【完】真・ハイスクールD×D夢想 覇天の御使い   作:ユウジン

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デートオアデッド!?

「ふむ……」

 

一誠は夕麻との待ち合わせに三十分ほど早く待機していた。

 

北郷家 家訓・第三項《女の子との約束には三十分前行動。野郎との約束は十五分前行動が原則》である。父の一刀から半ば洗脳に近いくらい言い続けられた性で意識しなくても行動に出てしまう。

 

それから二十分ほどボーッとしていた。すると、

 

「ごめんね、待った?」

「ん?いや、今来たところだから大丈夫だ」

 

夕麻が来た。全体的にゆったりとした優しい服装だ。中々センスがいいようだ。一誠も母親の一人がファッションに詳しい人がいるので並みの男子では太刀打ちできない位だがその目で見ても相当だ。

 

因みに一誠は実は結構他人に下す評価は辛辣な時がある。その辺の容赦のなさは母親譲りだろうか……

 

「それじゃあ行こうか」

「あへぃ!」

 

一誠が飛び上がってしまった。そしてそのまま口から魂も飛んでいくかと思った。何故ならいきなり夕麻に手を握られたからだ。

 

「きょ、今日だけだから……」

「………………」

 

そ、それもそうだ……これくらいなら耐えねば男が廃るだろう……

 

「そ、そだね……」

 

気を抜くと体の穴と言う穴から変な汁が出そうだ……

 

(そ、素数を数えるんだ!1!2!3!5!7!11!)

 

一誠の孤独な戦いが始まった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とは言え辛いことばかりではない。二人で一緒に歩いたり小物を見たり服を見たりご飯を食べたり……何時も出掛けると言えばエロ馬鹿コンビの松田と元浜に桐生や姉たちと母親の荷物持ちが精々である。もしいつか女性恐怖症克服できたら恋人とか作れたりするんだろうか……その時は親父のようにはならず純愛に生きよう……おいコラ誰だ今「ムリムリ」とか言ったやつ!出てこい!

 

「どうしたの一誠くん」

「いや、なんでも……」

 

だが楽しい時間は往々にして早いものだ。今日はもう日が落ちた。公園に二人は足を運んだがここでお別れだ。明日から他人に戻る。

 

「ねえ一誠くん」

 

夕麻は一誠から手を離すと数歩前に先に行った。

 

「最後にお願い聞いてもらって良い?」

 

別れ前の最後の我が儘……か、まあそれくらいなら一誠は頷いた。そして次の瞬間、

 

「じゃあ死んでもらえる?」

「そうか、死んでほしいのか………………は?」

 

一誠が成程と頷き固まった次の瞬間一誠の眼前に迫る光で作られた槍……

 

「げっ!」

 

一誠は咄嗟に横の飛んで回避した。前言撤回。言うことは聞けない。と言うか聞けるか!

 

「あら意外と反応が早いわね」

「いやいやいや、最近流行りのヤンデレか?おっかねぇなおい!」

 

一誠は流石に混乱した。

 

「違うわよ。元々あなたは殺す予定だったのよ!」

「あ?」

 

更に飛んできた光の槍……それを回避しつつ聞く。

 

「何者だお前……」

「私わね……」

バッと夕麻の背中から漆黒の翼が生えた……

 

「堕天使・レイナーレ……それが私の真の名前よ」

「あ、そう」

「もっと驚きなさい!私が馬鹿みたいでしょ!」

 

いや残念なことにこっちの親も中々ファンタジーな人物なので今更堕天使とか言われてもあんまり感動も驚きもない。

 

「じゃあ最後、何で俺を殺すんだよ。女から恨まれる心当たりはないぞ!」

 

男はあるけどさ……そりゃあもう恨まれてます。妬み嫉妬何でもござれだ。

 

「貴方の中には神器(セイクリットギア)と言う力が眠ってるわ……まだ目覚めてないけどそれが目覚める前に消しておきたいのよ。恨むならそんな力を授けた神様を恨んでね」

「ようは鳴く前に殺してしまおうホトトギスってことか……成程ね……なんつうか迷惑だな……責任者出せ」

 

ぶん殴ってやるからな……と一誠は内心思いつつ大きく距離を取った……

 

「だけど安心しとけ。元々自分の不運を神様とか居るかどうかもわからない奴に責任転嫁する気はないんだよ……どんな不運だろうが上等。そんなのに振り回されたくないね」

 

