とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ)   作:マッスーHERO

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ようやくボス戦…
長かった…


絶・望・凶・矢

太陽が陰り始め、空が赤く染まり始めた頃、第二三学区国際空港滑走路には1つの影があった。胸にいて座のマークと星座を持ち、背中に炎の翼のようなものと大型の弓を背負う怪人『アーチェリーサジタリウスゾディアーツ』。彼は突然アポストロスと呼ばれる矢を虚空に向けて何発か放った。暗闇を飛ぶアポストロスは空中で突如として爆発していく。よく見ると反対から飛んできた光弾とアポストロスが激突して相殺しあっているようだ。

 

「随分と汚いじゃないか!それでも第一位かい?」

 

「…」

 

暗闇から返答はない。かわりにさきほどと同じ光弾が何発かアーチェリーサジタリウスゾディアーツに襲いかかる。彼はそれを弓の長弓で弾き落とすと、再びアポストロスを放った。地面へと突き刺さった燃えるアポストロスが篝火となって、光弾を発射した主を照らしだす。

 

「もうすこしつきあってくれよ。もうすぐ学園都市はおれたちの楽園となるんだ」

 

「ふン…オマエみてェな小物といつまでも遊ンでるのはァ、いい加減皆飽き飽きしてンだよォ」

 

アポストロスの炎が照らすディケイドのボディは少なくない傷と焦げがついているにもかかわらず、凛とした態度でアーチェリーサジタリウスゾディアーツを睨みつけている。その手にはガンモードからソードモードへと変形されたライドブッカーが握られ、すでに戦闘準備は完全に終わっていることを宣言しているかのようだった。しかしアーチェリーサジタリウスゾディアーツはそんなディケイドを無視し、反対方向に向けて今度はアポストロスを放つ。暗闇を照らし飛んでいくアポストロスは突如として空中で静止する。誰かに受け止められているのだ。空中で止まったアポストロスが照らしだすのは赤い装甲と同色の複眼、そう仮面ライダークウガ・マイティーフォームの姿だった。

 

「招待状を渡した覚えはないな。高位能力者でもないようなやつに水をさしてもらいたくはないんだが」

 

「お前はそうでも俺にはお前と戦う理由があるんでね。悪いけど少しつきあってくれよ」

 

「ふん…招待状を渡していない客は君だけではないようだしね」

 

そういいながらゆっくりとアーチェリーサジタリウスゾディアーツは明後日の方向を見つめる。つられて2人も同じ方向を見ると、そこには特徴的なロケット頭の影がゆっくりとこちらへ歩いてくる姿があった。

 

「ようやく見つけたぞ…藤岡!!」

 

「生憎と俺はお前の名前を知らないんだ。とりあえずロケット頭くんとでも呼ぼうかな」

 

「お前からなんと呼ばれようが構わない。いや、そもそも興味がない」

 

珍しく乱暴な口調でフォーゼはアーチェリーサジタリウスゾディアーツを睨み付けた。マスクに隠されたその表情は怒りに染まり、白いメモリを握る左手にはいっそうの力がこもっている。

 

「今俺は自分でも驚くくらい腹がたってる!お前のような外道のために多くの人が傷ついた…その罪をお前の体で払ってもらうぞ!仮面ライダー!フォーゼ!!お前の幻想を殺させてもらうぜ!!!オオオオ!!!」

 

「おおおおおお!!!」

 

咆哮とともにフォーゼとクウガがアーチェリーサジタリウスゾディアーツのもとへと突っ込んでいく。2人の振り上げた拳は常人の知覚できる速度よりも早く、アーチェリーサジタリウスゾディアーツへと振り下ろされる。だがアーチェリーサジタリウスゾディアーツはまるで慌てる様子はない。

 

「ふふふ、熱血漢は隙じゃないんだよね…ふ!」

 

「なに!?」

 

「わわ!?退け、上条!」

 

突如、アーチェリーサジタリウスゾディアーツは自分の体をかがめた。すると迫ってきていた2人の拳は空を切り、2人の体は空中で激突してしまう。通常なら地面にそのまま2人は落ちるのだが、フォーゼはスラスターマニューバを全開にして飛び込んでいたためそのままクウガにタックルする形になってしまい、そのまま地面へと叩きつけられてしまった。

 

[Kamen Ride Blade]

 

「ウェェェイ!!」

 

地面を転がる2人をまたいで、ディケイドはDブレイドへと変身しアーチェリーサジタリウスゾディアーツへライドブッカーを振り下ろすが、しかしアーチェリーサジタリウスゾディアーツは長弓でこれをたやすく受け止める。

 

[Attack Ride Beat]

 

「オラァ!!」

 

「ははは、無駄無駄」

 

