【完】真・ハイスクールD×D夢想 覇天の御使い 作:ユウジン
「さて、ディオドラ対策にこの間ディオドラが行った非公式のレーティングゲームの映像を借りてきたわ」
ディオドラが来訪してきてから三日後……リアス先輩がそう言ってDVDを見せてきて皆でそれを見る……
最初は普通の戦いだった……ディオドラもまああれだ。戦闘能力も低いわけではないようだ。一応そこは上級悪魔の家柄の血筋の影響か弱くない……だが異変は途中から起きた……なんと突然ディオドラの魔力が羽上がったのだ。そしてディオドラが突然の無双……何が起きてるのかわからなかった……それを見てリアス先輩も眉を寄せる。
「ディオドラは確かに弱い訳じゃないけど……彼処までの筈は……」
リアス先輩の言葉に一誠も同意する……何せ来訪の時に感じた魔力(一誠も最近魔力を感じれるようになってきた)は低いわけではないが映像で見るほどではなかった……無論力を隠していたことも考えられるが不自然さが残る。
「キナくせぇな」
アザゼルも同意だったらしい。
「まあこうやってみても戦いには特別な物はないわ。作戦もレーティングゲームの本に普通に載ってるくらいの物だし私達なら余程のドジを踏まない限り負けはしないわ。それに今回は一誠もいるもの」
「ええ。フッフッフ……合法的にあいつをボコれるぜ……」
一誠は心底嬉しそうだ。
「楽しそうだね……一誠くん」
「当たり前だろう。絶対負けん!俺はアーシアを嫁には出さんと決めたんだ!」
「一誠!二度と表に出れないように害虫……じゃなかった。ディオドラをボコってきなさいよ!」
「任せろ!」
とそんなやり取りをする一誠とレイナーレはを見て、おめぇら本当に過保護なやつらだな……とアザゼルは苦笑いした……
「あ、そうそう。序でにサイラオーグのゲームも借りれたから見ましょう」
「あの人もですか?」
「ええ、若手悪魔の懇親会で少しいざこざがあったときにサイラオーグが諌めたんだけどそれの意趣返しって奴ね……大方ゲームなら勝てると踏んだんじゃないかしら……まあ結果は映像で見ればわかるわ……」
そう言って見せられる映像……ハッキリ言って圧倒的……という言葉すら生温い戦いだ……サイラオーグさんの相手のヤンキーみたいな悪魔やその眷属が放つ魔力弾をサイラオーグさんは素手で弾く……しかも弾いた先で自分の眷属の方に飛ばないようにしているのが簡単にわかる……言っておくがヤンキー悪魔は弱い訳じゃない。後で聞いたが元魔王のグラシャラボラスを排出していてしかも元々家督を次ぐはずだったこの悪魔の兄が急死して代理と言う形であるとはいえ十分実力はある……だがそれなのにサイラオーグさんの前にいるとライオンの前にたつネズミ……窮鼠猫を噛むという言葉があるが圧倒的な存在である獅子の前に噛みつくということすら許されない……反撃ということすら出来ない……若手最強の称号は……伊達じゃない。
無論喧嘩を売ったヤンキーみたいな悪魔は愚かだが……終盤では完全に飲まれていて眷属たちもサイラオーグさんに襲いかかるもワンパンで沈められて転送される……レーティングゲームは一定以上のダメージを喰らったり気絶したりすると強制的に転送されるのだが恐らくサイラオーグさんは相当拳撃を手加減してる……多分本気で殴ったら転送される前に殺しかねないんだろう。相手を舐めてるわけじゃ勿論ない……だがそれでもこの男は本気を出す必要がない……と言うか出したら明らかなオーバーキルをしてしまうんだろう……
そして最終的にサイラオーグさんとヤンキーみたいな悪魔の一騎討ちだがサイラオーグさんに何発撃ち込んでも効果はない……そしてたった一発……たった一発の拳をそいつに叩き込む……防護障壁を張ったがそんなものは無いに等しくサイラオーグさんの拳は相手をぶっとばした……
「勝負になってない……」
小猫の一言に皆はうなずく……完全にサイラオーグさんの勝利……と言うか勝負になってないため相手に同情すらしそうになってしまうほどだ……しないけどな。相手の戦力比くらい考えて喧嘩は売るもんだ。
「でももうあのヤンキー悪魔は潰れましたね」
と一誠が言うとアザゼルは同意した。
「そうだな……完全にサイラオーグに精神を砕かれてる……」
映像の最期に一瞬だけ映ったヤンキー悪魔の顔……完全に恐怖に飲まれプライドを砕かれた……たった一度の敗北……だがその一度があれではな……
