とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ)   作:マッスーHERO

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投稿遅れて申し訳ありません。
先日驚くほどリクが多いといってますが、みなさんが驚くほどの量ではありません。
私がただ単に処理できない量なだけです。
みなさんに嘘つくような感じになってしまって申し訳ありません。


邪教の凶星・忘却の友(前編)

慣れとは恐ろしいものである。一度慣れてしまうとそれ以前の習慣だったことがうまく出来なくなり、自分を危険に陥れてしまうこともある。

 

「ワ、ワ、ワ…」

 

この男、上条当麻もまた、慣れというものの恐ろしさを骨の髄まで体験していた。というのもこのところ、やれ怪人だのやれ怪獣だのと戦っていた上条当麻は知らず知らずのうちにそれらが現れて悪さをするというとんでもない不幸のせいで私生活での不幸が少なくなっているという幻想を感じていた。しかし、あの超弩級不幸少年上条当麻の不幸にそもそも上限などあるはずがない。さらに言えば上条当麻の不幸には高確率で女が絡むのだ。

 

「ワ、ワ、ワ…」

 

長い前書きはこのくらいして、現在の上条の状況を簡単に書くと…扉を開けたら半裸の女性が二人いたよ、やったね!という状況であった。

 

「…」

 

「…」

 

「ワ、ワ、ワ…」

 

なぜ、こんな状況になったのか詳しく説明することにしよう。上条は今日も健太と小萌からきつい補習を受けていたので、オルソラにインデックスを預かってもらうように連絡をした。ようやく補習から解放されインデックスを迎えにオルソラたちの部屋へとやって来た上条は迂闊にもノックをせずにドアを開けてしまったのだ。ドアは簡単に開き、中を覗きこんだ上条が見たのはバスタオルを体に巻いただけのルチアとアンジェレネの二人だったというわけだ。

 

「ワ、ワ、ワ…」

 

上条は壊れたスピーカーのようになっているが、意外にも悲鳴や叫び声はあがっていない。しかし、アンジェレネはすでに涙目だし、ルチアは顔を赤らめるどころじゃないほど真っ赤になっているし、居間ではインデックスとアニェーゼが無言で立ち上がっているし、オルソラはただ笑っている。

 

「(お、落ち着け上条当麻…こんな修羅場はいくらだってあったじゃないか…イタリアの時だって…女王艦隊の時だって…あれ、俺詰んでる?)」

 

そんなはずはないと上条は以下の選択を考え出した。

1、謝る→いい台詞だ、感動的だな。だか無意味だ。

2、鍵くらい閉めろ!と逆ギレ→俺は幸せになりたかっただけなのに…

3、オルソラに助けを求める→王蛇式ガードベント

4、逃げる→オッペケテンムッキー!からのムッコロス

5、自分の部屋へ→ウンメイノー

6、土御門の部屋へ→オンドゥルルラギッタンディスカ!

7、現実は非情である

 

「(よし、答えは7だ!)来い!」

 

「「「死ねや!変態!」」」

 

圧倒的暴力が上条を襲った。

 

 

 

翌日、高校の教室には力尽きた上条当麻の姿があった。

 

「う…」

 

「上やん、どないしたんや?」

 

「聞かないほうがいいぜよ。どうせまた女絡みにゃあ」

 

「なんかあったの?」

 

薄情な二人の後ろから吹寄が現れた。

 

「また上やんの女絡みにゃあ」

 

「ふーん…あんたが悪いわ」

 

数秒で薄情の仲間となった吹寄の手には一枚の紙が握られていた。

 

「ん?吹寄、それなんだ?」

 

「これ?朝、道で配ってたんだけど…」

 

吹寄は紙を上条の机に広げる。

 

「…拝星教?」

 

「なんやこれ?」

 

「たぶん宗教じゃないかしら?最近話題らしいわよ。能力のレベルが上がったとか、願いがかなったとか」

 

その言葉に青髪ピアスが笑いだした。

 

「宗教?ぷぷっ!この科学の総本山、学園都市で宗教やて」

 

「ふーん、じゃあ、あんたはクリスマスとかバレンタインもしないんだ?」

 

「吹寄ちゃん、それは違うで。宗教と現在のクリスマス、バレンタインは大きくずれとるんや。例えばバレンタインは十字教の昔の偉い人、聖バレンチヌスが…」

 

青髪ピアスのよくわからない宗教談義を無視して上条は土御門をちらりとみる。視線に気づいた土御門は両手を少し広げて首をふった。

 

「(知らない…か、でもあいつが知らないってのも逆にあやしいな・・・)」

 

「当時の新聞は一部の人にしか読まれてへんかった…」

 

青髪ピアスのバレンタイン解説を流しつつ上条はもう一度拝星教のチラシを見た。

 

 

 

 

 

授業後、上条は第七学区のスーパー『体育会系のために!!』へと向かっていた。言うまでもなくあの暴食シスターの胃袋をおとなしくさせるメニューの材料を購入させるためだ。

