とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ)   作:マッスーHERO

90 / 101
またまたまた…遅れて申し訳ありません…
最近忙しくて、多分この週末で藤岡戦決着です。

今回のキャラ…リクエスト初めて二通目とかのキャラなんで…ほんとに申し訳ない…


射・手・伝・承

草の生い茂ったある河川敷…そこに一人の学生服姿の青年が寝転び、目を閉じていた。そこへ突如として吹く爽やかな風。青年は驚いたように目を開けると立ち上がって周囲を見渡し、最後にゆっくりと空を見上げてこう呟いた。

 

「理事長…?」

 

青年は暫しの間空を見上げていたが、やがてなにかを察したように微笑んだ。

 

 

 

 

 

「…こ、ここは?」

 

光に包まれたフォーゼはゆっくりと周囲を見渡す。360度星空に包まれ、自分がどこに立っているのかもわからないような空間がそこには広がっていた。

 

「どこだ、ここは」

 

自分は第二三学区の滑走路の上にいたはず…それが一瞬にして宇宙まで転移されたのか…いや、ここが宇宙とは違う空間であることが宇宙での戦闘経験のあるフォーゼにはすぐにわかった。だが、広がる星空は実物よりも美しく煌めき、流れる星は自分に迫るような迫力だ。

 

「…なんだ!?」

 

しかしそれは違っていた。流星のように見えたのは凄まじい勢いで迫り来る火の矢だとフォーゼに少したってから気づき、すばやく防御体制をとる。

 

「うお!?」

 

火の矢をうけたフォーゼは大きく後退し、床に膝をつく。アーチェリーサジタリウスゾディアーツのアポストロスに酷似した火の矢だったが、その威力は圧倒的に違う…雲泥、いやそれこそそのへんの石ころと空に煌めく星の差だった。

 

「ほう、あれを受け止めるとはなかなかだねえ」

 

「だ、誰だ!?」

 

突如としてかけられた声に狼狽するフォーゼ。直後彼の前にゆっくりとひとつの影が現れた。

 

「お…お前は…」

 

誰だという言葉をフォーゼは口にすることが出来なかった。圧倒されたのだ、そのオーラに…。それまでのアーチェリーサジタリウスゾディアーツがまるで子供…いや、赤子にすら見えるほどの圧倒的な存在感…洗練されたフォルムは怪人というよりはフォーゼたちのようなヒーローあるいは救世主といった印象を受ける。その姿を見て、フォーゼの脳裏にはフィアンマやアックアと言うような強敵たちが浮かんでいた。

 

「(ち、違う!あの二人とは違う圧倒的さを感じる…例えるなら…鉄の精神を持ったアウレオルス…複数の物を上位にしていできるテッラ…そんななんでもできるような圧倒的さを感じる)」

 

その圧倒的さから身動きできなくなるフォーゼ。それをみた影はやれやれといった感じで呆れたような態度をとりながらフォーゼへと近づいていく。

 

「なんだね。私程度にそんな調子ではこれからの戦いをのりきることはできないよ。少なくとも私は今君の敵ではない。その事はさっき証明したはずだがね?」

 

まさしく紳士といったような口調で話す影。たしかに先ほどフォーゼを助けたのは、シルエットから見てこの影のようだ。

 

「もっとも、君が今戦っているあの紛い物に近い存在であることは事実たがね。しかし、あれは酷いな。あんなげせんな上に超新星の力を使えないような輩を無理やり地球の記憶でパワーアップさせるとは…まったく美しくない」

 

「…あんたは一体」

 

「この姿の名はサジタリウスゾディアーツノヴァ。かつて君に力を授けた存在と戦ったものだ」

 

その言葉とともに周囲にたくさんの泡のようなものが現れた。泡にはフォーゼとサジタリウスゾディアーツ、そして目の前のサジタリウスゾディアーツノヴァが激しくぶつかり合う姿がいくつも映し出されていく。

 

『それがお前たちの限界だ!』

 

『友情に限界はねえ!!』

 

『ただのキック程度でこの私が!』

 

『青春銀河!大!大!大!ドリルキックだ!』

 

泡のなかのフォーゼは上条もみたことのない武装を駆使してサジタリウスゾディアーツノヴァへと立ち向かう。そして熾烈な戦いの果てにサジタリウスゾディアーツノヴァがフォーゼによって倒される姿が泡に映し出されていく。

 

「つ、強い!どちらも俺達じゃ到底追いつけないくらい…やはり俺のフォーゼは…」

 

「勘違いをしているようだが、君のフォーゼは紛い物などではない。カタログスペックならば私が戦ったフォーゼを大きく凌駕している」

 

「え!?そんなばかな!ならなんで…この人にはできた連続リミットブレイクが…それにあのオレンジ色や青色のステイツは…」

 

「それは君がフォーゼにとって一番大事なものがなにかわかっていないからだ。怒りでは駄目なのだ。いまの君にはフォーゼの力が使いこなせていない、だからあんなげせんな紛い物にも圧倒されているのだよ」

