開発室からお届けします   作:Tierra

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皆様シルバーウィークはいかがでしたか?
作者はライブの為に大阪まで赴いてました。たこ焼きウマシ


それはさておき、最新話です。どうぞ


第14話 「小南 桐絵」

 

 

 

「何ボーっとしてるのよ。早く準備して!」

 

 

 先程のトレーニングルームにて、怒号が響き渡る。声の主…ショートカットの少女が、物凄い形相で目の前の男性を睨みつけいる。向かい側にいたのは東堂だった。

 

 

「そんなに焦らなくても僕は逃げませんよ?」

 

「そういう問題じゃないの!いいからとっととあたしと勝負しなさい!」

 

 

依然少女の怒りは収まりそうにない。これ以上刺激してしまってもしかたがないので、東堂も戦闘体へと換装する。

 

 

『模擬戦3本勝負開始!』

 

 

 どうしてこうなってしまったのだろうか……。

 

 

 

~10分前~

 

 

 東堂達は、トレーニングルームに響き渡った「どら焼きがない!」という叫び声により、トリガーの説明を切り上げ宇佐美の下へ向かっていた。

 

 

「東堂さん…さっきの声は」

 

 

 恐る恐る三雲が東堂に問う。少し冷や汗をかいているあたり、彼にも宇佐美からどら焼きをご馳走になったのだろう。

 

 

「玉狛支部の隊員さんですね…三雲くん達の先輩にあたる人です」

 

 

三雲の顔が少しづつ青ざめていく。それにつられてか、雨取と空閑も少し動揺している様子だ。この様子だと三雲だけでなく、3人ともどら焼きを提供されたようだ…。

 

 たしかにこれから世話になるであろう先輩のモノを、知らなかったとはいえ食べてしまったのだ。罪悪感が出てきてしまうのも無理はない。すると東堂が3人の前に出て振り向きこう言った。

 

 

「大丈夫です!そのどら焼き、僕も昨日食べちゃいましたから」

 

 

 迅との会話のあと東堂も、宇佐美からどら焼きをご馳走になったのだ。といってもなんというか、まったくフォローになっていない。

 

 そんななんともいえない空気の中、トレーニングルームの扉をあける。

 

 

「さてはまたおまえか!?おまえが食べたのか!?」

 

「むにゃむにゃ…たしかなまんぞく……」

 

「おまえだなーーー!!?」

 

 

そこには玉狛支部のお子様、林藤 陽太郎(りんどう ようたろう)を逆さまに持ち上げ怒号をあげる少女がいた。

 

 

「ごめーんこなみ、昨日お客さん用のお菓子に使っちゃった」

 

「はあ!?」

 

「また今度買ってくるから~」

 

「あたしは今食べたいの!!」

 

 

 こなみと呼ばれた少女は、今度はそう告げた宇佐美の頬をつねる。この展開についていけない様子の3人が、呆然と立ち尽くしている。

 

 

「うんうん、いつも通りですね」

 

「む、東堂さん来てたの?…もしかして栞が言ってるお客さんって……」

 

「どら焼き、と~っても美味しかったです♪」

 

「おまえかーーーーー!!!」

 

 

 ワナワナと震えている彼女に対し、ノータイムで地雷を踏み抜いていく。そして仕返しといわんばかりに、東堂の頬をつねるのだった。

 

 ギャーギャーと騒がしい室内の中に、男性二人が入ってくる。少し騒ぎすぎてしまったかと、全員でそちらに視線が向く。

 

 

「なんだなんだ、騒がしいな小南」

 

「いつもどおりじゃないすか?」

 

「…東堂、おまえがいながらここまで騒がしいのも珍しいな」

 

 

 すみませんと謝る東堂であったが、後ろにいる三雲達に気付いたようだ。

 

 

「…おっ、この3人迅さんが言ってた新人すか?」

 

「新人……!?」

 

 

 その言葉に少女が過敏に反応した…というか今はじめて3人に気付いた様子である。恐るべし食い物の恨み…。眉間にシワを寄せながら3人を指差し、迅に猛抗議をし始める。

 

 

「あたしそんな話聞いてないわよ!?なんでウチに新人なんか来るわけ!?迅!!」

 

 

 迅は持っていたマグカップを机に置き、ゆっくりと3人の下へ歩いてゆく。そして、妙にいい顔を作り

 

 

「まだ言ってなかったけど、実は…この3人おれの弟と妹なんだ」

 

 

こう言い放った。3人は言わずもがな、先程室内に入ってきた男性2人も「何を言っているんだコイツ」といった目で見ている。東堂に関しては

 

 

「…は?」

 

 

いつもの丁寧口調は何処に行ってしまったのか…。流石にこれを信じる人は

 

 

「えっ、そうなの?」

 

 

ここにいた。今度は三雲と雨取が「信じるんだ…」といった目で少女を見ている。

 

 

