とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ)   作:マッスーHERO

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更新遅れ申し訳ありません
ラストの10連発はある方への謝罪もこめてです。


本当の未来

「う…」

 

「ああ、気が付かれましたのね!お姉さま!」

 

黒子の言葉に意識が少しずつはっきりとしていく御坂。どうやら自分は病院のベットの上で横になっているようだ。周りには黒子だけでなく、佐天、初春、婚后、湾内、泡浮の姿もある。あの戦いでスコーピオンゾディアーツノヴァによって撃ち込まれ、その場に倒れた自分を黒子が助けてくれたのだろう。

 

「さすがあの先生ね…毒にやられっていうのに、体に全然異常がないみたい…」

 

「毒…?いえ、お姉さまは戦いの疲労で倒れただけで毒なんて撃たれてませんの」

 

「…え?」

 

それはおかしい…自分は確かに毒を撃たれたはずだ。確認のために着せられていた手術衣をめくり、被弾した腹を見る御坂。しかしそこには傷など少しもなかった。縫合後や絆創膏なども見当たらない。

 

「(誰かが私を助けた?でも傷もないってことは仮面ライダーやスーパー戦隊の力…でも皆が嘘をついているとは思えない…なぜ?)あ…そういえば!私達の倒した奴らは?」

 

「あ…それは…」

 

今は毒を撃たれたことよりも意識のない間に3人が逃げてしまったかもしれないことを懸念すべきと考えた御坂は黒子に3人のことを尋ねた。しかし、黒子はその質問に対して言葉を濁し、他のメンバーも目を反らしたり口を噤んで黙りこんでいる。そういえばこの場に固法の姿がないことも御坂には不思議だった。後輩思いの固法がこの場にいないということはフューチャーのメンバーの事情聴取でもしているのか…。重くなっていく場の空気のなか初春がゆっくりとその口を開いた。

 

「…御坂さんが倒した3名、魚見樹座、佐曽利夢、藍かおり、白井さんの倒した有馬瞬、そして他5名のフューチャーのメンバー、煙田灰人、藤岡蘭斗、槍具豪、井出外羅そして駿河秋は現在この病院に収監されています。この内駿河秋は状態も安定していますが…他の8名は…」

 

 

それから少し経って、御坂は黒子とともにある個室を訪れた。なかに入るとベットの傍らの椅子に座っていた固法が振り返って2人を見る。無言の2人に対して固法は静かに首を横に振った。御坂はゆっくりとベットに近寄っていく。そこにはアクエリアスゾディアーツに変身していたと思われる藍かおりの姿があった。

 

「…」

 

目は開いているが2人のことは見えていないようだ。いや、それ以前に何に対しても反応がない、まるで世界から切り離されてしまったように…。傍らには砕けたガイアメモリが1本ある。そこに刻まれたイニシャルは『P』…すぐに御坂はある単語を思いついた。

 

「Persistent vegetative state…植物状態…」

 

「…ええ、体外から排出された時にそんな電子音を出してたわ…」

 

「他のメンバーも幼児退行や痴呆状態のメモリを差し込まれていて…能力でもその心を読むことは叶いませんの…」

 

「ひどい…こんなの人のすることじゃないわ!」

 

「伊達先生もそう言っていたわ。これをしたやつはとてつもない悪意をもっていると」

 

ここまで藤岡は狡猾なのか?非道なのか?御坂のなかに底知れぬ怒りが燃え上がっていく。ベッドの藍かおりの表情は最後に何を見たのか、この世のものとは思えない恐怖の表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

すでにあたりが暗闇に沈んでいる中、土御門元春は自身の戦っていた廃工場で何かを探していた。そこに忍び寄る一つの影…

 

「よォ、グラサン野郎。こンなところで何やってンだァ?」

 

「うん?ああ、一方通行か」

 

それは戦い終えた一方通行だった。彼もまた何かを探してここにきたらしい、靴には泥や砂が付着している。しかしそんな彼を一瞥しただけで土御門は再び探しものを再開してしまう。そんな態度に一方通行が面白いと思うはずもなく、彼は舌打ちをすると近くの瓦礫に腰掛けて足を組み、頬杖をついた。

