その男には能力の全てを妙な方向に向ける悪癖故に女性に縁が無かったが、そんな彼に呆れながらも接してくれる顔馴染みの少女が居た。
ある日、その少女が急に尋ねてきたが、例の悪癖の為に彼女の話を上の空で聞いてしまった。
そして少女は家族と共に急に旅立ち、二度と帰らなかった。
彼女の乗っていた船がそのころ出没し始めていた深海棲艦に沈められたからだ。
それからだった、男が深海棲艦にこだわり始めたのは。
「提督さん、何をしているんですか?」
男が顔を上げると最近鎮守府に来た艦娘がいた。
「いや、新しい装備を考えて・・」
「いい加減にしないとまた大淀さんに怒られますよ。」
男の答えにその艦娘はため息をついて言う。
「あ、そうだった明石さんに頼まれていたんだった。」
男が何か言う前に艦娘は自分の用事を思いだした様だった。
「それでは提督さん。」
小走りに走り去るその艦娘を見ながら男は思った。
やはりあの艦娘はあの少女に似ていると。
ましゅうという名の船と共に海に消えたあの少女に。
艦隊司令部・会議室前
扉の所で立ち止まり大淀さんが振り向きます。
「それではましゅうさんはここで待機願います。吹雪さんは先に入って下さい。」
「はい。」
吹雪さんは返事をすると、先に扉を開けて入室します。
「私が呼びますので、そうしたら入室して下さい。」
「わかりました。」
私の返事に頷き大淀さんも会議室に入室されます。
1人廊下に残され私は深呼吸しつつ待ちます。
非常に長く感じたのですが、実際は五分程度でしょうか。
「ではましゅうさん入って下さい。」
さていよいよです、緊張に胸が張り裂けそうですが意を決して入室します。
中はかなり広い感じです。正面に地図が張られており、その前に整列して入って来た私を見ている方々がいます。
興味深げな視線に緊張しつつ私は地図の前に居る大淀さんの傍らに立ちます。
「では皆さん、改めて紹介します。本日付で部隊支援艦隊の支援艦娘として着任したましゅうさんです。」
大淀さんの紹介を受け私は会釈をして名乗ります。
「ましゅうといいます、どうぞよろしくお願いします。」
ぱちぱちと皆さんから拍手が上がります。
どうやら第一段階は突破出来た様で私はほっと息を付きます。
顔を上げると既に顔見知りである、明石さんと吹雪さんそして鳳翔さんが笑顔で拍手してくれています。
「先ほど話した通りましゅうさんは補給艦娘です。主に他の艦に弾薬や燃料等の補給を担います。それではまず支援艦娘部隊の皆さんから自己紹介を。」
大淀さんはそう言って少し後ろに下がります。
「まず私からかな、支援艦娘部隊旗艦を務める明石です。」
改めて自己紹介される明石さん。
「給糧艦の間宮です。皆さんの食事を担当しています、よろしくお願いします。」
白いエプロンを付けた、女性がにこやか自己紹介されます。頭の赤いリボンが素敵です。
「同じく給糧艦の伊良湖です。間宮さんと一緒に皆さんの食事を担当してます。」
間宮さんと似た様な服装の元気そうな方ですね。
「潜水母艦の大鯨といいます。ましゅうさんとは同じ様な任務ですね、不束者ですが、よろしくお願い致します。」
白のセラー服の大人しそうな方です。それに私と同じ任務なのは何だか嬉しいですね。
「水上機母艦の千歳です。水上機の支援や補給を担当してます。同じ支援艦娘としてお互い切磋琢磨していきましょうね。」
短髪の凛々しい方ですね、何だか格好良い方ですね。
ところで吹雪さん何でそんなにきらきらした目をしているんですか。
「同じく水上機母艦の千代田です。千歳お姉共々宜しくね。」
お二人は姉妹だったのですね。ふとまたおうみという方の事が頭に浮かびます。何故なのでしょうか。
「飛行艇母艦の秋津洲です。飛行艇の整備や補給担当なの、二式大艇ちゃんもよろしくね。」
特徴的な髪型の秋津洲さん。二式大艇ちゃんて誰の事でしょうか。
「以上七人とましゅうさんが支援艦娘部隊の隊員になります。」
大淀さんが皆さんの自己紹介終了を受けて纏めてくれます。
「支援艦娘部隊の皆さんはましゅうさんを指導して上げて下さい、ましゅうさんも皆さんに付いて早く部隊の一員になれる様に精進して下さい。」
「よろしくご指導をお願いします。」
私は深く頷くと部隊メンバーの皆さんに改めて頭を下げます。
「続いてですが、支援艦娘部隊の護衛にあたる直衛艦娘部隊の皆さん自己紹介をお願いします。」
次に大淀さんは支援艦娘方の後ろに控えていた艦娘の皆さんを促します。
「直衛艦娘部隊旗艦の鳳翔です。航空戦を担当します、一緒に頑張りましょう。」
あ、鳳翔さんは部隊旗艦さんなんですね、確かにこの方なら納得出来ます。
「軽巡洋艦の夕張です。少々足は遅いけどましゅうさんの事は必ず守りますから任せてね。」
髪の毛を後ろで纏めた何だかハンサムな艦娘さんです。
「対潜掃討担当の香取です。ましゅうさんには分からない事が多いでしょう、何でも私にお聞き下さい。きちんと指導いたします。」
眼鏡を掛けたいかにも教官という方です。何だか怒らすと怖い、というのは失礼な感想でしょうか。
「駆逐艦島風です。スピードなら誰にも負けません。速きこと、島風の如し、です!」
えっと何と言うか個性的な方ですね。その格好寒くはないのでしょうか。
「特型駆逐艦吹雪です。直衛艦娘部隊の一員として頑張ってましゅうさん達をお守りします!」
吹雪さんが気合を入れて挨拶してくれます。とても清清しくて本当に私を力づけてくれます。
「以上五人に私軽巡洋艦大淀が直衛艦娘部隊の隊員となります。改めてよろしくお願いしますねましゅうさん。」
「はい!皆さんどうかよろしくお願いします。」
この日、私ましゅうは部隊支援艦隊・支援艦娘部隊の一員となりました。
言い訳という名の後書き
これで鎮守府のメンバー全員勢ぞろいです。いやもう書くのが大変でした。
以後の投稿は来週以降ということで。
それでは。