新たなカード「ビート」でパンチ力の上がったDブレイドの左フックがアーチェリーサジタリウスゾディアーツの腹部に迫る。しかしそれをアーチェリーサジタリウスゾディアーツは紙一重で躱して逆に回し蹴りを放つ。強力な蹴りを腹部に受けたDブレイドは後方へと吹き飛ばされてしまうがさすがはディケイド=一方通行、瞬時に体制を立て直し2枚のカードを連続でドライバーへとセットする。

 

[Attack Ride Thunder]

 

[Attack Ride Magnet]

 

電子音が響くと同時にライドブッカーからまさしく紫電の如き電撃が放たれる。同時に「マグネット」の物理法則を無視した磁力がアーチェリーサジタリウスゾディアーツの体とライドブッカーに与えられ、アーチェリーサジタリウスゾディアーツの体を拘束した。

 

「こざかしいね第一位…それで動きを封じたつもりかい?逃げの一手だね」

 

そんなことは文字通り予期していたかのようにアポストロスで電撃を相殺するアーチェリーサジタリウスゾディアーツ。しかし第一位はそんな単調な作戦をするような男ではない。この電撃はあくまでアーチェリーサジタリウスゾディアーツの気を引くためのもの、本命はべつにあった。

 

[Attack Ride S Rider Buckle]

 

[Form Ride Black RX Roborider]

 

ベルトのバックルを交換したDブレイドは新たなカードでロボライダーへと変身し、ライドブッカーを一度体に接触させ、そのまま自慢のパワーでアーチェリーサジタリウスゾディアーツの背後に向けて投擲する。

 

「なるほど…つぎの攻撃は効きそうだな」

 

「ふン…わかっていてェ避けきれるかァ?」

 

次なる攻撃を予期するアーチェリーサジタリウスゾディアーツとそれを読まれながらも自分の戦法にかけるDロボライダー…そしてその時はすぐにきた。

 

「トゥア゛ーーー!!!」

 

右腕を前の突き出し、前方に向けて大きくジャンプするロボライダー。すると彼の体がまるでロケットのようにアーチェリーサジタリウスゾディアーツのもとへと飛び出した。その速度はスピード戦を不得意とするロボライダーとは思えぬ速度、どうやら先程のマグネットの特殊磁力の一部が鉄のボディを持つロボライダーに移り、ライドブッカーと引き合うことでこの速度を生み出しているようだ。ロボライダーの弱点とも言える鉄のボディの磁力による動きの制限をもう一つの弱点である移動速度のアップに繋げるというさまざまなライダーに変身できるというディケイドならではの戦法だ。

 

「死ねやァ、オラァ!!」

 

「見事だ…だけど未来の俺はこう防いだ!」

 

そういうとアーチェリーサジタリウスゾディアーツはロボライダーに向けて背を向け、後ろに突き刺さっていたライドブッカーを空中へと蹴り上げる。これにより磁力による誘導先がアーチェリーサジタリウスゾディアーツが明後日の方向の空中へと変わってしまった。

 

「それで防いだつもりかァ?甘ェぞォ!!」

 

「ああ、それも見たよ」

 

しかしこれもDロボライダーには予測できていたことだった。ライドブッカーはかなり高い位置まで蹴り上げられていたため、必然的にロボライダーもかなりの高さまで上昇する。いまだにマグネットの磁力の影響下にあり動きの止まっているアーチェリーサジタリウスゾディアーツのはるか上空でDロボライダーはライドブッカーをキャッチし、下降を始めた。超高空からの落下とロボライダーのパワーが合わさった斬撃は一撃で致命傷なるだけの破壊力を持つ。これが一方通行の二段重ねの作戦だったのだ。

 

「死ねェや!!」

 

マグネットの影響がいまだに残っている動きの鈍いアーチェリーサジタリウスゾディアーツに向けてすさまじい速さの黒い流星が襲いかかる。しかし、それをみてもアーチェリーサジタリウスゾディアーツに焦りはなかった。

 

「あれは喰らうとマズイね…ならこうしよう」

 

そういうと動きが鈍くなっていながらもアポストロスを地面に乱射するアーチェリーサジタリウスゾディアーツ。巻き上がったコンクリート片や砂煙が彼を包み込むなか、その砂煙のなかにDロボライダーが飛び込んだ。すさまじい衝撃と爆音が辺りに響き、地面が大きく揺れる。その衝撃になんとかたちあがろうと2人も再び倒れこむ。これほどの威力ならさすがのアーチェリーサジタリウスゾディアーツも…

 

「チッ…避けェられたか…」

 

「今度の戦いは傷を負わずに勝つ気だったんだがな…さすがにいまのはきいたぜ」

 

