黒十字と雷の妖精   作:ジェネクス

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キャラを一人追加するといったな、あれは嘘だ。


“香り”の男

「そういやまだ俺たちの自己紹介をしてなかったな。俺はラクサス・ドレアーだ」

 

リリィを探しに行くと決まったところで、ラクサス達も改めて自己紹介をする運びとなった。もっともパメラはまだ不貞腐れているのか、なかなか自己紹介をしようとしなかったのだが

 

「ほれ、パメラ」

 

と、ラクサスに促され、渋々といった感じで自己紹介を始めた。

 

「…元正ヴァレンティヌ教会教皇軍黒十字所属、パメラ・アーヴィヒよ」

 

「…あぁ、だからエルカーエスをあんなにも目の敵にしてたんだね。パメラさん、黒十字のメンバーだったんだ」

 

パメラの元々の所属を聞いて納得したように声を上げるティア。パメラはもう語ることなどないとでも言うように顔を逸らした。

 

「…まったくこいつは…すまんなティア。俺の連れが無礼な真似してな」

 

「あはは、そんなこと気にしてないよ。パメラさんの立場からすれば、エルカーエスを嫌うのもわからなくはないしね」

 

屈託のない笑顔でそう話すティア。そんなティアに対してラクサスはそう言えば、と思った疑問をぶつけてみた。

 

「そういやティアよ、さっきの俺たちとの戦闘でお前さん、俺たちの魔法を使ってたよな?ありゃ一体どういう事だ?」

 

「あー…あはは、やっぱり気づいちゃった?どさくさに紛れて流れてくれないかなー、なんて思ってたんだけど…」

 

ティアが困ったように頭を掻いて答える。それからしばらく無言だったが、やがて観念したのか少しずつ語り始めた。

 

「…ちょっとね、私って普通のマギとは違うんだ。私には“他人の魔力を奪って、自分のものにする力”っていうのが備わってるの」

 

「他人の魔力を…?」

 

「うん、さっきのパメラさんの魔法“ヴァイスジルバー”も、ラクサスさんの使った滅竜魔法も、戦闘の最中に私が奪った物なの。それだけじゃない。さっきの戦闘で私は色んな魔法を使ってたけど、それも全部本当は他の人の魔法なんだ」

 

ティアは自分の手のひらを見つめながら続けた。

 

「私の本当の魔法は、周囲のマナを集めて弾丸を形成する魔法“ゼーレゲヴェーア”だけ。それ以外の魔法は全部借り物なの。…返せないんだけどね」

 

そう言ってティアは自嘲気味に笑った。

 

「なんだってお前さんにそんな力が…」

 

「ごめん、そのことはあんまり話したくないんだ…この力は使い方を誤ると、相手の魔力を根こそぎ奪いつくして殺してしまいかねない。それくらい危険な力だから、普段は意識して使わないようにしてたんだけど…」

 

「…そうか。聞いちゃまずいことだったか…?」

 

「ううん、大丈夫。誰だって自分の魔法を相手が使ってきたら疑問に思うだろうしね。そもそも私がついしでかしちゃったことだし、悪いのは私だけだよ」

 

そう言って力無く笑うティア。そんなティアの笑顔を見てラクサスはついティアの頭に手を置いてしまう。

 

「ひゃうっ!?いきなり何を…!?」

 

「あぁ、悪りぃ。撫でやすそうな位置に頭があったもんだからつい、な」

 

「…いえ、ちょっと驚いただけだから別に……えへへ、なんかラクサスさんって、『お兄さん』って感じがするね。私は今までそういう人がいなかったからなんか新鮮な感じ…」

 

ティアはそう言って顔を綻ばせる。ラクサスは少しバツが悪そうに頭を掻くのだった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

(…ふん、何よ、二人でいちゃついちゃって…バカみたい…)

 

そんなラクサスとティアの様子を見ていたパメラは、内心でかなり面白くないと感じていた。

 

(ラクサスもラクサスよ…エルカーエスの連中と仲良くするなんて…確かにローゼンベルクは感じも良いし可愛いのかもしれないけど…なんか、気に入らない…)

 

(そりゃあラクサスはただの旅の連れで、誰と仲良くしようが私には全然何の関係も無いわけだけど…それでも、気に入らないものは気に入らない)

 

パメラは自分でもわからない苛立ちに突き動かされ、自然と歩き方が乱暴になってしまう。その不満顔もなかなか消えずにパメラの顔に張り付いている。

 

 

 

「う~ん、これは実に高貴なる香り(パルファム)…素晴らしい…」

 

 

 

いつの間にかパメラの周りに喩えようもない変態(パメラ視点)が張り付き、彼女の周りで執拗にクンクンと鼻を鳴らしていた。

 

 