「それで一誠……お前から見てサイラオーグはどうだ?」
「…………もしかしたらなんですけど……サイラオーグさんってバアル家の滅びの魔力使えないんですか?」
気になったんだ……もしかしたら殴ったりする方が得意なのかもしれないが幾らなんでも全部素手て言うのは考えにくい……
「ええ、サイラオーグは滅びの魔力……いえ、普通の魔力すらもほとんど使えないわ」
リアス先輩の言葉に一誠やっぱりと思う……だって今まで見てきた悪魔は修行何てしているようには全然見えなかった……リアス先輩は例外としてね……だがサイラオーグさんは違った……ボロボロの手……そして服の上からでもわかるほどの筋肉……どう見ても修行の結果だ……
「サイラオーグは悪魔のなかでも変わり者だ。才能はなく……滅びの魔力も受け継げなかった。それ故に実家からも嫌煙されててな……だがそれを補ってあり余るほどの修練……ひたすらに自分の肉体を磨き昇華し続けた。リアスなんかも修行をする珍しいタイプだがサイラオーグのは文字通り桁が違う……」
アザゼルの言葉には頷けた……それをこそあの手を見ればわかる……拳が砕けても突き続けたんだろう……血反吐を吐いても立ち続けたんだろう……生まれた瞬間から負け始めたんだろう。何故ならバアルの滅びの魔力を受け継げなかったんだから……それからも負け続けて負かされ続けて……何度も膝を降りそうになって……そして最期に立ち上がったんだ。
それが今のサイラオーグさん……生まれたときから負け続けたからこそ本当の意味で敗北を糧にする……それゆえの圧倒的な強者なのだ。負けることを知っているから勝つことを知る……
そうして手にいれたのがバアル家の次期当主の座……バアル家始まって以来の滅びを持たないバアル……こういうタイプは厄介だが……戦えたら楽しいだろうな……
「一誠……お前少し戦ってみたいって思っただろう」
「え?」
「お前今凄くワクワクした顔だったぞ……」
マジか……するとアザゼルはため息をつく。
「普通あんなの見たら戦いたいと思わなかったり、あとはどうやったら勝てるかと考えるのはあるがな……だが一誠のは自分の力とぶつけ合わせたいっつう純粋な戦闘願望だ……ヴァーリといいお前といい二天龍は何処か変だぜ……」
「あはは……」
一誠は苦笑いした……でももしサイラオーグさんと戦うことができたら……自分の全てをぶつけ合わせたい……サイラオーグさんの本気を見てみたい……そう思ったんだ……
「あ、そういやお前ら冥界のテレビから取材が来てるぞ」
「え?」
「三日後くらいに冥界のテレビ番組に出演のオファーが来てるから準備だけしとけよ」
「ずいぶん突然だな……」
「驚かせようと思って黙ってたからな」
「一回死んでこい!」
っと一誠がアザゼルに向かって氣弾をぶっぱなしてやった……まああの野郎笑って避けやがったけどな!
「ふぅ~」
そんなことがあった日の夜……一誠はスーパーから醤油を買って出た。切らしてたのを忘れていた。他の皆も来ると言っていたがどうせこれだけなので一人で出た……すると夜道で突然現れる人影……懐かしい顔だ。
「確か美猴だよな?」
「よぅ赤龍帝。あんまり驚かねぇんだな」
「アザゼルに良くやられるから慣れた」
そう言うと美猴は苦笑いした。
「んで?何かようか?」
「ああ、こいつの付き添いだぜぃ」
と美猴が指差した先に降り立ったのはヴァーリだ……
「なんだお前か」
「なんだとはなんだ……随分だな」
久々のライバル登場に一誠は少し氣を体に張り巡らす。それを感じたヴァーリも魔力を体に回す……だがそれは両者次の瞬間霧散させた。
「態々何のようだ?俺はさっさと帰って今晩の夕食を作らなきゃいけないんだが?」
「お前は主婦か」
ヴァーリの突っ込みに一誠は肩を竦めた。
「まあ良いさ、一応忠告だ。今度ディオドラ・アスタロトとレーティングゲームをするらしいじゃないか。なにか黒い影があるから気を付けろ。まあディオドラではお前の相手にはならんだろうがな……だが俺の勘だがなにか嫌な予感がするんだ……一応頭の隅にでも入れておいてくれ」
「それだけの為に来たのか?」
「そうだが?」
態々優しいことだな……
「何だかんだでヴァーリはお人好しだもんなぁ~。ライバルが心配なんだよ」
「美猴……お前を北極の氷の中に埋めてもいいんだぞ?」
