黒十字と雷の妖精   作:ジェネクス

7 / 21
救援

「ヒレン様がやられた!」「クソッ、やっちまえ!」

 

山賊達がパメラに向かって一斉に向かってくる。パメラは慌てずに聖剣で中空に魔法陣を描く。

 

「炎よ!」

 

魔法陣の中から炎が生まれ、向かってきた山賊達をまとめて焼き払う。

 

「もうあなた達雑魚が何人来ようとも敵じゃない…全員まとめて相手してあげるわ!」

 

パメラが剣を振るとその周囲に無数の剣が現れる。

 

「舞え、(シュベート)!」

 

その言葉と共に魔力の剣は縦横無尽に飛び回り、山賊達を次々に貫いていく。剣が空間から消える頃には、動いている山賊は一人もいなくなっていた。

 

「後は村に侵入した山賊達…これ以上の狼藉は許さないわよ!」

 

そう言ってパメラは村の中に駆け出して行った。

 

 

 

ミストラルは異変に気づいていた。これまでとは異色の叫びが響いたかと思えば、村に突入する部下がバッタリと居なくなってしまったからだ。

 

(いったい何が起こってやがる…?)

 

ミストラルはそれを疑問に思っていたが程なくして理由が判明する。宙を舞う魔力の剣に自身の部下たちが次々と打ち倒されているからだ。

 

「なっ、なんだこいつぁ!いったいどこから…!」

 

「私よ」

 

言葉と共にパメラが姿を現す。既に周囲の山賊達はパメラに討ち果たされた後だった。

 

「あなたが敵の指揮官よね。これまでこの村に行ってきた狼藉、許すわけにはいかない。このパメラ・アーヴィヒがここで成敗してあげるわ!」

 

「てめぇ、さっきまで兄貴にいたぶられていた女…一体どうやってここまで来た!」

 

「ふん、もうあんな醜態は晒さないわ。私は自分を取り戻したもの。山賊風情がどうにかできると思わない事ね」

 

「なんだと…!俺を他の連中と一緒にするな!こいつでてめぇを切り刻んでやる!」

 

ミストラルの周囲に多数の木の葉が集まる、かと思えばそれらは嵐となってパメラに襲い掛かった。

 

「リーフストーム!こいつでミンチにしてやるぜ!」

 

「子供だましね…全部焼き尽くしてあげるわ!」

 

パメラは魔法陣から炎を生み出す。その炎が襲い来る木の葉を全て焼き払い、そのままミストラルに向かって行く。

 

「させるかよぉ!」

 

ミストラルの周囲に無数の巨大な樹の根が現れて炎を防ぐ。さすがに質量が大きすぎて燃やしきれない。

 

「へぇ、結構でかい植物も操れるのね。感心感心」

 

パメラが小馬鹿にした様子で地面に着地すると同時に

 

「もらったぁ!」

 

地面から巨大なハエトリグサが現れパメラを咥えこむ。ミストラルが勝ち誇った声を上げる。

 

「ハハッ!人を舐め腐りやがって!そいつの中で少しづつ溶けていくんだなぁ!」

 

ミストラルが悠々とそこに近づいていく。だが次の瞬間にはミストラルの体がズタズタに切り刻まれていた。

 

「私が脱出していたことに気付かないなんてね…生憎だったわね、私はあなたなんかよりもはるかに強力な植物使いを知ってるのよ」

 

倒れ伏すミストラルの背後にパメラが現れる。とそこに先ほどパメラに腕を落とされたヒレンが現れた。

 

「見つけたぞ…!よくもやってくれたなこのクソアマがぁ!」

 

先ほどまでの口調から一転して粗暴な口調となっており、傍目にも怒り心頭という様子が見て取れる。

 

「貴様はこの手でぶっ殺してやる!ミッシングソード…合成(ケミストリ)!」

 

「こいつは俺のルーンセイバーの特性全てを兼ね備えた最終形態!そんなナマクラ一撃で砕いてやらぁ!」

 

自信満々にそう宣言するヒレン。それを受けてパメラも聖剣を構える。

 

「死にさらせええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

両者の剣が交錯する。だが、断ち切られたのはヒレンの剣だった。

 

「がはっ…そんな馬鹿な…」

 

「ふん、邪剣に後れを取るほどこのヴァイスジルバーは生易しくないのよ」

 

血を吐きながらその場に倒れるヒレン。その様子を見ていた山賊達が一斉に逃げ出していく。

 

「ふぅ…これでこの村は大丈夫…かな?」

 

村の危機を救ったことで一息つくパメラ。だがこれで終わるつもりもなかった。

 

(ラクサスの帰りが遅い…ひょっとしたら苦戦しているのかも…加勢に行かなきゃ!)

