ラブライブ!〜紡がれる命の物語〜   作:二人で一人の探偵

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1日空いてしまいました…序盤からこんな調子で大丈夫かな?
今回で一応原作前の話は終わりになるのかな?次からは廃校問題にぶつかったみんなを描いていくことになる…か?その前に新入生2人を書くかも…あっ、YAZAWAをまだ書いてない…

まあこんな感じで前途多難ですが、とりあえず第4話、どうぞ!


命の1日(西木野家編2)

 

 

 

 

 

 真姫さんに車椅子を押してもらいながら、黄山さん達西木野家の方々に一通りの挨拶を済ませ、今は真姫さんの部屋に上がらせてもらっている。

 

 受験を終えてから、久しぶりに作曲に没頭したという新曲を拝聴する。

 

「ど、どうかしら?今回は抑揚を控えめにして耳に心地良い曲、っていうのを意識してみたんだけど…」

 

 彼女は曲を作ると必ず私に聴かせて意見を仰ぐ。素人…というか普通の人よりも殊更に音楽に触れる機会は少ない人間の意見にどれ程の価値があるかは分からないが、決まって彼女は胸中の不安を隠そうとして隠しきれていない顔をするので、こちらも無知なりに頭を回して拙い感想を懸命に紡ぐしかない。

 

「うん、全体的に聴きやすくて、かといって地味、というわけじゃなくて…なんて言えばいいかな?…1人で静かに読書とかしているときに流すといいかも…ゴメン、うまく言えないや」

 

「いえ、なんとなく分かったわ。詞をつけて歌う、というよりはBGMっぽいってことよね。私のイメージ通りよ……あぁもう、命は私の欲しい言葉を言ってくれたから、戻ってきなさい!」

 

 もっと具体的な意見を、と頭を捻っていると真姫さんが若干焦ったように私の肩を揺する…あんな言葉で良かったのだろうか?

 

「専門的な評価が欲しかったら命には頼まないわよ。命は流行りの音楽とかを知らない分、感じたことを率直に伝えてくれるから、結構タメになってるのよ?あなたの感想」

 

「それなら良かった。真姫さんのお役に立てて、私も嬉しいよ」

 

 色々気にかけてくれている彼女に何かお返しをしたいと前々から思っていたが、少しは力になれていたようだ。…これくらいで返しきれたとは、思っていないが…

 

 一通り感想を伝え終えて一息ついたところで玄関が開いた音が聞こえた。

 真姫さんと2人、玄関に向かい、仕事を終えて帰宅した家長を出迎える。

 

「お帰りなさい、パパ」

 

「お疲れ様です、先生。お先に寛がせてもらいました。」

 

「ただいま、真姫、命君も。待たせてしまったかな?すまない、すぐ食事にしようか」

 

「いえ、真姫さんと2人の時間を満喫してましたから。楽しかったです。」

 

「ちょっと命!何言って…」

 

「ハッハッ、いつ見ても2人は仲がいいな。うん、結構結構。青春だなぁ」

 

「パ、パパまで…もう、意味わかんない!」

 

 楽しげな表情で私と真姫さんの頭を撫でるこの男性は西木野 真雄(にしきの まお)先生。

 

 私がお世話になっている『西木野総合病院』の院長で、私の担当医でもある。生命的にも人生的にも、色々な意味での私の恩人だ。

 

 私のことを実の息子のように大切にしてくれる、今の私にとって父親のような存在…だからこそ、ありがたさと同時に申し訳なさも感じてしまう…

 

………どんなによくしてもらっても私は………

 

 負の思念に飲み込まれそうになった頭をブンブン振って思考を戻す。お招きいただいた先で雰囲気を壊すわけにはいかない。

 

「どうしたの、命?頭痛いの?」

 

「何?大丈夫か命君。ちょっと診てみるか…」

 

 ほら、こんな些細なことでも心配してくれる。私は病室に戻るまで皆さんに不安を感じさせないように振舞うことを誓う。

 