しかし砂煙が晴れるとそこには体にわずかに汚れをつけながらも無傷の状態でたつアーチェリーサジタリウスゾディアーツの姿があった。そのすぐ横には地面にライドブッカーを振り下ろし、小規模ながらクレーターを作っているDロボライダーの姿もある。

 

「(野郎…磁力で動けねェ体を火の矢を放ったァ反動でムリヤリ…)ならァ!!」

 

「させねえよ!」

 

ライドブッカーを地面から抜きブックモードへと変形させて新たなカードを中から取り出すDロボライダー。しかしそれを予知していたアーチェリーサジタリウスゾディアーツはそのカードに向けてアポストロスを放った。

 

「なァ!?」

 

手元にあったカードがアポストロスによって撃ちぬかれ、空へと舞い上がる。カードのど真ん中には大きな穴が空き、もはや使える状態ではない。

 

「(バイオライダーのカードがァ…コイツは想像以上にィ厄介だ…)」

 

「そいつに変身されるとこっちの攻撃が通らなくて厄介なんだよ。でも変身される前ならどんなにつよくても意味が無いだろ!!」

 

「ぬゥ!?」

 

大量のアポストロスがDロボライダーに向けて放たれ、その強固なボディを傷つけながら後方へと吹き飛ばす。さらに長弓を構えてDロボライダーを追撃しようとするアーチェリーサジタリウスゾディアーツ。

 

「させるかよ!」

 

「おお!!」

 

それを止めようと後ろから襲いかかるフォーゼとクウガ。しかしアーチェリーサジタリウスゾディアーツはすぐさま体を翻すと左腕の長弓でフォーゼを殴り飛ばし、さらに右腕の長矢をクウガに向けて振るう。

 

「そうはいくか!超変身!!」

 

叫びとともにボディを青く変えドラゴンフォームへと変わったクウガは長矢を受け止め、ドラゴンロッドへと変化させる。だがドラゴンロッドへと変わった長矢をアーチェリーサジタリウスゾディアーツはすさまじい握力で握りしめ、間接的にクウガの動きを止めてしまう。そしてロッドを奪おうとするクウガの腹部に強烈な右膝蹴りを決める。薄いドラゴンフォームの装甲は大きく凹み、蹴りの反動で吹き飛ばされるクウガ。

 

「ぐお!?」

 

「いいねえ、周囲の物体を武器に変えられるっていうのはいい能力だ」

 

「野郎!!一貫献上!!」

 

フォーゼドライバーをスシチェンジャーというアイテムに変換し、黄金の戦士『シンケンゴールド』へと変身した上条。魚をかたどった『サカナマル』という剣でアーチェリーサジタリウスゾディアーツに斬りかかるシンケンゴールドだが、長弓であしらわれてしまう。

 

「どうした、どうした?気合だけか?」

 

「くっそ!!ガオアクセス!!ガオハスラーロッド!!」

 

今度は距離をとりながらガオシルバーへと変身し、ガオハスラーロッド・ライフルモードで銃撃を行う上条。しかしこれをアーチェリーサジタリウスゾディアーツはアポストロスで撃ち落とす。

 

「効かないね」

 

「ならこれはどうだ!!インストール!シルバーブレイザー!!」

 

閃光とともにメガシルバーへと変身した上条が必殺のブレイザーインパクトの体制を取る。しかしアーチェリーサジタリウスゾディアーツはこれも予知しており、素早くアポストロスでメガシルバーの足を撃ち抜いてその体制を崩させて技を不発させる。さらにアーチェリーサジタリウスゾディアーツはアポストロスの連射でメガシルバーを追撃し、ブレイザーインパクトを完全に封じてしまう。遮蔽物のない滑走路ではメガシルバーも避けるしかないため、反撃のしようがない。

 

「くっそ、こうなったら!マージ・マジ・マジーロ!!」

 

激しい攻撃を避けながらマジレッドへと変身した上条は少しずつアーチェリーサジタリウスゾディアーツとの距離を縮めていく。

 

「喰らえ!!マジ・マジ・マジカ!レッドファイヤーフェニックス!!」

 

炎をまとい火の鳥と化したマジレッドがアーチェリーサジタリウスゾディアーツへと突っ込む。同じ火の属性であるアポストロスはレッドファイヤーフェニックスに吸収されていき、マジレッドの動きを遮ることはない。

 

「なかなか考えたね…でも!」

 

アーチェリーサジタリウスゾディアーツはレッドファイヤーフェニックスを普通に避けて、すさまじい蹴りで地面を削り、コンクリート片を石つぶての如くマジレッドにぶつけて撃ち落とす。

 

「ぐお!?」

 

「ここを使いなよ。さっきの第一位の攻撃は動きを封じられてたからあんな手を使ったけど、今は普通に避けられるんだからさ」

 

