とある補給艦娘の物語   作:h.hokura

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ちょっと早いですが、続きを投稿します。

最後にちょっとシリアスっぽいところがありますが、深刻に取らなくてもいいです。




部隊支援艦隊ですか!?

提督執務室

 

三人方と部屋に入ります。・・落ち着いた雰囲気のお部屋です。

 

「兎に角座って下さい。」

 

そう言ってソファを進める大淀さん。

 

「あ、はい。」

 

私は返事をして座ります、隣には明石さん。

 

「あの・・大淀さん、司令官はどうすればいいのでしょうか?」

 

吹雪さんが提督さんを抱えながら、聞いてきます。

それにしても・・自分の倍は身長のある人を抱えて吹雪さんは息一つ切らせていません。

 

・・非常に嫌そうな表情を浮かべてはいますが。

 

「そうね・・椅子に適当に座らしておいて下さい。」

 

大淀さんも言葉使いは非常に丁寧なんですが・・

 

こちらも非常に嫌そうな表情ですね。

 

「ではまず、私たちの方の事情を説明しますね。」

 

大淀さんは表情を引き締めると説明を始めます。

 

そしてそれは私にとっては驚愕の事実でした。

 

-深海棲艦-

 

それが何であるのか、何の為に襲ってくるのか。

まったく分からないそうです。ただ確かな事は一つ。

深海棲艦は人間達を海上から完全に駆逐してしまったという事。

 

そして大淀さん達艦娘の皆さんは・・

 

「深海棲艦に対抗出来る存在なの。」

 

「ただ何故私達がそうなのか?どしてかつての軍艦なのかは・・ハッキリした事は分からないの。」

 

大淀さんは先ほどの明石さんの様に複雑な表情で話し終えました。

 

「・・事情は何とか飲み込めました。まだ分からない事は多そうですが。」

 

「何か質問はありますか?」

 

大淀さんの言葉に、私は胸中に沸いた疑問をぶつけてみます。

 

「では何故、皆さんとは違う筈の私が艦娘に?」

 

大淀さんは私の質問に暫く沈黙すると、

 

「残念ながらそれは私にも分かりません。・・実は他の鎮守府でもそんな実例があると言われています。」

 

「ふーん、その話本当だったんだ。」

 

 私の横に座っていた明石さんが腕を組みながら聞いてきます。

 

「あくまでそういう実例があるって話、重要機密らしくて詳細は不明だけどね。」

 

大淀さんは苦笑いを浮かべながら答えます。

 

「さて、今度は貴女の番ね。」

 

 苦笑いを消して『大淀』さんは私を見ます。

 

「はい。」

 

そして自分の事を話始めます。

 

ましゅう型呼ばれる補給艦である事。

 

海上自衛隊と呼ばれる組織に所属していた艦である事。

 

どうしてここに来たかは自分でも分からない事。

 

途中明石さんに補足して頂けたので何とか説明出来た様です。

 

「なるほどね・・まあ、こちらもまだ分からない事は多そうですが。」

 

先ほどの私の言葉を真似て大淀さんは苦笑いします。

 

ピーピー

 

そんな時、部屋の隅にあった機械からそんな音がしました。

 

「あ、通信ですね。」

 

皆にお茶を出して以降、話なさなかった吹雪さんが立ち上がってそちらに向かいます。

 

やがて何か紙をもって戻って来た様です。

 

「大淀さん、作戦本部からです。」

 

「あら、思った以上に早かったわね。」

 

紙を受け取った大淀さんは関心した様に言いました。

 

「そうですね・・何時もはこっちが忘れた頃にきますから。」

 

吹雪さんが苦笑いを浮かべながら言います。

 

「えってそれは・・まさか?」

 

「ええ、貴女に関する作戦本部からの通達でしょう。」

 

大淀さんは何でも無い様に答えますけど。

 

「あの・・何時の間に私の事を?」

 

確かに数分くらいは中座されていた様でしたが。

 

「大淀さんなら会議しながら片手間にそういう事をやるくらい朝飯前だよ。」

 

明石さんが笑いながら、こちらも何でも無い様に言われます。

 

「・・・・・・・・」

 

紙を見ながら大淀さんは眉間の皺を先ほどより更に深めます。

 

「あの・・どうなんでしょうか。」

 

「結論から言うと・・・」

 

大淀さんの言葉に私は緊張を隠せない。

 

だってそれは、自分の処遇なのだから。

 

「鎮守府で責任を持って対応せよとの事です。あと、報告は忘れるなと。」

 

「ふう・・・・」

 

それを聞いて吹雪さんが深いため息を付く。

 

「様は自分達で何とかしろと言うわけだ、そして何かあれば責任を取れと・・」

 

明石さんが首を左右に振りながら唸る。

 

「まったく作戦本部らしい結論ですね。」

 

大淀さんそう言って紙をテーブルに置くと明石さんの方を見ます。

 

「明石さん・・ほきゅうかんの能力というのは、さっき貴女が話した通りだとすると・・」

 

「・・ああそうなるね。大淀さんの思っている通りだと思うよ。」

 

「・・・・?」

 

「・・・・・」

 

大淀さんと明石さんの話に、私も吹雪さんも分けが分からず顔を見合わせてしまいます。

 

