開発室からお届けします   作:Tierra

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最近予定がてんこもりな作者です
噂の幕張メッセにも行ってたりしました
久しぶりに遊ぶ為に外出したのですが、まさかあんなにハードだとは…笑。


それでは第9話です、どうぞ。

追記
誤字を幾つか見つけたので訂正をしました。


第9話 「雨取 千佳」

~三門市内某喫茶店~

 

 

「ん~このパンケーキも美味しいです」

 

「…それは良かったです」

 

 

先日のお詫びもかねて、三雲が東堂にオススメした喫茶店に二人はいた。

レトロな雰囲気に心地いいクラシックが響く店内

THE喫茶店と言わんばかりの風貌で、更に出てくる料理も美味しい

なぜ今までここの存在を知らなかったのだろう。などと後悔すらも垣間見える

恐らく穴場、あるいは隠れた名店と言ったところであろう

そんな中上品にフォークとナイフを使い、パンケーキを食べる東堂であるが

彼の前に積んである皿がもう少し少なければ、更に上品に見えたのかもしれない……。

 

 

「そういえば僕に教えてほしい事があるみたいでしたけれど…何を教えてほしいんですか?」

 

 

店内に入って早一時間が経過したところで、ようやく今日の本題に入る。

 

 

「あっ、はい…サイドエフェクトについてなんですけれど

近界民を引き寄せるサイドエフェクトっていうのは、存在すると思いますか?」

 

「近界民を引き寄せるですか…」

 

「はい」

 

「結論から言うと、答えはNOに近いと思います」

 

「…!?……それはどうしてですか?」

 

 

東堂の即答に思わず驚いてしまう

三雲の問いに東堂が続ける

 

 

「この前も言った通りサイドエフェクトは、人間の能力の延長戦上のものです

故に自分以外のものに、物理的に干渉できるわけではないんですね」

 

「…そうなんですか」

 

 

思った通りの回答にならず、肩を落とし落胆する三雲であったが

ただと更に東堂が続ける

 

 

「ただ…近界民を引き寄せるという現象には少し心辺りがあります

その子に直接会うことは可能ですか?」

 

「は、はい!今日このあと待ち合わせをしているので」

 

「そうですか、そしたらそろそろここを出ましょう

素敵なお店の紹介ありがとうございますね♪」

 

 

そういい足早に会計に進む彼の後に続く

どうやら本部に一度帰り、ある機器を持ってくるらしい

待ち合わせの時間まではまだ余裕があるため、それに同行することにした

 

 

■ □ ■ □ ■ □

 

 

冬にはありがたい、心地の良い日差しを浴びながら

本部から待ち合わせの場所へと向かう

途中門発生の警報が鳴ったが、この音にも慣れたものである

 

 

「東堂さん、それは?」

 

 

と三雲が東堂の手にする小型の計測機に視線を落とす

 

 

「これは…実際に使ってみてからのお楽しみってやつです

ほら、そろそろ待ち合わせの場所じゃないですか?」

 

 

そういい橋の土手を指差すが、そこには誰もいない

 

 

「もしかして場所間違えちゃいましたか?」

 

「いえ、確かにここのはずなんですけれど…あいつ…なんでいないんだ!」

 

「先程の警報でここから避難したのかもしれませんね」

 

「……まさか!?」

 

 

そう呟き三雲は先程発生した門の方へと走り出した。

それに合わせて東堂も三雲の後を追う

 

 

「三雲くん、どうしましたか?」

 

「…もしかしたら警戒区域に向かってるのかもしれません」

 

「警戒区域に?」

 

「はい、とにかく急ぎましょう!」

 

 

より脚に力を入れ警戒区域へ駆けて行く中、三雲のポケットから黒い何かが出てきた

チェスの駒のようなそれは、三雲の顔の近くに止まる

 

 

「オサム緊急事態だ、このまま警戒区域まで来てくれ」

 

「レプリカ!?…分かったどこまで行けばいい」

 

「私が案内しよう」

 

 

恐らくレプリカの子機とでも呼ぶのか、それが三雲達の先頭に着くとこっちだと案内をはじめる

土手が警戒区域から近かった為か、思いのほか早く現場に着くこととなった

彼らの目線の先にはトリオン兵が映る

 

