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IS最新刊をちょっと読んで「はぇ〜…新キャラ…このタイミング…」
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IS最新刊のバトルシーン「雷…」
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IS最新刊の最後の場面「ぶっちゃけ6巻ぐらいでこのオチ想像してたけどまさか実際にそうするとは思わなかった」
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IS最新刊のあとがき「次で終わんの!?新キャラ出したのに!?」
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「はああぁぁっ!!」
「『完全同調・超過』」
試合開始早々、近接デュアルブレード『ジキル・ハイド』を構えたまま、特攻を仕掛けてくるシャルロット。
しかし、いくらシャルロットが高速機動戦闘を得意にしているとは言え、それは時守にも言えること。
シャルロットの初動を見てからの『完全同調・超過』の発動で、難なく避けることが出来た。
「そこっ!」
「っ…」
直線的に進んできたシャルロットに対し、右に避けた時守。
しかし今度は、『タラスク』による追撃を狙ってきた。
「まだまだぁ!」
「ちっ…」
その『タラスク』での弾幕を避け、少しばかり距離を取る。
しかしそこでも武器を変えられ、『ヴァーチェⅡ』でのさらなる弾幕にが張られていく。
「…剣に勝つには、自分のスタイルを貫く…なんて綺麗事、言ってられないからね。とにかくがむしゃらに、攻撃を当てにいくよ」
「おおむね正解ってとこやな。確かに『雷動』と『完全同調・超過』を狙える人なんてそうはおらんし、攻め続けるのはええこっちゃ」
試合が始まり、およそ30秒。
その間に攻撃を行ったのはシャルロットだけであり、時守は一切の武装を展開することすらせずに、ただ単一仕様能力で逃げていただけ。
だが、そのお互いの表情は試合の展開とは真逆で、シャルロットには余裕はなく、時守にはまだまだ余裕を感じられるものだった。
「でも、やっぱりダメみたいだね」
「諦めるには早過ぎひんか?」
「そんなことないよ。これは、実力差を考えた上で、だから。最速を誇る剣の『雷動』を出されたら、それだけで僕は太刀打ちできなくなる」
シャルロットは、最初から分かっていたのだ。
世界初のデュアル・コア搭載機になっても、その出力がラファールの時と比べて大幅に上がったとしても、『金色』の持つ『雷動』の速さには勝てないことを。
「僕がズバ抜けた動体視力や、当たれば一撃で倒せる武器を持ってない限り、今のままでは剣を超えられない。できるだけ早く二次移行をすることが目的なんだ」
「…じゃあなんで、今ここで俺と模擬戦を?」
「自分が上の世界と、どれだけ差が開いてるかを実感するため。…まあ後は、今ある力でもどこまでできるかっていうのを知りたかったんだ。…ワガママに巻き込んでごめんね?」
「ええよ。むしろ、シャルから誘ってくれて嬉しかったわ。…ほな、仕切り直しといこか」
近接戦闘を行うにはあまりにも離れている距離感のまま、にらみ合う両者。
シャルロットが少し息をつこうとした、その時だった。
「はっ!」
「っ!?くっ、あぁ…!」
「格上相手に息抜きしてる場合ちゃうぞ?」
『完全同調・超過』、『雷動』という時守の機動力を最大まで引き上げる二つの単一仕様能力を同時に発動させ、彼がシャルロットの懐に。まさに瞬間移動の如く一瞬で現れた。
そしてそのままシャルロットの腹部に押し当てられた右手から、『雷轟』が放たれる。
「っ、このぉっ!」
「ええ心がけや。…けど、残念やわ。圧倒的に、全てが足らん」
「分かってるよっ!」
足りないのは、単一仕様能力だけではない。
第二形態移行する時のスペックの上昇や、武装の変化、追加など。良くも悪くも、『輪廻の花冠』は既存のIS二機が合わさっただけのもの。
三次移行を済ませた機体と渡り合えること自体、奇跡に近いのだ。
「ワンサマの機体ならどうなったかは分からんけどな。少なくとも、俺には勝てへん」
「…それって、国連代表としての余裕?」
「それもあるし、俺の機体が『金色』やからって理由もある。あとは、余裕であり油断やな。シャルがここから俺を倒せる術を出してきても、負けへん自身はあるつもりや」
一夏の機体は、超攻撃重視のものとなっている。
