ラブライブ!〜紡がれる命の物語〜   作:二人で一人の探偵

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更新に間が空いてしまいました…すいません。これからも3日に1回、もしかしたら週一更新とかになってしまうかもしれません…

また原作の流れを早足で進める予定なので、その間主人公がなにをしていたか…ちょっと閑話?的なはなしです。

では、どうぞ!


音ノ木坂のスクールカウンセラー

 

 

 

 

 

「つまりですね現在のスクールアイドル人気を作り上げたのはA-RISEだと言っても過言ではないんです男性人気の高いセクシー系担当の優木あんじゅさんと女性人気が高めのクール系担当の統堂英玲奈さんと男女問わず惹きつけるカリスマを持った綺羅ツバサさんの3人このバランスはまさに完璧でただでさえ個々の魅力がズバ抜けてるのに3人揃っているわけですからその総合力はまさに…」

 

 相変わらず凄まじい…『スクールアイドル』と『A-RISE』の2単語しか発した覚えは無いのだが、気付いた時には花陽さんフルブーストモードである。

 

 曲の目処もついて、本格的にスクールアイドル活動に取り組むのなら、手伝う立場としては多少の知識は仕入れておくべきかと思った次第だが、聞き取るのも一苦労だなぁ、やっぱり…

 

「ミコちゃん先生はすごいにゃ〜。かよちんのアレを見た人は大抵アイドルの話題は避けたがるのに…」

 

 花陽さんのマシンガンアイドルトークとその斉射を浴び続ける私を実に楽しげに眺めながら凛さんが呟く。

 

 初めて会った時に、緊張気味だった2人をリラックスさせるため、もはや開き直って「命さんでも命先生でもミコちゃん先生でも好きに呼んでね」なんて言ったら一番予想外の選択肢を選ばれた。凛さんは穂乃果さんに似ているところがあると思う。

 

「あはは…まぁ、色々知りたいことがあったし。この時の花陽さんが、一番素の感情を出せてるみたいだから、ちゃんと話してみたかったんだ」

 

 これは本当だ。本人は隠したがっている、というかついていけない、って反応をされるのが嫌で避けているようなので、私の前でくらい話せた方がいいだろう。

 

「…ハッ!……ご、ごめんなさい、私またやっちゃった…」

 

「いやいや、謝ることないよ。聞きたいことも聞けたし、楽しかったよ。そんなにマイナスに考えることないんじゃないかなぁ?アイドル好き、普通の趣味じゃないか」

 

「…うぅ…でも、私みたいな子がいきなりテンション上げて早口で…相手の方に迷惑だから、直したいんですけど…」

 

 どうにも彼女は自嘲癖があるらしい。

 

「確かに驚くだろうけど、個性っていうのは大なり小なり誰かに迷惑かけてしまうものだよ。人と違う、ってことだからね。私なんて見ればわかるでしょ?」

 

 一人じゃマトモに動けない私のような人間は一つ所でジッとしているのが一番迷惑をかけない生き方だ。それが分かっていても私は個人的な意地のようなもので色々な人に迷惑をかけながらカウンセラーをしている。

 

「でもミコちゃん先生はカウンセラーとしてみんなの相談に乗ってる。頑張ってるにゃー」

 

「そう、凛さんいいこと言ったね。人はそれぞれ違うところをもって生まれてくる。だから生きてるだけでどうしても誰かの迷惑になってしまう。でも、それだけじゃないんだ。人はそれぞれ違うから、誰かを助けてあげることもできる」

 

「…助ける?…私が、誰かを?」

 

「うん。例えば花陽さんのアイドル好きだってそうだよ。私はちょっと理由があってA-RISEのことが知りたかった。調べて分かることは大体知ってる。けど私はスクールアイドルに詳しいわけじゃないし、ファンでもない。花陽さんのようなファンの人からの意見が聞けて助かったし楽しかったよ。ありがとね、花陽さん」

 

 人の生き方とか、少し大げさな物言いにしたのは大げさに受け取ってもらいたかったからだ。花陽さんなら胸に刻んでくれるだろうし、凛さんのような子にはこのくらいの方が伝わりやすい。

 

「……あ……で、でも私くらい詳しい人なんていくらでも…」

 

