長月(偽)だ。駆逐艦と侮るなよ。   作:萩鷲

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ゲームで遊んだり動画を観たりTwitterをだらだら眺めたりMMDで遊んだりしていたら更新遅れました(言い訳)



新たなる-3

「こいつは、新人の清霜だ。さっき、司令官から紹介されて……まあ、色々あって、一緒にいる」

「どうも、ご紹介にあずかりました、夕雲型の清霜です!」

 

 清霜は長月(ぼく)の背後から姿をあらわし、皐月に向けてびしっと敬礼をする。

 

「なるほど、新人かー……あ、ボクは睦月型の皐月だよ! よろしくな!」

 

 皐月も、清霜に敬礼を返す。

 

「まあ、なんだ。せっかくだ、三人で入るか、風呂」

「ボクはそれでいいけど、清霜は?」

「皐月さんがいいなら、ぜひ!」

 

 そうして、本当ならば一人でさっさと入ってさっさと出てくるつもりだったのが、気が付けば三人に。皐月はまだ予想できたにしても、新人まで引き連れることになるとは夢にも思わなかった。

 

「ところで、皐月さんと長月先輩の関係は?」

「うーんと、同じ隊で、同型艦で――友達、かな」

「なるほど! お友達ですか! ……あたしもできるかなあ、友達」

「できるできる! ……ところで、ボクは『皐月さん』で、長月は『長月先輩』なのはなんでさ?」

「それは、先輩は先輩だから」

「ボクだって先輩だよ!」

 

 などと、騒がしくやりとりする二人の声を背中に受けながら歩くうちに、入渠ドックにたどり着いた。三人並んで脱衣所に入り、雑談を続けつつ風呂場へと入る。さすがに三週間少しも経てば、裸くらいでは特別動揺したりもしない。そういうのはたまに見るからいいのであって、毎日の日常生活内で嫌でも目にする現状では、慣れを通り越して飽きの境地ですらある。贅沢な話だ。

 

「――ほんと、あの時の長月はかっこよかったよ。ヒーローみたいでさ」

「おー、さすが長月先輩!」

「ヒーロー、なぁ……そうなると、助けられた皐月はヒロインか?」

 

 風呂場の中に入って、身体を流し始めてからも、清霜と皐月と――そこに僕を加えて、会話は続いていく。

 

「……ごめん、長月の気持ちは嬉しいけど、ボクは女の子同士は――」

「いや、愛の告白とかじゃなくてだな」

「分かってるって、冗談冗談」

「仲がいいのね、二人は」

「友達だからね」

「友達だからな」

 

 語尾以外ぴったりと異口同音の言葉を、皐月と僕はほとんど同時に返す。直後、片手をあげてハイタッチ。まだ出会って一月経たないというのに、かなり息が合ってきた。

 

「そういえば、話は変わるけどさ。清霜は、どこの隊に所属になるんだろうね?」

「そうだな……うちの隊は、もう満員だしな」

「えっ、二人と一緒の隊、入れないの⁉︎」

「編成を変えない限りは、そうなる」

 

 ヴェールヌイを旗艦に、暁、菊月、文月、皐月、そして長月(ぼく)の六隻で構成された第六警備隊は、新人教育を兼ねた艦隊でもある。だから、もし空きがあれば、清霜も同じ隊に入っていたかもしれないけれど、今のところ空席はないし、誰かが抜けるという話も聞いていない。

 

「新人向けの艦隊は、なにもボクらの隊だけってわけじゃないしね。そうだね、駆逐艦なら……第十一駆逐隊とか? あそこは今、空きがあったはずだし」

 

 第十一駆逐隊――吹雪型の駆逐隊だっけ? いや、ここの第十一駆逐隊がそうだとは限らないか。いやまあ、三週間も経つんだし、そのくらい確認しておけよという話ではあるんだけど、なにぶん数が多くて覚える気になれない。人の名前だのグループだのを覚えるのは、あんまり得意なほうじゃないんだ。

 

「そっかー……同じ隊、入れないのかぁー……」

「ま、まだ決まったわけじゃないって、ね?」

 

 露骨に落ち込む清霜の背中を、皐月がぽんぽんと叩く。見た目的には、夕雲型の清霜のほうが、睦月型の皐月や長月(ぼく)よりは歳上に見えるんだけど、どうにも中身の年齢は皐月のほうが上のような気がする。実年齢はともかく。

 

「まあ、どうなるかは司令官次第だからな。もし希望があるなら、伝えてみたらどうだ? 案外、便宜を図ってくれるかもしれないぞ」

「うーん……そうね、そうしよっかな。できれば、二人と一緒の隊、入りたいし」

「うちの司令官、なんだかんだ艦娘に甘いし、そのくらいのお願いなら、聞いてくれる……かも、ね」

 

 皐月はそう言うが、もしかすると、艦娘というよりは、駆逐艦に甘いんじゃないだろうか。ロリコンだし。

 

「とにかく、ここで私たちが色々言っていても、どうにかなるような話ではないな」

「確かに、ね。ボクらにできるのは、さっさとお風呂上がって、清霜の案内をして、司令官にお願いするくらい、かな」

「――よし! そうと決まれば、急いであったまるわよ!」

 

 言って、清霜はすっくと立ち上がり、浴槽のほうへと駆けて行ってしまった。

 

「あはは、落ち着きがないなあ、清霜は」

「側から見てるぶんには、普段の皐月も大差がないような気がするが」

「……えっ? ほ、ほんと?」

「ああ、本当だ。そんなことよりもほら、私たちも行くぞ」

「そっか、あんな風に見えるのかぁ……というか、そんなことって……」

 

 しょんぼりとしている皐月を尻目に、僕も立ち上がって、浴槽目指して歩き出した。


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