ラブライブ!〜紡がれる命の物語〜   作:二人で一人の探偵

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今回で原作前から縁のあるメンバーは全員出てきます。
最もそんなに原作に繋がるように描くかは分からないんですが…なんとなく主人公のポジションが分かればいいな、と思ってます

では、どうぞ!


命の1日(西木野家編1)

 

 

 

  海未さんと穂乃果さんの補助もあって無事にことりさんに万全の体勢でおぶってもらうことができた。幼い頃から病弱で、病院暮らしの長い私の身体は小さく、軽い。女子高生でも軽々運べるほどだ。それにしたって何故喜んで人を運ぶ、なんて面倒なことをやるのか、1度希さんに聞いてみたところ

 

「落ち着く匂いと安心できる温かさを感じられるから」

らしい。他の子には聞くな、とキツめに言われたためそれ以降誰にも聞いていないが、何度考えても理解できない。

 

  私の匂い?………病院の匂いが染みついているだけだ。

 

  私の温かさ?………むしろ体温は低い方だ。

 

 

  しばらく考えてこんでいると、ことりさんに心配されてし まったので、とりあえず忘れることにする。

 

  「美姫さんがお迎えに?」

 

  「うん、これから西木野さんの家で夕食をご一緒する約束なんだ」

 

  「それは…すごい豪勢なディナーになりそうですね」

 

  ことりさんは理事長と夫妻の付き合いがあるため、西木野家とも面識がある。最も娘同士の交流は、西木野さん側の人見知りが災いしてほとんどないらしい。あくまでお互い存在を知っている程度で顔も見たことがないそうだ。

 

  「私も最初はそう思ってたんだけどね、やっぱり入院患者、ってことを考えられたメニューだったよ」

 

  それでも見たことないくらい立派な食事だったけど…と呟いて、初めてお招き頂いた日を思い出す。

  油の量や栄養バランスに細心の注意を払いつつ、いかに彩りと味を落とさず整えるか、難しいが追求しがいがある命題(テーマ)だった、とコックの黄山さんに何故か感謝された。料理を頂いたのはこちらなのだが。

 

 無事に1階に到着、折りたたんで運んでもらった車椅子を広げてもらって着席。私は靴を履き替える必要はないため、下駄箱では3人が履き替え終わるまで待って、一緒に玄関を出た。

 

  正面の駐車場に見覚えのある赤い車が見えた。横には美姫さんと使用人の紫藤さんもいる。向こうも気づいたようで、紫藤さんに二、三告げて美姫さんがこちらに近づいてきた。

 

  「お疲れ様、命くん。ことりちゃんも久しぶりね。そちらの2人もお友達?」

 

  「お迎えありがとうございます、美姫さん。紹介しますね、音ノ木坂の1年生、高坂 穂乃果さん、園田 海未さんです。二人とも、こちら、私がお世話になってる先生の奥様の西木野 美姫さん」

 

  「初めまして!高坂 穂乃果です」

 

  「園田 海未です。よろしくお願いします」

 

  「お久しぶりです♪美姫さん」

 

  「あら、ご丁寧にどうも。西木野 美姫です。命くんがよくしてもらってるみたいで、ありがとう。この子もこの学院で過ごす時間がとても楽しいみたいで…きっとあなたたちのおかげね」

 

  「いえいえ、ミコちゃん先生にはいつもお世話になってます!」

 

  「ちょっ、ちょっと穂乃果!」

 

  「ふふっ、ミコちゃん、か。良いわね、それ。私も呼んでみようかしら?」

 

  「勘弁してください。病院で美姫さんにそんな呼び方されたら看護師さん達がまた悪ノリします」

 

  「あははっ、それもそうね、命くん人気者だしね、止めときましょう。」

 

  あれは人気というよりは弄りがいのあるオモチャのように扱われている気がするが…

一通り話して満足したらしい美姫さんは、紫藤さんが車の準備を済ませて出てきたのを確認すると、

 

  「もう少し話していたいんだけど、ごめんなさい。これから予定があるの。また会いましょう、ことりちゃん、穂乃果ちゃん、海未ちゃん」

 

  「はい、また♪」

 

  代表してことりさんが答えると、海未さんはぺこりと頭を下げ、穂乃果さんも海未さんを見てやや慌てて頭を下げた。

 

  「それじゃあまた。何かあったら電話なりメールなり、遠慮しなくていいからね?」

 

  「はーい、じゃあまたね!ミコちゃん先生!」

 

  「命先生、また来週♪」

 

  「体調を崩さないように気をつけてください、ではまた」

 

  手を振る3人にこちらも手を振ってから背を向ける。

  「また」いい響きだ。心に来るものがある。

 

 

 

 

 

 

  紫藤さんの全く身体に振動が伝わらない完璧なドライビングで移動すること数十分、西木野家、いや、西木野邸と言っても違和感がないほどの立派なお宅に到着した。乗車時と同様、紫藤さんの手を借りて降車。家の中に入る。

 

  ちなみにこの家、ほぼ全域に渡ってバリアフリー化がなされている。言うまでもなく私のためだ。ここに来ることなど、身体の調子と先生の都合がかみ合えば、という条件付きでも月に1度あるかないか、といった程度なのに。

