【完】真・ハイスクールD×D夢想 覇天の御使い   作:ユウジン

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設定集
この男、女性恐怖症につき……


「好きです!付き合ってください!」

 

夕焼けが辺りを照らす放課後……私、北郷 一誠は黒髪の綺麗な女の子に告白されました。

 

生きてきて17年目に突入しましたが実際告白されたのは両手では足りません。現在通っている駒王学園でも既に相当な人数に告白されました。自慢ではありませんので石を投げないでください。

 

ですが私は何時もこう返します。

 

「ごめん……誰かと付き合うとか……考えてないんだ」

 

こう返すとやはり傷ついた顔をします。心苦しいですがやはり誰かと付き合うとかは考えられません。何故なら……私、女性恐怖症なんです!というか既に距離は比較的近い位置にある。その性がさっきから脂汗が出てきそうだし息も苦しい。ついでに動悸が……とは言えさわられた訳じゃない。触られたら泡を吹いて気を失ってた。

 

「そ、そうですか……」

 

シュン……と、自ら天野 夕麻と名乗った少女は肩を落とした。これは後味が非常に悪い……と言うか北郷家家訓(父である北郷 一刀が作った約束ごとである)に違反する……だがこればかりはどうしようもないのだ……

 

「で、でしたら一日だけ……恋人になっていただけませんか?」

「はい?」

 

一誠は首をかしげた。

 

「一日だけで良いんです!そしたらもう会いませんから!」

 

一誠は返答に詰まった。自分は女性恐怖症である。だがここまで想われてるのに拒否をするほどではないというか……自分が我慢すれば彼女は満足するしかも一日だけだ。

 

後、女性恐怖症ではあるが別に近づかれるのが苦手なだけで女性そのものが苦手ははない。彼女のような美人に告白されて満更でもないのだ。だが近づかれただけでダメな自分が恋愛とは片腹痛い。と言うのが持論である。少なくとも近付かれただけで具合が悪くなる状態を何とかしないとデートも出来ない。

 

だがここまで必死な彼女を見て……断れる男はいるだろうか?居たらそいつは漢じゃない!

 

「……分かった。ただしその日だけだ。それで良いな?」

「あ、ありがとうございます!では次の日曜日は良いですか?」

「ああ、大丈夫だ」

 

一誠が頷くと夕麻は嬉しそうに笑った。

 

「じゃあ楽しみにしてます!」

「っ!」

 

ギュッと手を握られた……

 

「では日曜日に!」

 

そう言って夕麻は背を向けて走り去った……そして一誠は……

 

「うーん……」

 

そのまま顔を真っ青にして泡を吹いて後ろにぶっ倒れた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こういう風になったのは好きなったわけではない。主にあの力加減のちの知らない姉達の性である。

 

一誠の実家は道場をやっていて異様に広く母親達の仕事が儲かってるため金もある(何か国家予算に匹敵していてその内追い越す可能性があるらしい)……勿論脛をかじらせてくれるような優しい親ではなく現在一誠はアパートで一人暮らししながら色々ネット等を用いて自分にかかる金銭は全て自分で賄っている。

 

と、別に現在の生活の説明をしたいわけではない。そして当たり前だが実家には姉たちも出入りするのだ。因みに母親の総数が十五人もいる。言っておくが一応重婚は現在認められている。だが本当にする人は殆ど居ない。その数少ない重婚家族が自分の家と言うのは中々複雑だがとにかく姉たちもたくさんいるのだ。性格は千差万別。同じ種でも産む人によって違うのだから面白いが実は共通点がある。

 

なんと……全員揃いも揃って極度のファザコンであると言うことだ。どうも姉たちの目は何かの病気かと聞きたくなるようなフィルターがあって父を美化しすぎである。と言うか神格化しているといっても過言じゃない。将来の夢はお父さんのお嫁さんを未だに掲げているし最大のライバルは母親達と来てる。

 

まあ別にそこは良い。確かに女タラシだが自分の父は良い漢だと思う。そこは父親だから尊敬もしている。だがそれをこちらにまで要求されても困る。

 

その挙げ句父のように強くあれとか言い出して自分に修練と言う名の虐待を受けて1日最低五回は姉に吹っ飛ばされて空高く舞うことになった。

 

無論、勉強も教えてくれる姉や遊んでくれる姉もいた。だが基本的こちらもファザコンだ……マジ勘弁してほしい。お陰で女に触られるとそのときの恐怖が再発するのだ。

 

