作者はライブの為に大阪まで赴いてました。たこ焼きウマシ
それはさておき、最新話です。どうぞ
「何ボーっとしてるのよ。早く準備して!」
先程のトレーニングルームにて、怒号が響き渡る。声の主…ショートカットの少女が、物凄い形相で目の前の男性を睨みつけいる。向かい側にいたのは東堂だった。
「そんなに焦らなくても僕は逃げませんよ?」
「そういう問題じゃないの!いいからとっととあたしと勝負しなさい!」
依然少女の怒りは収まりそうにない。これ以上刺激してしまってもしかたがないので、東堂も戦闘体へと換装する。
『模擬戦3本勝負開始!』
どうしてこうなってしまったのだろうか……。
~10分前~
東堂達は、トレーニングルームに響き渡った「どら焼きがない!」という叫び声により、トリガーの説明を切り上げ宇佐美の下へ向かっていた。
「東堂さん…さっきの声は」
恐る恐る三雲が東堂に問う。少し冷や汗をかいているあたり、彼にも宇佐美からどら焼きをご馳走になったのだろう。
「玉狛支部の隊員さんですね…三雲くん達の先輩にあたる人です」
三雲の顔が少しづつ青ざめていく。それにつられてか、雨取と空閑も少し動揺している様子だ。この様子だと三雲だけでなく、3人ともどら焼きを提供されたようだ…。
たしかにこれから世話になるであろう先輩のモノを、知らなかったとはいえ食べてしまったのだ。罪悪感が出てきてしまうのも無理はない。すると東堂が3人の前に出て振り向きこう言った。
「大丈夫です!そのどら焼き、僕も昨日食べちゃいましたから」
迅との会話のあと東堂も、宇佐美からどら焼きをご馳走になったのだ。といってもなんというか、まったくフォローになっていない。
そんななんともいえない空気の中、トレーニングルームの扉をあける。
「さてはまたおまえか!?おまえが食べたのか!?」
「むにゃむにゃ…たしかなまんぞく……」
「おまえだなーーー!!?」
そこには玉狛支部のお子様、
「ごめーんこなみ、昨日お客さん用のお菓子に使っちゃった」
「はあ!?」
「また今度買ってくるから~」
「あたしは今食べたいの!!」
こなみと呼ばれた少女は、今度はそう告げた宇佐美の頬をつねる。この展開についていけない様子の3人が、呆然と立ち尽くしている。
「うんうん、いつも通りですね」
「む、東堂さん来てたの?…もしかして栞が言ってるお客さんって……」
「どら焼き、と~っても美味しかったです♪」
「おまえかーーーーー!!!」
ワナワナと震えている彼女に対し、ノータイムで地雷を踏み抜いていく。そして仕返しといわんばかりに、東堂の頬をつねるのだった。
ギャーギャーと騒がしい室内の中に、男性二人が入ってくる。少し騒ぎすぎてしまったかと、全員でそちらに視線が向く。
「なんだなんだ、騒がしいな小南」
「いつもどおりじゃないすか?」
「…東堂、おまえがいながらここまで騒がしいのも珍しいな」
すみませんと謝る東堂であったが、後ろにいる三雲達に気付いたようだ。
「…おっ、この3人迅さんが言ってた新人すか?」
「新人……!?」
その言葉に少女が過敏に反応した…というか今はじめて3人に気付いた様子である。恐るべし食い物の恨み…。眉間にシワを寄せながら3人を指差し、迅に猛抗議をし始める。
「あたしそんな話聞いてないわよ!?なんでウチに新人なんか来るわけ!?迅!!」
迅は持っていたマグカップを机に置き、ゆっくりと3人の下へ歩いてゆく。そして、妙にいい顔を作り
「まだ言ってなかったけど、実は…この3人おれの弟と妹なんだ」
こう言い放った。3人は言わずもがな、先程室内に入ってきた男性2人も「何を言っているんだコイツ」といった目で見ている。東堂に関しては
「…は?」
いつもの丁寧口調は何処に行ってしまったのか…。流石にこれを信じる人は
「えっ、そうなの?」
ここにいた。今度は三雲と雨取が「信じるんだ…」といった目で少女を見ている。