しかし、時守の機体は機動力に重きを置きながらも、全てにおいてバランスの良いものとなっている。
「さて、シャルロット・デュノア代表候補生。奥の手を出すなら今のうちやぞ?」
「っ…!」
シャルロットのSEは、試合開始の時間から考えるとかなりのペースで減っている。
その全てが、彼が攻撃に転じてから数秒の間で減らされているのだ。
「行くよ!」
先ほどまでと同じく、エネルギーシールド『花びらの装い』で彼からの攻撃に最低限の牽制をかけながら、なんとか肉薄を試みる。
ブレード、パイルバンカー、そして銃。
既存のそう言った兵器でまともにダメージを与えられないことは分かりきっていたが、そんなことは諦める理由にはならなかった。
「最後まで全力を出したシャルに、ご褒美や」
「そんなの、今は要らないよ!」
いずれの武装を用いた攻撃も避けられてしまい、次第に残弾が無くなり、攻撃も淡泊なものへと変わっていた。
対する彼は、まだまだ余裕。
この戦いでも攻撃にはほとんど『雷轟』しか使っておらず、ここから全力を出せばその手段は多岐にわたる。
「まあまあ。せっかくのご褒美なんや。ありがたく――」
彼の言葉が耳に入る。
先ほど言っていたご褒美とやらが来るのか。そう意気込んでいたシャルロットは―
「――受け取っといてや」
「………へ?」
―いつの間にか背後に迫っていた彼に気づくこともなく、衝撃を感じることすらないままに、負けていた。
◇
「うううううぅぅぅぅぅっ!!!」
「シャルが甲子園のアラームみたいな声出してる」
「そうなるのも仕方ないわよ、剣くん」
「私たちから見てたら……普通に『雷動』で背後に移動した剣がトドメを刺してたけど…」
「肝心なのは、シャルロットさんがそれを感知できなかったということで…」
「ねえ剣っ!あれ、何!?僕最後、全っ然攻撃されたって分からなかったんだけど!?」
時守とシャルロットの模擬戦が終わった。
結果は時守のほぼ完全試合と言ってもいい内容であり、シャルロットはその鬱憤に時守のことを真正面から思いっきり抱きつきながら、彼に叫んでいた。
「あれが、俺と金ちゃんが最近編み出した新しい技や。どやった?」
「何をされたか全然分からないから聞いてるんだよ?」
「外から見てた私達は気づいて、一番近くにいたシャルロットちゃんが気づかない…」
「全く訳が分かりませんわ…」
「……それはそうと、本当に大丈夫なの?シャルロット」
「えっ?うん。最初から勝てる気では無かったもん」
簪がそう聞くと、シャルロットはあっけらかんとした顔でそう返した。
「自信を持ってた機動力が通用しなかったのはショックだったけど、剣は多分世界トップクラスの機動力だし、それに僕も『輪廻の花冠』でのほとんど初めての戦いだったからね。どんな風に動かせるか分かっただけでも十分な成果だよ」
「ふふっ。すごく前向きね、シャルロットちゃん」
「はいっ。ポジティブにならないと、前には進めないので」
『……おい時守。貴様、すでに機体の整備は済んだだろう。早く出てこい』
でも負けたことは別だから慰めて、と言わんばかりに時守のことを抱きしめ続けていたシャルロット。
時守自身もそんな彼女を抱きしめ返していたが、その時間もとうとう終わりを告げるようだ。
時守のピットに、少し怒気を孕んだ千冬の声が響いた。
「ほな、行ってくるわ」
「うん、頑張ってね」
「これに勝てば、ついに免許皆伝ってところかしら」
「応援していますわっ!」
「もし勝てたら……皆でご褒美を考えてるから」
彼女たちの言葉を背に、『金色』を展開する。
「んじゃあちょっくら、勝ってくるわ!」
ピットから勢いよく飛び出していく時守。
そんな彼を待ち構えていたのは、鬼の形相を浮かべた織斑千冬だった。
「随分と、余裕そうじゃあないか、時守…」
「さっきよりかは無いっすよ、流石に。やからこそシャルリウムを摂取してきたんです」
「意味の分からん御託を抜かすな」
軽口を叩くも、時守はその言葉通り、先ほどのシャルロット戦と比べてその表情に余裕は無い。
飛び出したと同時に『完全同調・超過』をすぐさま発動し、いつ戦闘になってもいいようにしていた。
「今回は、俺がチャレンジャーっす。最初っから本気でぶっ飛ばしますよ」
「あぁ。…お前が私を超えてくれることを、楽しみにしている」
緊張が高まる。
時守と千冬が向かい合うフィールドだけでなく、一夏や箒たちが観戦している観客席、楯無たちがいる時守のピット、真耶がいる放送席までもが、ピリピリとした空気に包まれていた。
「お前が隠しているすべてを、さらけ出してもらおうか」
「さぁ?それは、ちっふー先生次第っすね」
