ラブライブ!〜紡がれる命の物語〜   作:二人で一人の探偵

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今回から本編に入ります。
さっそく原作キャラ登場です。キャラの口調を意識するのって難しいですね。色々考えた結果ヤマもオチもない話にまとまってしまいました。まぁ、読んでいただけるとありがたいです。
では、どうぞ!


命の1日(学院編1)

 

私こと紡屋 命の出勤時間は早い。というのも、生徒の登校時間より前に学院に着いておきたいと意識しているからだ。私は病院から学院までは看護師さんに車で送ってもらっている。

そして学院で待っていてくれる用務員さんが2人がかりで私と車椅子を3階にある私の担当する《生活相談室》まで運んでくれる。いつもありがとうございます。

 

私の身体を考えて1階に相談室を移せないか、という提案が生徒からあったそうだが、1階は職員室や保健室など、特殊かつ重要な部屋で占められていたため、不可能だった。

 

その生徒は申し訳なさそうにしていたが、そちらには何の落ち度もない。ムリを通してここに置いてもらっている立場だし、用務員さんには申し訳なく思っているが、私のために教室改装なんて大事になっても困る。むしろ生徒の立場で一カウンセラーの私を気にかけてくれたことがとても嬉しかった。

 

自分が病人だという自覚はいやという程あるが、さすがに おぶってもらい、車椅子を運んでもらっている姿を見られたいとは思わない。まぁ、最近は帰りに見られるよりもっとヒドいことになっているが、あれは彼女たちが特別なだけだろう、そのはずだ、多分…何より生徒の邪魔になるだろうし。幸い用務員さんたちは元々私より朝早くに学院に来ていたため、その点は迷惑にならずに済んでいる。

 

生活相談室(私の城)に着いたらまずはひと休憩。お茶の用意を2人分。お湯が沸く頃には今日のサポーターが来る はず。

 

「紡屋さん、おはようございます。」

 

「おはようございます。今日は笹原先生が朝の担当でしたか。よろしくお願いします。」

 

「こちらこそ。紡屋さんのお茶とお話は毎週の楽しみですから。他の先生方も同じように言っていましたよ。」

 

「そう言ってもらえるのは嬉しいですけどね。私は何も特別なことはしてませんし、できませんよ。」

 

相談室に入ってきたのは数学教師の笹原先生。見た目は少しキツい目をしたできる美人、という感じだが、実際は物腰は丁寧で礼儀正しく、見た目以上にできる美人だ。年下で正規の職員でもない私にも優しく、礼儀正しく接してくれて、生徒からの評判もいい。ただ、怒ると怖い上に話が長い、というのも有名な話だ。彼女の授業で居眠りをした者は勇者としてその日1日崇められる、らしい。…1日って…

 

「笹原先生はコーヒー、ブラックでしたよね。ちょっと待っててください。すぐ淹れます。」

 

「ふふっ、そうやって全員の好みを把握している時点ですごいことですよ。ありがとうございます。」

 

私を1人にしないために授業のない時間の仕事を職員室から持ってきて相談室にいてもらっている身としてはこのくらいは当然である。

古文担当の天然系教師の山内先生はもはやココアだろ、という程にミルクを足してからコーヒーを飲む。

帰国子女の英語教師の深山先生は煎茶が大好きでコーヒーは大の苦手。

うん、バッチリ覚えている。そして私は基本何でも好むので先生に合わせる。

 

 

…山内先生のはさすがにムリだが…

 

ティータイムを終えて笹原先生は仕事に取り掛かり、私は来るか分からない相談者に備えていた。昼休みや放課後は誰かしら来ることが多いが、朝の時間に生徒が来るのは珍しい。そして今日は珍しい方の日だったようだ。

 

「失礼しまーす、おはよ、みことセンセ♪」

 

「おはよう、希さん。そろそろ先生はやめてくれないかな?」

 

「えー、なんでぇ?別にええやん、悪い意味やないし。」

 

「資格も能力もナシに先生って呼ばれるのは本職の先生方に失礼な気がするんだよ。しかも最近他の人もマネして先生、って呼んでくるし。」

 

先生と呼ばれるのは素直に嬉しい。嬉しいが、ある種憧れだった「先生」に自分がやっているカウンセラーの真似事程度でなれるとは思えないし、思いたくもなかった。

 

「うーん、呼びやすくてウチは気に入っとるんやけどなぁ。命さん、って他人行儀やない?」

 

「………。…まぁそう言うならいいさ。今さら希さん1人が止めても変わらないしね。」

 

