乗っ取らせていただきました   作:茶ゴス

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転生

 意識が浮上する感覚に目を覚ます。

 自分の手を開いたり閉じたりして身体の調子を確認する。どうやら随分と退化してしまったようだ……今の身体は齢5程度といった所か……

 

 今持っているものは七夜の短刀だけ……か。

 

 

 全く、転生者とやらも随分と物好きなようだ。まさか俺の身体能力を得るために俺の身体を媒体に転生を果たそうとするとはな…その上、どうぞ貰ってくださいと言わんばかりに無防備な精神体。

 有り難く頂いたが、どうやら転生者自体は消えてしまったようだな。

 

 ま、運が悪かったと諦めてくれ……

 

 

 とまあ、余り今の状況は飲み込めないが…取り敢えず現状を確認しなきゃ殺れる物もないか…

 

 確かここはNARUTOとやらの世界だというが……いまいちわからんな。NARUTOとは神か何かの名なのだろうか…もしこいつを殺したらこの世界はどうなるのだろうな……

 

 

 クククっと声を殺して笑い、周囲を見渡す。

 七夜の里を彷彿させる森、どこか偏狭な山なのか、それともこういった光景が当たり前の世界のなのか……

 

 いや、一つ分かる点があるな。周囲の木に存在する無数の黒い線と、黒い線に点在する黒い点。全く、まさかこの眼をあれが望むとは思わなかったな。到底耐えられそうにないぞ。

 この眼は俺やあいつみたいに性格が破綻している奴くらいにしか使えないだろうに……まあ、結果的に俺に直死の魔眼までよこす事になるなんてな。随分と太っ腹なものだ。

 

 まだまだ現状の理解は出来そうにはないが、どうやらこの世界にも人間はいるらしい。なにやらこちらへと近付いてくる気配を感じる。

 それもそうか、あれだけ脆弱な精神体が願った世界だ。あれに生物としての孤独を歩めるとは到底思えんからな。

 

 俺の場合もそうだな、人を殺せない世界だなんておかしくなってしまうだろう。

 

 っと、今はそれどころではないな、取り敢えず気配の元を断ち切っておいてやろうか。

 

 

 木の裏に回り、息を潜める。リーチが短いのに若干の不安を感じるがそうは言ってられないだろう。

 

 折角の獲物だ、そうみすみすと見逃すほど俺は大人じゃない。ただ、殺すために動く、それだけだ。

 

 

 現れたのは一人の男、逆立った白髪に防護服と覆面と額当て、傍から見たらただの不審者だが……しかしまあ、あれは中々に出来るな。あの身のこなし、常に奇襲から対応できるように警戒している。

 こいつが特別かもしれんが、少なくとも今は退屈しなさそうだ……

 

 

 足元に落ちている石を上に投げ、地を這うように回りこむ。

 投げた石が地面に落ちる音に相手は視線を向けた。成る程、この程度では隙が出来ないか…

 

 また、同じ容量で上に投げ、短刀を口に咥え木に登る。

 

 視線が動いた瞬間を見計らい、立っている枝の線を凪いで次の枝に跳ぶ。

 音を立てて枝が地面に落ち、いい具合に相手の警戒心が上がっていく。

 

 息を殺して姿を隠しながら頭の中で秒数を数える。

 1秒、2秒とその時が来るのをまだかまだかと待ち続ける。

 

 

 

 

 

 

 7秒がたった、周囲を警戒している気が少し緩んだ。

 ここだと言わんばかりに茂みの中から短刀を投げる。それと同時に跳躍して相手の頭上に跳び上がる。

 

 虚を付かれたのだろう、相手は驚きながらもなんとか短刀を地面にはたき落とした。

 だが、もう遅い。俺の手が相手の頭を掴み、このまま背骨を引き抜くようにねじ切る……

 極死・七夜。一族の奥義とも言える技は相手の命を刈り取り、

 

 

「……」

 

 

 刈り取り……

 

 

「……なんのつもりだ?」

 

 

 刈り取らなかった、まさか筋力まで落ちているとは……誤算だった。

 ならばこのまま死の線を裂いてやろうと頭に手を当てようとするが、それよりも早く首根っこを捕まえられた。

 

 

「ええぃ!離せ!」

 

「いや、離すわけ無いでしょ。一体どういう目的で俺を攻撃したんだ?」

 

 

 そのまま目線の高さまで上げられた俺はまるで猫のようだ。それにしても子供とはいえ人一人を軽く片手で持ち上げるとは少なくとも一般人ではないな。まあ、あの警戒のしようから同業者だとは思うが……

 

 

「そんな物決まっているだろう?目の前に強そうな男がいたんだ。殺さなきゃ失礼だろ?」

 

「……お前、額当てをしていないところから見て、何処かの抜け忍か?」

 

「ヌケニン?」

 

「違うのか?ならば何処かの殺しを生業にしている一族とかか?」

 

「ああ、そうだな。まあ、俺以外は既に死んでいるがな」

 

 

 紅赤朱は既に殺した。もう義理はないが、俺が七夜であることには変わりはない。

 しかしまあ、手が届かないな、触れれば殺せるのに殺せないっていうのはなんてもどかしいのだろうか…

 

 

「お前が殺したのか?」

 

「いいや、まあ、滅ぼしてくれた鬼は既に殺したがな」

 

「………で、お前は何をするつもりなんだ?」

 

「何故そんな事を聞く?」

 

「いいから答えろ」

 

「あんたを殺したい」

 

「……」

 

 

 にしても、おかしいな。いきなりだが意識が沈みそうになっている。

 

 

 

 

 

 まさかとは思うがこの身体で動きまわって疲れて眠たいのか?いいや、そんな筈はない。だって現に今も意識ははっきりして……

 

 

 

「お、おい」

 

「………」

 

「なんで寝る?……仕方ない、木の葉に連れ帰って尋問するか」

 

「………」

 

「にしても、あの短刀の投擲速度、並みの忍…まず下忍なら避けれなかっただろうな」


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