開発室からお届けします   作:Tierra

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サブタイトルで一時間位悩んでたら日が昇ってました。
ちなみにもう一つの案は「悠一と要」
なんとかアミーゴを歌いそうな上に、ワートリっぽくなかったのでボツになりました。

それでは本編です


ー追記ー
歌のタイトルをダイレクトに書いてしまい
投稿した後に気づき、前書きの部分だけ修正させていただきました。


第7話 「東堂 要③」

 

学校での夜間作業から一夜明け、時刻は早朝

東堂と空閑は、民間人立ち入り禁止の空き地にいた。

昨夜の調査で『怪しいトリオンの残留』が見つかった為だ。

調べるにしてもその残留値は極めて少なく

それから調べるのにはそれなりの時間と、機材が必要だったのだが

レプリカによる解析なら、明け方には終わるとの事でそこで解散したのだった。

 

 

「そういえば先日ここで、ボーダーのトリガーでないトリオン反応が

 トリオン兵の残骸から検出されたのですが…それもきみの仕業ですか?」

 

「うん、おれがやった。オサムがやばそうだったからな」

 

「そうですか」

 

 

空閑くんは優しいのですねと東堂は続けるが

途端に険しい顔つきに変わり忠告をする。

 

 

「ただ気をつけてください

 ボーダーの中には近界民は全て敵、という見解を持つ人もいます

 その人達にバレてしまうと、僕でも庇いきれないかもしれません…」

 

「たぶん大丈夫だと思うよ

 おれとレプリカなら、ボーダーの人達が何人でかかってこようと負けないよ」

 

 

しかし当たり前のようにそう答える彼

と思ったが、東堂の顔を見て腕を組み考え込んでしまう

やがて答えが出たのか、真っ直ぐに東堂を目で捕らえながら告げた。

 

 

「東堂さんには勝てるかわからないね、だいぶ強そうだし」

 

「買い被りです、僕はそんなに強くはないですよ」

 

「…ふむ、もしかしてウソついてる?」

 

 

思いもよらぬ一言に唖然としてしまう

 

 

「もしかしてそれ、嘘を見抜く力(サイドエフェクト)ですか?」

 

「まぁね、それにサイドエフェクト使わなくたってわかるよ

 昨日のもう一体出てきたイルガーおとしたのって、東堂さんだろ?」

 

 

してやったりという顔の彼に

一本取られましたね、と苦笑いを浮かべる

 

 

「…確かに、戦闘能力は強い部類に入るでしょうね

 ただ僕自身あまり慢心したくないんです。すみませんね」

 

「なるほど、やっぱり東堂さんは強そうだ」

 

 

そんな会話をしている中、レプリカが何かを発見したようだ。

かなり小型のトリオン兵だろうか?

六本の脚を虫のように動かし、カサカサとこちらから逃げているように見える

逃がすまいと東堂がトリオン体に換装し、弾を撃ち出した

 

 

「なんですか、これ」

 

「偵察用のトリオン兵みたいだな」

 

「偵察用ですか…すると先日ここで撃破されたトリオン兵の体内に

 潜伏していたと考えるのが妥当でしょうか?」

 

 

発見された新種のトリオン兵に東堂が分析していると

後ろの方から足音が聞こえるのに気づく。

 

 

「思ったより早かったですね」

 

「ん?」

 

 

その方向に、東堂と空閑が振り向く

 

 

「空閑…!?」

 

「おっ、やっぱり知り合い?

 …とやっぱり要もいるのか」

 

 

一人は三雲、もう一人は前髪を上げて流す

いわゆるアップバンクという髪型が特徴的な青年だった

 

 

「おう、オサム

 …と、どちらさま?」

 

「昨日話してた悠一ですよ、 迅 悠一 (じん ゆういち)

 

「よろしく!」

 

「そうか、あんたがウワサの迅さんか」

 

 

迅は空閑に近づき頭をわしゃわしゃと撫でながら歳を聞く

いや、まず名前からでしょう…と脳内でツッコむ東堂とは裏腹に、名前と歳を告げる空閑だった。

迅が名前を声に出して反復させていると、急に驚いた顔つきに変わる

 

 

「おまえ、むこうの世界から来たのか?」

 

 

その言葉に驚く空閑と三雲、空閑に関しては迅に警戒の色さえ見せている。

 

 

「いやいや、待て待て

 そういうあれじゃない、お前を捕まえるつもりはない」

 

 

その姿勢に慌ててか迅は弁解を始めたが、依然空閑の警戒は解けない

流石に見ていられなくなったのか、東堂が弁護をする。

 

 

「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ?

 彼は何回かむこうの世界に行っていますし

 近界民にも空閑くんのように、いい人達がいる事も知っています」

 

「そうそう、要の言う通り!」

 

「悠一の事です、サイドエフェクトでそう見えたのでしょう」

 

 

東堂の一言でそういえばと三雲が昨夜のやりとりを思い出す

 

 

「迅さんのサイドエフェクトって…!?」

 

「おれには未来が見えるんだ

 目の前の人間の少し先の未来が」

 

「未来……!?」

 

 

そう三雲と空閑は驚いている

確かに驚くなと言う方が無理な話である

未来が見えるという、人間の能力を逸脱するような超感覚

それを目の前にいる彼が『見える』と言うのだから。

 

 

「昨日基地でメガネくんを見たとき

 今日この場所で、誰かと会っているのが見えたんだ

 ただその時はかなり不鮮明だったけどな、多分要が関わってたんだろ

 今日メガネくんとあった時には、この未来が確定してたしな」

 

「そしてその『誰か』がイレギュラーの原因を教えてくれる。

 っていう感じでしょう」

 

