艦隊これくしょん -Blue submarine-   作:イ401

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眠気に負けずに執筆。vita版の艦隊これくしょんは買うかどうか検討中。オフラインでも出来るか否かが大きな鍵。
だがその前に買うお金を貯めなければ…ハーメルンをきっかけにアカメが切る!を最新刊以外を買ったおかげで、財布が軽いったらありゃしない。何回も読み直してる位に面白いから後悔は一切してないけど。


第15話

夜の太平洋の海に、轟音を撒き散らす6つの艦艇。

 

その正体は、正規空母ヲ級、戦艦ル級、軽巡洋艦ツ級が2隻ずつ、計6隻。

 

更に上空にはヲ級から発艦した大量の戦闘機群が、水平線より先にいるイ401へと飛行を始める。

 

そして、2隻のル級が16inch三連装砲を一斉射撃。12発の砲弾が放物線を描きながらイ401へと向かう。

 

しかしその砲弾は、イ401の近くの海面を叩く事だけで終わった。

 

 

──そもそも、艦艇の砲撃の命中率はどう贔屓目に見てもかなり低い。10%を越えればかなりの腕前と称せる程だ。砲撃戦で活躍する戦艦でさえ、約5%という少なさだ。(但し、あくまで"訓練時"の命中率の一例であり、実戦では5%未満と言われている)

 

──第二次世界大戦当時、レーダー技術は未熟であり、初期に開発されたレーダーより観測員の方が優れているという逸話がある程だ。

 

──その為、少しでも命中率を向上させる為、砲撃の際は一斉射撃により、一発でもいいから当てるという半ば強引染みた戦法を取られた。

 

──しかしそれでも、とある戦闘記録では「駆逐艦一隻を沈めるのに(砲弾を)1200発撃ち、沈めるのに2時間を要した」という程、酷い時は本当に命中しない。

 

 

だが砲撃は当たらなくとも、航空機による急降下爆撃は脅威だ。その命中率は80%を超える。

 

ヲ級から発艦された63機の艦載機"F6F ヘルキャット"63機が真っ直ぐイ401へと飛行する。

 

 

しかし、イ401までの距離を9kmまで詰めた時、先頭機がこちらへと落下するように接近する、蒼色の光を視認した。

 

 

次の瞬間、それは指向性を持ち、二つに分かれた。"光"と思われていた物の正体は。

 

 

"剣"だ。

 

 

その一対の剣は、蒼色の半透明なエネルギーによって構成され、その刃渡りは500mを越える。

 

 

そして、一対の剣の柄が交差する中心点。

 

 

そこには、銀髪を棚引かせながら自由落下する、イ401のメンタルモデル"イオナ"がいた。

 

 

剣を目視した艦載機は、すぐさま散開するように回避機動を取る。

 

 

しかし、その前にイオナは既に両腕を後ろに回し。

 

 

そして、振るった。

 

 

──さて。ここで一つ問おう。

 

 

──質量。"物体"として存在する以上、絶対に存在する物理法則。質量は原子の種類や密度によっても変動し、物体に重さを与える。

 

──刃渡り500m越えの剣を作り出したらどうなる?それはもちろん、1tを軽く超える重量になるだろう。

 

──しかしよく見返して欲しい。イオナが持つ巨大双剣を構成しているのは"何だ"?果たして、"質量"を持つソレなのか?

 

──答えは否。巨大双剣を構成しているのはクラインフィールドという名の"エネルギー"だ。

 

──エネルギーは、決して質量を持つ事は無く、これを文字通り自在に操る事は出来ない。

 

──しかしクラインフィールドは別だ。クラインフィールドは、言わば"実体化可能なエネルギー"。方程式を確立させ、反映することによってクラインフィールドは実体化し、触れる事が可能となる。

 

──そして、エネルギーであるクラインフィールドで構成された巨大双剣の重量は0g。手に持つ事が出来ながら、何の負担もかかる事がない。

 

──さて、人の腕の振る速度。仮に先端の手で100km/hの速度で振ることが出来ると仮定しよう。

 

──物体の速度は、遠心力によって力場が発生する場所の中央から離れれば離れる程、加速する。

 

──そして今、イオナが持つ刃渡り500mを超える重量無き巨大双剣。

 

──それを振るうとしたら、一体どれ程の速度になるだろうか?

