開発室からお届けします   作:Tierra

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ちょっと遅れてしまいました。
楽しみにしていた方がいらっしゃいましたら申し訳ないです。

ほぼ説明文っていう幻の回です。

それではどうぞ。


第13話 「トリガー」

 

 

 

 

 四角いタイルのようなものに覆われた部屋。翌日の朝東堂は、約束通り玉狛支部に入る新人3人にトリガーの説明をしていた。

 

 

「とういわけで、弧月がこちらです」

 

 

 そう右手に刀のようなブレードを顕現させる。新人の3人、空閑と三雲それに雨取が出現したブレードに注目する。

 

 

「何か質問とかはありませんか?」

 

「…じゃあ」

 

 

 東堂の質問に、遠慮がちに三雲が挙手をする。

 

 

「はいどうぞ。三雲くん」

 

「はい…そもそもなんですけれど、基地の地下にあるこの広い部屋。これはどうなってるんですか?」

 

 

 トリガーではなく部屋の話であった。確かにここまで大きい部屋となると、疑問に思うのも当たり前かもしれない。「説明し忘れていましたね」と東堂がその質問に答える。

 

 

「ここはトリガーで空間を創った、玉狛のトレーニングルームですね」

 

「トリガーで空間を……!?」

 

「えぇ、トリガーは単なる武器ではありません。近界民(ネイバー)文明の根幹を支える「技術(テクノロジー)」なのです」

 

「…えぇと」

 

「まぁ、武器以外にもいろいろと便利な使い方ができる。と思っていただいてかまいません」

 

「な、なるほど」

 

 

 いまいちピンとこなかったのか、質問の回答にどもってしまう。他には何かありませんか?と聞くと今度は空閑が手をあげた。

 

 

「はい、空閑くん」

 

「さっきオプショントリガーで刃をかくちょうできる?とかいってたけど、どうなるんだ?」

 

「…そうですね。実際に見てもらった方が早いでしょう。宇佐美さん」

 

『はーい』

 

 

 宇佐美の返事と共に東堂から10m程離れた場所に、モールモッドを模した的が現れる。その的へ近づく事もせずに、その場で弧月を構えそして振りぬく。

 

 

旋空弧月(せんくうこげつ)

 

 

東堂が振った弧月から衝撃波のようなものが飛び、的を真っ二つにする。これには空閑も驚きの色が隠せないのか、驚いた声をあげる。

 

 

「なるほど、ボーダーのトリガーには便利なものがおおいな」

 

「でしょう?それでは次のトリガーですね」

 

 

 そう言い弧月を消した東堂が、右手にナイフのようなブレードを顕現させる。

 

 

「これはスピード型の攻撃手(アタッカー)がよく使う、軽量型のブレード『スコーピオン』です」

 

「軽量型?」

 

「はい、弧月と違っていつでも出し入れ自由な作りになっていて、重さもほぼゼロといっても過言ではありません。手以外のところから出せたり、トリオンの調節によってブレードの長さやカタチも変える事が可能です」

 

「ふむ」

 

 

 先程の弧月より食いつきのいい空閑に、「ただ」と話を続ける。

 

 

「耐久力が低いので受け太刀など、守りに入ると簡単に折れてしまいます」

 

攻撃手(アタッカー)用のトリガーっていう事ですか?」

 

「そうですね。そう捕らえていただければと」

 

 

 一通り弧月とスコーピオンの説明をすると、空閑が両手にそれを顕現させる。

 

 

「ふーむ、弧月・スコーピオンどっちにするかなー」

 

 

 と悩んでいるとふと思い出したのか、質問が飛んでくる。

 

 

「たしか攻撃手(アタッカー)用トリガーってもう一本あるよね。オサムが使ってた剣」

 

「あぁ、レイガストですね」

 

 

 手にレイガストを握る東堂、形はスコーピオン・弧月に比べると一番近代的な見た目だ。

 

 

「レイガストは他の二本と比べると防御よりのブレードです。スコーピオンのようにブレードを変形させたり、攻撃力が下がる代わりに耐久力をかなり上げることの出来る『(シールド)モード』っていうのがあったりします」

 

 

 そう言い手に持っているレイガストを、盾のカタチにしてみせる。

 

 

「ただ、ブレードの中だと一番重たいですし、攻撃手(アタッカー)は攻めることが好きな方が多いですから、弧月とかと比べると人気がないトリガーですね」

 

「そうなんですか」

 

 

 少し三雲が落ち込んだような表情で言うので、すかさずフォローをいれる。

 