最近では先生方のなかにまで私を先生と呼ぶ人が出てきてしまった。…山内先生は何故か「メイさん」と呼ぶが。何度訂正しても次に会った時には呼び方が戻っているのだ。国語教師だったよな?あの人…

 

「みことセンセもウチのことは呼び捨てで呼んで、って言うてもずっとさん付けやん。ウチ年下やし、生徒やで?もっと砕けてもええやんなぁ」

 

「それはちょっとね、東條さん、から進歩したってことで許してくれないかな?」

 

彼女は東條 希さん。学院の2年生で生徒会の副会長を務めている。高校生離れした抜群のスタイルと包容力を感じさせるおっとりした雰囲気を持つ美少女だ。

 

性格は一言で言うと不思議、だ。たまにオカルトじみたことを言うし、得意だというカード占いがとんでもない的中率を誇っていたりする。神社でアルバイトをしていると聞くし、本当に何か特別な力があるんじゃないか、とたまに思う。が、基本的には周りをよく見ている気配り屋さんだ。

 

相談室にいる時間は生徒の中では結構多いほうだが、何度も困ったところで手を貸してもらっている。それが実にさりげない動作だからすごい。大人びた印象が強いが、年相応の部分もちゃんとある。カード占いを教わったお返しに、病室で練習したカードマジックを披露したら目を輝かせて驚いていた。その時の彼女は本当に可愛かった。…普段からかわいいけどね?

「それでどうしたの?放課後はたまに生徒会の仕事サボって来るけど朝から来るのは珍しいよね?」

 

「んー、特に用があったわけやないんよ。ただ今日から新学期の入学式とか新入生歓迎会とかの準備が始まるから、放課後は忙しくなりそうでな?せやから朝の内にセンセのお茶飲みに行こかと思ったん。」

 

ええやろ?と目が語っている。

 

「一応相談室だから、何か相談事を持ってきてほしいところだけど。ここは喫茶店じゃないし。次は淹れてあげないかもよ?」

 

少しイタズラっぽく声と表情を変えて言ってみると、彼女は少々焦ったように、

 

「えぇっ、ちょ、待って待って。今考えるから、えー、ん〜、……あっ、生徒会の仕事が忙しくてツライ!助けてセンセ!」

 

「思いっきり管轄外だよ…生徒会の顧問の先生に言ったら?ちょうどそこにいるから。」

 

「へっ?って笹原先生⁉︎いつからおったんですか⁉︎」

 

「おはようございます、東条さん。それだけ元気があればたまにサボっているという生徒会の仕事もバリバリこなせそうですね。」

 

この相談室は、部屋の中に部屋の1/4ほどのスペースを囲うように壁で仕切りができている。出入り用のドアを閉めれば話し声程度は聞こえなくなる、しっかりした仕切りだ。私の身体的に1人にはどうしてもなれないが、やはりなるべく人に聞かれたくない相談もあるだろう、ということで相談中は仕切りをして先生に内容が聞こえないようにしている。これにより生徒からも先生の姿は見えず、落ち着いて話ができるということだ。

 

しかし今回は、希さんが入ってきた時の雰囲気で、相談ではなく雑談しに来たんだな、と分かったのでドアは閉めなかった。元々彼女は相談をしに来ることはあまりない。居心地の良い休憩所的に思っていたのかもしれない。こちらは楽しいし構わないのだが、生徒会の仕事をあまりサボってばかりもマズイだろうということで今回対処させてもらった。ドアの向こうを意識して見れば先生に気づいただろうが、今回彼女は気づかなかった。残念ながらしばらく希さんはここには来れなそうだ。

 

なんて思いながら笹原先生のお説教風景を眺めていると予鈴が鳴った。

 

「さて、そろそろ教室に戻りなさい、東条さん。続きは放課後にでも。」

 

「えっ、終わりやないんですか⁉︎」

 

「サボりの罰として迷惑をかけた生徒会役員の前で改めて続けましょう。みんなのやる気向上にも繋がるかもしれませんし。」

 

「そんなぁ〜、生徒会室入ったら絶対エリチからも怒られるのに…」

 

「自業自得です。早く教室に戻りなさい。」

 

「希さん、またね。」

 

「う〜、恨むでセンセ…」

 

ションボリと肩を落として去って行く希さん。ちょっと可哀想だったかな?