「いえ、何でもないです。少しボーッとしていただけですので」

 

…これ以上迷惑はかけない、かけられない、かけたくない…

 

 

 

 

 

 真雄先生、美姫さん、真姫さん、私。四人揃って晩餐開始だ。私が来るときはいつも一品の量は少なめ、品目を多めに揃えて用意されている。多くを食べられず、普段から食事のバリエーションも少ない私のために、少しずつ色々な料理を食べられるようにという事なんだろう。

 

 ご厚意に甘えて…あまり褒められた食べ方じゃないかもしれないが…色々な皿に一口ずつ手をつけていくと、

 

「そうだ、命君、スクールカウンセラーの方はどうだい?順調かな?」

 

「はい、半年ほど続いていますが、利用者も増えてきて、役に立てているかは分かりませんが、問題なくやれています」

 

「そうか…いや、やはり鶏子さんに頼んだのは正解だったようだな。君自身もイキイキして見えるよ」

 

「ええ、可愛い女子高生に囲まれて嬉しくない男の子はいないわよね〜、そろそろ誰かいい人は見つかったかしら?」

 

 真雄先生に続く形で美姫さんがとんでも無いことを宣った。

 

「ちょっ、待ってください。確かに女子校だから関わるのは女子ばかりですけど、別にそういうことじゃなくて…」

 

「あらぁ?今日いっしょだった3人なんて特に綺麗どころが揃ってたと思うけど?なんだか距離感も特別近いように感じたわよ〜」

 

「ほぉう、そうなのか?やるな、命君。まさか3人とは…いや、命君なら当然といったところか…」

 

 美姫さんの爆弾投下に真雄先生まで乗っかってしまう。こうなると私の手には負えない。ヘルプを求めて隣のご令嬢に視線を向けると、

 

「……………………。フンッ!」

 

「……え〜……。ちょ、どうしたの?真姫さん」

 

 私の薄っぺらい身体くらいなら穴を開けられそうな勢いで睨みつけた後、真っ赤な顔ごと視線を逸らされた……何かやらかしたか?私……何に対してご機嫌斜めなのか定かではないが、彼女へのフォローと話題転換のために言葉を紡ぐ。

 

「来月からは真姫さんも音ノ木坂の生徒ですからね。これまでより会える機会も増えますし、さらに楽しく充実した時間になりそうです。ねっ、真姫さん」

 

 これでどうだ⁉︎という機体と不安を込めた眼差しで彼女の方に向き直ると、

 

「っ⁉︎………。そうね、命があんまりヒマしてるようなら…生活相談室だったかしら?私から行ってあげないこともないわ、感謝しなさいよ!」

 

 一瞬音が鳴りそうな勢いで顔を紅潮させたのが気になるが、どうやら機嫌は直ったらしい。これで一安心だ。

 

「…やはりさすがだな、命君は」

 

「ふふっ、学院でもこの調子だとしたら大変なことになっていそうだけど…真姫ちゃん、ガンバ‼︎」

 

「ちょっ、何言ってるのよママぁ!」

 

「あの、真姫さん。今のどういう意味かな?」

 

「分からないなら黙ってなさい、命の鈍感!」

 

…怒られた。理不尽…じゃないのか、お二人の言葉の意味が分からない私が悪いのか?しかし、仮にも人の相談を聞く立場の私が鈍感、というのはマズイ気がする。

カウンセラーを志してから、勉強と実践の毎日だが、やはり人の心とは難しい。真に全てを理解するなど不可能なものなのかもしれない…

 

 その後も他愛ない雑談を挟みつつ、和やかに食事は続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 食事を終えて1時間ほど。私は再び真姫さんの部屋でのんびり過ごしていると、階下から美姫さんの声が届く。

 

「そろそろ命くん帰らなきゃいけない時間よ〜?降りてらっしゃい」

 