「さすが要、話が早いな

 その誰かってのが、たぶんこいつのことだ」

 

 

迅が関心したような顔をしながら、空閑の頭を撫でている

三雲は更に驚き空閑を問い詰めた

 

 

「じゃあ空閑、おまえ…原因を突き止めたのか!?」

 

「うん、ついさっき」

 

 

そう言い、東堂が右手にぶら下げているトリオン兵を指差す

先程捕獲した虫のようなトリオン兵だ。

三雲は若干引き気味になんだこいつは、と質問してくる

それに対してはやはり彼?の出番だろう

空閑の指輪からレプリカが出現し

 

 

「詳しくは私が説明しよう」

 

 

そう言うのだった。

 

 

このトリオン兵は隠密偵察用の小型トリオン兵【ラッド】

しかも門発生装置を備えている改造型だそうだ

先程の東堂の推測通り、先日撃破されたトリオン兵の中に格納されていたらしく

街に拡散したラッドの数は、およそ数千にもなるようだ。

 

 

「数千……!?」

 

 

レプリカの話に三雲が驚愕する

しかし、東堂と迅は顔色一つ変わらない

 

 

「なるほど、その位ならどうにかなりそうですね」

 

「だな、いや~めちゃくちゃ助かった」

 

「上層部の方々には、悠一から言っておいてもらえますか?

 僕は、これをレーダーに映せるように準備しますから」

 

「わかった、どの位で終わりそうだ?」

 

「そうですねぇ…程度にもよりそうですけど1時間もかからないでしょう」

 

「そうかわかった

 さぁメガネくんいくぞ、こっからはボーダーの仕事だ」

 

「……!…はい!」

 

 

とりあえず本部へ向かいましょうか、という提案に

3人は本部へ向かうのであった。

 

 

□ ■ □ ■ □ ■

 

 

本部へ到着し開発室へ向かう東堂、迅と三雲とは別行動中だ

彼には迅達とは別の仕事があるからだ。

やがて開発室手前の自動販売機にて、ふくよかな体型の男性が見えた

 

 

「あ、本吉さんいいところに!」

 

「ん…何かようか?」

 

 

そうペットボトルの飲み口から口を離す彼

彼は 鬼怒田 本吉 (きぬた もときち)ここボーダーにおける本部開発室長である

 

 

「なんとイレギュラー門の原因が判明したんです」

 

「なに…!?ほんとうか要!」

 

「えぇ、なので今いる技術者に緊急招集をお願いします

 レーダーにこのトリオン兵を映すので。

 …僕はアレを使う準備をするので、召集の件お願いしますね」

 

 

そういい東堂は開発室へと入っていった。

 

 

開発室に入った東堂はまず、トリオン兵をガラス張りの部屋にある台に設置する

そして足早に、部屋の外にあるパソコンのキーボードを叩いた

すると台の上にいるトリオン兵を、青いレーダーが照らす。

 

 

『これより解析の準備を始めます…残り30秒』

 

 

パソコンから発せられる機械音に背を向け、更に奥にある扉を開く

部屋の中には椅子と、おびただしい量のケーブルに吊り下げられたゴーグルがあるだけ

東堂は迷わずその椅子に座り、ゴーグルを装着し呟く

 

 

「トリガー起動」

 

 

その言葉と共に、先程まで暗かった室内が照らされる

 

 

『トリガー【グレインサイズ】の起動を確認、起動者を認証します』

 

 

部屋に流れる電子音と共に、ゴーグルに繋がれたケーブルが様々な光を発する

遠めから見て「あれはイルミネーションだ」と言われると

納得できる程鮮やかなそれだが、間近で見ると「どこか奇妙」その一言に尽きる。

 

 

『起動者 東堂 要 を認証

 脳波及び副作用(サイドエフェクト)との並列化を開始』

 

 

ここでようやくゴーグルにも光が灯り、彼の視界に光が射す

視界に映るのは、数えるのも飽きてしまいそうな光の線が流れる光景だった

やがて幾つかの絵が映った窓が流れてくる。

グラフや先程のトリオン兵が3D化された図を見るに、解析結果が見えているのが分かる

 

今使っているトリガー【グレインサイズ】は

東堂の『脳』と『ボーダーのネットワーク』を並列化し、演算処理能力を爆発的に向上させるトリガーである。

数年前に東堂自ら発案し設計、開発まで全てに東堂が携わったそれは

今回のように急を要する解析などには、非常に役に立つトリガーであった。

 

 

『さて、皆さん集まったようですね』

 

 

開発室内のスピーカーのプログラムに介入し、東堂がアナウンスをする

 

 

『室長から言われているかとは思いますが

 今回の仕事は隠密トリオン兵をレーダーに映す事です

 僕も皆様の処理のお手伝いをさせていただきますので、よろしくお願いします』

 

 

そこでアナウンスが切れると誰もが思ったその時

 

 

『あっ、あとこれ使うと頭痛くなっちゃうんで

 終わったら誰か甘いもの買ってきていただけますか?

 お金はちゃんと払うので!』

 

 

と先程とは違いとても緩い声色で流れたアナウンスをされ、開発室内に笑いが響くのであった。

 

 




いかがでしたでしょうか?
実際の戦闘とは違いますが、東堂さんの技術者としての戦いという回です。

オリジナルトリガーを登場させましたが
最初の頃はトリガーではなく、コンピューターで行うっていう設定でした。
ただ原作で『マザートリガー』とかいうとんでもないのが出現したので
あっ、これはトリガーで出せるぞ!とこんな感じです。
性能について分かりにくかったらすみません

人の脳とコンピューターを、並列化するに足りるサイドエフェクトは
東堂さんが使っていた、戦闘用トリガーと共に近々公開予定です。


それでは

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