【完】真・ハイスクールD×D夢想 覇天の御使い   作:ユウジン

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火蓋

『………………』

 

一誠たちは現在神父の格好をして闊歩していた。取り合えずこの格好でいれば尻尾を見せるはずだとゼノヴィアに言われて歩き回っているが……またしかし神父姿の者が四人でゾロゾロ歩くとか異様な光景である。

 

「できるだけさっさと終わらせたいから今日中に終わらせたいんだが……――っ!」

『っ!』

 

一誠がそう呟いた瞬間殺気を感じて全員が上を向いた。

 

「あれれぇ?もしかしなくても俺っちをボコってくれた北郷 一誠くんじゃありませんかぁ?」

 

そう言って笑うのはレイナーレの時に一誠がぶちのめしたフリードだ。

 

「お前まだこの町に居たのか……そんなにまたぶちのめされたい?」

 

一誠が言うとフリードはまた笑った。

 

「違うぜ!今度は俺様が殺してやる!」

 

そう言って抜いた剣……なんだあの剣……何て一誠が考えると一誠以外の面子の背には寒気が走った。

 

「それはエクスカリバー……」

「お察しの通りでございやす。今俺が持ってるのは天閃のエクスカリバー(エクスカリバー・ラビットリィ)……他にもあるけどまあこれだけで充分っしょ!」

 

そう言ってフリードがあり得ない速度で突っ込んできた。

 

「このエクスカリバーは持ち主の速さをあげるって言う奴さ!つうわけで死ね!」

 

だがそれを祐斗が止めた。

 

「会えて良かったよ……そのエクスカリバー壊させてもらう!」

 

だが七つに別れたとはいえ一級品の聖剣と祐斗の魔剣では勝負にならない。ぶつけ合う度に壊されその都度作り直す……駄目だ。頭に血が上っててこのままだと祐斗は返り討ちに会う。確かにフリードの剣閃は速いが一誠の目にはしっかり映ってるし祐斗にだって見切れない速度は出ていない……あのバカ……

 

すると、

 

黒い龍脈(アブソリューション・ライン)!!!!!!」

 

匙の手には手甲みたいな奴からロープみたいなのが出てフリードの足にくっついた。

 

「なんだこりゃ!」

 

フリードは慌てて切ろうとするが切れない。それどころかフリードの力を吸い取っている。

 

「すげえ神器(セイクリットギア)だな」

「まあな」

 

それを見て祐斗は好機とばかりに剣を構える。

 

「やべ!」

 

だがそこに、

 

「何をしているんだフリード」

『っ!』

 

その声の主を皆は見た……そこに居たのは老人……

 

「全く、お前に与えた因子力を剣に込めろ。それで良い」

「さすがバルパーのおっさん」

「バルパー……」

 

祐斗はその老人を見た。

 

「お前がバルパー・ガリレイか……」

「いかにもそうだが……誰だ貴様は」

「聖剣計画の生き残り……と言えばわかるか?」

 

祐斗がそう言うとバルパーは納得した表情になった。

 

「そうか。お前はあの時の生き残りか……まさか悪魔になっていたとは……」

「皆の敵を奪るまでは死ねないんでね」

「やっと見つけたぞ」

 

そう言ってきたのはゼノヴィアとイリナだ……

 

「ふむ……成程、貴様たちは聖剣使い……ミカエルめ……私を断罪しながらも研究だけは使っているのか……」

「研究?」

 

一誠が疑問符を出すとバルパーは頷く。

 

「私は昔から聖剣とかが好きでね……何時かは聖剣使いになりたかった……まあ才能がなかったがね。だから私は使い手を作る道に進んだ」

「それが聖剣計画……」

「そうだ、だがどうしても一定水準を満たすものがいなかった。聖剣を扱うには体内に存在する因子が必要でね。だから考えたんだ。因子だけを抽出できないかと……」

『っ!』

 

全員の……とくに祐斗の血が凍った気がした。まさか……

 

「まさか……」

「そうだよ生き残り君。殺してその因子だけを出したのさ。お陰でそこのフリードも聖剣を使える」

「いや~ほんと助かるね」

 

フリードは剣に力を込めて匙の手からだしたロープみたいなのを切った。

 

「そうか……聖剣使いが任命されたときに受ける祝福は……」

「このくそ外道……」

 

ゼノヴィアは何かに気付いた顔をし、一誠は歯を噛み締めた。こいつは最低なんてもんじゃないくらいの糞だ。

 

