とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ)   作:マッスーHERO

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最近アップが遅れてすいません…


来るで!最強能力者組織フューチャー(前編)

「あーん…」

 

第七学区上条の高校の屋外のベンチに座り、焼きそばパンをかじりながら空を見上げる上条当麻。晴れ晴れとした小春日和の最高の天気だが、彼の心には雲がかかっていた。

 

「よ、上やん!」

 

「土御門か…」

 

そこへコーヒーを片手に土御門がやってきた。彼は上条の横に座り、同じように空を見る。

 

「どうしたんぜよ?元気ないにゃあ」

 

「ああ…」

 

「どうせ、あいつのことだろ」

 

土御門の言う、あいつとは以前出現した『レギオンレオゾディアーツ』のことである。ガイアメモリによって『レギオンドーパント』となっていた男がさらにホロスコープススイッチの力で変身した怪人の前に二人は文字通り手も足も出ずに敗戦したのだ。

 

「一度負けたくらいでどうしたんぜよ。アックアやフィアンマの時はもっとやばかったんじゃないのかにゃあ」

 

「そうなんだけどな…フォーゼになれるようになってから、一人の相手にこんなに手ひどくやられたのは初めてだし、それに…」

 

「それに?」

 

「なんつうか…迫力がアックアや他の奴らに勝るとも劣らなかったんだよな…まるで自分の命を燃やしてるような、そんな気がして」

 

ふと上条は、あの戦闘の時、土御門が言っていたことを思い出した。

 

「そう言えば、お前あいつに見覚えがあるって言ってたよな?」

 

「ああ、どこで見たのかずっと考えてたんやけど、ようやく思い出したぜよ。ほら、黄泉川先生のところのクラスにいたやろ」

 

「あいつ、この学校の生徒なのか!?」

 

土御門の言葉に上条は驚いた。遠い存在だと思っていた敵が自分の身近にいた存在だったとは思わなかったからだ。

 

「そんなに驚かんでも…第一、上やんも面識あるんだろ?あいつも上やんの顔を見て、手を引いたんやから」

 

「あ、ああ…そうだな」

 

そう言う上条だが、彼にはまったく覚えがない。もしあの男の思い違いでないなら上条が記憶を失う前に面識があるのかも知れないが…それならお手上げである。

 

「まあ、黄泉川先生に聞けばわかることにゃあ。ちょうど昼休みだからちょっと聞いてくるぜよ」

 

そう言うと土御門は立ち上がり、学校のなかへと消えていった。残された上条はまた空を見上げ、あの戦いを思い出し始める。

 

「(あいつのあの力…しかも学園都市の学生なら能力もありえる…どうしたもんかな。)」

 

今、上条にはフォーゼ以外にもメガレッドをはじめとする様々な戦士への変身能力も持っている。だが、それらを駆使して本当にレギオンレオゾディアーツに勝てるのか…いやそれだけではない、ホロスコープススイッチはあと11個あるのだ。それらも同じようにガイアメモリや他のものと併用できるとすれば、苦戦は間違えないだろう。

 

「なんとかしなくちゃな…」

 

「なにを?」

 

「うわ!?」

 

一人言に突然返答されて驚いた上条が声の方をみると、そこには一人の女子生徒が立っていた。

 

「せ、先輩か…」

 

「先輩か、とはご挨拶ね。なんか悩みでもあるの?」

 

上条が先輩と呼ぶこの女子生徒の名は『雲川芹亜』。上条の先輩にあたる人だが、どこのクラスなのか上条知らなかった。

 

「いや、とくには…そう言えば、先輩って英語得意でしたっけ?」

 

「まあ、人並みにはね」

 

「レギオンってどんな意味があるんですか?」

 

「なんだ、英語の宿題のなやみか…『Legion』っていうのは軍団・軍勢の意味のある英単語よ」

 

「軍団…電撃とかの意味はないんですか?」

 

「電撃?ないわよ」

 

その言葉に上条はまた悩みだした。レギオンレオゾディアーツになる前のレギオンドーパントは上条たちを電撃で攻撃していた。ガイアメモリに内包されている地球の記憶は英単語の意味をそのまま使っている場合が多い。もちろんメタル=闘士のような例外もあるが、レギオン=電撃というのを結びつけることがどうしてもできない。この矛盾はなにかの意味があるのか…。そんなことを考えていると、突然雲川が上条の手を自分の掌で握った。