「ヒィッ…!」

 

 

パメラの全身が総毛立つ。今まで感じたことのない悪寒と恐怖が身を包む。そして

 

 

「いやああああああああああああああああケダモノオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

生涯上げることのないだろう大きな絶叫を上げながら、その変態に対して全身全霊の力を込めて蹴りを放つ。その変態は「メェ~ン!」という鳴き声?を上げながら遥か彼方へ吹っ飛ばされていった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「いや面目ない。あまりにも素晴らしき香り(パルファム)を前につい取り乱してしまった」

 

すぐに戻ってきた男がパメラに対して詫びを入れる。その渋い声とは裏腹に異様に濃い面と二頭身かとも思えるような極端な体型が実にアンバランスである。

 

「何やってんだあんたは…」

 

頭を抱えるラクサス。ラクサスはこの男の顔に見覚えがあった。魔導士ギルド“青い天馬(ブルーペガサス)”最強にして天馬一の色物魔導士―――

 

「一夜=ヴァンダレイ=寿と申します。以後お見知りおきを」

 

恭しく頭を下げる一夜。妙にキマっているのが逆に滑稽でもある。

 

「…ラ、ラクサス…知り合いなの?その変態と…」

 

ラクサスの陰に隠れながらそう尋ねるパメラ。先ほどのがよほどショックだったのかビクビクと震えている。

 

「知り合いってわけじゃねぇが顔と名前は知ってる。フィオーレじゃ結構な有名人だからな。…色んな意味で」

 

「ラクサス殿に認知していただけるとは光栄ですな」

 

周りに星を飛ばしながら一夜が答える。噂以上に面倒くさそうな奴だ、などと思いながらラクサスが尋ねた。

 

「で、あんたはこんな山奥で何してんだ?観光で来るにしては辺鄙な場所だが」

 

「ふむ、それは私の方も聞きたいところですが…私はアカデミーからの依頼を受けてこの辺りを調査しているのですよ」

 

「アカデミーから?一体なんでそんなところから…」

 

ラクサスの疑問に、一夜は少し考えながらも答える。

 

「……これは他言無用で願いたいのですが、アカデミーにはかつてギド・メルクリアという男が在籍していましてな。極めて優秀な魔導士でしたが、同時にかなりの危険思想の持ち主であったそうで、6年前に禁忌指定されていた合成獣(キメラ)研究を行った罪でアカデミーを追放されたのです」

 

「…そいつはまた穏やかじゃねぇな…」

 

「ところがそのギドが最近になってこの辺りで目撃されたそうなのです。それもどうやらかなり大規模な徒党を組んでいるらしく、もしかしたらまた合成獣(キメラ)研究を再開したのではないかとアカデミーで危惧されており、そのための調査依頼を私が受けたという訳です」

 

「!ねぇラクサス、それってもしかして…!」

 

「あぁ、俺たちの調査対象と同じ奴かも知れねぇ…っておい、どうしたんだティア?」

 

ティアの様子がおかしいことに気付いたラクサスが声をかける。ティアは怖れと焦りに震えた声で答えた。

 

合成獣(キメラ)研究なんて…まずいよ!もしそんな人たちにリリィが見つかったら…!」

 

ティアのその言葉にラクサスも思い当たる。確かにそんな連中にとって、ただでさえ非常に希少な妖精という存在は格好の研究材料に映るだろう。

 

「すぐにリリィを見つけないと!その人たちに見つかっちゃったらいったい何をされるか…!」

 

「落ち着けティア。連中にとっちゃ妖精ってのはとんでもなく希少に映るはずだ。だったら即座に合成獣(キメラ)に合成されるなんて可能性は低い。逸る気持ちはわかるが落ち着いて…」

 

「でも…ひょっとしたら…!」

 

今にも飛び出していきそうなほど焦っているティアを何とか落ち着かせようとするラクサス。そこに

 

「見苦しいわよローゼンベルク!」

 

パメラの一喝が飛んだ。ティアもラクサスもびっくりしてパメラの方を見る。

 

「あなたが焦って闇雲に探したところでその妖精が見つかるわけじゃないでしょう!?それよりも気を落ち着かせて最善の手を模索しなさい!とにかく今考えられうる“最悪”は、その妖精がすでにギドってやつに捕まってる可能性…だったらそれをまず念頭に置いて、連中のアジトに赴いてその妖精を助け出すのよ!もしそこに妖精が居なくても、その時は改めて探し直せばいいだけ…違う!?」

 

ティアはしばらく驚いた様子でパメラを見ていたが、やがて少し落ち着いたかのようにしてパメラに答えた。

 

「…うん、そうだよね。ごめんね」

 

「…ふん」

 

そう言ってパメラは再びそっぽを向く。そこに今まで傍観していた一夜が口をはさんだ。

 