「欲しいか?この因子が」

「っ!」

 

バルパーは懐から結晶を出した。

 

「もう必要がないからな。やろう、仲間の成れの果てをな」

 

地面に捨てたのを祐斗は拾う……

 

「バル……パァ……」

 

祐斗は歯をギリギリ噛み締めバルパーを睨み付ける。

 

「お前は……僕が殺す……」

「くくく、フリードに苦戦する貴様ではここに来ることはできんよ……」

 

そう言ってバルパーは背を向ける。

 

「いくぞフリード」

「あいよ」

 

そう言ってフリードは閃光を出して二人は逃げ出した。

 

「待て!」

「待ちなさい!」

「にがさない!」

 

イリナ、ゼノヴィア、祐斗はそれを追って走り出す。

 

「おいお前ら下手に深追いすんな!」

 

一誠は止めようとしたがそれよりも三人は先に行ってしまう。

 

「くそ……」

 

一誠は悪態をついた。先走りやがって……

 

「しかしなんだかヤバイ雰囲気だったな。あのフリードってやつ……」

「まあいかれた奴ではあるけどな……だがもう時間も時間だ……下手に祐斗たちを追い掛ける方が危険だな……あの三人が引き際を弁えてることを願って俺たちだけでも引こう」

「大丈夫なのか?」

「そう簡単には死なないだろう」

 

一誠の言葉に匙は頷いた。

 

「さて、あんまり歩き回ってると先輩とかに見つかって怒られっから帰ろうぜ」

「誰に怒られるって?」

『…………』

 

一誠たちは固まった……まさか……

 

「こ、小猫……今のは俺の空耳だよな?」

「絶対に違います」

「ええ、違うわね」

 

一誠がゆっくり振り替えると後ろにはそう言ってにっこり笑いながらたつリアス先輩と……

 

「匙……あなたも何をしてるんですか?」

「か、かいちょおおおおおおお!!!!!!」

 

会長さんがいて匙はめちゃくちゃびびった。

 

「あ、あのその……」

 

リアス先輩と会長さんは怒りのオーラ滲ませた……こうなったら使おう……北郷家に伝わる二大秘伝の一つ!

 

「とぉ!」

 

一誠は飛び上がる……そこから空中で一回転しきりもみ回転……そして膝を降り頭を垂れて肱を直角の曲げて着地しながら地面に頭突き……まあ有り体にいって、

 

「ごめんなさい」

 

土下座である。こう言う場合はゼロコンマ一秒でも早く謝った方がいいと父さんから教わっている。

 

「す、すげぇ……土下座の開始から終了まで一切の淀みがなくそして早い!」

「ただの土下座ですけどね……」

 

匙の解説の小猫が突っ込んだ……余りの速さにリアス先輩も驚いたがにっこり笑う。

 

「ダメよ一誠。尻叩き千回ね」

「そーですよねー」

 

まあ大体土下座で許されるなら警察はいらないのだ。

 

「さあ匙……貴方も尻叩き千回です」

「ちょ!俺は北郷に誘われただけって言うか……って!北郷助けろぉ!」

 

だが一誠は親指をグッとさせて、

 

「グッドラック」

 

そして月が上がり始めた空に二人の男の悲鳴と尻を叩く音が響いた……

 

因みに一誠は土下座をするとはいったが最初から怒られかけたら助けるとは言っていない。日本語は難しい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いでで……」

 

その後一誠は痛む尻を抑えてリアス先輩に連れられていた。

 

「全く、あなたは人間だから良いけど一歩間違えば大変な事態よ」

「うっす……」

 

まあ今回は一誠も非があるのでなにも言い返せない。そんなことを思いつつ部屋にはいると……

 

「あ、一誠さんおかえりなさい」

「おかえり」

「え?」

 

目の前には……何故か裸エプロンのアーシアとレイナーレがいた……なんで!?

 

「さっきテレビでやってたのよ。男はこう言うのが好きだって」

「に、似合いますか?」

 

いや似合うと言うか凄く目の保養にはなるけどね!?なんだそんなのを流したテレビ局は!文句いってやる!

 

「成程、あれが流行ってるのね」

 

そう言ってリアス先輩も奥に消えた……そして、

 

「似合うかしら一誠」

「ぶっ!」

 

リアス先輩も裸エプロンになって出てきた……なんだここは桃源郷か!