ゴゴゴゴゴ……と少し魔力を手に集めて美猴を威嚇するヴァーリ……流石にこれは美猴も諸手をあげて降参だ。
「了解。態々ありがとな」
「いや、構わない。さ、帰るぞ」
そう言って美猴をつれてヴァーリは消えていく……あいつって何気にツンデレ?なのかなぁとか思ったのは余計な話だろうな。
「変なやつ」
《今代の二天龍はどちらも変だ》
「なぬ!」
一誠はドライグが宿る左腕をにらむ。
《くく……やはりお前は楽しい男だ。話し掛ければ返してくれる。歴代は皆返しもしなかったからな》
「話しかけられたら返すのが礼儀だろ?」
《やはり面白い男だ》
「?」
一誠は首をかしげて疑問符を飛ばした……
「何か人間界のテレビ局と似てますねぇ」
ヴァーリの忠告の三日後……一誠達は冥界に来ていた……でもなんで自分までなんだろう……普通グレモリー眷属の取材なら自分はいらないはずだ……でも呼ばれたんだよなぁ……アーシアとレイナーレはお留守番だけどさ。
すると、
「リアスじゃないか」
「サイラオーグ!?」
パーティー以来のサイラオーグさんだ……やっぱ改めて見ても強いな……
「今度アスタロトと戦うらしいじゃないか。楽しみにしてる。何せ特例で赤龍帝まで戦うんだからな。今回の戦いはお前たちが思うより注目されてるぞ」
「えぇ!怖いですぅ……」
と震えるのはギャスパーだ……でも逃げずにその場にいるだけ成長してる。それに最近ニンニクの克服に乗り出したらしい。時々にんにく臭いけどまあそこはご愛敬ってね。
「久し振りだな。赤龍帝」
「はい」
と考えてると考えてたらサイラオーグさん話しかけてきた。
「しかし非公式であるが故の特例か……俺もその手を使えばお前とレーティングゲームで戦えそうだな」
「っ!」
一誠の表情が固まる……そうだよな……まあその辺りはサイラオーグさん次第だけど……
「どうだリアス……アスタロトとの次はうちと戦わないか?勿論そっちに赤龍帝の参加を認める。いや、寧ろ是非参加させてほしい」
ゾクッときた……ああ、この人もそうだったんだ……ただ自分の鍛えあげた力を……死力をもってぶつけ合わせたい戦闘願望……それを聞いたリアス先輩は一誠を見ながら言う。
「嫌だ……何て言える雰囲気でもないわね。そうね、詳しい話は後々だけどその辺りは了承よ、若手最強とその眷属……この身をもって味わうのも良いでしょうしね」
「ふふ、潰れてくれるなよ」
「私の所には頼りになる眷属とドラゴンがいるからあなたに潰されないわ」
そうリアス先輩がいうとサイラオーグさんは楽しそうに笑う。
「そうだな。北郷一誠……最高の戦いをしよう」
一誠は黙ってうなずくとサイラオーグさんは去っていく……どこかで浮かれる自分がいる……どこかで狂喜する自分がいる……ああ、楽しみだ。
「あの、リアス・グレモリー様とその眷属でしょうか?」
「あ、はい」
リアス先輩が頷くとスタッフと思われる男がこちらですと言う。それから、今度は一誠を見た。
「もしかして赤龍帝・北郷一誠様ですか?」
「え?あ、はい……でもなんで俺が呼ばれたんですかね……」
「簡単ですよ。現在冥界の……特に位の低かったり普通の家柄の悪魔の子供たちには赤龍帝に憧れる子が多くいましてね」
何でも話を聞けば自分から見れば遥か上の存在である上級悪魔という立ち位置のライザーを倒しコカビエルを打ちのめし白龍皇との戦いに更には上級悪魔のタンニーンとの修行……何れをとっても子供たちから見てカッコいい対象になるらしい。まあ強い=カッコいいみたいな所があるしな、子供って……でもそれなら他にもいるんじゃないか?
「いえ、悪魔ではなく人間……しかもドラゴンですからね。余計にかっこいいんでしょう」
そうか……冥界の子供たちから見て自分は住む世界が違うんだ……逆に接点がない世界の生き物の戦いの話……ある意味一種の英雄譚を見ている感じか? ドラゴンに憑かれた人間が事件を解決していく……うん、確かに何かの小説っぽいな。
「更には多くの女性を虜にしいくと言う話は大人にも大ウケでしてね」
「はい?」
それはおかしくね?俺別に虜になんかしてないよ?そんなギャルゲーじゃあるまいしそんなの現実に……いやすんません。すごい身近に居ました……父でした……父がそうでした……でも俺は一途に生きるもんね!父さんを反面教師にしてさ!
ん?何か今「は?何いってんの?無理でしょそんなの……」とか言いませんでした?打ちのめしますよ?