 

「トリオン兵…!」

 

「中型トリオン兵バンダーだ、ユーマはあの付近にいる」

 

「あちら以外にもモールモッドがいるようですね…三雲くんバンダーは任せても大丈夫ですか?」

 

「はい!」

 

「それじゃあ各個撃破といきましょうか」

 

「「トリガー起動」」

 

 

それぞれ戦闘体に換装し敵へ向かう

東堂が向かう先には一体のモールモッドがいた

ブレードを突きたてようと突進するが、それをステップ一つで横にかわす

すかさずUターンをし再び構えるが、東堂の背中側にトリオンキューブが発生し

 

 

「アステロイド」

 

 

その呟きと共に、無数の弾丸が真っ直ぐにトリオン兵に伸びていく

着弾しても尚勢いが止まないその弾丸が、装甲を貫きやがて沈黙する

 

 

「さて、三雲くんの方も終わった頃でしょうか」

 

 

□ ■ □ ■ □ ■

 

 

三雲の元へ向かった後レプリカの提案により、危険区域内の駅に場所を移していた

レプリカ、空閑と一緒に話をする為には、近くにボーダーの隊員がいると非常に危険な為だ。

どうやら三雲が言っていた近界民を引き寄せる人間というのは、空閑と一緒にいたこの少女の事なのだろう。

 

 

「……というかそもそも、なんでお前達が一緒にいたんだ?」

 

 

真っ直ぐな疑問の声、恐らく三雲自身も空閑とこの少女が一緒にいるという事が想定外だったのだろう。

一束のアホ毛が印象的な、ボブカットの小柄な少女がその質問に答える

 

 

「…えっと、待ち合わせの橋の下で知り合って……」

 

「自転車を押してもらって川に落ちた」

 

「ふふふ、全く分かりませんね」

 

 

要領を得ない回答に思わず笑いながらも、とりあえず相槌をうつ

 

 

「まぁいい、ひとまずお互いを紹介しておこう…

こっちは 雨取 千佳 (あまとり ちか)うちの学校の二年生、ぼくが世話になった先輩の妹だ」

 

「…よろしく……おねがいします」

 

 

東堂と目があった瞬間おねがいしますが追加される

空閑とはある程度仲良くなっているのだろうか?

つづいて空閑が紹介されるのだが、自分より年上な事にかなり驚きあわあわし始める

確かに彼を見て中学三年生とは誰もが思わないだろう。

 

 

「最後にこちらがボーダー本部のエンジニア、東堂 要さんだ」

 

「よろしくお願いしますね」

 

「東堂さんはもちろん空閑は近界民で…」

 

 

思わず笑いがこみ上げてくるがグッと抑える

 

 

「じゃない近界民について詳しいんだ

千佳が近界民に狙われている理由も知っているかもしれない」

 

「そっか、遊真くんと東堂さんはボーダーの人なんだ」

 

「ま、まぁそんなもんだ」

 

「そんなもんのようですね」

 

「うむ」

 

 

いきなり痛いところを突かれ苦笑いで切り返す三雲であった

 

 

「さて…本題ですが、雨取さんが近界民に狙われているのは

恐らくトリオンに原因があると思われます」

 

「トリオン…!?

トリオンが何か関係あるのか……!?」

 

「関係あるもなにも、こっちの世界に来る近界民は

大体トリオンが目的だよ」

 

 

空閑の話曰くトリオン能力が高ければ生け捕りに、能力が低ければトリオンを生成している器官だけを抜き取り、あちらの世界の戦争に使っているそうだ

 

 

「なるほど、大方想像はついていましたがやはり…」

 

「なっ!なんでわざわざこっちの人間を…!?」

 

「そりゃこっちの方が人間たくさんいるだろうからなあ」

 

「恐らく雨取さんが狙われるのはそれだけトリオン能力が高い、という事なのでしょう

というわけで、本部から持ってきました!トリオン計測器」

 

 

そう言いドラ○もんのBGMが鳴りそうな勢いで、高らかに機器を掲げる

 

 

「それじゃあこちらの端子を握っていただけますか?」

 

