開発室からお届けします   作:Tierra

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一応ワールドトリガーを知らない人にも楽しんでいただこう
っていうコンセプトの元書いていたりします。

それでは3話です。


第3話 「三雲 修」

 

 

「改めてお疲れ様です。今日はとても助かりました。」

 

 

 ボーダー基地内のロビーで、嵐山隊と東堂が今日の任務を振り返っていた。缶ジュースから口を離して佐鳥がやや興奮気味に食い付いてくる。

 

 

「今日のトリガー凄かったっすね!!トリオン兵のブレードまるで紙みたいに握り潰して!!」

 

「さっ、佐鳥君少し落ち着いて?」

 

「そうですよ佐鳥先輩、うるさいです」

 

 

 そう木虎が佐鳥に告げる。心なしか彼女の目が冷たく見えるのは気のせいだろうか?ヒデェ!!と叫ぶ声に彼女はフンとそっぽを向く、そこで時枝が

 

 

「でも本当に凄かったよね。東堂さん、あのトリガーどうなってるんですか?」

 

「あんまり開発中のトリガーの事言うと怒られちゃうんだけれど…。特別ですよ?」

 

 

 皆の視線が東堂に集まる。

 

 

「まずあのガントレットのようなトリガー、あれにはほとんど攻撃できる要素が無いんです。ただその代わりに防御用のトリガー、レイガストに匹敵する程の耐久力があったりします」

 

「だからあんなに硬かったんですね」

 

 

納得といった顔の時枝に、頷きながら話を進める。

 

 

「そうですね。で、このトリガーの肝はなんといっても専用のオプショントリガー」

 

「あの青白く発光していたやつだな。確かにあれは驚いた」

 

「えぇ、あのトリガーでガントレットの周りに粒子レベルのトリオンを覆わせて、それを高速で流動させているのです」

 

 

 理解が追いついていないのか、木虎が首をかしげながら問う。

 

 

「?、つまりどういうことなんですか?」

 

「粉砕しているように見えていたアレは“削っていた”ということですね。もう少し簡単にいうと『ウォーターカッター、ダイヤモンドカッターと呼ばれるアレをガントレットに纏わせていた』って言えば分かり易いでしょうか?」

 

「ありがとうございます。凄く分かり易かったです」

 

 

 ペコリと軽く頭を下げる木虎を見て、お礼を言われるような事じゃないですよと微笑む東堂だったが、少しバツの悪そうな顔で

 

 

「ただ今回も失敗しちゃいましたけどね…トリオンの出力的な問題なのか、それともガントレットの耐久力なのか。はたまたそもそも規格自体が間違っていたのか、どちらにせよ量産化は当分先になりそうですね」

 

 

と苦笑いを浮かべるのだった。

 

 

 軽い休憩のつもりが思いのほか話し込んでしまい、実験の報告書を書かなくてはいけなった東堂は席を外そうとした…がその時綾辻から緊急事態発生です!と無線で連絡が入る。どうやら三門市内の中学校にイレギュラーな門が発生したらしい。

 

 

「嵐山君、この学校は…。」

 

「あぁ、副と佐補が危ない!急いで向かうぞ!…東堂も手伝ってくれるか?」

 

「もちろんです」

 

 

 そういうと彼はありがとうとだけ言うと、他の隊員共に颯爽と駆けていった。よほど弟と妹の事が心配なのだろう。報告書を書くのはもう少し後になりそうですね、と呟きながら東堂は戦闘体に換装し嵐山隊の後を追うのだった。

 

 

 

 市街地を駆けていく一行。いくら生身より強化されているトリオン体とはいえ、目的地の中学校までは少し時間がかかってしまう。

 だんだんと顔が険しくなっていく嵐山を横目で見ながら、間に合ってくれればいいんですがと精一杯に脚を動かす。やがて目的地が見えてきたところで

 

 

「そろそろ着くぞ、各位迅速に任務に当たってくれ」

 

『『「「「了解」」」』』

 

 

掛け声と共により屋根を蹴る脚に力が入る。

 

 

 やっと現場に着いた東堂達だったが、なにやら様子がおかしい。グラウンドに集まっている生徒達には緊張間がなく、恐怖といった感情もほとんど見受けられなかった。「嵐山隊だ!」とか「もう一人の誰だ?」などと聞こえてくるのがいい証拠だ。