そう言って一誠は夕麻……いや、レイナーレに向かって走り出した。

 

「なに突貫?馬……え?」

 

馬鹿みたい……と言おうとしたがレイナーレは言えなかった……何故ならいきなり目の前に一誠が来たのだ。

 

「う、うそ!貴方ただの人間でしょ!」

「ああ、人間さ……」

 

ドゴォ!っとレイナーレの腹部に一誠の正拳突きが決まり吹っ飛んだ。

 

「……がぐ……いた……なんなの……」

 

レイナーレは今回の計画の際に一誠のことを前もって調べていた。その時に一誠がただの人間なのは調べてある。可笑しい……今の速度は明らかに人間が出す速度じゃない。

 

「氣だよ……知らないのか?」

「な、なによそれ……」

(あ~。やっぱり氣って母さん達の世界の独特の力なんだな……)

 

氣……一誠はごく普通に使う人間の力だ。母親達は一部を除いて皆これを使える。そしてこれを使うとその力の部位を強化できるのだ。無論氣を集中させる量にもよる体の中にある氣も有限だ……だがこれが武器に纏わせたり肉体に纏わせたりと色々役に立つのだ。例えば遅刻しそうなときにダッシュをかけるとか……車に吹っ飛ばされたときに咄嗟に体を被えば衝撃もない。まあ実は元々体は異常に頑丈だが……

 

「俺は純正の人間だ。ただ少しだけ頑丈で少しだけ強いんだ」

 

少しなんてものじゃない。だが一誠にとって強いと言うのは母や姉たちと常識とズレてるので意味がない謙虚である。

 

「く、くそ!」

「あぶね……!」

 

レイナーレが破れかぶれで投げた光の槍一応氣で手を被ってパシッとキャッチした。

 

「な……」

「悪いんだけどさ……俺もうお前の動き見切っちまったからもう槍投げなんて無駄だぞ?」

 

一誠は姉に至近距離で飛ばした矢をキャッチさせると言う荒行のお陰でこれくらいなら平気である。

 

と言うかさっきから漫然と避けてた訳じゃない。相手の動き一つ一つ見ていた。基本的にレイナーレの動きは単調だ。見切りやすい。まあ姉たちの修練も大きいだろう。

 

「初めて姉さんの拷問……じゃなかった修練に感謝してきたな……」

「どこを……」

 

レイナーレが飛びかかってきた。だが、

 

「見てる!」

「北郷家 家訓・第六項《女には手を上げるな……但し!》」

 

一誠はレイナーレの手に握られた光の槍を紙一重で見切って踏み込むと氣を纏わせた拳がレイナーレに決まった……

 

「ごは……!」

 

そのままレイナーレは再度吹っ飛ぶ。だがこれで終わりじゃない。

 

「ぶっとんどけぇ!」

 

手に集中させた氣は球体となり一誠の氣弾はレイナーレに放たれた……

 

「っ!」

 

その衝撃波はレイナーレを飲み込んだ……

 

「《相手が殺す気で来たなら丁重に出迎えてやれ……》だぜ?」

「あが……」

 

レイナーレピクピクしていた。昔複数いる母の一人がこの氣を教えてくれながら泥棒を捕まえるのに屋台数件吹っ飛ばす程の氣弾を放ってあとで大騒ぎになったと笑っていた。

 

しかしここでピクピクしているレイナーレをおいてけぼりは流石に不味いかと一誠は思い至る。しかしどうするべきか……

 

「……仕方ない」

 

一誠はレイナーレを背負うと道を歩き出した……無論、意識を喪失しないように必死に素数を数えたのは言うまでもないことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……」

 

レイナーレは目を覚ます。いくら寝ていたのだろう……そしてここはどこだ?