 

東堂の指示に従い端子を握るが

ディスプレイ上に浮かび上がる【計測不能】の文字に思わず顔が引きつる

 

 

「計測不能って…東堂さんこれ壊れてるんじゃ」

 

「そんなことないと思うのですけれど…

三雲くんも試してもらっていいですか?」

 

 

そう言われ三雲も握るが今度はしっかりと数値が表示される

どうやらあまりの多さに機器が測定しきれなかったようだ…

 

 

「まいりましたね…」

 

「そのキカイがつかえないならレプリカで試そうか?」

 

「そんなことまでできるのですか!?」

 

「うん…レプリカ」

 

「心得た」

 

 

指輪のなかからニュルリとレプリカが出てくる

先程のチェスの駒のような形ではなく今度はちゃんとした炊飯器型だ

そしてレプリカの口が開きなかから長細い、なんとも面妖な紐のようなものが出てくる

 

 

「この測定索でトリオン能力が測れる」

 

「どうぞご利用ください」

 

「う、うん…でもちょっとこわいな」

 

 

至極全うな感覚である、突然現れた黒い炊飯器から出てきた紐を握るのである、怖いと思っても仕方ない

その気持ちを汲んでなのか、あるいは自分の中の興味に惹かれてなのか、東堂が一歩前にふみだし告げる

 

 

「先に僕が測っても大丈夫ですか?」

 

「了解だ」

 

 

東堂がなんの躊躇いもなしに紐を握る

感触は低反発クッションをそのまま紐状にした感じだろうか?

握っていて気持ちいいという感情が浮かび上がるほどであった

やがて計測完了というレプリカの声と共に、おおよそ1mほどの立方体が頭上に現れる

 

 

「この立方体は東堂のトリオン能力を視覚化したものだ

立方体の大小がトリオン能力のレベルを現している」

 

「このサイズはどのくらいのレベルなんだ?」

 

「かなり多い方だと思うぞ?

サイドエフェクトを持っててもおかしくないレベルだ」

 

「…なるほど」

 

「これなら大丈夫そうですね。雨取さんもどうぞ」

 

「はっはい」

 

 

紐を雨取に渡す。

レプリカ曰く測定に少し時間がかかるようだ

それにしてもこのレプリカには毎度驚かさせられる

この他にはどんな事ができるのだろうか、などと考え込んでいると測定が完了したようだ

 

 

「計測完了だ」

 

 

その声と共に先程と同じように立方体が頭上に現れるが、大きさがおかしい

さきほど測った東堂のよりも一回り、二回りも大きい立方体が現れたのである

 

 

「うおお…!」

 

「……!?」

 

「これは……!?」

 

 

一同驚愕の色に変わる

 

 

「でっけー!」

 

「尋常ではないな、これほどのトリオン器官はあまり記憶にない 素晴らしい素質だ」

 

「すげーな、近界民に狙われるわけだ」

 

「感心してる場合じゃない!

千佳が狙われる原因はわかった、問題はそれをどう解決するかだ!」

 

「ボーダーが保護するのではいけないのですか?

このレベルですと組織を動かすのは簡単だと思いますけれど…」

 

 

東堂が冷静に提案をするが雨取が顔を伏せてしまう

 

 

「でもチカはそれイヤなんだろ?」

 

「…うん、あまり他の人に面倒かけたくない……」

 

「面倒だなんてそんなっ」

 

 

と言いかけたところで後ろから革靴のコッコッという音が聞こえる

振り向けばそこには目に前髪がかかろう少年と、ヘアバンドで髪を後ろに流している少年がこちらに歩いてきていた

 

 

「動くな、ボーダーだ」

 

「しまった!」

 

 

東堂だけが回答に行き着き臨戦態勢をとる

 

 

「ボーダーの管理下にないトリガーだ

近界民との接触を確認、処理を開始する」

 

 

「トリガー起動」

 

 

彼らは三輪隊、A級7位の精鋭だ

 

 




次回から戦闘回ですね…ごくり

ちなみに次の投稿も今回と同じくらいかかってしまいそうです
この時期はいろいろお誘いがあって面倒くさいですね…。

それではまたお会いしましょう。

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