『試合、開始ィィィィイッ!!』
本日2度目となる試合開始の合図。
数秒の間睨み合い、先に動いたのは時守だった。
「行きます…!」
「っ!」
バチリ、と光が時守の周りにまとわりつき、雷を帯びる。
その瞬間、その場から時守が消える。
「っ、チィ…ッ!」
「らぁっ!」
いつの間にか千冬の懐へと現れた時守。
その超速の蹴りが、彼女の腹部を穿つ。
「…あぁ。言い忘れてましたけど、前のアレが最速な訳やないっすからね」
「……それぐらい、今の攻めで分かったさ。全く…、視認できた時には蹴られていたとはな」
千冬が今までに見たことがないほどの速さ。
流石に蹴られるまで何をされたか分からない、という程ではないが、ハイパーセンサーでも視認できない。
「ほっ」
「そんなっ、気軽に、瞬間移動を、するなぁっ!」
『雷動』と『完全同調・超過』
もはやお馴染みのコンボだが、時守の気分次第でこれはどこまでも速くなる。
『金色』というISを完全に制御し、その上で『雷動』でひたすらに速度を上げていく。
限界は、時守が制御できなくなる時。ただそれだけだった。
「『ラグナロク』」
「なっ…!」
千冬を蹴り飛ばし、そこから逃げる千冬をさらに『雷動』で追撃する時守。
追いついた彼が出てきた手は、千冬にとって最早懐かしくもある武装だった。
「くそ…。オールラウンドか…」
「えぇ。あんま警戒してなかったんすか?」
「そりゃあな。てっきり、単一仕様能力ばかり使うものだと勝手に思っていた」
「流石にそれだけやったら勝てませんて」
『雷轟』を警戒していた千冬の懐を抉る、切り上げるような攻撃。
時守が千冬に唯一勝っていると考えているのは、その手札の差。
相手は魔改造された打鉄とはいえ、そこに積まれている武装は基本的に近接ブレードのみ。
攻撃の手段だけは、どうやっても『金色』には及ばない。
「……」
「…ようやく、本気になったみたいっすね。ほな、もういっちょッ!」
時守と距離を取って対面する千冬の表情から、余裕が消えた。
そんな彼女を見て、再び時守の姿が消える。
「ふっ!」
「はぁッ!」
先ほどの接近と同じ、もしかしたらそれよりも速いかもしれない加速。
しかし、千冬はそれをしっかりと視認。近接ブレードでのカウンターへと転じた。
「ッ、よっ!」
だが、単純な速さでは時守に分がある。
振り払われたブレードをオールラウンドで弾き、今度は『グングニル』を纏い、投げる。
「舐めるな」
『雷動』でさらに速くなった『グングニル』。
下手をすれば一撃でSEを全てこそぎ取ってしまうかもしれないそれを、千冬は身体を回転させることで避けた。
「そっちこそ」
「っ!」
千冬が体をターンさせ、時守に背を向けたほんの一瞬。
その一瞬のうちに時守は千冬に右手を向け、単一仕様能力の一つ『雷轟』の準備を終えていた。
「ぐぅ…!」
「もう、ちっふー先生に攻撃はさせませんよ」
千冬が初めて浴びた、極大の雷。
かつてフルパワーで振るった際に、ゴーレムⅢを沈め、エクスカリバーの熱線を弾き飛ばしたそれは、彼女のSEを着実に減らしていた。
「くそ…何っ!?」
「あ、もしかしてまだ俺があそこにいるって思ってました?」
何とかして『雷轟』の範囲外に外れ、時守と距離を取ろうとする千冬。
だが、なぜか既に避けた先に彼が回り込んでいたのだ。
「チッ、ハイパーセンサーが…『雷鳴』か…」
「これがお待ちかねの、本気っすよ!」
またも行われる、時守の超速突撃。
後ろに距離を取ろうとしても、上手く位置取られていたのだろう。アリーナの壁が邪魔をして、その攻撃をブレードで受けるしかなかった。
「…ふっ。強く、なったな」
「なんすか急に。まだまだこれから…やぁ!」
再び手にしたオールラウンドを振り上げる。
今までの展開からは珍しく淡白な攻撃であり、もう一度素直にブレードで防ごうとした千冬。
だが―
「な、が…!」
「やから、本気出すって言うたやないですか」
―そのオールラウンドは千冬の近接ブレードをすり抜け、彼女の顎を跳ね上げた。
「な、何が…」
「それは、自分で考えてみてください。…じゃあこれで、終わりっす」
先ほどのシャルロット同様、何をされたのか理解ができていない。
そんな彼女に、時守は右手を向ける。
「『雷轟』」
「ぐ…っ。…ははっ。これで、私の負け、か…」
全力ではないが、確実に千冬のSEを削りきるには十分な雷。
終始時守のペース。千冬にほとんどの攻撃を許さずして、彼が勝った。
「…どうすか、ちっふー先生」
「完敗だよ。お前の攻め方と武装を事前に確認していても、対応しきれなかった。…私に暮桜があったとしても、どうなっていたかは分からんだろう。…まあ、こんなことを言っても負け惜しみだがな」