 

 

 

 

──答えは簡単だ。その先端速度は、音速を簡単に突破する。

 

 

 

 

振るわれた巨大双剣は、常識を超えた速度で左右から迫り、その先に居たF6Fを両断してゆく。

 

両断され、翼を失ったF6Fは海面へと落下し、死に体を叩きつけた。

 

最も、巨大双剣の交差地点にいたF6Fよりはマシだったのだが。

 

交差地点にいたF6Fは左右からその刃に押し潰され、一瞬で原型をも残さないスクラップと化した。

 

一瞬で約半数の41機が叩き落とされ、残りの22機は優先度を変更。イオナをターゲットにし、一気に殺到しようとする。

 

 

だがその時、イオナの遥か後方から蒼色のレーザーが飛来。百発百中の命中精度で撃ち込まれたレーザーは、僅か3秒で残りの22機を叩き落とした。

 

 

タネは簡単だ。イオナは巨大双剣で落としきれなかったF6Fの位置を把握し、イ401の40口径単装砲と25mm3連装機銃からレーザーを正確かつ迅速に発射した。

 

 

F6Fを殲滅したイオナは巨大双剣を持ったまま、高度100mで空中に作り出したクラインフィールドに着地。同時に遠視モードを起動し、艦隊の捜索を開始。

 

そして、12時方向に6隻の艦影を確認。その直後、砲炎を確認。

 

 

「一気に」

 

 

すぐさまイオナは身を屈め。

 

 

「終わらせる!」

 

 

足の全力の脚力を後方に弾き出し、凄まじい速度で飛翔。何度も形成したクラインフィールドに足を付け、速度を落とす事無く急速接近。

 

深海棲艦の艦隊は、空中から高速で接近する一対の巨大双剣を持つ少女の姿を目視し、まさかの展開に慌てながら対空迎撃を用意し始める。

 

だが、対空迎撃が整うよりも早くイオナは艦隊の中央へと突撃。空中で身体を半回転させ、イオナから見て垂直方向から約20度傾いたクラインフィールドに足を付け、真下へ突撃。

 

目標は、空母ヲ級。

 

更に身体を半回転し、海面近くのクラインフィールドに着地と同時に両手に握る巨大双剣をヲ級に振り下ろす。

 

500mの刃渡りは、ヲ級を三枚下ろしにするには十分過ぎた。

 

中身ごと三つに切り下ろされ、浮力を失ったヲ級の船体はそのまま海中へ沈む。

 

それを見送る事無く、イオナは即座に行動を再開。

 

右手に持つ双剣に"仕込み"をし、後方へ大きく跳躍。

 

空中で横に一回転し、その勢いで右手の双剣をもう片方のヲ級へ投擲。

 

巨大双剣は刀身を回転させながら甲板に直撃。

 

その瞬間、クラインフィールドの結合が崩壊。元の六角形へと戻ったクラインフィールドは勢いを衰えずに、甲板を貫通。それだけで無く、そのまま次々と貫通し、ヲ級の内部構造をめちゃくちゃに破壊した。甲板も離着艦が不可能になるまで破壊され、ヲ級は戦闘能力を失った。

 

ようやく深海棲艦の迎撃用意が整い、対空機銃とツ級の主砲による弾幕がイオナへと発射される。

 

「無駄だ」

 

だが、イオナの周囲に展開されたクラインフィールドが全ての弾丸を防ぎ、一切の攻撃が通らない。

 

そして剣を両手に構え、イオナは再び駆け出した。

 

 

 

41秒後、その海域にした深海棲艦は1隻残らず居なくなって居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦の艦隊と交戦してから数時間後。朝日が覗く海を、イオナは今だ航行していた。

 

だが今までと違うのは、イオナの目線の先に複数の大小の島がある。

 

 

「…まさか、こんな所に来てしまうとはな。だが、応急修復の場所に丁度良い」

 

 

その諸島の地域名は──

 

 

 

元アメリカ合衆国領地、ハワイ州。


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