 

「オイ!俺を無視してェ何やってンだァ、オマエ!大体こっちが藤岡と戦ってる時にオマエ何してエやがった!!」

 

「…あの後、忍者みたいな怪人に大量に襲われてな…お前らの救援にはとても行くことができなかったんだ。でも、お前も人のこと言えないだろう」

 

「あァ!?」

 

「お前こんな所まで来て探してるのはおそらく藤岡…トドメが指しきれなかったのか?」

 

「ちっ!違ェよ!トドメは三下が確かにとったァ…だがァ、煙が晴れた時に奴の姿はァ何処にもなかった…そういうオマエは何探してンだァ?」

 

一方通行の問に土御門はしばし黙りこんでいたが、ゆっくりと立ち上がると一方通行の方へと振り返った。その目の眼光は鋭く、戦いが終わった後とは思えないようなものであり、一方通行にもわずかばかりの緊張を与える。

 

「実は…スイッチを探していた」

 

「スイッチ?処分しなかったのかァ?」

 

「回収して処分しようとした矢先に忍者怪人共に襲われてな…それに戦っていた魔術師も姿をけしてやがる…あのダメージじゃ遠くへは行けないはずなんだが…」

 

「たくよォ…あんな目立たねェスイッチ、こんな暗ェところで見つかるわけねェだろ」

 

「いやいや目立つだろ、だって…」

 

土御門が次にいった何気ない一言…しかしそれがこの事件の形を大きく変えてしまうことになるとは…さすがの一方通行も予期することはできなかった。

 

 

 

 

 

 

「…あんな真っ赤なスイッチは」

 

「…なにィ!?赤だとォ?」

 

その一言を受けた一方通行は驚愕し、勢い良く立ち上がって土御門に詰め寄った。そう…彼があの時念入りに踏みつぶしたスイッチはあのグルスゾディアーツ戦の時と同じ黒いゾディアーツスイッチだったのだ。だからこそ、踏み砕かれたスイッチは砕けた黒い植木鉢や白いベンチの破片に混ざり合っていった。しかし、皆も知る通りホロスコープススイッチは赤いスイッチ…つまり…

 

「オィ!そりゃ本当なンだろォな!!」

 

「あ、ああ…おい、まさか…」

 

一方通行の態度に土御門もそれを察した。そうあの時、誰かがスイッチをすり替えていたのだ。なぜそんなことをしたのか?答えは決まっている。ゾディアーツとの戦闘経歴があるこの戦いの参加者は上条・土御門そして一方通行の三人だけ…その内上条は真レギオンドーパントとの戦いに明け暮れていた…だからこそ残った2人をどうしてもごまかす必要があったのだ。ホロスコープススイッチを回収するために…そしてそれができたのは誰か?少なくないダメージ受けた彼らにはできない…いやそもそも捕らえられている彼らには意味もない行為…

 

「…一方通行。どうやら俺達は…」

 

「あァ、俺には最初からこの計画が藤岡にィよって描かれたものだとは到底思ェなかった…この事件」

 

「「黒幕がいる…」」

 

 

 

 

 

「あらら…どうやらあの2人気づいちゃったみたいだねェ」

 

「ええ、そのようですね」

 

そんな2人の姿を物陰で見つめる存在がいた。リベンジャーの幹部であるバスコとエンターだ。彼らは笑みを浮かべながらまるでショーでも見るかのように2人を観察していた。

 

「藤岡のとっつあん坊やもまあよくやったほうかな…」

 

「Oui (はい)、三文役者すぎていささか心配しましたが…脚本家が優秀だとそれなりによく映るものですね」

 

「ふふふ、涙子ちゃんも御坂美琴も上条当麻も一方通行もそしてレジェンドたちも脚本家の見えない台本によって操られていたわけだねェ。喜劇だねえ、悲劇だねえ」

 

「ふふ、しかしこれは前座…いや上映前のCMにすらならない程度のもの…本当にあの人間には驚かされますよ」

 

