――愛だった〉

 

 

一誠くんの鎧のフォルムが鋭角に……そして纏うオーラは激しくも禍々しく……

 

 

《何時だってお前たちは滅び選択するのだな!》

 

一誠くんの体から明らかに人でも悪魔でもない……ドラゴンとも思えないほどの圧倒的な立ち姿……

 

「「「「「汝を、紅蓮の蓮獄に沈めよう――――」」」」」

 

「『《覇龍(ジャガーノート・ドライブ)!!!!!!!!!!!!!!!!》』」

 

咆哮……圧倒的なオーラパワーをもって赤き暴龍が目覚めの産声を上げたのであった……




イヤ今回は長すぎた……途中で切るべきだったか……まあいいか……

ディオドラはこれくらいボコれば良いかな?もっとかな?イヤ、さすがにこれ以上は死ぬか……

と言うわけで最後に覇龍化して次回!そしてアーシアは悪魔に……はい、ちょっともしかしたら叩かれるんじゃないかとビビってます。もしかしたらこのまま人間のままだと思われたかたがいたかもしれません。と言うか多分その人が多いはず……でも皆さん、一誠のこの後を書いていく上で外せなかったんです。

あんまり詳しくはネタバレの部分も出てくるのでかけませんが今回は一誠が初めて経験した助けられない……云わば自分の手が届かないと言う結末……誓っても誓いを果たせないと言うある種のバットエンド……自分の力はすべてを払えるものではないと言う事を知ってもらうためのイベントでした。一誠はあくまで今の時を生きてる者です。生きてる一人の者である以上全てのイベントをなんの失敗もなしに一人で解決はできない。寧ろ今まで死人がでなかったのが奇跡……と言う事を理解してもらうためでした。ゼノヴィアが最初で一誠は人を頼らないと言うのはそこに繋がって来ています。無論今回の救出戦には皆も協力してますがそれでも何もかも一人でやってしまおうとする癖や一人で全部の責任を抱え込んでしまう癖があるつもりで一誠は書いてきましたのでそういう意味で一誠に一度失敗させたかったんです。その為にはどうしてもアーシアを悪魔にするしかなかったんです……

と言うわけで次回は一誠暴走偏……お会いできたらお会いしましょう!

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