「迅に兄弟なんかいたんだ…!とりまるあんた知ってた!?」

 

「もちろんですよ。小南(こなみ)先輩知らなかったんですか?」

 

 

 このいい顔を作って人をからかうのは流行っているのだろうか…。「言われて見れば似てるような…」と空閑をジッと見る。見られている空閑もいい顔を作っていた。

 

 

「レイジさんと東堂さんも知ってたの!?」

 

「よく知ってるよ」

 

「えぇ、悠一が一人っ子ってことは」

 

 

え、どういうこと?と顔に書いてある。といっても過言ではない位困惑してしまった。そこで宇佐美が自己紹介も兼ねてネタバラシをする。

 

 

「このすぐダマされちゃう子が、小南 桐絵(こなみ きりえ) 17歳」

 

「だましたの!!?」

 

「くっ、ふふっ…だめですね、笑っちゃいます。ふふふっ」

 

「いやーまさか信じるとは…さすが小南」

 

 

堪えきれず失笑してしまった東堂と迅に、もれなく小南のジト目が浴びせられる

 

 

「こっちのもさもさした男前が、烏丸 京介(からすま きょうすけ) 16歳」

 

「もさもさした男前です。よろしく」

 

「こっちの落ち着いた筋肉が、木崎 レイジ(きさき れいじ) 21歳」

 

「落ち着いた筋肉…?それ人間か?」

 

 

 紹介が終わったところで「さて」と迅が前に出る。

 

 

「全員そろったところで本題だ。こっちの3人はわけあってA級を目指してる。これから厳しい実力派の世界に身を投じるわけだが、C級ランク戦開始までにまだ少し時間がある」

 

「今日は12月の5日ですから、大体3週間後ですね」

 

「あぁ、この3週間を使って新人3人を鍛えようと思う。具体的には…レイジさんたち3にんには、それぞれメガネくんたち3人の師匠になって、マンツーマンで指導してもらう」

 

 

 確かにこの3人が師匠になるのならば、いい隊員に育ちますねと東堂が呟く。が、一人納得がいかないようだ。

 

 

「はあ!?ちょっと勝手に決めないでよ!あたしまだこの子たちの入隊なんて認めて…」

 

「小南、これは支部長(ボス)の命令でもある」

 

「…!支部長(ボス)…!?」

 

「林藤さんの命令じゃ仕方ないな」

 

「そうっすね。仕方ないっすね」

 

 

 「仕方ない」その言葉に俯いてしまう。やがて納得したのか手を伸ばし空閑の肩を掴む。

 

 

「…わかったわ。でもそのかわり、こいつはあたしがもらうから。見た感じあんたがいちばん強いんでしょ?」

 

 

 女の勘はよく当たるというが、小南の勘は更によく当たる。そう思わされるほど小南の選球眼は素晴らしい、と東堂は評価している。今回も一目で空閑の強さを見抜いた小南の勘は、賞賛に値するだろう。

 

 

「んー、そしたら千佳ちゃんはレイジさんだね。狙撃手(スナイパー)の経験あるのレイジさんだけだから」

 

「よ、よろしくお願いします……」

 

「よろしく」

 

 

 こちらはなんというか…一言で言うと身長差がヤバイ。巨人と小人と比喩してもいいくらいだ。

 

 

「…となると、俺は必然的に…」

 

「…よろしくお願いします」

 

 

 烏丸と三雲のコンビが組まれる。この中だと一番面白そうな組み合わせですね。などと考える東堂であった。

 

 

「よーし、それじゃあ3人とも師匠の指導をよく聞いて、三週間しっかり腕を磨くように!」

 

「そういえば、迅さんと東堂さんはコーチやらないの?」

 

 

 そう締めた迅に宇佐美からの質問が投げられる。

 

 

「おれは今回抜けさせてもらうよ。いろいろやることがあるからな」

 

「僕は玉狛支部の人間ではありませんから…それに僕の戦闘スタイルに合う子はいなさそうですからね」

 

「そういえば東堂さん本部の技術者(エンジニア)だったね…」

 

「えぇ、と正式な師匠と弟子のコンビも組まれましたし、僕はそろそろ…」

 

 

 と、退室しようとするの裾を、小南が掴む

 

 

「ちょっと待ちなさいよ」

 

 

その顔は不機嫌そのものだ…。

 

 

「どうしました?」

 

「どうしました?じゃないわよ!ど・ら・や・き!」

 

 

すっかり忘れていた。今度何かお詫びのお菓子でも買ってきましょうか、と考えていると予想もしなかった単語が飛んでくる。

 

 

「今日という今日はぜったいに許さないんだから!あたしと勝負しなさい!」

 

 

 …なるほど、こういうパターンもあるのですね。

 

 

 

 




次回とうとう、次回説明しますします詐欺をしていた主人公のトリガーが描かれます。
なんというかいままですみません…。


それではまた次回お会いしましょう。

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