とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ)   作:マッスーHERO

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3連戦の2戦目です。
3連戦といえば最近ようやく中古でかったロストヒーローズクリアしました。

あれのボスは本当に鬼畜ですね、
w、ゼロ、オーズ、ゴットガンダムでようやく倒しました。


決・戦・宇・宙

「…う」

 

自身にのしかかる瓦礫を払いながら一つの影がゆっくりと立ち上がった。右肩の狼型の甲冑が地面に落ち、胸部からボロボロと鎧のパーツが壊れ落ちていく。

 

「はあ…はあ…どうやら生きてるみたいだな…」

 

やがて彼の体が光に包まれ、フォーゼへと戻っていく。あの時、砲弾が直撃する直前でフォーゼは防御力の高いウルザードファイヤーへと変身して、ダメージをわずかに緩和していたのだ。しかし体の節々に痛みがはしり、立っているのも辛いくらいだった。

 

「…なんだ…これは…」

 

しかし彼はその痛みをほとんど感じられないほどの衝撃を受けていた。なぜなら周囲の状況が先ほどとは一変していたからだ。廃工場なかだったはずの場所は天井が消え、瓦礫の山とかしており、鉄の柱はどろどろに溶けている。晴天だったはずの空からはポツポツと雨が降り始め、周囲からジュージューと蒸気があがる。とても同じ場所だとは思えない…自分が凄まじい勢いで飛ばされたときに学園都市の外にでも飛ばされたような錯覚を上条は覚えた。

 

「…あれは…そうか。あれは話に聞いてたレギオン草体の…」

 

オリジナルのレギオンには草体と呼ばれる種子を宇宙へと飛ばす共生生物が存在していた。これは種子を高濃度酸素を爆発させて宇宙まで発射して繁殖をサポートするものなのだが、これの発射時の爆発は都市一つを簡単に吹き飛ばしてしまうような威力がある。先ほどのものはおそらくそれを応用した砲弾なのだろう。あのドリルのようなものは花の蕾で砲弾は種子…それを高濃度酸素の爆発で撃ち出したのだ。さしずめ『レギオンプラントバスター』といったところか…。

 

「わかったろ上条…」

 

「…駿河」

 

瓦礫の山を蹴飛ばしながら真レギオンドーパントがゆっくりと姿を現す。両腕は蕾の形から元の2本の腕に戻っているが、その体には見覚えのない黒い焦げがついている。どうやらあの攻撃は諸刃の剣…自身もダメージを受ける技のようだ。

 

「次に花が咲いた時点でお前の負けだ…」

 

「…」

 

「お前の右手もただの種子には効果が無いだろ?お前には勝ち目がねえよ」

 

「…」

 

「唯一ダメージを与えられそうなあの磁石ももうない…お前の技は俺のボディには…」

 

「ふ…ふふふ、ははは」

 

真レギオンドーパントの言葉を突如フォーゼの笑い声が遮った。これだけ絶体絶命な状況のはずなのに笑っているフォーゼの姿を真レギオンドーパントは不審そうに見つめるが、何かしら攻撃を仕掛けているわけでもなくただフォーゼは笑っていた。

 

「なんのつもりだ、上条?」

 

「ああ、悪い悪い…いやさ、やっぱりお前っていいやつなんだと思ってさ」

 

「なに?」

 

「だってそうだろ?お前今、俺に遠回しに退却しろって言ってるじゃないか。あれだけの技がありゃあ次は俺を倒せるはずなのにさ」

 

「…」

 

「それってつまり、俺をこれ以上傷つけないように配慮してくれてるってことだろう?そんなやつが悪いやつなわけないさ」

 

「…」

 

「これまでだってそうさ、俺を何度も殺せたはずなのに何度も見逃してきた…お前だって心の底じゃあ自分のやってることの間違えに気づいてる…」

 

フォーゼの言葉を今度は逆に真レギオンドーパントが黙って聞いていた。地面に降り注ぐ小雨が止み、薄かった雲が消え、再び青空が蘇り始めている。

 

「たとえ夢のためだったとしてもその夢のために誰かを傷つけることが間違っているとお前も気づいているはずだろ?だからここまできても俺にトドメを指すことがお前にはできないんだ!」