「私が知ってる中で一番スクールアイドルに詳しかったのが花陽さんなんだよ。まぁ探せば他にもいるかもしれないけど。でも私は花陽さんとお話ししたかったんだ。花陽さんが大好きなスクールアイドルのことと、スクールアイドルが大好きな花陽さんのことを知れて、嬉しかったよ」

 

「そ、そんな…私なんかが…」

 

 顔を赤くして手を前に出してブンブン振る花陽さん。これは筋金入りっぽいなぁ…

 

「その私『なんか』って言うのもやめた方がいいよ。自分で自分を卑下してちゃ一生自信持てなくなる」

 

 話してみて分かった。この子は今の自分が嫌い…というかこのままじゃダメだ、と思っている。しかし変わりたい、よりも変わらなきゃ、という意識の方が強い。自分はダメだと、自信を持てずにいるから変われない、変われないからさらに自分はダメだと思い込む。この悪循環だ。

 

 アイドル好きに関しても、一番大きいのは『憧れ』だ。自分の理想に近い姿に憧れを抱いている。特にスクールアイドルに熱を上げているのも、より自分に近いからだろう。

 

 それは分かっているが、まだ知り合って2週間程度だ。これ以上踏み込むのはまだ早いだろう。環境が変わって何か彼女の転換点が見つかるかもしれないし、とりあえず気にかけておこう。

 

 その後も花陽さんへのフォローをしつつ、凛さんと2人、花陽さんの話を聞いていた。花陽さんのスクールアイドル熱弁が収まれば、私や凛さんが焚きつける。攻守交替制…野球のような流れで昼休み中話は続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、陽も沈みかけた頃。予約をしてくれた子との話を終え、今日はもう終わりかな、なんて思っていたら…

 

 

「失礼しまーす、センセ、まだ大丈夫?」

 

「いらっしゃい、希さん。こっちは大丈夫だけど、君はいいの?生徒会、忙しいんでしょ?」

 

「あーうん、そやね。最近は色々大変かな…でも今日の仕事は終わったんよ。なんよその疑わしげな目は…さっきまで頑張ってたんやで〜?」

 

 そう言うと嫌なニヤニヤ顏をしながら両手をわきわきさせて、威嚇しながらにじり寄ってくる希さん。そんなことだから信用されないのでは…

 

「それで、忙しい副会長さんがどうしたの?私に何か用?」

 

 いつものようにお茶を準備しながら問いかける。一瞬疑ったが、彼女が終わったというなら終わったんだろう。今までもサボりの時はサボりと言っていた。希さんは人に迷惑をかける嘘はつかない子だ。…ちょっとタチの悪い冗談やイタズラ目的の隠し事も多い子だが。

 

「んー、ちょっと命センセに相談したいことがあってな?」

 

「ん?珍しいね。とりあえず言ってみてよ」

 

「うん……あんな、音ノ木坂(ウチ)でスクールアイドルやろう!言うてる子達のお手伝いしてるんやって?」

 

「?うん、相談に乗っているくらいだけど…何で知ってるの?」

 

「あの子達が練習しとる神社…あそこ、ウチのバイト先なん。だから、何度か話したことがあってな」

 

「あぁ、そうだったの。…それで、彼女たちがどうかしたの?」

 

「実はあの3人とエリチがな?ケンカやないんやけど…なんて言うか、折り合い悪いんよ…」

 

「…えっ?何?揉め事でもあったの?」

 

 素直に驚いた。もしかしたら同じ目的を持つもの同士、協力し合えるかも、と思っていたのだが…

 

「あの子達の方は何、ってこともないんやけどな。エリチの方が認められないというか、信じてないというか…何が気になるのか聞いてみたら『廃校阻止に本気で取り組んでるようには見えない』なんて言っちゃって」

 

「………。そう…希さんは、絵里さんがそんな風に言う理由、知ってるの?」

 

 絵里さんを連れてくるのではなく1人で相談しに来たということは、彼女がどんな思いを抱えているのかアタリは付いているのだろう。

 

「うん。なんとなくエリチの気持ちは想像ついとる。でもそれを聞く前に命センセには考えてみてほしいな」

 