 ホッとした東堂であったが、校舎脇に倒れているトリオン兵を確認して顔が驚きの色に変わる。

 

 

「恐ろしいほどに鮮やかに仕留められていますね…」

 

「そうだな…しかし、これは一体誰が…」

 

 

すると一人のメガネをかけた少年が前に出てくる。

 

 

「C級隊員の 三雲 修(みくも おさむ)です」

 

「ほ~、C級隊員ですか」

 

 

どうやら彼がやったようだ。C級隊員という事を聞いて一同驚く、それもそのはず。C級隊員はボーダーの中では訓練生を指し、そのトリガーは正規隊員が持っているトリガーより、出力が出ない設定になっているのだ。その訓練生用のトリガーでモールモッドをここまで綺麗に倒せるのは、正直言ってかなり将来有望である。

 

 その意味で驚いていた嵐山は三雲を褒めるのだが、木虎は少し違ったようだ。

 

 

「彼がやった事はルール違反です。嵐山先輩、褒めるような事ではありません…それと、東堂さんも感嘆の声を上げないでください」

 

 

 ボーダーには上からA級・B級・C級と隊員のランクがあり、B級からは正規隊員C級は先程も述べた通り訓練生である。そして隊務規定違反によると、訓練生によるボーダー基地外でのトリガーの使用を禁ずとあるので、彼のやった事は立派なルール違反なのである。

 しかし、プライドの高い木虎の場合は半分嫉妬のようなものも混ざっていそうだったので、東堂は三雲のフォローに入ろうとする。しかし白髪の少年が木虎に向かって食ってかかった。

 

 

「…おまえ、なんで遅れてきたのにそんなにえらそうなの?」

 

「誰?…あなた……」

 

 

 木虎も負けじとその少年に食ってかかる。彼はどうやら三雲に助けられた生徒のようだ。周りよりだいぶ低い彼を見ながら1年生なのでしょうか?凄く胆力がありますね~などと東堂は考えていた。 と、そうこうしているうちに更に口論に拍車がかかる。

 

 

「ていうかおまえ、オサムがほめられるのが気にくわないだけだろ」

 

 

 ギクっとする木虎、図星ですか。と思わずツッコミそうになる。

 

 

「なっ、何を言っているの!?私はただ組織の規律の」

 

 

 その続きを言いかけた所で少年は有無を言わさない迫力で

 

 

「ふーん、おまえ…つまんないウソつくね」

 

 

と言う。これはいよいよ収集がつかなくなってきそうなので東堂が二人に割ってはいる。

 

 

「はい、そこで終了です。木虎さんも熱くなりすぎですよ?」

 

「でっ、でも!」

 

「木虎さん?」

 

「はい、すみません…」

 

「そこの白髪の君も少し言いすぎです。彼女位の年は見栄を張りたがるんです。もう少しk「東堂さん!!!」」

 

 

 木虎に怒られ、おどけたように笑って見せる彼だがやがて三雲に向き

 

 

「あと三雲君、君の処罰を決めるのは僕達ではなく上の人達です。それはわかりますね?」

 

「…はい」

 

「でもそこまで深く考えなくても大丈夫です。僕と嵐山君で処罰があまり重くならないように進言してみますから。ただ今日中に出頭はしなくてはいけませんよ?…それと、今日は沢山の人達を守って頂きありがとうございます。」

 

「いっ、いえ、こちらこそ……」

 

 

 しかし三雲 修、C級隊員……ですか…。

 

 

 東堂はどこかで聞いたことのあるその名前を頭の中で反復させるのであった。

 

 

 

 

 

 回収班が到着し、これにて任務完了。あとは撤収だけ、というところで木虎がこう言う。

 

 

「今日は私、三雲君がしっかり本部に行くか見張りたいと思います」

 

 

 それを聞いて東堂達は

 

 

この子は本当に…とため息をつくのであった。

 

 




というわけで2話目で使ったトリガーの性能と本編介入編でした。
因みに東堂さんは開発室所属ですが、こと近界民との戦闘では本部隊員と同じ指揮下に
入るため今回のイレギュラー門の対処に回された。
という設定です。

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