観客席の慟哭は、二人の耳には入っていない。
あるのは、ただの師弟の会話だけだ。
「認めよう、時守。IS操縦者として、既に私からお前に教えることは無いだろう」
「…そっすか。じゃあ後は、先生と教師としてよろしくお願いします」
「……あぁ、よろしく」
少し寂しげな表情を浮かべ、時守のことを見上げる千冬。
アリーナの壁の影になっている部分に入っていたからか、千冬は彼を眩しげに、目を細めて見るのだった。
◇ ◇
「うお〜。けんけん、おめでとぉ〜」
「お、のほほん。それに山田先生も」
「おめでとうございます、時守くん」
時守がピットに戻ると、そこに彼女たちはおらず、本音と真耶が待っていた。
「どしたんすか?」
「わたしは〜、かんちゃんたちにけんけんの労いを頼まれたんだよぉ〜」
「わ、私は、その…織斑先生の方には行きづらかったので…」
「…ちっふー先生、大丈夫なんすか?」
「はい。初めて負けたのを思いつめてるようですが、何やら考え込んでいたので」
話から察するに、簪たちは言っていたご褒美の準備に取り掛かっているのだろう。
そして、弟子に負けてしまった千冬はピットで一人になり、何かを考えているらしい。
「にしてもけんけん、ちょおちょお速かったねぇ〜」
「そりゃな。いやぁ…ええ試合やったわ」
「織斑先生も、また鍛えないとって言ってましたよ?」
「じゃあ次も勝つだけっすよ」
ピットから三人で出て、通路を歩く。
話題はもっぱら時守と千冬の模擬戦のことだった。
「これからも、まだまだ強くなるの〜?」
「おう。そりゃ、ちっふー先生に勝ったからには他の人に負けてられへんからな」
「時守くんなら大丈夫ですよ。先生も応援してますっ!」
「いや、先生ならみんなも応援したってくださいね?」
「そ、それはもちろんですよ!?」
ほんのりと顔を赤くしながらも、真耶は続ける。
「でも、時守くんは本当にすごいと思います」
「ほえ?」
「だって、あれだけ先輩にボコボコにされても、頑張り続けたんですから」
「…まあ、はい。あれは辛かったですから…」
「けんけん頑張ったね〜」
「まだモンド・グロッソまでは時間あるけどな」
三人並びながら向かうのは、IS学園の一年生寮。
本音、時守、そして真耶の部屋があるそこのロビーまでだと、口にせずとも分かった。
「じゃあ、けんけんが優勝したらお祝いしなきゃだね〜」
「俺じゃなくてIS学園の誰かでも、な」
「ういうい〜」
「あっ、じゃあ私はそろそろここで」
気がつけばすでにその目的地に到着しており、一人教員室へと戻るため、真耶が別れを言う。
「ほーい。お疲れさまです、山田先生」
「やまやん、じゃあね〜」
「はい、さようなら。…布仏さん、山田先生ですよ?」
「てひひ〜」
悪びれもせずに舌をちろりと出す本音。
小さく手を振った真耶は、廊下の奥へと消えていった。
「やまやん、これからもお仕事なのかな〜?」
「そやろな。社会人やし」
「…私には関係のないお話〜」
「……あ、そっか。簪のメイドやもんな」
「うい〜」
エレベーターに乗り、移動すること数分。
本音の部屋まではすぐだった。
「ありがとねー、けんけん」
「おう。んじゃの」
「ほ〜い」
二人特有の軽いノリのまま別れ、本音が部屋に入る。
そこから少し歩き、廊下の角にある部屋。
今や5人部屋となったそこは、リフォームや改築を重ね、かなり大きいものとなっていた。
「ただいまー」
「あっ、お帰りなさいっ!」
その扉を開ければ、何かの準備をしていたであろう、エプロン姿のシャルロットが笑みを浮かべて振り返っていた。
「てっきり待っててくれてると思ったわ」
「えへへ。ちょっとしたサプライズを用意してたんだっ」
彼女に手を取られ、部屋の中へと入っていく。
「じゃじゃーんっ!」
「あら。お帰りなさい、剣くん」
「お待ちしておりましたわ!」
「おめでとう……っていうのは、ちょっと早い?」
そこに広がっていたのは、祝い事があったかのような豪勢な食事の数々。
恐らく…というか確実に、彼女たちが用意してくれたのだろう。
「ありがとう。なんか織斑千冬討伐記念みたいやな」
「…剣くん」
「分かってるって。そんなん言わんよ」
そこにはいつもよりも少しだけ賑やかな空間が広がっていた。
IS原作とは大きく違った展開、結末になると読者の皆さんも想像しているとは思います。
てか絶対そうなります。小麦粉と黄ばんだISがスタートでしたし…。
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