「っと、本当だ。もう行かないと。それじゃあ真姫さん…」

 

「あっ、ちょっと待って!………あの、いつもの、お願い……」

 

 部屋を出ようとした私を引き止めた真姫さんは、今日一番の赤面顏で、蚊の泣くような声で1つの要求をしてきた。

 

『いつもの』というのはいつの間にか別れる前の恒例になってしまった、まぁ、ハグのようなものだ。

 

 正確にはしゃがんでもらった彼女の頭を私の胸に抱き寄せる形になる。元々はある日泣きじゃくってしまった真姫さんに対して、人の心音にはリラックス効果があるらしい、という聞きかじりの知識のもとにやってしまったのが発端だ。それ以来別れる前にはどうにかして二人きりになってからせがんでくるようになった。

 

 後々調べた結果、本来母親と赤ん坊の間での話らしい……まぁ、それ以外では無意味、と決まったわけではないし、本人が満足しているので、それでいいかな、と思っている………私も悪い気はしないし………

 

 これをやったことがあるのは真姫さんと絵里さんだけだ。絵里さんの場合も、精神的に追い詰められていたところを半ば勢いでやってしまった感じだ。絵里さんにはそれ以来やったことはないが、「他の子には絶対にやるな」と厳命を受けたので、学院でやったのは今のところアレが最初で最後だ。

 

「ん、……じゃあ真姫さん、こっちにおいで」

 

 小さく頷いて、彼女は私の目の前でしゃがみこむ。なるべく力を込めずに柔らかく彼女を抱き寄せて、互いの距離がゼロになる。

 

 ちなみにこの体勢、私の体が小さいことと車椅子に座っていることもあって、される側は中々苦しい状態になる。膝立ちになって、上半身が私の足に覆い被さるような形だ。側から見たら思わず三度見くらいしてしまいそうな体勢だ。

 

「不思議…ママでもパパでもない、こうして1番落ち着くのは命なのよね…」

 

「光栄だね。私で良ければいつでも…来月からは高校生だね、電話でもメールでも、これからは学校でだって会えるんだし、何かあればちゃんと話してね?私は基本ヒマだから」

 

「ふふっ、なんで誇らしげに暇人宣言してるのよ、まったく……、でも、ありがと…もういいわ、下まで送るわね」

 

 ゆっくりと私から離れた真姫さんは部屋の隅に置いておいた私の荷物を肩にかけて車椅子の後ろに回る。押してくれるのか、と思った次の瞬間、後ろから首に両手を巻かれて、右耳と首筋に真姫さんの体温と息遣いを感じる。

 

 一瞬で体が硬直した私の耳に真姫さんは口を寄せて呟く。

 

「…ありがとう、何かあったら頼らせてもらうわね………………おにいちゃん……」

 

 ギョッとして真姫さんの顔の方を向こうとしたら、素早く体を離した彼女の腕が私の頭をがっちり抑えた。

…まあ良かったかもしれない、今はお互い人に見せられないくらい真っ赤な顔をしているだろうから…

 

 どこか遠くに聞こえる美姫さんのお呼びの声に意識を呼び戻され、互いに無言のまま下に降りる。

 

……ここに来るたびに思い出が蓄積されていくが、今日はまた一段と強烈な記憶が刻まれた、忘れられない日になった。




閲覧ありがとうございます。なんか真姫ちゃん贔屓して見えるけど、そんなことはないよ!
書いてる内に熱が入って凄いことになったけど、今の段階で主人公に恋愛感情を持っている子はいません!……私の中では……全員家族愛とか親愛とか、懐いている、とかそんな感じです現時点では。

前書きの通り、長〜い目で見た先のことは大まかに考えているんですが、目先のこと、差し当たっては次の話についての構想がまとまりません!どうしよう?

まぁ、何か思いつけば筆が進むのは早い方だと思うので、なるべく早く、頑張ります!

ではまた!

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