 

「安心してください。人気がないとはいえ、強い人はちゃんといます。玉狛支部の木崎さんとかがそうですね」

 

「玉狛支部に……!?」

 

「えぇ、なのであまり落ち込まないでください。使い方次第では凄く強いトリガーなのは、間違いないですから」

 

「……はい!」

 

 

 さて、攻撃手(アタッカー)用のトリガーの説明も終わりましたし、次はガンナー用を…と思っていた矢先に三雲が口を開く

 

 

「……弧月が一番人気ってことは、本部で1位の人も弧月を使ってるんですか?」

 

「そうですね、本部のトップは太刀川(たちかわ)さんといって弧月を使っています。悠一のライバルだった人ですね」

 

「へぇ」

 

「迅さんのライバル……!」

 

 

 迅もかなりのつわものなので、二人の食いつきも上場だ。…雨取さん、流石にそこはメモを取らなくてもいいんじゃないですかね……?…まぁ、そこまで熱心に聞いてくれていると、こちらも教えている甲斐があるというもの。あえて口には出さず、苦笑いで視線を戻す。

 

 

「迅さんとどっちが強かったの?」

 

「それは恐らく太刀川さんでしょう」

 

「…!」

 

 

 東堂の言葉に二人とも驚く。雨取はメモを取る。確かに驚くのも無理はない、未来視というチートレベルのサイドエフェクトを持っている迅が、勝ち越していないのだ。言い方は悪いが、化け物といっても過言ではない。

 

 その驚く二人に少し昔話をしましょうかと、東堂が懐かしむように話を始める。

 

 

「何年か前までは、攻撃手用のトリガーは弧月しかありませんでした。悠一と太刀川さんは、当時のランク戦個人一位と二位だったのですが、悠一が『弧月じゃ太刀川さんには勝ち越せない』…そう言って当時の技術者(エンジニア)と一緒に作ったのが、そのスコーピオンなんです」

 

「おぉ、迅さんが作ったのかコレ」

 

「迅さんがそこまで…!?」

 

「えぇ、悠一がスコーピオンを使い始めてからは互角の勝負でしたが、トータルの戦績は太刀川さんの方が勝っていますね」

 

 

 呆然とする二人に少し笑ってしまう。はっといつもの表情に戻った三雲に質問される。

 

 

技術者(エンジニア)と一緒にってことは、東堂さんも作るのに携わったんですか?」

 

「残念ながら、その時はまだ技術者(エンジニア)ではなく本部隊員だったので…少しアイディアは出した気もしますね。あの時の悠一は必死でしたから」

 

「ん?迅さんとそのタチカワさんが一位、二位ってことは、東堂さんもそのふたりには勝てなかったの?」

 

「そうですね。当時はあの二人の壁が大きすぎて、個人ランクは三位から上には上げられませんでした」

 

 

 東堂の発言に三雲が固唾を呑む。

 

 

「三位……」

 

「といっても当時の三位以下は実力が拮抗していたので、僕は三位から五位をいったりきたりしていたんですけどね」

 

「そうなんですか……そういえば迅さんと太刀川さんがライバルだったって言ってましたけど、今はもう違うんですか?」

 

「そうですね…悠一が黒トリガーを手にして、S級隊員になってしまったので」

 

 

 三人がもう少し聞きたいような表情をしているので、再び懐かしむように語り始める。

 

 

「空閑くんなら知ってると思いますが、(ブラック)トリガーには使用者とトリガーの相性があり、それがよくないと使えないのですが…悠一が今持っている(ブラック)トリガーは、起動できる当時の隊員が20人以上もいた珍しいトリガーだったんです。そこで、候補者全員で争奪戦をやったのですが、結果は悠一の圧勝。そして今に至るという感じですね」

 

「ふむ、じゃあそこでタチカワさんとの決着がついたわけか」

 

「いいえ…太刀川さんは(ブラック)トリガーに選ばれず争奪戦には参加できなかったんです」

 

「なんと!」

 

「ですから案外あの二人のなかだと、いまでも決着はついていないのかもしれませんね」

 

「…あ、あの!」

 

 

 ここでいままでずっとメモを取っていた雨取が、初めて口を開いた……いったいどこまでメモを取っていたのだろうか。

 

 

「はい、なんですか?」

 

「東堂さんもその、争奪戦に参加したんですか?」

 

「そのときにはもう技術者(エンジニア)になっていましたから…残念ながら」

 

「そうなんですか…」

 

 