「人間のちからってのはバカにならないよ。俺もあんたもそれに負けたんだからねェ」

 

「そうですね…ムッシュ・ジョロキア」

 

2人は不敵な笑みを浮かべながら銀色のオーロラの中へと消えていく。自分たちも黒幕に遅れを取らないよう新たな企みを進めるために…。

 

 

 

 

そして、敗戦の将は…

 

「…う、う」

 

該当もない暗い路地裏をボロ雑巾のような姿の人影が壁に寄りかかりながら進んでいた。その人物は紛れも無くフューチャーの将、藤岡虎斬…

 

「はあ、はあ…くそ!!人の足を引っ張ることしかできない無能どもが!」

 

壁を思い切り叩き悔しがる藤岡。体はボロボロだが、目だけは血走り光り輝いている。その脳内には仲間のことなど微塵もなく、ただただ自分の復讐をいかにして果たすかに満ち溢れており、なぜ自分がこの場所にいるのかという疑問すら入る余地もない。

 

「殺してやる!皆殺してやる!思い通りにならないものは皆!殺してやる」

 

「…哀れだな」

 

背後からかけられた言葉に藤岡が振り返るとそこにはランタンのようなものを持ったローブ姿の人物が佇んでいた。ランタンに照らされているはずなのに闇の中に溶け込んでいきそうな黒い黒いローブを羽織った人物は少しずつ藤岡の元へと近づいていく。それに対して藤岡はまったく警戒せず微笑してその人物を迎えた。

 

「よお、黒ローブさん。あんただな、俺を助けてくれたのは」

 

「ああ…契約だったのでな」

 

「ふふ、仕事熱心で助かるぜ」

 

そう、この黒ローブこそかつて駿河経由でホロスコープススイッチをフューチャーに渡し、駿河を真レギオンへと導き、そしてフューチャーとリベンジャーの窓口となっていた人物だったのだ。黒ローブはランタンを傍らの室外機の上に置くとさらに藤岡へと近寄っていく。やがて2人の距離はほとんどなくなり、手を伸ばせば触れられる程の距離となった。

 

「手に入ったのか?学園都市に封印された最強の兵器とやらは?」

 

「…」

 

藤岡の言葉に黒ローブはしばらく返答しなかった。しばらくたって…

 

 

 

 

一陣の風とともに藤岡の左手首が切り裂かれて地面へと落ちた。

 

「…へ?」

 

藤岡はしばらく何が起こったのかわからなかった。自分の手首が地面に落ち、断面からは血が噴き出しているというのに放心状態のまま…続けてくる2回目の斬撃を受け、着ていた服の前面が切り裂かれたところでようやく彼は我に返り、後ずさって黒ローブから距離をとる。

 

「な…なにを…」

 

斬られた左腕をおさえながら、藤岡は黒ローブを睨んだ。見ると黒ローブの右腕には血に濡れた大振りのナイフが握られており、左腕には懐に忍ばせていたホロスコープススイッチが握られている。

 

「もうすこしなんとかなると思っていたが…所詮は見捨てられたお山の大将…ただのクズはこれが限界か…」

 

「お、俺が…クズだと…」

 

「クズじゃないか、自分のが勝てる戦いしかしようとしないくせに見る目もないから…相手の実力は愚か、自分の実力すら満足につかめていない…正真正銘のクズだよ…貴様は…だからあんな嘘に引っかかるんだ」

 

「最強兵器とは…嘘だったのか!!」

 

「当たり前だ。そんなものがあるなら怪獣相手にあんなロボが出払うこともないだろう?」

 

「ゆ、許さんぞ…お前、俺がリベンジャーにどれだけ尽くしてきたか…お前の上は俺を必要としているはず…」

 

「…高々100の武器を配布した程度で貴様に価値などない…未来予知などリベンジャーではさして珍しくもない上、統率力のない貴様にはリベンジャーは最初から価値を見出していなかった…」

 

「…う、う」

 

出血がひどく大量の血を流した藤岡の意識は混濁し、だんだん目も霞み始めてその場へとしゃがみ込んでしまう。必死に逆転の未知を探す藤岡、その時視界に黒ローブ以外の影が映り込んだ。それは…