 

「ちょ、雲川先輩!?」

 

突然のことに上条は顔を真っ赤にして狼狽した。そんな上条のことなど気にせず、雲川は上条に顔を近づける。

 

「なんかあったら、力になるから。何でも言いなさいよ」

 

「は、はい!」

 

慌てる上条を楽しげに見つめた後、雲川は手を離してその場を立ち去った。それをぼけーとした表情で見つめる上条。そんな彼の後頭部に凄まじい衝撃がはしる。

 

「ぐお…」

 

「貴様…ついに雲川先輩までも上やん病に…」

 

拳をわなわなとさせながら握る青髪ピアスが上条の背後で怒りの表情を見せていた。

 

「ま、待て…俺は何も…」

 

「ゆ゛る゛さ゛ん゛!死ねえ!」

 

青髪ピアスの右ストレートが上条の頬へと放たれた。

 

「なにやってんのかしら?あのバカども」

 

その姿を廊下の窓から呆れたように吹寄が見つめていた。

 

 

 

 

 

その時、上条の懐のフォーゼドライバーが赤く光っていたことに誰も気が付いていなかった。

 

 

 

 

そのころ、職員室では各教員が昼食をとっていた。

 

「今日の昼食は…焼肉弁当!いただきます!」

 

ハイテンションで焼肉弁当をかきこむ健太。その近くで肉マンを頬張る黄泉川の横には土御門の姿があった。

 

「ほらなんていいましたっけ…甲斐だったか、尾張だったかって昔の地名みたいなのがいたじゃないですか?」

 

「そんなやつ、うちのクラスにはいないじゃん。ああでも昔の地名っていうなら…」

 

ふと、黄泉川は机のファイルを開き、パラパラとめくり始めた。そしてあるページで手を止める。そこには眼力の強い男子生徒の写真が貼ってあった。間違いなく、あのレギオンレオゾディアーツの男だ。土御門は一流の魔術師、一度見た人間の顔を忘れることはない。なにより、あの男の眼がとても印象に残っていたため、すぐに彼だとわかった。すぐに名前欄を確認するとそこには『駿河 秋』とあり、能力レベルは3とあった。

 

「そうそう、こいつですよ。こいつ」

 

「駿河秋、うちのクラスでも優秀な奴じゃん。それに義理深い男でもあるじゃん」

 

黄泉川は肉まんを離して、自慢げに語る。さまざまな生徒を見てきた黄泉川が、ここまで評価するということは、なかなかの男なのだろう。しかし、土御門がキャッチした情報通りなら、駿河=レギオンレオゾディアーツと学園都市を完全能力主義の世界にしようとする組織には間違いなく、つながりがある。

 

「こいつって、いまどこにいますか?」

 

「…ああ、こいつは」

 

少しくらい表情を見せながら黄泉川は口を開こうとしたその時、突如爆発音が響いた。周りの教員が慌てる中、黄泉川は冷静にそばの受話器を取り、近隣のアンチスキルの詰所へと連絡を始め、土御門と弁当を放り投げた健太はそろって窓の外を見た。

 

 

 

時間を少し巻き戻す。学園都市某所にある上空を遊覧する飛行船のコントロールセンターにあの男、駿河の姿があった。

 

[Legion]

 

メモリの効果でレギオンドーパントへとかわった駿河はセンターの警備員や職員たちを電撃でのしていく。その力の前に重要度の低いセンターの防衛力では歯が立たなかった。

 

「ここか…」

 

レギオンゾディアーツは飛行船のコントロールルームへと到達する。そしてコンソールを操作して、飛行船の行き先を変えていく。

 

「…時間がないんだ、俺には…」

 

一度拳を強く握ったレギオンドーパントはコンソールのエンターキーを押すが、しかしそれて下のシフトキーを叩いてしまった。レギオンドーパントはもう一度ゆっくりエンターキーを押すと施設の外へとでた。

 

 

 

 