「迅に兄弟なんかいたんだ…!とりまるあんた知ってた!?」
「もちろんですよ。
このいい顔を作って人をからかうのは流行っているのだろうか…。「言われて見れば似てるような…」と空閑をジッと見る。見られている空閑もいい顔を作っていた。
「レイジさんと東堂さんも知ってたの!?」
「よく知ってるよ」
「えぇ、悠一が一人っ子ってことは」
え、どういうこと?と顔に書いてある。といっても過言ではない位困惑してしまった。そこで宇佐美が自己紹介も兼ねてネタバラシをする。
「このすぐダマされちゃう子が、
「だましたの!!?」
「くっ、ふふっ…だめですね、笑っちゃいます。ふふふっ」
「いやーまさか信じるとは…さすが小南」
堪えきれず失笑してしまった東堂と迅に、もれなく小南のジト目が浴びせられる
「こっちのもさもさした男前が、
「もさもさした男前です。よろしく」
「こっちの落ち着いた筋肉が、
「落ち着いた筋肉…?それ人間か?」
紹介が終わったところで「さて」と迅が前に出る。
「全員そろったところで本題だ。こっちの3人はわけあってA級を目指してる。これから厳しい実力派の世界に身を投じるわけだが、C級ランク戦開始までにまだ少し時間がある」
「今日は12月の5日ですから、大体3週間後ですね」
「あぁ、この3週間を使って新人3人を鍛えようと思う。具体的には…レイジさんたち3にんには、それぞれメガネくんたち3人の師匠になって、マンツーマンで指導してもらう」
確かにこの3人が師匠になるのならば、いい隊員に育ちますねと東堂が呟く。が、一人納得がいかないようだ。
「はあ!?ちょっと勝手に決めないでよ!あたしまだこの子たちの入隊なんて認めて…」
「小南、これは
「…!
「林藤さんの命令じゃ仕方ないな」
「そうっすね。仕方ないっすね」
「仕方ない」その言葉に俯いてしまう。やがて納得したのか手を伸ばし空閑の肩を掴む。
「…わかったわ。でもそのかわり、こいつはあたしがもらうから。見た感じあんたがいちばん強いんでしょ?」
女の勘はよく当たるというが、小南の勘は更によく当たる。そう思わされるほど小南の選球眼は素晴らしい、と東堂は評価している。今回も一目で空閑の強さを見抜いた小南の勘は、賞賛に値するだろう。
「んー、そしたら千佳ちゃんはレイジさんだね。
「よ、よろしくお願いします……」
「よろしく」
こちらはなんというか…一言で言うと身長差がヤバイ。巨人と小人と比喩してもいいくらいだ。
「…となると、俺は必然的に…」
「…よろしくお願いします」
烏丸と三雲のコンビが組まれる。この中だと一番面白そうな組み合わせですね。などと考える東堂であった。
「よーし、それじゃあ3人とも師匠の指導をよく聞いて、三週間しっかり腕を磨くように!」
「そういえば、迅さんと東堂さんはコーチやらないの?」
そう締めた迅に宇佐美からの質問が投げられる。
「おれは今回抜けさせてもらうよ。いろいろやることがあるからな」
「僕は玉狛支部の人間ではありませんから…それに僕の戦闘スタイルに合う子はいなさそうですからね」
「そういえば東堂さん本部の
「えぇ、と正式な師匠と弟子のコンビも組まれましたし、僕はそろそろ…」
と、退室しようとするの裾を、小南が掴む
「ちょっと待ちなさいよ」
その顔は不機嫌そのものだ…。
「どうしました?」
「どうしました?じゃないわよ!ど・ら・や・き!」
すっかり忘れていた。今度何かお詫びのお菓子でも買ってきましょうか、と考えていると予想もしなかった単語が飛んでくる。
「今日という今日はぜったいに許さないんだから!あたしと勝負しなさい!」
…なるほど、こういうパターンもあるのですね。
次回とうとう、次回説明しますします詐欺をしていた主人公のトリガーが描かれます。
なんというかいままですみません…。
それではまた次回お会いしましょう。