 

「さて、テーブル片すわね」

「じゃあアーシア。料理を作りましょうか」

「はい」

「んなっ!」

 

一誠は慌てて鼻を抑えた。みなさん……せめてパンツは穿きましょうよ……本当に裸エプロンとか精神的にはヤバイっす!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたそんなことやってたの!?」

「まあな……」

 

食後一誠はレイナーレとアーシアに、事情を説明すると案の定この反応だ。

 

「なんで私たちにはなにも言わないのよ」

「だって片や元シスター、もう片方は現在騒ぎになってるやつと同じ堕天使……面倒が増えそうだ」

『…………』

 

確かに一誠の言う通りだった。

 

「どちらにせよ祐斗たちの捜索は明日ね。全く、次々と事件が起きるわね」

「確かに……」

 

一誠は腕を組んでリアス先輩に同意した。だが祐斗は大丈夫だろうか……いや、かなり今の祐斗は不安定だ。夜じゃなければすぐにでも捜索して見つけたいところなのだが……そこに、

 

『っ!』

「え?」

 

一誠、レイナーレ、リアス先輩勢いよく立ち上がった。アーシアも何か首の後ろにチクチクした感覚があった。これは……そう思い一誠は窓を開けてベランダに出た……そこに居たのは三対の漆黒の羽根をはためかせた男……

 

「コカビエル……」

 

レイナーレの呟きで納得した。こいつが……

 

「ご機嫌麗しゅう魔王の妹よ」

 

リアス先輩にそういった。

 

「あなたがコカビエルね……いったいなんの用かしら?」

「なに、まずはこれ渡しに来ただけだ」

『っ!』

 

そう言って一誠に投げ渡したのは……

 

「イリナ!」

 

一誠はそれをキャッチした。

 

「アーシア治療!」

「はい!」

 

アーシアは自分の神器(セイクリットギア)で治療を始める。

 

「何がしたいんだお前は……」

 

一誠はコカビエルをにらみながら聞く。

 

「良い殺気だ……やはりこうでないとな」

「なんですって?」

 

コカビエルの呟きにリアス先輩は首をかしげた。

 

「今は退屈でつまらん。先の大戦から時が経ったが刺激がない。何が和平だ。下らなすぎる!あのままいけば我ら堕天使が最強なのは火を見るのも明らかだった!いまや悪魔も天使も人間を利用しなければ存続もできないほど落ちぶれたのにアザゼルももう戦わんといって神器(セイクリットギア)の研究を始める始末!バカらしいにもほどがある!」

 

別に平和ならそれに越したことはないだろうとは思うが……コカビエルと言う奴はそうはいかない。戦いに溺れた愚者ってやつだな。こりゃこいつを抱えてたアザゼルってやつが可哀想な位の馬鹿さだ。恐らく時流も読めなかった愚か者だったのだろう。とは言えしっかり手綱位つけといてほしい。

 

「で?だからって何がしたくてここにいるんだ?」

「簡単だ。ここで魔王・サーゼクスの妹を殺せばその激情は俺に向かうだろう……そうすればまた戦争だ。時間を巻き戻せるんだよ」

「そんなことはさせないわよ」

 

そう言ってリアス先輩の体から深紅の魔力が溢れだす……一誠も赤龍帝の籠手(ブーステッドギア)顕現させてレイナーレも光の槍をだした。

 

「やはりそこの女は堕天使か……何故そこに貴様がいる」

「残念ですけど今は堕天使廃業しました」

「……ふん、まあ良い。ここでやっても良いがそれはつまらん。今からゲームをしよう」

「ゲームだと?」

「そうだ。今から貴様らの学園で俺は待つ。そこで戦おうじゃないか。俺は逃げも隠れもしない」

 

そう言ってコカビエルは離れていく。

 

「逃げても良いぞ。この町が消えても良いならな!」

 

笑い声だけを残してコカビエルは消えた……

 

「……今すぐ全員を集めるわよ!」

 

リアス先輩の号令に一誠は頷いた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かりました、私たちシトリー眷属はこの学園に結界を張ります」

「ええ、頼むわ」

 

コカビエルからの宣戦布告に集まったのは祐斗以外のグレモリー眷属とシトリー眷属、そして一誠とレイナーレ……アーシアはイリナの看病をしてもらっている。因みに祐斗には連絡を取っていない。一応理由がある。

 

「さて……じゃあ乗り込みましょう」

「あ、その前に……」

 