 

「おお…かおり!よく戻ってきたな!!信じてたぜ!」

 

それはオーズとの戦いで敗北したはずのアクエリアスゾディアーツだった。専用武装であるネクタルを携えたアクエリアスゾディアーツは黒ローブの背後からこちらへと少しずつ歩み寄ってくる。彼女の正体であるはずの藍かおりはいわゆる藤岡の女だった。強いものにすがるという意味では性格の悪いの女だが、そういう女を侍らせることも自身の強さだと思っていた藤岡は彼女のそういったところ高く評価していた。こんな状況ではあんなクズでも利用できる。黒ローブを倒してホロスコープススイッチを奪うために行動させねばと藤岡は頭を働かせ始めた。だが、アクエリアスゾディアーツは藤岡の期待に答えることはなかった。黒ローブの横に立つと手にしたネクタルをあろうことか藤岡に向けて振り下ろしたのだ。

 

「ぐお!?」

 

「…」

 

「な、何を…ぐがあ!?ごわ!?」

 

1発、2発、3発、4発…躊躇なく藤岡の腹を、顔を、足を、腕を…体中を激しい鞭打が襲いかかる。わけも分からずただそれを防ぐすべもない藤岡はだるまのように丸まり、すこしでもダメージ軽減させることしかできない。やがて藤岡がほとんど動けなくなったところでようやく彼女は鞭打をやめた。

 

「…かお…り…なん…で…」

 

「…ようやく、果たすことができたわ。お前への復讐がね…」

 

苦悶しながらも必死に言葉を放つ藤岡。それに対して冷酷な返答をしたアクエリアスゾディアーツは光を放ちながら元の人間の姿へと戻っていく。その顔は半分長い黒髪に隠れているがそれでも美しさを感じさせる整ったものであるが、身体のほうは病的なほど痩せているためどこか不気味な印象を受ける少女だった。病院にいる藍かおりは見るからにギャルといった風貌で化粧も濃い茶髪の少女なので正反対のタイプと言えるだろう。では、彼女は一体誰なのか?

 

「だ、誰だ…お前は…」

 

「忘れたの…無理もないわね。私は一日たりともあんたのことを忘れたことはなかったのに…」

 

「…ま、まさか…」

 

1人…1人だけ藤岡には心当たりのある人物がいる。ある意味、フューチャー結成の原因になった人物…すなわち藤岡が長天上機を追い出された理由となった人物…あの事件の被害者…確か名前は…

 

「あ、あおい…リエ?」

 

「ようやく思い出したの…そう、あんたに殺されかかった『藍リエ』よ!」

 

リエとなのった少女は叫びながら顔の片側を隠していた髪をたくし上げる。あらわになった顔の片側はやけどや切り傷が化膿し、顔のイメージを一転させて醜いと感じさせてしまうような酷い状態だった。かつて藤岡に死の寸前まで追い詰められ、ゴミのように捨てられた時の傷なのだろう…そこからは怨念に近いものが噴き出しているような錯覚すら覚える。まさしく復讐の鬼というような形相でリエは藤岡を睨んだ。

 

「い、いつ…から、かおりと…?」

 

「最初からよ…あのクズ女を襲った後、ずっとアクエリアスゾディアーツに変身してなり済ましてたのよ…あんたに復讐するために」

 

「お前を助けたのは、彼女との契約だった…彼女の協力があったからこそ、お前の三流台本もなんとか最後までやり遂げることができた…駿河秋を助けることも…」

 

「駿河?助…ける?」

 

これまで口をつぐんできた黒ローブの突然の発言に藤岡は困惑した。黒ローブは駿河を実験動物にしていたはずだ。本人がそう言っていた上、真レギオンメモリは事実暴走して駿河を殺しかけたのだ。

 

「お前に一々説明してやることもないかもしれんが…冥土のみやげに教えてやろう…レギオンのメモリの記憶…それはかつて1つの文明を滅ぼしかけた宇宙怪獣…その能力の根源は高い生命力と繁殖力…真の力を開放したそのメモリは駿河秋の体に大きな影響を与え、彼の脳内の腫瘍を縮小させたのだ」