「と言うわけでしてね。少々こちらでお話が……」
「あ、はい」
と言ってリアス先輩たちと別の部屋につれていかれた……そしてそこにいたのは……
「さ、サーゼクスさん!?」
「やあ一誠くん。久しぶりだね」
何で魔王がここにいるんだよ……ちなみに隣にはグレイフィアさんが待機……
「少しお話があってね……とても重要なお話だ」
「っ!」
真面目な表情に一誠は表情を引き締める。なぜここで話すのかはわからないが一誠も真面目に聞こう……だが次の瞬間一誠の耳に届いたのは予想外の言葉だった。
「一誠くんは特撮に興味あるかい?」
「…………へ?」
サーゼクスさんの言葉には唖然とした。いきなり何?
「あ、いきなりこんな話をしても訳がわからないね。まず少しずつ説明していこう。まず冥界は未だ娯楽が少ない。少しずつ増やしているがそれでもまだまださ。特に子供たちへの娯楽の少なさは私も頭を悩ませていてね。そこで目をつけたのが人間界のヒーロー物さ!そして君は今冥界の子供たちから英雄譚のような扱いを受けている!」
「まあ……そうですね」
「だから君を主人公にした特撮ものを作ってみないか?」
「………………一つ聞いていいですかね?」
「なんだね?」
「人気出ますかね?」
「今までにないジャンルだからね。だが必ず子供たちに人気が出ると確信してる。子供はヒーロー物が好きなのは人間も悪魔も変わらないよ」
と、遠い目をするサーゼクスさん……何か経験あります?
「というわけで引き受けてくれないだろうか……」
一誠は腕を組む……まぁ、別に嫌じゃないしなぁ……ヒーローごっこをして子供たちが楽しんでくれるなら……それも良いんじゃないだろうか。
「わかりました。引き受けます」
そういった瞬間サーゼクスさんは嬉しそうな表情を浮かべた。
「そうか!では早速PVを撮りに行こう!」
「え?」
サーゼクスさんに引っ張られるまま一誠は別の部屋に向かう。
「既にオープニングは完成しててね。あとは君が歌って踊るだけだ」
「はぃ!?」
「ちなみに作詞はアザゼル、作曲は私、振り付けはセラフォルーで、衣装はミカエル担当だ」
「はぃい!?」
なんだそのある意味で豪華製作陣は!凄いことになっとるわ!
「既に脚本も出来ててね。ちょうど良いから少し見ていきなさい。いやぁ、でも私は魔王じゃなかったら作曲家になりたくてね?夢が君のお陰で叶えられたよ」
「さ、さいですか……」
一誠は諦めて連行される……そう言えば、
「どんなお話なんですか?」
「ああ、それはね」
サーゼクスさんの口から発せられた説明に一誠は絶句した……
「あら一誠。どこいってたの?」
「ええ……少し……」
撮り終えて戻ると皆は既に戻ってきていた……だが一誠のひきつった表情に皆は首をかしげる……
《ウォオオオオン!ウォオオオオン!》
「泣くなドライグ!俺だって……他人から他人へと伝令していくお話なんてろくな変化をしていかないって学んだんだ!」
一誠は泣くドライグを宥めながら落ち込んだ……
今回の特撮物だが、まあ内容は天から流星に乗って降臨した(どっかで聞いたような登場だ)伝説のドラゴンを身に宿す少年が某ライダー宜しく変身して(変身した姿は完全に
【冥界英雄譚・種馬ドラゴン】
とされてしまった……うわあああああああああああん!あぁああああんまあああああありだぁあああああああ!!!!
種馬って何!?酷くね!?しかもそれ本当に子供が見るもんなの!?良いの見せちゃって!?いや確かに濡れ場的なのは無いけどね!名前的に平気なの!?と言うか孕ませてないから種馬じゃなくて女ったらしドラゴンじゃね?何かの因果律が働いたような気がしてならんよ!
しかもこの名前でドライグさん完全に心折れちゃったよ!?「ふふ……俺はもう走れない競走馬に種だけ提供するお役立ち相手か……まあある意味俺はそうかもしれないな……」って落ち込んじゃったよ!
「一誠……大丈夫?」
「先輩……俺……もっと強くなります」
『はい?』
いきなりどうしたと皆が唖然としてしまった……つうかこの番組のこと話せねぇ……
因みに種馬ドラゴンはその後冥界で子供から大人まで大人気のテレビ番組となり視聴率は常に高視聴率をキープし関連グッズが次々作られそれらは全て売り切れ続出になるほど翔ぶように売れていき冥界の一大娯楽へとなっていきドライグがまた大泣きしたのは別の話である……
はい、今回はドライグが泣いた!つうわけでこっちはおっぱいじゃなくて種馬ドラゴンです。だって魏の種馬の息子ですしね……ずっと出したかったネタでした。ドライグも二天龍と言われた自分が種馬と一セット扱い……そりゃ泣きますわ。
ヴァーリも尻に変わって別の不名誉な二つ名が次章着きますけどね……
と言うわけで次回はアスタロト戦ですかね……ほんとにシリアス全開(になるはず)です。と言うわけでまた次回!