「ふむ、いまいち状況が良く掴めませんが…そもそもそちらのお嬢さん方はいったいどちら様で?」

 

ラクサスはその問いに対して答えるべきかどうか一瞬悩んだが、話しにくい依頼内容を話してくれた一夜に対して礼を尽くすべきだと判断した。

 

「……こっちの話も他言しないでもらえると助かるが、こいつらは神聖バルディア帝国の人間でな、ちょいと個人的な事情でこの国に入ってきてたんだよ」

 

「その事情というのを聞かせていただいても?」

 

「あー…こっちの赤髪…パメラの方は国を追われてきた立場の人間で、金髪…スピリティアの方はこの国に迷い人を探しに来てたんだよ」

 

「先ほど話の中に妖精という単語が出てきましたが、もしかすると探し人はその妖精なのですかな?」

 

「…さすがに鋭いな。パメラたちの国の事もそうだが、その事も他言無用で頼む」

 

「よろしいでしょう。お互いに今聞いた話は他言しない、ということでよろしいですな?」

 

一夜の言葉にラクサスも頷く。そこで一夜は大げさにポーズをとってこう言った。

 

「それでは皆様方。我々はどうやら目的が皆同じのようですし、ここはお互いに協力してはいかがでしょうか」

 

「あぁ、こっちはそれで構わん。パメラもティアも良いな?」

 

そう言って二人の方を見る。二人とも異存はないようだった。

 

「じゃあ共同戦線と行こうか。あんたの方は連中のアジトの場所は掴めてるのか?」

 

「えぇ、これまでの調査でおおよその位置は掴めております。急ぎましょう」

 

こうして4人は一夜の示す場所へと向かった。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

マシューの村北東部に位置する洞窟。ギドはその洞窟を天然の研究施設へと作り変えていた。

 

「だせー!このバカ―!」

 

そんな研究施設の一室にリリィが鳥籠に入れられて囚われていた。すぐ近くには白衣の男――ギドともう一人、小さな丸メガネをかけた長髪の女性がいた。

 

「こらー!聞こえてるのそこのえせインテリ―!とっとと私を開放しなさーい!」

 

尚もわめき続けるリリィに対し、ギドは一睨みして答える。

 

「やかましいですねぇ…少し大人しくして頂かないと、こっちはあなたを解剖する準備は既に出来ているんですよ…?」

 

そんなギドの言葉にリリィはビクッ!と震えながら縮こまる。そんな様子を見てギドは愉快そうに笑った。

 

「フフフ、冗談ですよ…ただでさえ貴重な研究資源をそんな簡単に浪費できるわけないでしょう?」

 

笑いながら非道な事を言うギド。と、そこにメガネの女性が口をはさんだ。

 

「でもこの子を捕まえてきたのはちょ~っと不味いわねぇ?」

 

「シェラハさん、何か問題でも?」

 

シェラハと呼ばれた女性はやや大仰に、そして少し愉しげに答えた。

 

「いや~さっき思い出したんだけど、そこの妖精って私の知り合いの友達だったのよねぇ~。で、その知り合いがもう目ん玉飛び出るくらい強いのよ。そのうちこの子を助けにここまで乗り込んでくるかもしれないし、はっきり言ってここの兵隊と研究成果を全部ぶつけても到底勝ち目無いわねぇ」

 

「それは困りました…何か妙案はないでしょうか?」

 

対して困っていない口調でギドが尋ねる。

 

「あるわよぉ~。私がその子の相手をすればいいの」

 

「ほぅ…それはありがたいですが、そのような強敵に勝てますか?」

 

「勝てるわよ。その子は私よりも強いけど、それでも私には勝てない。要はやり方次第ってことよ」

 

自信たっぷりにシェラハが答える。ギドもその答えに満足したようだ。

 

「ではその人の相手はシェラハさんにお任せしましょう。よろしく頼みますよ」

 

「はいはい任せて~♪」

 

そう言ってシェラハは部屋を出る。その顔には戦いを待ちわびる獣の笑みが浮かんでいた。

 

「ふふっ、今度はガチの勝負…どれだけ強くなったか見せてもらうわよティア…♪」




きみはゆくえふめいになっていたシェラハじゃないか

という訳で追加キャラは一人ではなく二人でした。FAIRY TAILから一夜さんと、RKSからシェラハさんです。二人とも好きなキャラなので出来る限り活躍させていきたいですね。

ところで既存キャラにオリジナル魔法を使わせるのってありですかね?もう既に雷の戦陣結界とか少し出てきてますけど、原作のみの技だと特に一夜さんが力の香り(パルファム)で強化してぶん殴る、くらいしか攻撃方法がないですし…何かしら意見を頂けると幸いです。
それではまた次回

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