 

サジタリウスゾディアーツノヴァの身体がすこしずつ変化し、一人の男性へと変わっていく。オーダーメイドと思われるスーツを着こなし、すべてを見透かしているかのような余裕を見せるような風貌の男性は泡のなかのひとつを静かに指差す。そこには何人かの男女が並び立つ姿があった。逆光ではっきりとは見えないがその中央に立っているのは間違えなくフォーゼだ。

 

「しかしそれはわかっていないだけで、君の心には確かにある。コズミックへの扉の鍵が…」

 

「コズミック…」

 

「そして…その先へと進むための力も君には備わっている。だからこそ、それを見つける前に君を失うのは惜しい。だから今は私の力を貸そう。大宇宙への憧れにとりつかれ、大事なものを見失った老がいの力だがあんなげせんな紛い物を倒すことくらいはできるはずだ」

 

そういうと男性は右腕を突き出し、フォーゼを指差す。するとその指先から光が発射され、フォーゼの左腕へと吸い込まれると、その掌に1つのスイッチを顕現させた。それはロケットスイッチと似た色と形だが右腕ではなく左腕に対応するスイッチのようだ。

 

「なんで見ず知らず…いや、仇に近い俺にそこまで…」

 

「気まぐれさ、宇宙を漂っていたところに心地よい歌が聞こえてね。その歌へとせめてもの駄賃がわりといったところかな」

 

「歌…」

 

歌とはおそらくフォーゼと真レギオンドーパントとの戦いで響いた奇跡の歌のことだろう。あの歌が時空を超え、他の次元で倒された彼をこの世界に召喚するという奇跡を起こしたのだ。

 

「その力を生かすも殺すも君次第だ。ここで紛い物程度に負けるならそこまで…だが、これを乗り越えた時こそ君はコズミック、そしてその先の扉を開くことができるはず…」

 

そこまで言ったところで男性の姿がすこしずつ透け始めた。おそらく別世界から来た彼のタイムリミットがやって来たのだろう。

 

「ま、待ってくれ!最後に教えてくれ!俺に力をくれたオリジナルフォーゼのことを!!」

 

「ふ…」

 

最後のフォーゼの質問に男性は答えることはなく、ただ微笑しただけだった。直後彼の姿は光の玉のように変化し、新たに現れた2つの光の玉とともに光の中へと消えていった。

 

 

 

再び光に包まれたフォーゼは気づくと滑走路へと戻ってきていた。目の前にクウガ、ディケイドそして目の前の出来事にわずかに狼狽するアーチェリーサジタリウスゾディアーツの姿がある。そして左の掌にはあのスイッチが握られていた。

 

「な、なんだ。今のは俺の予知にはなかった…いったい何が…」

 

「…」

 

狼狽するアーチェリーサジタリウスゾディアーツと対照的にフォーゼは冷静だった。何故ならこれまで感じていたアーチェリーサジタリウスゾディアーツへの恐れや怒りが消えているのだ。そういった感情よりもむしろ今のフォーゼに沸き上がる感情はむしろ呆れや悲しさ…たとえるならただをこねる子供と相対したときのような…そんな感情がフォーゼには沸き上がっていた。直情的な彼には珍しい心境だ。

 

「(そうだ…あの人や真レギオンドーパント…駿河や今まで戦ってきた強敵たちに比べれば…)お前のような奴に負けるわけがなかったんだ」

 

「なに?無礼な…新たなる学園都市を束ねるこの藤岡虎斬に向かって!!」

 

激昂したアーチェリーサジタリウスゾディアーツのアポストロスの雨がフォーゼに迫る。しかしそれらをフォーゼは仁王立ちしたまま避けようとはしない。無数のアポストロスはフォーゼにかすることもなく周囲の地面に着弾し、まるでスポットライトのようにその炎でフォーゼを照らし出した。

 

「教えてやる…人の思いの強さをな!」

 

叫びとともに掌のスイッチを破損していない左腕用のスイッチソケットへと装填するフォーゼ。

 

[Apollo]

 

響く電子音はあの宙船と同じ名。そう、かつてあの男性の運命を変えた、あの船の名。フォーゼはそのスイッチをゆっくりと押して起動させた。

 

[Apollo On]

 

再びの電子音とともにフォーゼの左腕をコズミックエナジーが包み込んでいく。高濃度のコズミックエナジーは流星の如き激しさで左腕のまわりを走り回るがやがて安定し、すこしずつあるものをかたどっていく。それは弓…以前戦った敵がもちいた梓弓に近いがこちらはそれを機械化したという印象をうける。そしてその色はあのサジタリウスゾディアーツノヴァと同じ、ロケットモジュールに近い色へと変わっていく。

 

「いくぞ藤岡…お前の幻想はこの俺がぶち殺す!」

 

ついに姿を現したフォーゼの新武器『アポロモジュール』。はたしてその力とは…次回、決戦決着!!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。