頭を指でつつきながら挑発するアーチェリーサジタリウスゾディアーツにフォーゼへと戻った上条は拳を握って殴りかかる。

 

「(一撃でも入れば幻想殺しが予知能力を封じるかもしれない!)うおおお!!」

 

「何だ、今度は力任せか?野蛮人はこれだから」

 

不規則なフォーゼのパンチをアーチェリーサジタリウスゾディアーツは見事にかわし続ける。やはり予知能力の前にはどんな技も効果はないのか…対能力者に対して圧倒的な力を持つ幻想殺しも当たらねば意味がない。

 

「(くっそ…テレパシーとかは触らなくても効果が出るのに…こいつもメモリの加護を受けてるせいなのか?)」

 

「あんたさっき上条って呼ばれてたな?俺が名前を知らんということはたいした能力者ではないんだろうな」

 

連続パンチの速射砲を避けながら、なおも余裕を見せるアーチェリーサジタリウスゾディアーツはフォーゼに向かい語りかけ始めた。

 

「お前はなぜ俺に歯向かう?」

 

「なぜ?そんなのきまってるだろ!!お前のようなやつの勝手を許さないためだ!」

 

「勝手?」

 

「勝手だろうが!!人はみんな平等だ!それをお前はこの街を人同士が差別しあうような街にしようとしているじゃないか!」

 

「人が平等?ははは!本気で行ってるのか!!」

 

「なにがおかしい!?」

 

「人が平等だというならなぜ能力者はレベル分けされる?そもそも人はなぜ違う?人種・体格・言葉・正確…エトセトラ、エトセトラ…ならばすぐれた人間が上に立って人を管理することは正しいとは思わないか?」

 

「そんなの間違ってる!!」

 

「間違ってる?どこが?どう?人が平等だという綺麗事を意味や理由もなく並べる君よりはずっと正しいと思うがね」

 

「うるせえ!!お前のために夢を利用された駿河の気持ちが…」

 

「解らないね!他人の気持ちなどわかるはずがない。人はただ自分の正しいと思うことをするべき…だから俺は駿河を利用したにすぎない。なぜ俺が自分の組織をフューチャー…頭文字をFとしたのだ!」

 

「なに!?」

 

「左右対称な『H』より非対称な『F』のほうがよっぽど現実味があるのさ!この世界は不平等…だからこそ強い人間がそれを指導せねばならない!!」

 

「それがお前だというのか!!」

 

「いや、俺は持ってるんだよ!その資格を!能力・権力・容姿…それらを俺は持ってる!これは神が俺を先導者としようとしている」

 

「そんなの思い上がりだ!」

 

「いや!その証拠がこの力だ!人を超え!神に近づく力!!これを使いこなせるのは指導者にたる資格だ!」

 

アーチェリーサジタリウスゾディアーツはフォーゼの右腕を取るとそのまま片手で振り回し、空へと投げ飛ばす。フォーゼはそのまま地面に落ち、悶絶しながら倒れこむ。

 

「お前は目障りだ!消えてもらうぞ!」

 

長弓を構え、長矢を引き絞るアーチェリーサジタリウスゾディアーツ。その照準は倒れているフォーゼだ。その矢の威力なら戦隊のスーツなど紙切れに等しい、しかも今のフォーゼにはシールドスイッチもない。つまり防ぐ手段がない…まさしく絶体絶命という状況だった。

 

「くそ…どうしてだ…あんな自分勝手なやつがなんで…こんな力をもてるんだ」

 

「そういう世界だからだよ…この世界は!」

 

矢がフォーゼの元へと放たれ、フォーゼに迫る。ディケイドとクウガは立ち上がることすらできず、フォーゼ自身にも避ける力がない…これまでかとフォーゼはマスクのしたで目をつぶった。

 

 

 

 

 

 

「な、なに?」

 

疑問を声に出したのはアーチェリーサジタリウスゾディアーツだった。はなった矢が何故か空中で止まっている。少なくともアーチェリーサジタリウスゾディアーツにはそう見える。

 

「…な、なンだあいつはァ…」

 

「だ、だれ…」

 

「お、おれを守ってくれたのか」

 

しかし、フォーゼたちにはあるものが見えていた。全体が透けている人型の何かが矢を掴み受け止めている姿だ。その何かはスマートでヒーロー然としており、すさまじい威力で迫る矢を片手で安々と止めている。

 

『この程度かね…この世界のサジタリウスというのは』

 

その何かはそう言うと矢を握力でへし折り、地面に放った。そしてその姿を光に変えるとフォーゼに突如して迫った。

 

「な、なんだこれは!?」

 

フォーゼは右腕で光をはらおうとするが、光は消えずにフォーゼの体を完全に包み込んでしまう。

 

 

果たして光の正体はなんなのか?次回へつづく


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