とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ)   作:マッスーHERO

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今回短めです。
今度のウルトラマン映画、10人ぞろいでコロナもでるなんてめちゃくちゃ楽しみですね


学園都市大異変編
先生、生きて…(前編)


「…」

 

崖の上で一人の男が穏やかな海原を眺めていた。その目にはかすかな悲しみが浮かんでいる。沈みゆく夕日が大きな影を作り出して、海を朱く染めているが依然として海は静かなままだった。

 

「…」

 

ゆっくりと男は懐からあるものを取り出した。それは一見すると短剣のようなものに見える。しかし男はそれの鍔にあたる部分に口をつけると、静かに息を吹き込んだ。すると短剣のようなものから美しい笛の音色が海に向って放たれる。まるで荒々しい獣を大人しくさせるような…穏やかな音色は波音だけの静かなこの場所に響く。だが、依然として海は静かなままだった。

 

「…だめか」

 

男は短剣の鍔から口を離して、悲しげにつぶやいた。彼は期待していたのだ…海が割れ、巨大な影が現れるのを…それでも海は静かなままだった。男はふと自分に迫る人間の気配に気づき振り返る。そこには黒い服を着た男性が佇んでいた。

 

「ゴウシ…」

 

「ゲキ、やっぱりドラゴンシーザーは見つからないままだ…」

 

「アスカとダイゴには?」

 

「…アナザーアースにも、黄金の地にも連絡したが…やはりいないらしい」

 

「獣奏剣の音色にも…反応がない」

 

「レジェンド大戦での傷も癒えて、最近では究極大獣神への合体も問題なかった…あいつが簡単にやられるとは思えないし…」

 

「…気になることがある。俺達ジュウレンジャーの力の行方だ」

 

「力の行方?」

 

「アギトや響鬼の先例はあるが、俺達の力はきちんと制御できていた…それがある日突然消えた…」

 

「制御しきれてなかったと結論がついたはずだが…」

 

「いや、俺達は肝心なことを忘れていた…」

 

「肝心な…こと?」

 

ゴウシと呼ばれた男の疑問にゲキと呼ばれた男はすこしの間黙りこんでいたが、やがて口を開いた。

 

「…六人目のジュウレンジャー」

 

「ドラゴン…レンジャー…ブライ!?でもあいつは…」

 

「それこそ、ゴーカイシルバーやレジェンド大戦の先例がある。ありえない話じゃない」

 

「…だが、それが事実なら安心だな。ブライならきっと正しい人間に力を託してくれるはずだ」

 

わずかに笑みを浮かべたゴウシに対してゲキの表情は重いままだった。

 

「…ああ、だけどもしも兄さんがその力を復讐のために使わせようとしたら…」

 

「そんなことないさ…ブライは復讐の心を捨て、愛の心を最後まで持って逝ったはずだ」

 

「それはわかってる…でも、いやだからこそ…その優しさと復讐の気持ちを理解できる心がまた悲劇を産まないか不安なんだ…」

 

ゲキは海に沈む夕日を見つめながら兄の最後の言葉を思い出していた。

 

『地球を守り、子どもたちを守ってくれ…。頼む…!』

 

「兄さん…」

 

獣奏剣を握りしめ、ゲキはそうつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

フューチャーとの激しい戦いから数日後、御坂・黒子・初春・佐天の4人は科学アカデミアの地下格納庫へとやってきていた。

 

「本当に申し訳ありません…」

 

「ははは…いいよ、いいよ。どうってことないさ」

 

初春の謝罪に対して笑顔で対応しているリュウジだが、その目の下にはクマが浮かびどことなく元気がない。それもそのはず、先日の初春の無茶によって破壊された巨大ロボたちの修繕で連日職員たちは徹夜続きなのだ。リュウジもその例に漏れず、自身の担当しているバスターマシン以外のマシンの整備にも駆り出され、バスターマシン完成が遅れていると先ほどもぼやいていた。

 

「デカバイク変形機構の修理急げ!」

 

「ボイジャーのパルサー!換え早く持ってこい!」

 

「たくよお、どうしてイカロスとボーイはこう壊れやすいかね!?」

 

「豪獣神修復率93%!もう少しだ頑張れ!」

 

周囲からもそんな叫び声が響き渡る中をリュウジと御坂たちはどんどん奥へと進んでいき、あるドッグの前へとたどり着いた。

 

「それで私達に見せたいものってなんですか?」

 

御坂の問いかけにリュウジは笑みを浮かべると操作盤を操作する。するとドッグの防護壁がゆっくりと開き始め、中から巨大なマシンがその姿を現した。

 

「おお!!すごい!」

 

佐天が感嘆するのも無理は無い。光を反射して輝く銀色のボディ、2基の大型主砲に背面に大量に設置されたハイパワーの大型ブースター、普通の航空機よりも短い特徴的な翼をもった大型の航空戦闘機がそこにはあったからだ。

 

「機体形式番号UX-01-92-S『スーパーガルーダ』。ダイナによってもたらされた異世界の技術をヒントに製作した巨大ロボ支援・運搬用大型戦闘機さ」

 

「こんな羽の短い機体が飛びますの?」

 

「そこはぼくらの技術力を信じてくれよ。オリジナルのものにマニューバシステムを搭載、ハイパワーメーサービームキャノンSは2発でテトラバスター並みの高威力、自動操縦システムも完備されていて、極めつけはロボとの合体による機動・飛行・攻撃力の強化、どれも最高の仕上がりさ」

 

「ロボとの合体での飛行力は大きいわね。学園都市はどうしても市街地戦が多いからロボの操作に手間取るし」

 

リュウジの説明を聞いて御坂はそういった。確かにこれまでビルのひしめき合う学園都市での巨大ロボ戦闘には少なくない被害も伴っている。それにこのスーパーガルーダがあれば機体を合体形態でそのまま戦闘地に運搬することができるのも大きい。合体を邪魔しようとする怪獣たちとの戦闘でも先手をとれる。そしてなにより…

 

「何よりも名前がいいわ。スーパー!やっぱりスーパーってつくのは強いから」

 

「でた、御坂さんの根拠の無いスーパーへの過信」

 

一人盛り上がる御坂を佐天は冷ややかな目で見る。御坂も周りの冷えた空気を感じて、咳払いをすると冷静になって黙りこむ。

 

「今は大型ロボは出撃はできないけど、星川さんからスターファイブを貸してもらっているし、このスーパーガルーダももうすぐ発進できる。豪獣神そしてかねてから修理を進めていたデンライナー、そして完成間近のタイムロボ。各マシンの修理もすぐに修理が終わる。だから安心して欲しくてここに読んだんだ」


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