同じころ、第二〇学区上空をゆっくりと飛行船が飛行していた。かなりの高さを飛行するはずの飛行船…だが、その上には人影があった。クロークを纏い、巨大な杖を持った女性型の怪人は風をものともせず、懐から二本のガイアメモリを取り出した。

 

「さて、ショーの始まりです」

 

その口から漏れたのは意外にも男の声だった。そして怪人はゆっくりとガイアメモリを起動させる。

 

[Jakaen]

 

そして起動したガイアメモリをゆっくりと飛行船へと差し込んだ。

 

 

 

 

 

そして時間は現在へと戻る。窓の外を見た健太と土御門が見たものは、真っ赤に燃えながら火の玉を振り撒きつつこちらへと向かってくる飛行船だった。

 

「な、なんだありゃ…」

 

「あれ、こっちに向かってきているようにゃあ…」

 

燃え上がる飛行船を青髪ピアスにコブラツイストをかけられていた上条たちも見上げていた。

 

「あ、あの飛行船燃えとるで!?」

 

「しかも、火の玉を下に落としてやがる!」

 

 

同じころ、柵川中学の屋上のドアが勢いよく開かれ、中から佐天、初春、春上そして枝先が出て、燃え盛る飛行船を見上げていた。

 

「あの飛行船、第二〇学区から一六、八学区を経由して第七学区へと向かってるみたいです…一六、八学区は火炎弾による攻撃で多数のけが人が出てます!」

 

「はやいとこ、止めないと大変なことになっちゃう!」

 

「よ~し!」

 

初春と佐天の会話を聞いていた枝先が気合いを入れるとポケットからメモリーディスプレイとカプセルのようなものを取り出し、メモリーディスプレイにセットする。

 

「お願い!リドちゃん!」

 

[Realize]

 

電子音と共に枝先たちの真上に先日グレートイカロスとともに戦った怪獣『マッハリドリアス』が出現し、羽をはばたかせながら飛行船へとむかって飛び立つ。

 

「枝先さん、あのまま撃ち落としてしまうと大惨事になってしまいます!人口の少ない第一七学区に誘導してください!」

 

「うん!リドちゃん、風を起こして飛行船を移動して!」

 

「ピイ!」

 

枝先の指示に従いリドリアスが空中で静止して風を起こして飛行船を移動させようとする。その姿を地上から一人の男が見ていた。

 

「そうはいかないんだよね…この間の失敗を挽回しないと藤岡に殺されちまうからな」

 

その男は以前、『シャドードーパント』としてディケイドたちと戦った煙田という男だった。煙田は怪獣の人形とスティック状のアイテムを取り出し、スティック状のアイテムで人形の足をスキャンした。

 

[ダークライブ!ケムラー!]

 

電子音から数秒後、上空で静止するリドリアスに向かいビームが放たれる。

 

「!?リドちゃん!避けて!」

 

枝先の指示がリドリアスに届くよりも先にビームがリドリアスの右の羽を撃ち抜いた。

 

「ピイイイイ!?」

 

羽が動かなくなり、降下して地面へと落下するリドリアス。地面に激突したリドリアスのまえに四足歩行の怪獣が現れた。背中には羽のようなものが二枚付いており、顔はサンショオウオのような怪獣だ。

 

「なに?あの怪獣」

 

「ええっと…」

 

佐天の問いに初春が携帯端末を操作してアーカイブをチェックする。

 

「ありました!ドキュメントSSSPに記録のある、毒ガス怪獣ケムラーです!」

 

「リドちゃん!さきにその怪獣を攻撃して!」

 

枝先の指示でリドリアスが鋭い爪を振りかざすが、ケムラーは羽のようなもので自分の体を包んでしまい、リドリアスの爪は弾かれてしまう。続いて、リドリアスは口から光線は放つがこれも弾かれてしまう。

 

「リドちゃん!もう一回光線を…」

 

[Vanish]

 

枝先の指示の前にリドリアスが粒子となって消滅してしまう。じつは枝先の使う『マケット怪獣』は一分間しか怪獣を実体化させることができないのだ。

 

[衿衣、私が行こう]

 

「うん、コスモス!」

 

今度は春上がコスモプラックをかざしコスモスへと変身、上空からケムラーへと飛び蹴りを決める。しかし、固い羽のような甲羅に弾かれてしまう。格闘戦を不利と見たコスモスは好転しながら距離を取り、ゆっくりと両手を広げる。