一誠が手を挙げてそれを皆が見た。

 

「俺すこし別件にいってきます」

「別件?」

「少し祐斗と話してきます」

『………………』

 

全員が一誠に意識を向けた。

 

「たぶん今こっちに来てます。だけど復讐心にとらわれたあいつが来ても邪魔です。だから……少し話したいんです。今だからこそ……あいつがエクスカリバーと戦いたい気持ちは否定できません。だけどその前に復讐だけで剣を振って欲しくないんです」

「一誠……」

「それに俺のせいですから……俺の建てた策で結局祐斗を更に復讐に取らわせてしまったんです。だから……最後まで責任もって祐斗を連れてきます」

「……分かったわ」

「リアス……」

「無駄よソーナ……一誠は目標決めたら一直線のところがあるもの。祐斗と話にいく……そう決めたらもう曲がっちゃくれないわ。ただし一誠、絶対に祐斗を連れて帰ってくるのよ。時間だったら幾らでも稼ぐわ」

「すいません」

 

一誠は頷く。それは当たり前だ。少なくともコカビエルは戦に狂ってるとは言え中々の実力者だ。少なくとも自分でないと勝負にならないだろう。でもそれでも……祐斗をこのままって訳にはいかないんだ。

 

「だけどどうやって木場を探すんだ?」

「それだったら簡単だ」

 

一誠は匙の問いに答えながら携帯を出すとメールを打った。

 

【エクスカリバーを持った奴が二丁目の廃ビルに入っていったぞ】

 

「こんなのにノコノコ来るかぁ?」

「来るさ……今のあいつならな……」

 

例えコカビエルが町を滅ぼすと言う事件が起きてたってエキスかリバーを優先する……一誠はあくまで勘であったが確かな確信をもってその廃ビルに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

祐斗は廃ビルの前にたつ……一誠からエクスカリバーの連絡を受けて急いでここに来た。罠かもとかそう言うのは全く頭にない。今の祐斗はただひたすらにエクスカリバー壊して復讐を果たすことしか考えていない。しかし連絡を寄越した一誠等が居ないのは少しだけ不信だったが今の祐斗に関係ないことだった。

 

 

 

「ここか……」

 

何段か上ると人の気配を感じた。そこはかなり広い……追い詰めた。先程はコカビエルと言う思わぬ相手に撤退を余儀なくされたがここにはいないのは気配でわかる。今度は逃がさない。そう思いながらドアを開けた……中に居たのは、

 

「よう祐斗」

 

仁王立ちで一誠は入ってきた祐斗を出迎える。

 

「何故ここに君が?エクスカリバーは?」

「ああ、あれ嘘だから」

「っ!」

 

祐斗は歯を噛み締める。

 

「どう言うことかな?今の僕はそういう冗談には付き合ってる場合じゃないんだ」

「多分コカビエルと一緒にいるんじゃね?だとしたら今ごろ駒王学園の所だろうな」

「ちっ!」

 

祐斗は踵を返して駒王学園を目指そうとするがその前に顔の真横を氣弾が通った。

 

「…………一誠くん?邪魔をするのか?」

「くくく……ああ、邪魔してやるよ。今のお前が行っても邪魔になるだけだ。そんな狭い視野になっちまった野郎は足手まといになるぜ?だからお前は……」

 

一誠は赤龍帝の籠手(ブーステッドギア)を出す。

 

《Boost!》

 

「俺がお前を止めてやる……口で言ってもダメだろうからな……元々お膳立てしてどうこうは苦手なんだ。やっぱりこうやってしまう方がいいな」

「……」

 

祐斗は剣を生み出す。

 

「なら君を殺す」

「いっとくがお前より俺の方が強いぜ?」

「それでも……僕は皆の恨みを剣に込めなければならないんだ!」

 

ばか野郎……そう思いながら一誠は拳を握りながら祐斗と距離を詰めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故赤龍帝がいないんだ?」

「彼は別件よ。遅れてくるわ」

 

それまでは私たちが相手よ……とリアス先輩たちはコカビエルに向けて構える。

 

「つまらんな……遊んでやれ」

 

そこに魔方陣が現れ首が三つある巨大な猛犬……ケルベロスが現れた。

 

「ケルベロスまで……皆!一誠が祐斗を連れてくるまでなんとしても耐えるわよ!」

『はい!』

 

二つの場所で……戦いの火蓋が伐って落とされたのであった……


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