「これも何かの作為からしね・・いえ、そう言ってしまったら現状全てがそうなるわ ね。」

 

何とも言えない表情で大淀さんは呟きます。

 

「・・・・・・」

 

私はそれに対し何と答えればいいのでしょう。

 

やがてすっくと立ち上がった大淀さんは姿勢を正して私を見つめます。

 

その視線に私も思わず立ち上がってしまいます。

 

「ましゅうさん、貴女は本日付で、本鎮守府の部隊支援艦隊に配属になりました。」

 

「あの・・・ぶたいしえんかんたいですか?」

 

しかし私の問いに答えないまま大淀さんは続けます。

 

「正式な配属日は追って連絡します。」

 

「なお、配属日に他の艦娘の皆さんをご紹介します。」

 

一旦目を瞑り、言葉を切った大淀さん。

 

「それまでは本鎮守府内の寮で待機です。その間の世話は吹雪さんにお願いします。」

 

「は、はい?私ですか?」

 

呼ばれると思っていなったからか、吹雪さんが驚いて私同様立ち上がってしまう。

 

「それからこの件はましゅうさんが正式に配属されるまで、ここいる者達だけの話とします。他言無用ですのでお願いします。」

 

大淀さんはそう言って皆さんの顔を見渡します。

 

「それでは本日はこれまでとします。」

 

「吹雪さん彼女を寮へ案内してあげて下さい。寮長の鳳翔さんには私から伝えて置きますので。」

 

「はい、分かりました。ましゅうさんこちらへ。」

 

吹雪さん促され私は立ち上がりました。

 

そんな私に大淀さんは頷くと、

 

「それでは後ほど。明石さんはちょっと残って下さい。」

 

そう言って私を送り出してくれました。

 

あ、そういえば提督さん最後まで何も言いませんでしたけど良かったのでしょうか。

 

「しくしく・・誰も相手にしてくれない。」

 

お座りになった席からそんな声がします。

 

「まあ、これじゃしかたありませんね。皆さんに比べたらあの提督さんでは・・」

 

なんて本人の前では言えませんね。

 

「うーお!初対面の艦娘に言われてしまった!!!」

 

あれ?これってさっきもあった様な・・

 

皆さんを見ると、一様に苦笑いしています。

 

「なあ、やっぱり天然でしょ?」

 

「そう・・みたいね。」

 

「ははは・・」

 

「す・・すみませんでした!!」

 

私はそう言うと多分真っ赤に染まっただろう顔を隠しつつ部屋から逃げ出したのです。

 

「ちょ・・ちょと待って下さい!!」

 

後から慌てて追い掛けてくる吹雪さんの声を聞きながら。

 

 

 

ましゅうが退室後の執務室。

*ここから先はましゅうが聞くことの出来なかった大淀と明石との会話になります。

 

ちなみに提督も吹雪達が出て行った後に要請されて来た香取と夕張に宿舎に強制連行されて行った。

 

「提督、あら...ほほう...?なるほど。これは少し、厳しい躾が必要みたいですね。」

 

連れて行かれながら提督が悲鳴を上げていたが、一緒に連行中の夕張もそして執務室に残った大淀と明石も無視した(笑)。

 

「で・・何を聞きたいのかな?」

 

「・・ましゅうさんだけど、貴女はどう思っているのかと思ってね。」

 

執務室で向かい合った二人はそんな会話をしていた。

 

「普通の艦娘とだいぶ違うと思う、ただそれより気になる事がね・・」

 

「何かしら?」

 

明石は少し考えをまとめようと口を暫く閉ざし、そして続ける。

 

「彼女さ・・最初に私に言ったんだ。」

 

明石は大淀の顔を見つめながらいった。

 

「『私ってましゅうなんでしょうか?』ってね。」

 

「・・・それって。」

 

頭を掻きながら明石は続ける。

 

「目覚めた艦娘はその状況に戸惑うことはあっても、自分が何かは把握しているものでしょう。」

 

「・・・・・」

 

「つまりそういう事。」

 

明石が話し終わっても大淀は答えず、何かを一心不乱に考えていた。

 

 

 




言い訳という名の後書き

ちょっと長くなりましたが、ここで一応区切りとなります。

なお、最後の方でちょっとシリアスぽっくなりましたが、多分長続きしないでしょう(書いている人間が人間だけに)

この後の展開ですが、ましゅうは部隊支援艦隊の一員として様々な出来事に巻き込まれていきます。

その過程で何故ましゅうが艦娘になったのかを書ければと思っています。

この作品だけの設定第二弾を乗せ置きます。
興味のある方はどうぞ。

2.作戦本部

四ヵ所の鎮守府を直接指揮下に置く。言わば最高意思決定機関。ただし、話の中にあった通り、鎮守府の独立性という建前により、ほとんどの決定事項を提督に丸投げしている。
部隊支援艦隊の様に艦娘達が仕切ってるところもあるが、一切関知しようとしない。

まあ、この手の組織にありがちな官僚主義の極致と思ってもらっていいです。

なお、これも作者の妄想であり、あまり深く追求しないで頂くとありがたいです。
(作者は設定マニアなもので)

次回の話は来週中に再開したいと思います。

ここまでお付き合いありがとうございました。

*6/19 文章の表記にご指摘にがあったので修正しました。


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