浅い眠りで夢を見た。夢の中で女の子とベッドで同衾していた。彼女の匂い、感触、体温が妙にリアルだった。何故だか顔は判らない。しかしどこか聞き覚えのある声・・・・・・。
朝になり理由が分かった。上のベッドに居るはずのアミティエが、私の横に寝てるので驚愕。今までこんなことなかったのでうろたえる私。一体何時からなの? それよりなんで? どうして? 彼女の腕や脚が巻きついて身動きできない。もともとが狭いベッドなので尚更だ。私がもぞもぞしたので彼女も目が覚めたようだ。そして、いたずらっぽく
「おはよう。良く寝られたかしら? 」
「やっぱり二人だと窮屈ね」
「でももう少しこうしていたいわ、いいでしょ蛍・・・・・・」
そう耳元で囁きながらがらぎゅっと抱きしめてくる。麻痺した様にそれ受け入れる私。問いただそうにも、言葉が出ない。
「驚かしちゃってごめんなさい」
「こんなことした私を軽蔑した? 」
「蛍が委員長を好きなのは知ってる」
「昨日あんなこと言って、蛍にハッパかけたのにね・・・・・・」
「ごめん・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「けど、私は蛍のことが・・・・・・好き。」
「私だけの蛍で居て・・・・・・。」
絞り出すように綴る彼女はもう半分泣き声だった。そして手を回して唇を奪う。私はそれを受け入れた。そしてこちらからも・・・・・・。
秋になり低くなってきた朝日がベッドで重なり合った私たちを照らす。落ち着いてきた私たちは見つめ合って微笑み照れる。そしてお互いの秘密を吐露したり、急展開に戸惑いも多々あるのだけど、私は私の心の変わりようを肯定した。昨日まではこんなこと想像だにしなかったのに。中田蛍の浮気者。と心の中で呟く。二人の意見は一致し今日私たちは授業をサボることにした。部屋は普段から鍵をかけてあるから誰も入っては来られない。背徳感に包まれた中で、私たちは愛を確かめた。お昼になったけど私たちは昼食に行かなかった。すると部屋をノックする音と私たちを呼ぶ声がする。さすがに無視は大事になりそうなんでアミティエをベッドに残し、私が応対することにした。ドアを開けると立花さんと白羽さんが立っていた。開口一番、
「いったいどうしたの蛍さん!無断で欠席なんて」
「しかも二人ともなんて風邪でも引いたの? 」
と立花さんが問いただす。私はつまりながらも
「そうなの昨日舞い上がって羽目外しちゃって油断してしまって」
と誤魔化す。
「それなら他の子に頼まなきゃダメよ。ダリア先生も心配してらしたたわ」
「朝もお昼も食べてないのでしょう? 夕食は大丈夫? 」
私は立花さんに連絡の不備を改めて謝罪し、夕食は戴くことを伝えダリア先生には明日話するということにしてもらった。
後ろに居た白羽さんは終始怪訝な顔していた。勘の鋭い人なのでバレたかなとも思う。かつていくつかの事件を解決した話は私も知っている。
まあそれはそれでしょうがないかなとアミティエの居るベッドに視線を送った。
バレエの発表会の夜を境に、私たちの関係は一変した。アミティエのことをお姉ちゃんと呼ぶことになり、私は名の呼び捨てのほたるである。
アミティエは事故で死別した妹さんが居て、それが心にずっと引っかかっているのだという。事故のあったあの日、普段と同じように行動してれば
妹は事故に遭わなかったのではないかと・・・・・・。そして私が妹さんと名前が偶然同じだったことが呼び名の決め手になったとのこと。
実は転入し最初に会った時から私を意識していたと話をしてくれた。選考を経てアミティエになった時には神に感謝したって笑った。
立花さんと交わしていたノートは一冊の終了を持って止める事にした。このまま続けてもいいよとお姉ちゃんは言ったけど、このままでは
やはり失礼に過ぎるから。そして立花さんに来て頂く事にしていた流星観測は、お相手をお姉ちゃんに変更。告白イベントは消失したので
準備は気楽に進んでいく。後は当日の天気だけが気になるだけ・・・・・・ 。