【完】真・ハイスクールD×D夢想 覇天の御使い   作:ユウジン

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第0章 始まり
プロローグ


「行かないで……」

 

全てが終わった日、月夜の下で彼女はいった。

 

「ごめん……」

 

全てが終わった日……月夜の下で彼は消えていく。

 

「恨んでやるから……」

「はは……怖いな」

 

彼は苦笑いした……

 

「後悔してる?」

「そんなわけないだろ、華琳」

「そうね……貴方はそう言う男だわ、一刀」

 

月光が二人を照らした……何故か華琳と呼ばれた少女は普通に写っているのに一刀と呼ばれた少年の姿は消えていく。

 

「愛してるよ……気高き覇王。曹操 孟徳……もう近くで見れないのは残念だけど……きっと君ならちゃんとやるんだろうね……」

 

だから……と一刀は笑った。

 

最後に見た表情を人は記憶する。だから笑った顔を覚えていて欲しかった。最後は笑って逝きたかった。

 

「さようなら……」

 

フッと一刀が消えた。

 

「何で……本当に消えるのよ……」

 

ポロポロと華琳の眼から滴が止まらない。誰もいないのを良いことに嗚咽まで出てきた……

 

「一刀……」

 

愛しき男の名を呟くが……返事は返って来るはずもなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……」

 

気が付くと一刀は自宅のベットの上にいた。

 

北郷 一刀は高校生である。いや、あったと言うべきだろうか……ある朝、登校中に走った際世界が歪むような感覚を受けて気がつくと知らない場所にいた。所謂タイムスリップと言うやつだったのだが何とタイムスリップした時代は三國志……しかも有名な武将は女の子だった。

 

そこで出会ったのが華琳……いや、曹操 孟徳……在ろうことか彼女はこの世界にはない服(と言うか学校のポリエステル性の制服)を着ていた自分を天の御使いと言う神からの遣いに仕立て上げてきたのだ。他にも沢山の武将と出会えて喧嘩したり仲直りしたり愛し合ったり……

 

そして自分は一つの禁忌を犯した。

 

赤壁の戦い……と言う節目の戦いがある。そこで曹操は負ける……が、未来から知っていた一刀はその運命をねじ曲げた。無論それまでも幾つも時代を変えてきた。結果……現代に戻された。後悔はしていない……でもそれでも悲しいのが本心だ。

 

ふと時計の日付を見れば今日は平日……仕方なく布団を出た。

 

着替えようとして……制服だったのに気づいた。

 

制服が妙にボロボロで……まるで証拠品みたいで泣いてしまったのは不覚だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも自堕落になれれば楽だったかもしてないが一刀はその後一層勉学に励んだ。何故か?簡単である。彼女達の世界……もしかしたらまた会えるかもしれない。ならばそれまでに良い漢になっておきたい。そう考えた。

 

幸い結果はすぐに出た。やればやるほど成績は延びた。更に彼女達と過ごした世界で死ぬほど鍛えられたので運動神経も上がっていた。

 

突然の変貌にクラスから驚かれたがそれは一刀本人にとってはどうでも良いことだった。一刀が欲しかったのは歓声でも称賛でもない……知識だった。

 

だがずっと勉強漬けの生活をしていても彼女達の世界にいく手がかりするあるはずもないことを自覚していく。だが認めてしまえばそれはもう会えなくなる気がしたためか一刀は見ないし聞かないし言わないことにした……視界が滲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな生活を続けて早くも三年……最近ではやはりもう会えないのかと思う日が出てきて背筋が冷たくなった自分がいる。

大学生になって色んな人間に会えたけど……でもやはり彼女達に会いたいと思うのは我が儘なのだろうか……等と思っていると雪が降ってきた。

 

そう言えば今日はクリスマスだ。彼女達に見せたい……街は凄くきれいだ……それを見せたかった。すると、

 

「くしゅ!」

 

家の前で誰かがくしゃみとした。しかも何故か一人じゃない。何人もいる。しかも全員見慣れた顔だ。

 

「皆……」

『っ!』

 

一刀が呟くと皆がこっちを凝視した……そして、

 

『バカ!』

「うごぉ!」

 

全員に抱きつかれた……メリゴキャっと人間が体から発しちゃならない音を鳴らしながら押し倒された。

 

「何で……」

 

と一刀は聞くが皆泣きじゃくってて要領を得ない。

 

「ある日いきなり筋肉のお化けがやって来たのよ」

「華琳……」

 

自分の頭の辺りに立ったのは華琳だった。

 

「筋肉のお化けってなんだよ」

「そうとしか形容のしようがなかったわ。それでそいつが言ったのよ」

 

《この世界の物語は終わったわ。だけど誰かが望めば物語は終わっても続ける……だけどこの外史は誰も望まなかった……いえ、最近は望む人間が減ったのよね。この世界を望む人間は減っていく……悲しいけどね。だからこの外史がこのまま消滅してしまう前にあなた達をご主人様の所に送ってあげるわ》

 

「っていきなりよ?しかも寒いし」

「はは……まさか帰るつもりがそっちから来るとはなぁ……」

「ふふ、貴方が遅いからよ……とりあえず寒いからどうにかならないかしら」

「わかった。うちに来なよ。それからこれからの事も考えたいしさ」

「そうね。ほら貴方達立ちなさい」

 

華琳は一刀を押し倒してた皆を立ち上がらせた。

 

「そう言えば戸籍?だったかしら。あの辺はその筋肉のお化けが何かやったみたいだから気にしなくて良いらしいわ」

「それはよかった……あ、皆」

 

一刀は門の前に立った。

 

「お帰りただいま……違うな……あ、いらっしゃい」

 

それを聞いて皆は笑うと一刀につれられて入っていく。

 

それから様々なホームドラマが繰り広げられるがそれは別の話だし、舞台はそれから十数年後である。


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