 

「なんだと…」

 

「お前には夢よりも大事なものがある!それを思い出せ駿河!夢なんかに振り回されたままでもいいのかよ?」

 

「…うるせえよ」

 

フォーゼの言葉を聞き終えた真レギオンドーパントは再び脚を地面に差し込むと両腕を蕾のような形状へと変えていく。

 

「そんなことは百も承知だ…いまさらお前に説教されることじゃないんだよ!」

 

再びレギオンプラントバスターの体制を取る真レギオンドーパント。だが、それはフォーゼの狙い通りだった。実はさっきの砲撃でフォーゼはマグネットだけでなくもっていたファイヤーやウォーターなどの攻撃系のスイッチも失っており、真レギオンドーパントに決定打を与えられるスイッチはもはや2つしかなかったのだ。

 

「(あれだけの威力…あれを利用する以外に勝ち目はない…失敗すれば俺は終わり…でも勝負に勝つにはこれしかない!)」

 

[Aero On]

 

フォーゼはエアロスイッチを起動し、真レギオンドーパントに向けてまっすぐ走りだした。真レギオンドーパントがわずかに動揺する。

 

「また俺の動きを止めようっていうのか?無駄だ!そのスーツじゃたとえ余波でも致命傷になるぞ!」

 

「うおおおおお!」

 

真レギオンドーパントの静止をかき消すかのように叫びながらまっすぐ突っ込むフォーゼ。その間にも真レギオンドーパントの周囲に高濃度の酸素が散布されていく。

 

「ちっ…馬鹿野郎が!そんなに死にたきゃ、死ね!!」

 

「おおおおおおおおおお!!!」

 

真レギオンドーパントのレギオンプラントバスターの砲口の蕾とフォーゼとの距離がほとんどなくなった瞬間、ついに蕾が開き始めた。

 

「おおおおおおおお!」

 

「今だ!!」

 

この一瞬をフォーゼは待っていたのだ。蕾が開きかかったのを見たフォーゼは力いっぱい地面を踏みきると跳び箱を飛ぶかのように両手を開きかかる蕾に押し当て、砲塔を地面へと無理やり向けさせた。

 

「な、なに!!」

 

「おりゃああああ!!」

 

[Aero Limit Break]

 

エンターレバーが引かれると同時にエアロモジュールがフルパワーで稼働する。しかしそれは先程のように空気を吸い込むのではなく逆、エアロモジュールから圧縮された大気が一気に放出されたのだ。直後、蕾が開き、周囲が爆音と爆風に包まれた。

 

 

 

 

 

 

「う…」

 

発射の反動によって長く気を失っていたのか、真レギオンドーパントが目を覚ますと周囲はすでに暗くなっていた。体を動かそうとするが、うまく動かない。脚が地面についていないような錯覚を感じてしまう。どうやらフォーゼは爆発の威力を高めて真レギオンドーパントを自滅に追い込もうとしたようだが、完全に止めは刺しきれなかったようだ。

 

「…上条は…どこに…」

 

フォーゼを探して周囲を見渡そうとする真レギオンドーパントだが、やがて異変に気がついた。音がほとんどしない。するのは自分の声だけで爆発音などがまるで耳に届かない。そして夜にしては妙に暗すぎる。

 

「ま、まさかここは…」

 

あることが頭に浮かんだ真レギオンドーパントはさらに周囲を見渡した。すると彼の後ろ側にロケットモジュールとドリルモジュールを装備したフォーゼが真レギオンドーパントを睨みつけている。そしてその後ろには青く輝く球体が…

 

「あ、あれは地球?じゃあここは…」

 

「そう、お前が目指した場所だよ駿河」

 

何らかの特殊なスピーカーを使っているのか、それともレギオンの特性のためか、真空の中でもフォーゼの声は真レギオンドーパントの耳に届いた。見渡すと周囲には人工衛星やその破片と思われるスペースデブリが飛び交い、星々が煌めく…あぎれもない宇宙空間に自分がいることに真レギオンドーパントは衝撃とわずかに喜びを感じる。そして同時に真レギオンドーパントはフォーゼの本当の狙いを察する。あの時、砲塔を地面に向けさせたのも、大気を放出して爆発の威力を高めたのもすべては自分をここまで飛ばすためだったのだと…。もちろん自分を喜ばせるためではないはずではない。なにか狙いがあるはずなのだということも真レギオンドーパントは悟っていた。

