ここまでお付き合いありがとうございました。
演習終了後・E-117岩礁
演習が全て終わり、私達はそれぞれの鎮守府に帰還する準備をしていました。
やがて出発と言う時に響さんが私の元に来てくれました。後ろに三人の姉妹さん達。
演習第一日の時の様な壁はもう存在していません。和解出来た様で私はほっとしました。
「ましゅうさん、今回は本当にありがとう。」
響さんの表情にはもう影もありません、彼女はもう大丈夫でしょう。
「私は礼を言われるほどの事はしていませんよ、全て響さん達の絆があったからだと思いますよ。」
多分それが無ければ私が例え何かしたとしても解決したかどうか。
「そんな事は無いさ。ましゅうさんが気付かせてくれなかったら、私は自分から大切なものを失ってしまうところだった。」
そう言って響さんは後ろの三人、暁さんと雷さん、電さんを見ます。
「たっく貴女は手が掛かるんだから。」
視線を受けて暁さんはそっぽを向きます、照れ隠しなのは赤くなった顔を見ればわかります。
「まったく素直じゃなんだから。」
雷さんがそんな暁さんを見て苦笑いをしながら言います。
「でもよかったなのです!」
電さんはそんな姉妹達を見て嬉しそうですね。
「そういう事だよましゅうさん。だから感謝を受け取ってほしいな。」
純粋な感謝の笑みを浮かべて響さんは言ってくるので、私も素直に受けることにします。
「分かりました響さん、皆さんの助けになれて光栄です。」
第六駆逐隊の方々は頷きつつ笑ってくれます、まあ暁さんは顔を赤くしつつそっぽを向いてでしたけど。
「私達も感謝させて下さいましゅうさん、そしてお詫びも。」
そう言って私達のところに妙高さん達も来てくれました。
「本来なら私がすべき事だったのに、貴女に押し付けてしまいましたから。」
妙高さんはすまなそうな顔をして私に頭を下げます。
「えっと、それはお気になさらずに。」
私は苦笑いしつつ妙高さんに頭を上げてくれる様に言います。
考えてみれば妙高さんだって響さんとは境遇が似ているらしいですし、
そう簡単に解決なんて出来なかったと思います。
「でも中々良かったぞ貴様の言葉、正直言って感服したぞ。」
那智さんがそう言って私の肩を叩いてきます。
「そうね『それを貴女から断ってしまったら』か・・・何だか私達にも言われている様な気がしちゃったわ。」
腕を組みつつ足柄さんが頷いています。
「ましゅうさんの言葉とても感動しました。」
感激に打ち震えいるのでしょうか潤んだ目を向けてくる羽黒さん。
「そうですね・・・私も心に是非留めて置きたい言葉です。」
胸に手を当て妙高さんも頷き、私に尊敬の目を向けてきます。
「いや・・・もう言わないで下さい皆さん。」
私は恥ずかしさのあまり俯いてしまいます、我ながら恥ずかしい事を言ってしまったものです。
「ふふふ・・・ましゅうさんらしいですね、私そういうところ好きですよ。」
吹雪さんがそう言うと皆さん笑って私を見てきます、ううう恥ずかしさが倍増した気がします。
「おっと実はましゅうさんに聞きたい事があったんだ。」
そう言って響さんは私を手招きします、何なんでしょうか、困惑しつつ彼女の元に行きます。
傍に私が来ると響さんは屈んでくれる様に頼んできました。
そして屈みこむと響さんは私の頬を両手で覆って視線を合わせます。
「君の言っていた『もう二度と結べない絆』、それって何のか聞かせてもらえるかな。」
どうしたものでしょうか、それは妹かもしれないあの娘の事。でも私はあの娘の事を未だによく思い出せません。正直いって話して良いものかと悩むところなのですが。
そんな私の躊躇を感じ取ったのか響さんは笑って言います。
「いや話せないのなら今はいいよ。」
どうやら私の気持ちを汲んでくれた様でほっとしました・・・今は?
私がそう疑問に思ったことを気付いたのか響さんは言葉を続けます。
「そう今はだよ、何時かは話してほしい。そして今回私を助けてくれた君の様に、こんどはましゅうさんを私が助けたいんだ。」
響さんはそう言って私の唇にキスを・・・え!!キス!!
「ななな・・・何をしてるんですか!?」
吹雪さん何でそんな怖い顔で私を睨むんですか。
「ほうなかなかやるな響、たいしたものだ。」
「へ・・・響ちゃん、ましゅうさんに惚れたのね。」
「わーわー恥ずかしいです、でも羨ましいかも。」
「あらあらこれは・・・競争率高いかもしれませんね。」
那智さん何を感心しているんですか?
『惚れた』ってどうゆう意味なんですか足柄さん?
羽黒さん恥ずかしいと言いつつじっと見ないで下さい。
それから『競争率』って何の競争率なんですか妙高さん?
「うーんこれはレディーとしては参考にすべきかしら?」
「おっと大胆よね響も。」
「はわわわ、びっくりしたのです!」
何を参考にする気ですか暁さん。
あと感心されても困るんですが雷さん。
私より慌てすぎです電さん。
恥ずかしさと疑問に混乱状態だった私は急に腕を引っ張られます。
「吹雪さん!?」
「帰りますよましゅうさん。」
有無を言わせず私を響さんから引き離す吹雪さん・・・目が怖いんですけど。
一方響さんはそんな事を気にした様子も無く、笑みを浮かべて言いました。
「ではましゅうさんまた会おう、楽しみだね。」
こうして私の演習支援の任務は終わったのです、幾つかの火種を作った様な気がするのは気のせいでしょうか?
いえそれは間違いなさそうです、だって・・・
吹雪さんは結局鎮守府までの帰り道一言も口を聞いてくれませんでした。
鎮守府に着いたら着いたで話を聞つけて、大鯨さんが吹雪さんと似たような顔をして私の部屋に押し掛けて来る始末です。
そして後から来た吹雪さんと一緒になって責め立てられて、朝まで弁明させられる羽目に陥ったのです。
ですがこれから起こる事に比べればまだましだったのかもしれません。
つくづく思います。
最大の火種は実は響さんの最後の言葉にあったのに、そうなる前までに何故気付けなかったのだろうと。
「ではましゅうさん『また会おう』、楽しみだね。」
言い訳という名の後書き
いや今回はまた長くなってしまいました。
・・・疲れました。本当に・・・
今回のテーマ、「生き残ってしまった=幸運艦」と言えるのか?
ですが前から書いてみたかったものです。
皆様どうお考えでしょうか。
次回は姉妹について書いてみたいと思っています。
それでは。