 

「ハア!セヤ!」

 

そのままゆっくりと右掌を前に突き出すコスモス。すると腕からオーロラのような光線が発射され、ケムラーを包んでいく。これは『フルムーンレクト』と呼ばれるコスモス・ルナモードの得意技である。相手の感情を静めて大人しくさせる興奮抑制光線であるフルムーンレクトを浴びれば、どんな怪獣もおとなしくなるはずだが…

 

「グオオオ!」

 

しかしケムラーはおとなしくなることはなく、コスモスへと突っ込んでいく。

 

「ノワァ!」

 

ケムラーの突進を喰らいコスモスは後方へと吹き飛ばされ、解体中のビルへと突っ込んでしまう。

 

「グオ!!」

 

「させません!」

 

追撃をくわえようとするケムラーを横から現れたダイボウケンドリル&ショベルが受け止める。

 

「ダイボウケンドリル&ショベル、ファーストギアインです!」

 

「御坂さんたちとも連絡とれないから、二人だけだけど頑張らないとね!」

 

ケムラーの動きをダイボウケンドリル&ショベルが止めている間にコスモスは立ち上がり、コロナモードへと変身するとダイボウケンを踏み台にしてケムラーの後ろへと回るとしっぽを掴んでケムラーを投げ飛ばした。

 

 

 

 

燃え盛る飛行船を青髪ピアスたちに任せて、上条と土御門は変身して飛行船のコントロールセンターへと向かっていた。

 

「あんな化け物みたいな飛行船がいまさらコントロールできるのかよ、土御門?」

 

「ああ、健太先生の話だとコントロール用の電波はまだ生きているみたいぜよ。それを変更すれば、飛行船を安全なところへ移動でき…上やん、そこ右にゃあ!」

 

マッシグラーの後部に乗るシンケンブルーの指示でフォーゼが運転を続ける。そして数分後、コントロールセンターへと到着した。

 

「おりゃあ!」

 

マッシグラーのブースターを操作し、閉鎖された門を飛び越えて施設内に飛び込むフォーゼたち。

 

「このまま、コントロールルームまで突っ切るぞ!」

 

マッシグラーが猛スピードでドアをぶち破り、廊下を進んでいく。そしてコントロールルームのドアへとたどり着き、そのドアを破りながら、中へと飛び込んだ。しかし…

 

「うわあ!?」

 

中の光景を見てフォーゼは驚いた。それもそのはずで中は星々が煌めき、太陽や土星、果ては地球が浮かぶ宇宙空間となっていたからだ。

 

「ど、どうなってるんだこれは…」

 

「もしかして、敵の罠…」

 

困惑する二人に向かい、巨大な彗星が凄まじい勢いで向かってきた。二人は彗星によって吹き飛ばされ、気づくとコントロールセンターの門の近くで倒れていた。

 

「いてて、なんだ今のは…」

 

「どうやら幻覚のようぜよ…」

 

二人がゆっくりと立ち上がると、あたりに鈴のような音色が響いた。二人があたりを見渡すとそこに杖を持ち、クロークを羽織った怪人が彼らの前方に立っていた。

 

「私の作った宇宙は楽しんでもらえたかな?」

 

「お前があの幻覚を見せていたのか、これでも喰らえ!」

 

[Gatling]

 

[Gatling On]

 

左足に出現したガトリングモジュールがうなりをあげて大量の弾丸が怪人を襲うが、それを何者かが高速移動して、すべて弾いてしまう。そして弾丸を弾いたのはあのレギオンレオゾディアーツだった。

 

「お前は!」

 

「あの時は見逃したが、今度は容赦しないぜ」

 

「駿河くん、助かりましたよ」

 

クロークを羽織ったレギオンレオゾディアーツと怪人がコントロールセンターの前に並び立つ。

 

「どうやら、あの二人を倒さなきゃ中へは入れないようだにゃあ…」

 

「上等だ!仮面ライダーフォーゼ!お前らの幻想を殺させてもらうぜ!」

 

燃え盛り火炎弾を振り撒く飛行船が第七学区に迫る。果たしてフォーゼたちは飛行船を止めることができるのか?後篇へ続く


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