 

「…ここが宇宙…俺の目指した場所か…」

 

「先に謝っておくよ…お前の夢をかなえるためにここまできたわけじゃないんだ」

 

そういいながらゆっくりとエンターレバーに手を掛けるフォーゼ。彼が真レギオンドーパントをここまで連れてきた理由…それはフォーゼの最後の武器であるこの2つを確実に真レギオンドーパントへ当てることだったのだ。

 

「これで終わらせる…長かった戦いを!!」

 

[Rocket Drill Limit Break]

 

「ライダーロケットドリル宇宙キック!!!」

 

掛け声とともにロケットモジュールが唸り、すさまじい速度で真レギオンドーパントへと突っ込んでいくフォーゼ。無重力下での移動能力が殆ど無い真レギオンドーパントは自分自身の能力である『電子発熱〈ハンドメーサー〉』によってブラックホールを作り出し、盾のように全面へと展開する。それを見たフォーゼは一旦ドリルモジュールを装備した脚を引っ込め、右腕のロケットモジュールを前につきだした。ロケットモジュールは幻想殺しの力を受けてブラックホールを破壊し、そのまま真レギオンドーパントの腹部へとめり込んでいく。

 

「ぐお!」

 

「おおおおおおおお!!!!」

 

そのまま真レギオンドーパントを地球の方向へと押し出した後、フォーゼは一度真レギオンドーパントから離れ、助走を付けるかのように旋回するとドリルモジュールを突き出しながら真レギオンドーパントへと再び突進した。

 

「今度こそ!ライダーロケットドリル宇宙キック!!」

 

「ぬうう!!」

 

ドリルモジュールが真レギオンドーパントの腹部に突き刺さり、高速回転を始める。しかし真レギオンドーパントも高濃度酸素で体を安定させて真っ向からライダーロケットドリル宇宙キックを受け止めていた。そしてその両腕がドリルモジュールを掴みその回転を止めようとする。

 

「まだだ!ライダーロケットドリル大宇宙キック!」

 

[Limit Break]

 

フォーゼの腕が再びエンターレバーを引く。すると2つのモジュールがエネルギーを纏いまるで巨大化したかのような状態に変わる。しかし真レギオンドーパントは引かず、ドリルを掴んだままだ。

 

「うおおお!ライダーロケットドリル大大宇宙キック!」

 

[Limit Break]

 

「うう!!」

 

再び引かれるエンターレバー。同時に2つのモジュールがさらに巨大化するが、バチバチと2つのスイッチが火花を散らしていく。それでも真レギオンドーパントの体は動かない。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!ライダー!ロケット!!ドリル!!!大!大!大!宇宙!!!!キィック!!!!!!」

 

[Limit Break]

 

「ぬうあああああああああ!!!!」

 

4度目のリミットブレイクでようやく真レギオンドーパントの体が後方へと押され、地球の引力に引かれながら二人は大気圏へと突入していく。直後に2つのモジュールが大爆発を起こし、二人の体は凄まじい勢いで地球へと落下していった。

 

 

 

 

 

 

[Parachute On]

 

「はあ…はあ…」

 

左腕のパラシュートモジュールが開き、減速したフォーゼは自分たちが最初に戦っていた廃工場を見下ろした。瓦礫の山だったそこには小規模のクレーターができている。おそらく真レギオンドーパントの落下後だろう。落下地点の計算はフォーゼに内蔵されたコンピュータがやってくれたとはいえ、ここまでピンポイントで元の場所に落ちたのは奇跡だとフォーゼは思っていた。なにせあれだけ高高度からおとしたのだから…。

 

「ロケットとドリルは…ダメか、いやそれどころか右腕と左脚のソケット自体が使えないな」

 

