開発室からお届けします   作:Tierra

11 / 16
お待ちしてくれている方がいるか分かりませんが!お待たせいたしました!
よく分からないけれど鼻水が止まらずズルズルです!

実は一回ウィンドウ閉じちゃってtake2だったりします(笑


それでは11話です!どうぞ!


第11話 「ボーダー上層部」

三門市が一望できる大窓が設置された部屋に、なんとも先進的なロの字型デスクに目を引かれる。ここはボーダー本部内の会議室である。

 東堂・迅・三雲は今回の件を報告すべく、この部屋に足を運んでいたのだった。

 

 

「…なるほど。報告御苦労」

 

 

 ボーダー本部司令の 城戸 正宗 (きど まさむね)がそう淡々と言葉を紡ぐ。彼はここボーダーの最高責任者という肩書きを持っている、いわゆる組織のリーダーである。左の額からえらの辺りまでに伸びる傷を、隠すように手を当てながら更に言葉を紡ぐ。

 

 

「東堂…何を考えて近界民(ネイバー)を庇ったか説明を願おう」

 

「…彼は二度三門市に襲来した近界民(ネイバー)を撃破、更にはイレギュラー(ゲート)の解決策も彼から教えてもらいました。普通の近界民(ネイバー)として始末するのは僕の中で合理的ではありませんでしたから」

 

 

 それに対してにこやかに回答する。数秒の間城戸と東堂の間に無言の間が生まれる、お互いの視線の間に火花が散っているようにも錯覚するほどの間に、耐えかねたのかメディア対策室長 根付 栄蔵 (ねつき えいぞう)が割って入る。

 

 

「しかし(ブラック)トリガーとは……そんな重要なことをなぜ今まで隠してたのかね。ボーダーの信用に関わることだよ」

 

「それは三雲くんなりに何か考えがあったと思いますよ?」

 

「そうだな、迅の話によれば結果的に三雲くんは現在まで(ブラック)トリガーを抑えている」

 

 

 東堂の進言をボーダー本部長の 忍田 真史 (しのだ まさふみ)が支援する。東堂と忍田の間にアイコンタクトが生まれるが先程のように殺伐とした間ではなく、かなり友好的なアイコンタクトであった。心なしか鬼怒田が普段から細い目を更に細めてそちらを見ている…最早睨んでいるのに気づき東堂が苦笑いを浮かべる。

 

 

「そうだとしても我々に報告する義務がある!一隊員の手に負えることじゃなかろう!」

 

「そのとおり、なにせ相手は(ブラック)トリガーですからねぇ」

 

 

 鬼怒田と根付が東堂達の意見に批判を促す。が

 

 

「イレギュラー(ゲート)の問題が発生していた時期です。報告していたら、今よりもっとめんどうなことになっていたと思いますけれど?」

 

 

すかさず東堂が批判を被せる。これを見て笑いを堪えきれず吹き出してしまう男性が一人

 

 

「くくく…いつもは仲いいのにこういう時は意見が割れるんだな、鬼怒田さんと東堂は」

 

「ぐっ…わ、笑い事じゃないわい!」

 

「そうですよ、林藤支部長」

 

 

 すまんすまんと再びタバコを口に咥える。彼は玉狛支部の支部長 林藤 匠 (りんどう たくみ)、迅の直属の上司でもある。話が変な方向に脱線し始めたところで、迅がまあまあと手を上げた。

 

 

「考え方を変えましょうよ。その(ブラック)トリガーが味方になるとしたらどうです?メガネくんはその近界民(ネイバー)の信頼を得てます。彼を通じてその近界民(ネイバー)を味方につければ、争わずして大きな戦力を手に入れられますよ」

 

「それはそうだが……」

 

「そううまくいくものかねぇ?」

 

 

 室内の空気が一変する、それほどまでに迅の提案はリターンが高いのだ。しかしそれをよしとしない人物が一人

 

 

「…たしかに(ブラック)トリガーは戦力になる……よしわかった。その近界民(ネイバー)を始末して、(ブラック)トリガーを回収しろ」

 

「!?なっ……」

 

「ふむ…それなら何も問題はありませんねぇ。貴重な(ブラック)トリガーだ、逃す手はない」

 

「間の悪いことにA級1位から3位までの隊は遠征中だが、残りの正隊員に加え東堂もいる。おつりが返ってくるわい」

 

 

城戸司令である。迅の発言により傾きかけた天秤を無理やり元に戻された感覚、またもや空気が一変してしまう。しかし、忍田が若干怒鳴り気味に抗議をする。

 

 

「馬鹿な……それでは強盗と同じだ!それにその間の防衛任務はどうする気だ!?」

 

「部隊を動かす必要は、ない。(ブラック)トリガーには、(ブラック)トリガーをぶつければいいだろう」

 

「まさか…!」

 

 

 

「迅、おまえに(ブラック)トリガーの捕獲を命じる」

 

 

 

 『そうきたか』これが最初に東堂の頭に浮かんだ言葉。その次に浮かんだのは

 

 

 

「それはできません」

 

 

 

 『その程度では僕の幼馴染(悠一)の思惑は崩せませんよ』である。何か思惑がある時の「本気」の迅は並大抵のことでは揺らがない、迅悠一とはそういう男なのだ。

 

 

「何ィ!?」

 

「どういうことかね?迅くん、最高司令の命令に従えないと?」

 

 

 ごもっともな意見である。並大抵の人間であれば、組織のリーダーの命令に逆らうということはまずしない。さて一体どんな手を使ってくるのかと様子を伺っていたが、迅の発言は突拍子もないことであった。

 

 

「おれは玉狛支部の人間です、城戸司令に直接の指揮権はありません。おれを使いたいなら、林藤支部長を通してください」

 