 

「ありがとうございます、紡屋さん。しかし、サボりと知っていたならもっと早く彼女を止めてください。」

 

「す、すいません。」

 

その後、希さんの時ほどではないが、笹原先生の小言を10分ほど頂戴した。

 

 

 

 

 

 

 

午前の授業が終わり、昼休みに入る。私にとっては2度目の勤務時間だ。

ちなみにそれまで何をやっていたかというと、先生にお茶を淹れたり、本を読んだり、だ。この時間は病室にいる時とあまり変わらない。

 

昼休みは基本的に放課後に部活などで時間が取れない人か、単純にここでお昼を食べたい、という希さんタイプのひとが来ることが多い。今日は前者だった。

 

「失礼します、命さん、こんにちは」

 

「こんにちは、絵里さん、久しぶりだね」

 

やってきたのは2年の綾瀬絵里さん。ロシアの血が入ったクォーターで、日本ではあまり見られないほどの綺麗な金髪と白い肌をしている、これまた美少女だ。

 

希さんに負けず劣らずのスタイルを持ち、しっかり者のお姉さんといった印象を受ける。彼女はこの学院の生徒会長を務めており、成績優秀、眉目秀麗、品行方正と、彼女を讃える言葉はいくらでも出てくるほどの優等生で、みんなの憧れだ。

 

相談室の場所変えを提案してくれたのも彼女だ。最初は少し近づき難い感じがあるが、親しくなってみると、彼女はとても優しく、人を思いやれる子だと分かる。

 

しかし、しっかり者でいようという自覚が強いためか不意を突かれると弱く、希さんのイタズラの餌食になることも多々あるとか。また、俗っぽいものに縁がなかったのか、ファーストフードなんかの話が出ると、言ったことがない私と同レベルに知識がないことがわかった。驚いた時や感心した時に出る「ハラショー…!」というつぶやきはクセなのかな?かわいいし、今度使ってみようかな。

 

「すみません、命さん。希が度々お邪魔しているようで」

 

「あぁ、聞いたんだ?まぁ私の方はむしろ楽しいし迷惑はかかってないけど…こっちこそゴメンね、サボりなのは知ってたのに止めなくて」

 

「いえ、希は口で言って戻るようなら初めからサボりませんから、命さんは悪くないですよ」

 

溜息をつきながら苦笑をこぼす絵里さん。何だろう、これも信頼の形の一つなのかな?まぁ2人はものすごく仲がいいからな。

 

「わざわざそれ言うために来てくれたの?ありがとうね、絵里さん」

 

「はい。生徒会長ですから。しっかりしないと、と」

 

「ふふっ、会長副会長なのに全然違うね2人は。」

 

「…ええ、希もやるときはやってくれる、んだけど、でも…ん〜」

 

「ハハハ、そうだ、絵里さんお昼食べた?まだだったらいっしょに食べない?」

 

「このまま生徒会室に行って食べながら仕事しようと思って、持ってきましたけど…そうですね、せっかくですし」

 

「うん、今お茶淹れるからさ。待っててね」

 

「すみません、ありがとうございます。来るたびにいただいていますけど、ホントに美味しいですよね、命さんのお茶。」

 

なんかすごくむず痒いこと言われた。カワイイ笑顔で、困る、焦る。

 

「う、うん。あんまり褒められてもお茶菓子ぐらいしか出るものないよ?」

 

以前深山先生が持ってきてくれた「穂むら」の和菓子、あまりにも美味しかったので、1つ食べて残りは取っておいたのだが、ここで封印を解こうではないか。

 

「あ、ありがとうございます。お弁当食べてからいただきますね。」

 

「うん、そうして。………。そういえば希さんに聞いたけどこれから忙しくなりそうなんだって?大変だね、生徒会って。」

 

「そうですね。新学期に向けて色々準備が必要ですから。これから新入生歓迎会までは忙しくなりそうです」

 

「そっかぁ。私には何にも出来ないけど、話くらいは聞くから、あまり溜め込まないで、希さんや周りの人を頼って、いっしょに頑張ってね?」

 

なんか偉そうな言い方になってしまったが、絵里さんは一瞬ポカンとした顔を浮かべた直後、頬を緩めて

 

「はい。覚えておきます。」

 

……少しは役に立てただろうか?なまじ優秀で責任感が強い分抱え込むタイプに見えたので言ってみたが。教師でもない自分にはこれ以上できることは無いが、どこかスッキリした彼女の顔を見る限り、ムダではなかったようで一安心だ。

 

「「ハラショー…!」」

 

穂むらの饅頭美味しい。超美味しい。




閲覧ありがとうございます。
先生方の名前はスクフェスから使わせてもらいました。性格等は独自設定で。
3年組が2年であることから分かるように、今回は原作前です。廃校騒ぎで余裕がなくなる前のみんなを描いてみたかったので。
次回も は放課後編です。こんな駄文で良ければまた読んでやってください。ではまた!

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