さっきの4連続リミットブレイクによってスイッチは爆発、跡形もなく粉々になり、その余波でスイッチソケット自体がいかれてしまったようだ。これではステイツチェンジもできないだろう。文字通りすべての力を出しきった戦いだったのだ。フォーゼは地面に降りるとクレーターの中心へと向った。

 

「駿河!駿河!」

 

「ここだよ…」

 

フォーゼの声に反応した真レギオンドーパントはクレーターの中心からゆっくりと這い出てきた。その姿はフォーゼ同様にひどいもので後ろの8本のアームも1本をのこしてすべて折れ、装甲は剥がれ落ちて、そこから体を動かすガスが漏れる音が響く。目は赤色に変色し、腹部にはドリルモジュールによって抉れた後が痛々しく残っていた。

 

「とてもヒーローとは…思えない攻撃だった…」

 

「悪いな…お前に勝つにはこうするしかなかった…」

 

真レギオンドーパントへとすこしずつ近づいていくフォーゼ。対して真レギオンドーパントは座り込んだまま動く素振りを見せない。

 

「どうだった。夢にまでみた宇宙へ行った気分は?」

 

「…充実感はあるんだが…それでもよくわからない…モヤモヤが少し頭に残っているよ」

 

「そうか…」

 

「やっぱりちゃんと自分の力で行かないとだめかなあ…」

 

真レギオンドーパント=駿河の声から戦意が完全になくなっているのをフォーゼは感じた。

 

「大丈夫だよ、お前ならきっと病気をなおして、あそこまで自分の力で行けるさ」

 

「…」

 

その言葉に真レギオンドーパントは返答しなかった。そして彼は素早く立ち上がるとフォーゼを力いっぱい押し飛ばしてしまう。予期せぬ事にフォーゼは驚きながら地面に倒れ込んだ。同時に真レギオンドーパントの体がギシギシと音を立てながら肥大化していく。

 

「う、おおお!!!」

 

「駿河!?」

 

その変化に驚いたフォーゼは真レギオンドーパントに近づこうとするが、真レギオンドーパントはそれを手で制すと自身の背中に残った1本のアームを引きちぎり、フォーゼの足元へと投げつけた。

 

「こ、これは…」

 

「か、みじょう…それで…おれを…殺せ!!」

 

「な、なに!?」

 

「それなら…コイツの…甲殻を貫ける!!はやく!!」

 

「そんなことできるかよ!!!」

 

「はやくしろ!!俺の意思がのこ…っている…ウギャアアア!!!」

 

だんだんと駿河の声が凶暴な怪物の唸りに変わっていく。その姿にフォーゼはただ唖然としていた。

 

「このままじゃ…あいつは本当の『レギオン』に…」

 

「ウオオオオオオオ!!!」

 

肥大化を続ける真レギオンドーパントは全身から数百本のレッドロッドを放ち、周囲を破壊していく。それを避けたフォーゼは先ほど真レギオンドーパントの投げたアームをゆっくりと拾った。

 

「…」

 

数秒間、それを見つめていたフォーゼだが、すぐにそのアームを横に捨てると拳を握って真レギオンドーパントへと向かっていった。

 

「俺にはお前を殺すことはできない!!お前は正しい手段で夢を叶えるべきなんだ!!」

 

フォーゼの右ストレートが真レギオンドーパントの頬にぶつかるが、全く効果がなく、逆に肥大化した腕がフォーゼを殴り飛ばしてしまう。

 

「うわあああ!」

 

瓦礫の山へと飛ばされたフォーゼは今なお肥大化を続ける真レギオンドーパントをゆっくりと見上げる。もはや人間の形をとどめていない怪物を前にフォーゼは自分の無力さを呪った。今までどんなことでも粉砕してきた幻想殺しも…フォーゼの力ももはや通用しない…ほかのヒーローの力で彼を元に戻すことはできない…。

 

「もう…やるしかないのか…もう…あいつを助けることはできないのか!おおおおおお!!!!」

 

フォーゼは天に向かって叫んだ。もはやどうすればいいのか…その混乱をかき消す一心で…

 

 

 

 

 

 

 

その時…天から歌が響いた。かつて学園都市を救った奇跡の歌が…


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