 

「な、なに…」

 

そう、駿河秋の手術がうまくいったのも実は奇跡の歌のせいではなく、あのメモリによるもので真レギオンのあの暴走は駿河を死に至らしめるものではなく、彼を助けるもの。レギオンの高い繁殖性を回復能力に転用したことが駿河秋の腫瘍の縮小につながっていたことが手術を成功させた。つまり黒ローブは駿河を実験動物として利用したのではなく、彼を助けるために真レギオンに覚醒させたのだ。

 

「本当なら彼にはもうすこし力を借りたかった。しかし彼は彼の道を歩むべきだ。彼のおかげでホロスコープススイッチを手に入れることもフォーゼを追い詰め、その潜在能力を引き出すこともできた。それに比べ、お前は超新星にも覚醒できず、スイッチとメモリ混成の能力も駿河や有馬よりもはるかに低い…もうお前に価値はないよ」

 

「…く」

 

「…もういいわ。これ以上コイツには語る言葉なんてないわ…トドメを」

 

「私がさしてもいいんだな?」

 

黒ローブの問にリエは無言で頷いた。それを受けて黒ローブはゆっくりと懐からあるものを取り出す。それはダブルのドライバーに酷似するものだったが、メモリのスロットは1つしかついていない。それを腰に装着した黒ローブはさらに1本のメモリを取り出した。白いメモリに刻まれた黄色い文字…それは『E』…かつてオリジナル仮面ライダーダブルを追い詰めた…あのメモリ…

 

[Eternal]

 

「…変身」

 

[Eternal]

 

永遠という意味の電子音とともに黒ローブの体がゆっくりと白いボディの戦士へと変身していく。地獄の青い炎を腕と足の先に宿し、ローブの代わりに闇から切り取った漆黒のマントを羽織り、黄色い複眼と三本の角…体中に26のメモリスロットを装着した、紛れも無い…その姿はまさしく仮面ライダー…。

 

「そ、その姿は…」

 

「エターナル…仮面ライダーエターナル…。貴様を地獄に送るもの」

 

[Force]

 

[Force Maximum Drive]

 

「う…?ああ!?」

 

Force…強制のメモリのマキシマムドライブとともに藤岡が頭をおさえて苦しみ始めた。能力が強制的に発動されているのだ。どんな未来が見えているのか藤岡は地面を転がり、血をまき散らしながら悶えている。

 

「ああ…ああああああ!!ああああああああああ!!!!あああああああああああああああああ!!!!!」

 

「さあ、どんな未来が見えた?お前はどの地獄を味わったんだ?選べよ…どの地獄がいい?」

 

苦しむ藤岡にエターナルはゆっくりと近づき、たくさんのメモリを扇のように広げて藤岡の眼前へと近づけた。それぞれ色も文字も違うメモリだが、文字の形象はどれも悪いイメージのものしかない。どれを選んでもまっているのは文字通り地獄…それは藤岡の表情からも明らかだった。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

どのメモリが起動したかは藤岡の悲鳴でかき消されてしまい、まったくわからない。そして数秒後、藤岡は脱力して地面に倒れこんでその動きを止め、死体のように硬直してしまった。その姿をリエは満足そうに見つめ、すこしの間目を閉じると天を仰いだ。復讐達成の余韻を味わうかのように…。

 

「終わった…ありがとう」

 

リエは心の底からそう言うと自身のホロスコープススイッチと水色のメモリをエターナルに差し出した。水色のメモリに刻まれた文字は『M』。それはMist、つまり霧を表すメモリ。このメモリが霧のなかでも自由自在に敵の場所を知らせ、オーズのタトバキックの直撃を回避させたのだ。言わばミストアクエリアスゾディアーツ、回復と無敵化をもつ彼女が本気になっていたらオーズたちは勝てなかったかもしれない…。

 

「…これで契約は終わりだな」

 

差し出されたメモリとスイッチを受け取ったエターナルはそれを懐にしまいながら静かにそういった。しかしリエは首を横に振る。

 