 

 確かにボーダーのルール的には命令の重複を避けるために、直属の上官のみが部下に命令できるようになっている。東堂の場合は開発室長の鬼怒田がそれにあたるわけだが、今その話を出してどうなるのか…なんとも要領を得ない回答だ。

 

 

「……林藤支部長、命令したまえ」

 

「やれやれ…支部長命令だ。迅、(ブラック)トリガーを捕まえてこい」

 

「はい」

 

 

 今度はしっかりと了承する。それに対して、三雲は迅に向き直り驚愕の表情を浮かべていた。

 

 

「ただし、やり方はおまえに任せる」

 

 

 再び天秤が傾く、そんな音が聞こえた気がした。

 

 

■ □ ■ □ ■ □

 

 

 

 迅に乗せられて終わる形となってしまった本会議、現在会議室に残っているのは城戸司令、鬼怒田、根付、東堂に加え外務・営業部長の 唐沢 克己 (からさわ かつみ)の5人である。空閑の目的はボーダーにいるという父親の知り合いを探すことらしく、驚くことに空閑の父親はボーダー最初期のメンバーの一人だったらしい。

 

 これだけ聞けば「これ以上空閑を狙う意味はない」となりそうな気もするが現実はそう甘くはない。

 

 

(ブラック)トリガーは、必ず我々が手に入れる」

 

 

これが城戸司令の意向であった。ボーダー内の派閥が関係してくる、東堂がもっとも嫌いなボーダーのいざこざのせいである。

 

 今ボーダーには大きな派閥が3つ存在する。一つ目が近界民に恨みをもつ人間が多く集まった城戸派。二つ目は近界民に恨みはないが、街を守るために戦う忍田派。そして近界民とも仲良くするスタイルの玉狛支部。今回空閑の(ブラック)トリガーが玉狛側に付くとなれば、ボーダー内のパワーバランスはひっくり返ってしまうだろう。城戸司令はそれをなんとしても阻止したいらしい。

 

 こうして城戸派のみになった会議室の中であーでもない、こーでもないと議論が繰り広げられていた。ふいに城戸から東堂に話が振られる。

 

 

「東堂、元隊長としてのきみの意見は?」

 

「あまり乗り気ではない僕が答えると?」

 

「と、東堂!!」

 

 

思わず喧嘩腰に答えてしまうが、焦る鬼怒田の姿を見て仕方ないですねと続ける。

 

 

「今はとにかくこちらの条件が悪すぎます。この状態で戦いを挑んだ場合のリスクを考えると、(ブラック)トリガーは玉狛で泳がしておくのがよろしいかと。僕が単騎で奇襲をかけるのが成功率としては高そうですけれど、流石に悠い…迅隊員の未来視をかいくぐるのは至難の業ですね」

 

「手をこまねいていても条件はかわらんぞ?」

 

「いえ、あと数日で帰ってくるでしょう?トップチーム」

 

 

その言葉にはっと思い出す鬼怒田と根付。

 

 

「…いいだろう。遠征組の帰還を待ち、三輪隊と合流させて……4部隊合同で(ブラック)トリガーを確保する」

 

 

 城戸の言葉を聞くと東堂は踵を返し出口へと向かうが、呼び止められる。

 

 

「東堂、分かっているとは思うが…おまえにも参加してもらう」

 

「城戸さん、それは命令ですか?それとも任意ですか?」

 

「……命令だ」

 

「そうですか…それでは失礼します」

 

 

 パタンと閉められた扉を鬼怒田が心配そうに見つめる。

 

 

□ ■ □ ■ □ ■

 

 

 

 自室に戻りベッドに大の字に寝転がる。本当に気乗りのしない命令、何か抜け道がないかどうか考えていると、携帯に着信が入る。

 

 

「もしもし東堂です」

 

『あっもしもし、東堂さん?アタシ、宇佐美(うさみ)です!』

 

「これはこれは、お久しぶりですね」

 

『そんなに久しぶりだっけ?…そうかも、じゃなくて東堂さんにお願いしたいことがあってね?』

 

 

なんとも陽気な電話の向こう側の人物。玉狛支部のオペレーター 宇佐美 栞 (うさみ しおり)はどうやら少し焦っているようだ、急用なのだろう。ここで断るのは酷な話だ、それに断る理由もないので二つ返事でそれに返答する。

 

 

「はい、なんでしょうか」

 

『今新人さんにトリガーの説明をしようと思ってたんだけど、ウチのトリガー今メンテナンス中でね?」

 

「なるほど、分かりました。とりあえず一式持って行けばいいですか?」

 

『うーんと、オプショントリガーとかは今回は大丈夫!アタッカーとガンナー、それとスナイパーの基本的なやつだけで』

 

「了解です。そしたら美味しいお菓子とか…期待しちゃいますね♪」

 

 

 電話口の向こうで『えっどうしようもうお菓子ないよ~』とか『あっこなみのどら焼きがあった』とか聞こえてくる。『こなみの』という単語に嫌な予感しかしないが、とりあえず貰えるものは貰っておこう。

 

 

「それじゃあ、今からお持ちしますね」

 

『あっ、うん東堂さんありがとう』

 

「いえいえ」

 

 

 そういい電話を切る、と同時に一つの疑問が思い浮かんだ。

 

 

「玉狛に新人?」

 

 

 どうやら迅は、予想の斜め上を行く行動に出たらしい。

 

 

 




今回から書き方を全体的に変えてみました。
見にくいとかございましたら、ご意見ください。


次回は玉狛のお話ですね、サブタイどうしよう…。
ちなみに余談ですが、作者は中の人補正で小南先輩がお気に入りです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。