 しかしここで空閑がなにかに気付いたのか、首をかしげる。ただその気付いた何かが、さっぱり分からず東堂の話が進んでゆく。

 

 

「さて、少し時間を使いすぎてしまいましたね。次はガンナー用のトリガーです。宇佐美さん的を」

 

『はいはいさー』

 

 

 東堂の手にはいつの間にか回転式銃(リボルバー)が握られていた。部屋の構造も先程とはかわり、三門市の住宅街へと変わっていた。

 

 

「さて、ガンナー用のトリガーですが、全部で四種類あります。先程と同じように一つづつ説明していきますね」

 

 

 お願いします!と三人の元気な声が響く。

 

 

「まず一つ目が、アステロイドと呼ばれる最も基本的なものです」

 

 

 手に持っている銃に光が灯る。先程と同じ的に銃を撃つが、貫通することはなく装甲に大きな歪みができただけであった。

 

 

「特別な効果はありませんが、威力が高い通常弾ですね」

 

「ふむ」

 

「次はこれです」

 

 

 その言葉と共に弾を打ち出す、すると着弾した的が爆散した。その衝撃に三人はびっくりするが、東堂は顔色一つ変えずに説明を続ける。

 

 

「爆発して広い範囲を攻撃できる炸裂弾、メテオラです」

 

『と、東堂さんちょっと威力高すぎない?みんなびっくりしてるよ!?』

 

 

 どうやら宇佐美も少し驚いたようで、東堂に注意を促す。

 

 

「確かにちょっと強めに撃ちすぎちゃいましたね、すみません。次は…宇佐美さん動く的を出してください」

 

『はーい』

 

 

 宇佐美の言葉と共にヌッと動く的が空中に現れる。速度はそれぞれまちまちだが、これに当てるとなるとなかなかの技量が必要だろう。

 

 

「次は目標を追尾する、ハウンドという追尾弾ですね」

 

 

 ズドンと前方に打ち出された弾がそれぞれ目標を追尾する。当たったものと当たらなかったものとそれもまちまちだ。

 

 

「とまぁ、いくら追尾弾といっても撃ち出す角度などを考えないと、当たらないこともあるのでご注意を」

 

「なるほど…」

 

「次が最後ですね。僕が一番愛用しているトリガーです」

 

「東堂さんの……」

 

 

 そう言い東堂が残りの的を確認する、数は7体ほどだろうか。そしてゆっくり銃を真上に構え撃ち出す。次の瞬間多彩な方向へと弾が放たれてゆき、次々に的に着弾。やがて、全ての的を撃ち落とした。

 

 

「これはこれは……」

 

「す、すごい…」

 

「弾道を設定して、好きなコースを飛ばすバイパーです」

 

 

 三人共東堂が説明したことがちゃんと耳に入っているのだろうか、という位先程の光景の余韻に浸っていた。

 

 

「追尾弾より優秀な弾に見えましたけれど…」

 

「普通はあぁはなりませんよ。バイパーを使う人のほとんどは、予め決めたルートでしか飛ばしませんから」

 

「ふむ?そしたら東堂さんは毎回そのルートってやつを変えてるのか?」

 

「そうなりますね。この弾、僕のサイドエフェクトと相性がいいんです」

 

「…そうか、超並行処理能力!」

 

 

 東堂は説明を省いたが、動いている複数の的全てを落とすとなると、いくら毎回ルートを設定しているからとはいえそうそうできる事ではない。動く的のルート、弾の速度等の全てを計算するという、途方も無い演算を先程の一瞬で行ったのだ。

 

 

「この四種類の弾にオプショントリガーを絡めて戦うのが、ガンナーポジションの戦い方になってきます」

 

 

 そこで、ひとつ三雲に疑問が生まれる。先日対イルガー戦で東堂が使っていた、四角いキューブを出すトリガー。あれはなんなのか、東堂に聞き出そうとした時である。この広い空間全域に聞こえるのではないかという、大声が空から降ってきた。

 

 

 

『あたしのどら焼きがない!!!誰が食べたの!!?』

 

 

 

 三雲を含む三人の頭の上にはクエッションマークが浮かぶが、この場で東堂だけが現状に理解が追いつき三雲たちにこう言うのであった。

 

 

「すみません。もしかしたら今日はここで終了かも…」

 

 

 

 




ちなみに主人公が使った回転式銃のモデルは「トーラスレイジングブル」というものです。


次回の更新はちょっと遅れるかもしれません。

ついでに活動報告を更新しようと思っているので、お時間ありましたら目を通していただければと思います。

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