 

パメラはそのまま白蛇の牙(サーペントファング)のアジトへと向かって行った。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「レイジングボルト!」

 

ラクサスが巨大な雷をジオウに向かって放つ。

 

「無駄だ…ウォータースライサー…」

 

それを受けてジオウも巨大な水の刃を放つ。水の刃は雷を容易く打ち消してラクサスへと向かって行く。

 

「ちぃっ!」

 

そいつを紙一重でかわすラクサス。そこに巨大な岩の腕が迫ってくる。

 

「ジャイアント・ハンド!潰れろぉ!」

 

ガルヴァの声と共に岩の腕が殴りかかる。ラクサスはそいつを真っ向から受け止め砕く。

 

「動きが止まってるぜぇ…ニードル…」

 

そこにジオウが放った水の針が襲い、ラクサスの体を貫いた。

 

「ぐはぁっ!」

 

全身に水の針を受けたラクサスはたまらずに距離を取る。

 

「ハッ…ハッ…ハッ…!」

 

これまでの激戦でラクサスは既に満身創痍、対してジオウ達は未だにほぼ無傷。このまま続けば勝敗は誰の目にも明らかだ。

 

「見たか雷野郎が!ジオウの兄貴に勝てる奴なんざこの世にはいねぇんだよ!」

 

ガルヴァが勝ち誇った声を上げる。それに対しラクサスもまだ余裕を取り繕って答えた。

 

「へっ…生憎だがその常識は今日で崩れ去る…そいつはこの俺がぶっ潰してやるからな…!」

 

「そういう強がりは嫌いじゃない…が、今の状況では滑稽なだけだぞ…」

 

ジオウが嘲りを込めた声でそう言った。ラクサスも敢えて笑みを浮かべて応える。

 

(…とはいえ、このまま続けば正直勝ちの目は薄い…チッ、せめて相手が一人に絞れれば…!)

 

自身の全力の雷を放てばジオウの防御を貫けるかもしれない。しかしガルヴァが絶妙なタイミングで妨害してくるために中々それが適わない。何とか相手を分断する術を考えるラクサスに、赤髪の救世主が現れた。

 

「ラクサス!まだ生きてる!?」

 

「…パメラ!?お前、どうしてここに!?」

 

やってきたパメラに対し驚きの声で迎えるラクサス。パメラはラクサスがこれまで見たことのない、誇りと自信に満ち溢れた顔で答えた。

 

「村を襲ってきた山賊共は全員撃退したわ。もう村の心配はいらないわ。…それに、私もね」

 

そう言ってラクサスに微笑みかける。これまでと違う凛とした佇まいに思わず見惚れそうになる。

 

(…そうか…立ち直ったんだな、パメラ)

 

パメラがすっかり立ち直ったことを知ったラクサスも笑みを浮かべる。その笑みはかつての力に溺れた彼は決してしないような優しげな笑みだった。

 

「馬鹿な…!ヒレンとミストラルの兄貴が負けたってのか!」

 

「…まさか、あの二人が遅れをとるとは…俺の策が甘かったってのか…!」

 

ジオウ達が驚きの声を上げる。パメラは若干の怒りを込めた声で言い放った。

 

「あなたの弟には随分と痛い目に逢わされたからね…あなたにもけじめは取ってもらうわよ!」

 

そんなパメラにラクサスは声をかける。

 

「待てパメラ、悪いがあの長男は俺に譲ってくれ。お前は弟の方の相手を頼む」

 

「えぇ、何でよ?私の実力が信じられないの?」

 

「いや、こいつは俺の問題だ。奴に良いようにやられたままじゃ俺のプライドにかかわるんでな。…駄目か?」

 

パメラとラクサスは一瞬睨み合った後

 

「…ふぅ、わかったわ。ここは譲ってあげる。その代り、絶対に負けるんじゃないわよ!」

 

「あぁ、任せろ!」

 

二人はそれぞれの相手に向かって行くのだった。




ホントは一気に決着まで書く予定だったんだけどなぁ…どうしてこうなった

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。