 そう言うだろうと思った。話を聞くのと同時並行で相手の気持ちを推察するのがカウンセラーの仕事だ。ただ聞くだけならそれこそ人じゃなくても構わない。話をスムーズに進めて気持ちを和らげるにしろ、アドバイスするにしろ、速やかに人の内心を察する必要がある。

 

「じゃあ、いくつか質問させてもらうね。まず、絵里さんが彼女たちと初めて会ったのはいつ?」

 

「ちゃんと顔を合わせたのは多分先週が最初やな。講堂の使用許可取りに来たあの子達の申請を正式な団体じゃない、って断ったんよ、エリチ」

 

「えっ、じゃあ何で講堂の使用許可降りたの?ちゃんと使わせてもらえる、って言ってたよ?」

 

「あ〜、それな…たまたま入ってきた理事長が許可出してな。その場は収まったわけや。その時はまだ理性的にあの子達を諌めてた感じやったんやけど、その後も何度か顔合わせててな。感情的なキツさが態度に出てきてるんよ。ウチがあの子達の話出すといや〜な顔するし」

 

 …今ので理由の一端は知れたな。さて、次は

 

「絵里さんって、アイドルとか、詳しい人じゃなかったよね?」

 

「そやね。あんまそういう話はしたことないけど、興味はなかったんやないかな」

 

 私も絵里さんとは色々話したが、彼女は流行りだとか、ウワサ話だとか俗っぽいものには疎い。彼女の気質故なのか、育った環境がそうだったのか。

 

「これで最後。絵里さんの態度が悪化する前に私と彼女達のこと、話した?」

 

 希さんは一瞬驚いた顔をしたが、その後苦笑して、

 

「うん、ごめんな。つい話してしもたん。『命センセもあの子達を信じて手伝ってる』って。少しは考え変えてくれるかと思ったんやけど…」

 

「逆効果だったと…………うん、大体わかったよ」

 

 なぜ同じ目的を掲げる彼女達を認められないのか。なぜ態度が悪化したのか。絵里さんの性質も含めて考えればおおよその見当はつく。

 

「そか。ほんならエリチのことはセンセに頼んでも大丈夫?」

 

「うん、私は構わないけど、いいの?私の答え聞かなくて…間違ってるかもよ?」

 

「ふふっ、大丈夫。センセの考えてることは大体分かるし、そもそもウチが正解とは限らんしな。答え合わせする立場やないもん」

 

「そっか。じゃあ近い内に絵里さんと話がしたいんだけど、今の忙しい時期に来てもらうのも難しいし。なんとか希さんの方から来るように言ってくれない?」

 

「…命センセが呼べば絶対来ると思うけどな………分かった、そっちはウチに任せとき!どうにか騙くらかして連れてくるわ」

 

 小声で何か呟いてから胸を張って宣言する希さん。騙くらかしてって…

 

 

 

 

 

 

 あの後も2人で取り留めのないお喋りが続いた。どこか希さんのテンションが低い気がしたが…結局帰る時間になるまで希さんは残っていた。自然、私を運ぶのは希さん、ということになる。ちなみに車椅子は山内先生が運んでくれている。ありがとうございます。でも畳もうとして分解しないでください。一応病院のものなんです、それ…

 

 

 

「今日はゴメンな?試すようなことして。命センセなら大丈夫やとは思ったんやけど、今エリチ追い込まれてて…見てて辛いくらいなんよ」

 

 私を背負いながらの謝罪。顔は見えないが、申し訳ないと思っているのは声のトーンで分かった。

 

「気持ちは分かるよ。気にしないで、友だち想いだね。希さんは」

 

「うん…ありがと、センセ」

 

 いつもの希さんに戻ったようだ。良かった。こんな気持ちのまま家に帰らせたら、気になって気になって私の方が眠れない。ただまぁ、それでも…

 

「お礼言われることじゃないよ。私は音ノ木坂のスクールカウンセラーだからね。生徒の心にできるだけ近づいて、相談に乗るのが私の仕事だよ」

 

 

 

 誰もが当たり前に持っている自由を失った私にできるのは、それくらいだから、ね…

 




閲覧ありがとうございます。

前書きでも述べたように、今後の更新ペースがどうなるか、自分自身分かりません…すいません…きっちり区切りつけるまでは定期的に更新する予定ですので、見つけた時に覗いていただけたらありがたいです。

ではまた!

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