女性達は悪くない。悪いのは力加減を何度母親達から怒られても知らない姉と未だに姉に頭が上がらない自分自身だ。

 

「う……」

 

一誠は目を開けた。すると自分はベットの上にいることに気づいた。

 

「保健室……か?」

「あら起きたの?」

「ん?やっとか」

「待ちくたびれたぞ一誠」

 

そう言って顔を出したのは三人……一人目は【桐生 藍華】……眼鏡を掛けた三つ編みの髪の女子だ。別名【匠】と呼ばれそのエロ知識と男子のアレの大きさを判別する厄介な観察眼(スカウター)の持ち主。余談だが一誠はその被害を会ったことはない。

 

二人目はボウズ頭の男子。彼は【松田】あらゆるスポーツに万能で青春にその全てを捧げている……訳もなくてとんでもないエロボウズだ。

 

そして三人目は【元浜】。桐生同様とんでもないエロエロ野郎。しかも女子のスリーサイズを判別する《スリーサイズスカウター》とか言う桐生のと違って全く笑えない能力を持つ。因みにロリコン。

 

余談だが松田と元浜は大層女子からの人気が悪い。まあ良く女子の着替えを覗いていて追いかけられてるしそれでモテないとか怒っている。

 

そんな三人だがこの三人とは中学からの腐れ縁と言うやつだ。そして自分の体質を知っている。大方三人で運んでくれたんだろう。

 

「しかし勿体ない。モテてもそれでは彼女が作れないな」

「全くだ。そしてついでに此方に回してくれ!」

 

松田と元浜が迫ってきた。顔近いよ。

 

「仕方ないでしょ。まあ無理して作る必要もないだろうし良いんじゃないの?」

 

そう言ったのは桐生だ。

 

「そう言えば一誠!お前さっき女の子からまたコクられてただろ!しかも可愛い他校生!」

「なんだとぉ!どう言うことだ!」

「別に何時も通り断ったよ……ただ日曜日に一回だけ会う約束したけど」

「は?断ったんじゃないの!?」

 

そう言って詰め寄ってきたのは桐生……だから近いよ……ついでに悪寒と目眩が……

 

「あ、ごめん」

 

そう言って桐生は離れた。

 

「一回だけで良いから彼氏をしてほしいって言われてな。断れなかった。まあ一回くらいなら良いかって思ってな」

「ふぅん……」

「?」

 

何だろう。桐生の機嫌が悪くなった気がする。付き合いも長いのでこれくらいの機微には気付く。何か悪いこと言ったっけ?

 

「どうしたんだ桐生」

「な・ん・で・も!あと気を付けときなさいよ、一回だけって言うからどんなことされるか分かったもんじゃないわよ」

「分かって。心配してくれてありがとな」

 

そう言って軽く桐生の頭を撫でた。これくらいなら何とか大丈夫だ。

すると桐生の頬に朱色が走った。流石にこの年で撫で撫では恥ずかしかったのだろうか?

 

(くそう!何故一誠にはこうもフラグが乱立するのだ!)

(所詮顔か!顔なのか!)

 

顔以前の二人が一誠に呪詛を送ったのを一誠は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、デート当日だ。この日のために一応簡単な穴場を見付けておいたし(父から時には敢えてスポットを外して穴場を入れるのもデートの時の必須テクニックだと習っている)食事所もいくつかピックアップしてある。

あとはお茶でも飲んで……

 

「むっ……」

 

ゆっくりしようとしたら湯飲みがひとりでに割れた……なんだこれは……

 

「むむ……」

 

すると後ろで何か音がして振り替えると神棚が落ちていた……不吉だ……しかし片付けてる暇はない。もう出よう、

 

「ぬっ!」

 

すると靴紐が千切れた……今日は厄日か!

 

「………………」

 

そして靴を履き変えて外に出ると黒猫が三びき並んで目の前を横断していった……

 

「今日の俺不幸すぎるだろ……」

 

そう言えば今日の星座占いも最下位で確か……【今日は人生で一番の不幸日!今日起こることは人生の転換機になるかも、嫌なら家に引きこもってた方がいいね】行ってたがそうもいってられない。

 

「とにかく行こう……」

 

あとで思えば……恐らくこれが最後の警告だったんだろう。これから巻き込まれていく非日常への道を歩き出した自分への……最終勧告……

 

だがこの時の一誠は知るわけもなく約束の待ち合わせ場所に歩を進めた。


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