 初めて見た時は、本当に私の家族たろうとしてくれていることを感じ、思わず泣いてしまった。年下の少女に泣き顔を見られたことは今でも恥ずかしい。

 

  「命!来てたのね!」

 

  思い出してしまった 黒歴史を再び記憶の奥底に封じようとしていたところで、階段の踊り場から声が届いた。私は声の主を視界に捉えると片手を軽く挙げて挨拶する。

 

  「こんにちは、真姫さん、今日はお招きいただきありがとう。」

 

  「ッ…お招きって…命を呼んだのはパパでしょ?」

 

  一瞬動揺を隠しきれずに足が止まったが、何事もなかったように涼しげな様子でこちらに近づいてきた。

 

  「そうなの?先生は『真姫が命君と食事をとりたがっている』って言ってたけど」

 

  「なっ、〜パパ…黙っててって言ったのに…!」

 

  「ウソウソ、そんなことは先生言ってないよ、言葉の端々から君の意志を感じたからね、言ってみただけ」

 

  「なっ⁉︎み、みことー‼︎」

 

 

  鮮やかな赤髪に負けないくらいに赤く染まった頬を膨らませてこちらを睨みつけている彼女は西木野 真姫

 

  私の恩人の西木野 真雄先生と私のお話友達第一号の西木野 美姫さんの娘さんで、お話友達第二号でもある。

 

 これを言うと機嫌が悪くなるので口にはしない。二号、というのが気に入らないようだ。負けず嫌いの彼女らしいと言えるのだろうか?

 

  母君とは少し色合いの異なる赤髪とツリ気味の目が特徴的なまたしても美少女だ。

 

  西木野総合病院を継ぐ医師となるべく、勉学に励む一方で、幼い頃から続けているピアノを中心に、音楽にも詳しい。作曲なんてことができるすごい子で、聞かせてもらったオリジナルソングは素人ながら圧倒されてしまった。

 

  これはご両親にも内緒だが、いわゆるアイドルに興味があり、部屋には雑誌やCDが数多く揃っていた。

 

  性格は…この前読んだ本に書いてあった……そう、『ツンデレ』だと思う。基本的にいい子だが、自分の気持ちを素直に口に出せず、若干冷たい物言いになってしまうため、誤解されやすい中々損な性格をしている。自分の気持ちを言葉だけでなく表情や体全体を使ってでも表現する穂乃果さんとは真逆の性格…1度この2人の会話を聞いてみたいものだ。

 

 ……あ、機会、あるかも…

 

  「久しぶりだね、音ノ木坂、受かったんだってね。遅くなったけどおめでとう」

 

  「…別に、受かって当然の学校だったし…祝ってもらうほどのことじゃないわよ」

 

  真姫さん語検定準一級(自称)の私にかかれば翻訳だってお手の物。さっきの発言を本心に置き換えて訳すと…

 

  「…や、やめてよバカァ…あなたのいる学校に入れてタダでも浮かれてるのに、あなたに褒められたらどうにかなっちゃいそうじゃなぁい…」

 

 

 

 

  …………………。浮かれているのは私の方だな…流石に主観を入れすぎた。

 

  だが、彼女が音ノ木坂を選んだ理由の一番大きなところは冗談抜きに私の存在があるらしい。

 

  「高校なんてどこでも大差ないし…せっかくならママの通ってた所に行こうかな、って思っただけよ」

 

  以前理由を聞いた時はそう彼女は答えたが、後に美姫さんから言われたのは、

 

  「どこでも大差ない高校の中から志望校を決め切れなかったあの子が進路を固めたのは、あなたが音ノ木坂で働き始めたことを聞いたからよ」

 

  たまに私や真姫さんをからかって楽しんでいることがある彼女だが、これは冗談ではないんだな、と不思議と確信が持てた。

 

  出会った当初は私の経緯は殆ど知らず、パーソナルエリアだった家に侵入してきた外敵の如く警戒されていたが、病人でもない彼女の信用も得られないようではカウンセラーなど不可能だと、めげずにアプローチを繰り返すことで、徐々に彼女の方から張っていた防壁を外して近づいてきてくれた。

 

 両親が特に気にかける私という患者のことが気になって調べた結果、私の過去と現状を知ってからはもう加速度的に距離が縮まり、今では兄妹のような関係になっている。

 

「先生は?まだ帰ってきてないのかな?」

 

「ええ、さっき病院を出たって連絡来たから、もうすぐじゃないかしら」

 

「それじゃ先生が来る前に黄山さんに挨拶してこようかな。ごちそうをいただくわけだし。」

 

「毎回マメねぇ、そんな気にすることないのに…」

 

「あはは…まぁ性分みたいなものだよ、私は人のお世話になることが多いから、せめて礼儀くらいはしっかりしないとね」

 

「そう…まぁ命がそう言うならそれでいいけど…」

 

と言いながら車椅子を押してくれる真姫さんはいい子だ

「ほら、行くならサッサと行くわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…こういう時なんて言うんだっけ……そうだ、あれだ…『ツンデレ乙』…?」

 

「…えっと、命…どこで覚えたか知らないけど、それが載ってた媒体はアテにしない方がいいわよ?」

 

 

 

 




閲覧ありがとうございます
1話でまとめられませんでした…次で原作前の話は終わらせるつもりです!多分…きっと…できたら…

ではまた!

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