この照りつく暑さの中皆様どうお過ごしでしょうか?
私は暑さのあまり溶けてしまいそうです
というか多分もう溶け始めてます。
冗談はさておき次話の投稿です。どうぞ。
「…終わりましたね」
暗闇の中に独り言が響く
声の主はゆっくりと装着していたゴーグルを外す
その顔は眉間にシワをよせ、いつもの彼とは別人のように顔を歪ませている
「やっぱり結構くるなぁ」
そう言い頭を手で押さえる
ふと部屋の外が騒がしい事に気づき、聞き耳を立てると
聞き覚えのある声が開発室のスタッフ達を労っていた。
「…。」
彼は無言のまま椅子から立ち上がり、重い足取りで部屋から出る
「おう、要もお疲れ様」
「悠一…やっぱりきみですか」
「あー、結構キてる顔だな
これじゃあこれはいらないか?」
そう迅が箱が入ったビニール袋を指差す
「それは?」
「けーk「いますぐ僕の自室に行きましょう!」」
「…いや、おまえ頭痛は?」
「ほら、早く行きますよ!」
そういい先程とは打って変わって、軽快な足取りに変わり
鼻歌まで歌いだす東堂に、思わずため息が出てしまう
「変わってないな、そういうところ」
急ぎますよと催促する東堂に続くのであった。
□ ■ □ ■ □ ■
東堂の自室に着き、丸いテーブルを囲む迅と三雲
開発室の外で迅を待っていた彼に、せっかくだからと迅が持ってきたケーキを一緒に食べることになったのだ。
目がキラキラ光る見たことのない東堂と、諦めろと言わん表情の迅の表情が記憶に新しい…。
「そういえば、東堂さんは開発室でレーダーに映すって言ってましたけど、やっぱりエンジニアとしても凄い人なんですか?」
ふと疑問に思ったのか、三雲が迅に問う
「アイツは、エンジニアとしてはボーダー内で指折りだよ」
「そんなに凄いんですか…」
「なによりサイドエフェクトが優秀すぎてな、それプラス鍛えた技術力とでかなり凄いんだ。オレもよく世話になってたよ」
「東堂さんもサイドエフェクトを……!?」
「はい紅茶淹れてましたよ、と…二人して何話してたんですか?」
更に詳しく聞こうとした時に、東堂が飲み物をテーブルまで運んできた。
二人の席に紅茶を置き東堂も席に着く
「メガネくんが、要のサイドエフェクトに興味津々らしくてな」
「はい……」
飄々とした迅と真剣な表情な三雲
二人の表情の温度差に失笑しながらもそれに答える
「僕のサイドエフェクトは…そうですね【超並列処理能力】といったところでしょうか」
「超並行処理能力…?」
「三雲くんの周りにも少しはいるでしょう、複数の作業を同時にこなせる人」
「……そういえば、母さんがそんな感じ…!?……ですね」
思い出したように東堂に視線をやると
ケーキを口まで運び恐ろしい程に頬を緩めていた為、三雲に動揺が走る。
「そういう人達の事をマルチタスカー、スーパーマルチタスカー…なんて言うみたいですけれど
僕のサイドエフェクトはそれの上位互換、精度はもちろん作業の量もほぼ無限に広げる事が可能です」
「それって…!」
「まぁ…あんまり量を広げすぎたり、精度の高い作業を複数処理すると、頭が痛くなっちゃうんですけどね」
「っていうわけで、色んな事に意識をまわさなきゃいけないエンジニアには、うってつけサイドエフェクトってことだな」
そう迅がしめくくる。
依然東堂は緩みきった口にケーキを運んでいた
しかしどこか納得がいかないのか、三雲が更に問う
「東堂さんのサイドエフェクトって戦闘でも、オペレーターでも凄い能力を発揮できますよね?」
「そうだな、要も昔はバリバリの戦闘員だったからな」
「そしたら……東堂さんはなんでエンジニアを選んだんですか?」
その質問に迅は飄々とした表情から一変、真剣な面持ちで顔を少し伏せた
対する東堂も、先程の緩みきった顔はいつの間にか消え、どこか悲しげな表情に変わる
「…そうですね……守る為の力が欲しかったから…強いて言うならこうでしょうか」
「守る為の力…ですか?」
「えぇ、戦いには色々な強さがありますから…もう大切な人達を失わないように、守れるように…戦闘の強さも、それ以外の強さも手に入れたかったわけですね」
そう彼が告げると、三雲はそれ以上何も聞けなくなってしまった。
聞くことがなくなってしまったのかというと、それは違う
先程迅が言った『昔はただの戦闘員だった』ということも含め聞きたいことはまだまだある。
これ以上は踏み込めない何かがある、そう思わせてしまう程に
彼の表情は悲しみ、憂いに満ちていたのだった。
重く暗い空気になってしまった室内を、やがて一つの電子音が切り裂く
迅の携帯電話に着信が入った為だ。
会話の内容までは分からないが、彼が敬語を使っているあたり上層部の誰かと話しているのだろう。
「メガネくん、本部長からお呼びだしだ。B級に昇格の件だぞ」
「…!……分かりました」
「よし、じゃあ要またな」
「えぇ、悠一もケーキありがとう」
挨拶をかわし、迅が先に退室する。
それに続き三雲も東堂に会釈をして退室し、部屋には東堂一人だけとなった
「……ほんとうにおいしいですね、このケーキ」
独り言と共にカップの紅茶に一つの波紋が広がる
□ ■ □ ■ □ ■
東堂の自室を出ると、三雲が申し訳なさそうな表情をしていた。
「あんまりメガネくんが気にすることでもないだろ。誰だってそんなに凄いのになんで?って思うよ」
「それでも、凄く申し訳ない事を言ってしまったような気がして」
フォローをする迅だったが、それも空振りに終わってしまう
それならと迅は更に続けた。
「それなら今度甘いものでも渡しに行けばいい
今日の見たろ?要は甘いものが大好物でな、その時に一緒に謝ればいいだろ」
「……そうですね」
「それに食べてる時の要の顔見てれば、そんな気持ちも吹き飛ぶと思うぞ?」
そう軽快に笑う迅に、それはどうなんだろうかとも思う。
一度東堂の自室の方に振り返り、今度ちゃんと謝ろうと決意する三雲だった。
と、とんでもなく暗くなってしまった!?
日常回みたいなほのぼのしたの書きたいのですが
キャラが出揃ってからかなと思ってる次第でございます。
あと「」内が非常に読みにくいというご意見を頂き(10割作者)
この回から少し書き方を変えてみました。
どうでしょうか?
それでは、次回の投稿でまたお会いしましょう。