「終わり?いや違うわ…私とあなたとの契約はまだ終わってない」

 

「…悪との約束なんて…律儀に守るものじゃない…」

 

「あなたは私との約束を守ってくれた…それに病院で再起不能になっていた私を蘇らせてくれたわ。その恩くらい人間として返さなきゃ」

 

「私は利用しようとしただけだ、私の計画のために…駿河もEXEのリーダーも…そして君も」

 

「それでも…ベットで死を待つよりは良かったわ…」

 

そういってリエは懐からあるものを取り出した。それは10本ものガイアメモリだった。端子の色はT3ガイアメモリの赤でもT2の青でもなく白。すなわち新型のメモリ、それもただのメモリではない実はレギオン

やダークも同じ端子の色をしていたのだ。つまり…

 

「これでいいの…私はもう目標を達成した…新たな夢への道を掴んだ、駿河くんとはちがうのよ…」

 

「…自ら地獄への道を歩むか…君のような人こそ私は求めていたのだがね…」

 

「ありがとうエターナル…いや違ったわね。あなたが教えてくれたあなたの名前…『F』…」

 

リエはエターナルをそう呼んだ。そう…EXEのリーダーが、バスコが、そしてエンターが口にしていた『F』の正体…それはこの黒ローブ、エターナルのことだったのだ。決して藤岡のことでも、フューチャーの隠語でもない。これまで舞台を操っていた黒幕エターナルこそ『F』…。エターナルはドライバーを外して黒ローブいやFの姿に戻るとリエの顔を凝視した。ローブから覗くその目にはわずかに悲しみの光が宿っている。

 

「…私も…後で行こう…君のいる地獄へ」

 

「…待ってるわ。またね」

 

[GX-9901-DX][GX-9900-DV][XXXG-00W0][XXXG-01HC][RX-93]

 

[Hécate II][Raging Heart][Ten Ryujin][Ichaival][Gatling_Railgun]

 

10本のガイアメモリが起動し、次々にリエの体へと挿入されていく。その姿をFはただ黙って見つめていた。そして挿入が終わり異形の怪物が誕生した時、Fは静かに言った。

 

「新型T4ガイアメモリ…正式名称多次元兵器型ガイアメモリ起動及びその複数挿入実験…成功」

 

 

 

 

 

その数日後、学園都市某所の路地裏でフューチャー首領・藤岡虎斬が発見された。しかし彼の脳神経はズタズタで切れた左腕は修復不可能…第七学区の病院のカエル顔の医師も最後まで諦めず治療したがやがて匙を投げ、彼の身柄は学園都市某所の特殊病院…とは名ばかりの監獄へと送られてしまった。

 

「…」

 

「あの患者、元は長天上機のエリートだってな…」

 

「ああ、酷いもんだよ。脳神経がズタズタにやられてる。一生あのまんまそうだ」

 

「…」

 

医師たちがそんな会話で見送る中、藤岡は口からよだれを垂らしながら車いすに乗せられ病院の奥へと運ばれていった。そしてその奥の檻のような扉が閉められた時…

 

「うわああああああああ!!!許してくれ!!!!!」




かくしてフューチャーによる長い一日は終わりを告げた…しかしこれは新たな戦いの序章…いや、まだその前の戦いだったということを上条たちは知らなかった…。



御「フューチャー編完結!!ようやく!!」

黒「長かった…長かったですの…」

初「すごいかかりましたね…」

佐「皆はいいかもしれないけど…私の出番少なすぎだァ!!!」

御「まあまあ次章では大活躍だから…」

黒「それにしても藤岡の末路はどこかでみた感じでしたわね?」

初「あれですよ…鳥人戦隊ジェットマンのトランザのぱくりですよ」

佐「ええ!?ラストがパクリってありなの…ちょっと残念だよね」

御「あれ?みんな気づいてなかったの?」

初・黒・佐「へ?」

御「だって虎斬ってトランザを並び替えて…変換しただけなのよ。最初からこうするために作者がこうつけたんだから」


次回は設定資料と次章予告を近日中にアップします。
お楽しみに

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