 

「お、目が覚めたか?」

「んな!」

 

部屋に顔を出したのはエプロンを着けた一誠だ。咄嗟に臨戦態勢に入ろうとしたが体が痛んで動きが止まった。

 

「おいおい、無茶はすんなよ」

 

そう言って一誠は食卓にご飯を置く。中々……いや、明らかに一般家庭の食卓に並ぶのは可笑しい位のレベルの高い料理にレイナーレも思わず生唾を飲み込んだ。

 

「食おうぜ」

「……はぁ?」

 

だが思わぬ食事の誘いにはあきれた。まあ当たり前だろう。ついさっき殺そうとした人間にご飯を出すとか正気の沙汰じゃない。

 

「毒はないぞ」

「そこじゃないわよ」

 

そこも心配ではあるが……

 

「味は保証するし一人で食うより二人に方がうまいだろ?北郷家 家訓・第八項《ご飯は皆でワイワイ楽しく食べるべし。そして例え喧嘩した相手がいても食事中はそれを持ち込まないこと》だからな」

 

喧嘩……ではないだろうとレイナーレは内心反論した。殺しに行ったのだぞ?

 

「ほら食えよ」

 

そんな内心も知ってか知らずか一誠は進めた。まあお腹も減っていない訳じゃないのでレイナーレは座って箸を取った。

 

「いただきます」

「…………」

 

一誠は黙ったままのレイナーレをじっと見た……

 

「いただきます!これで良いんだろ!」

 

一誠は頷くとそれを見ながらレイナーレは食べ物を口に運んだ。

 

「美味しい……――っ!」

 

レイナーレは本心が漏れかけて慌てて口を塞いだ。

 

それを見て一誠も笑った。こっちの方が取っつきやすい。だがそれを見てレイナーレの目尻が上がる。

 

「誤解しないでよ!下等な人間が!」

「その下等な人間に惨敗したんだろ?」

 

見事なブーメランにレイナーレは詰まった。

 

「あ、あんたが規格外!人外!変人!」

「何だと!」

 

二人はにらみ会う……

 

『……ふん!』

 

家訓第八項を必死に頭で唱えて冷静になる。

 

「で?俺の眠ってる力って?」

「……神器(セイクリットギア)。神が作った特殊な道具よ。世の中にいる天才とか鬼才何て言われる人間は大体それの所有者ね」

「ほぅ……で?俺のも出せるのか?」

「出せないうちにって思っていたんだけど……どうせもうここまで言ったら遅いし出してみたら?」

「出し方を知らないんだが?」

「今回は神器(セイクリットギア)を知識としても理解できたはずだから出せるんじゃない?」

「む?」

 

そう言われ一誠は立ち上がると腰を落とし意識を集中する……

 

「出ろ!神器(セイクリットギア)!!」

 

これで出てこなかったらただのいたい人だよなぁと思いながらも左腕に走る熱……それは形を形成していき何と手の甲部分に宝玉のようなものが填められた赤い手甲が現れた。だが、

 

「なぁんだ。それ、龍の手(トウワイスクリティカル)じゃない」

 

レイナーレが残念そうに言った。

 

「使用者の身体能力を一定時間倍にするって言うありふれた奴よ」

「ふぅん……」

 

まあそれでもないよりずっといいだろう。身体能力が二倍なら姉たちから逃げるときに役立つ。

 

「まああとは聞きたいこともねぇし明日は学校だし……片付けは明日にしてもう寝るわ……眠い」

 

そう言って一誠はソファーに寝転がった。

 

「ああ、お前はそのままベット使っていいからな」

「はぁ?ちょっと!」

 

レイナーレは慌てたが一誠はあっという間に寝てしまい寝息を発て始めた……

 

「なんなのこいつ……」

 

隙だらけなのにここまで堂々とされたら殺す気も失せる。

 

「なんなのよ……」

 

元々この町に来たのは一誠を殺し同時にある計画を実行するため……なのに返り討ちにあった挙げ句ご飯までもらってベットまで使わせてもらってる。

 

「……なんなのよ……」

 

レイナーレはずっとそう呟きながら眠りに落ちていった……




説明しよう!北郷家 家訓とは一刀が過去の失敗談等から作り出して一誠に同じ失敗をしないように教えた訓示である!合計でいくつあるのか作者にも謎である。だがそれは一誠にとっての行動原理であり指針となっている大切な教えである。




あと氣は結構恋姫では使われる力ですね。因みに勿論一誠に氣を教えたのは凪です。今作の氣は転生させる気がない一誠のために魔力の代わりに使えるようにした特殊能力です。とは言えこの世界にはない能力なので周りから見たら謎の力を使う人間にした見えません。

そしてレイナーレさんでは一誠には傷一つつけられやしませんぜ旦那。因みに一誠はアレでも結構手加減してます。ですがこれからもそうはいかないでしょう。一誠は天才であってもチーとではありませんからね(笑)

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