 

「うん?あれは…」

 

スーパーの入り口ではオルソラが数人の女性に取り囲まれていた。

 

「おい、どうしたんだオルソラ?」

 

「あらあら、まあ、こんなところで偶然ですね」

 

「あ、この人のお知り合いの方ですか?この人全然話が通用しなくて困ってたんですよ」

 

オルソラを取り囲んでいた女性の一人が上条に近づき、チラシを手渡す。それは今朝、吹寄が持っていたのと同じものだった。

 

「私たちは『拝星教』という宗教団体です。もしよかったら入信しませんか?」

 

「え?」

 

上条は戸惑った。さきほどの青髪ピアスではないが、科学の総本山学園都市で宗教団体が勧誘など前代未聞のことだからだ。

 

「あ、すいません。俺、宗教とかは…」

 

「お布施などは一切受け取りませんので、一度でいいから見学に来てください!お願いします!」

 

半ば強引にチラシや資料を上条に渡す女性。もちろんだが、上条にそんな宗教に入信する気持ちなどさらさらない。そんなものを信じて不幸が治るのならもうすでにやっているし、彼と宗教が交差した場合、今までによかったことなど一つもなかったのだ。女性はオルソラにも強引にチラシを渡し、別の人の勧誘に向かった。

 

 

 

 

「とうま、なにこのチラシ?」

 

「さっき、スーパーの前で貰ったんだ」

 

「ふーん」

 

寮に帰り、晩御飯を作っていた上条にインデックスが鞄のよこに置いてあったチラシについて質問し、上条は簡単に返答する。なにもすることがないのかインデックスはチラシを読み始めた。それなら少しは手伝ってほしいと心のなかで上条は思う、あくまで心のなかで…

 

「拝星教…宇宙に夢を、星に願いを…星座をモチーフにした魔術の使い手たちかな」

 

「星座…」

 

インデックスの何気ない一言に上条は強く反応した。すこし前の話になるがオリオン座の魔術を使用する女がスイッチを用いてゾディアーツと呼ばれる怪人となり、上条たちに挑戦してきたことがあった。フォーゼがまだマグネットステイツへの変身ができなかったとはいえ、複数のヒーローを相手に善戦し、エレキ・ファイヤーを一時的に使用不能にするという被害を残した。彼女は最後にスイッチを買った人物からのメッセージを上条に残して意識を失ったのだ。

 

「(あの後、オリオンゾディーアーツについて調べてみたことがあった…オリオンゾディーアーツはそこまで強い怪人じゃない、それでも魔術によってあそこまで強化されていた…)」

 

今の自分にはNSマグネットスイッチも様々な戦隊戦士への変身能力もある…だが、それでも強い魔術や能力を持ってゾディーアーツ化したら、勝つことはできるのか…

 

「これはどういうことなんだよ!!!」

 

「うわ!?」

 

思考に沈んでいた上条をインデックスの大声が覚醒させた。

 

「どうした、インデックス!?」

 

「ここを見てほしいんだよ!」

 

インデックスは見ていたチラシの一部分を指でさしながら言った。その部分を上条が覗き込む。

 

「ええっと…『十字教のような邪教を信頼する必要などもはやないのです』」

 

「十字教が邪教とはどういうことなんだよ!」

 

怒り狂うインデックスは手足をバタバタさせて暴れまくる。冷静に考えるとインデックスはイギリス清教の敬虔(?)なシスターだったなと上条はリアルに思い出していた。

 

「ゆるせないんだよ…とうま!晩ご飯が終わったらここへ乗り込んで文句を言ってやるんだよ!」

 

「はあ!?馬鹿なこと言うなよ、インデックス。そんなことできるわけ…」

 

「昨日のこと!小萌や秋沙に言うんだよ!」

 

「よし、いこう!」

 

多少無謀なことでも、明日からの生活の方が重要だと思った上条を誰が(とくに男)責めることができよう…しかしこの選択が上条たちを思わぬ出来事へと巻き込んでいくことになるとはこの時、だれも気づくことができなかった。

 

 

 

同じころ、上条の寮の管理人用の部屋では、ルチアがオルソラのもらってきた同じ広告を見て怒りに震えていた。

 

「い、異教のさ、サルがいい気になりやがって…」

 

「お、落ち着いてくださいシスタールチア!」

 

今にも血管が二、三本切れそうなルチアは広告を真っ二つに引裂き、アニェーゼに詰め寄った。

 

「シスターアニェーゼ!今すぐ乗り込んでこんな組織、ぶっ潰してやりましょう!」

 

「…」

 

ルチアの言葉にアニェーゼは黙っていたが、やがて口を開き、こう言った。

 

「…ほっときましょう」

 

「はぁ!?」

 

アニェーゼの予想外の返答にルチアは驚く。

 

「確かにこんなことを書かれるのは不本意です…でも我々は教会に身を置くもの…新興宗教の戯言と聞き流しちまいましょう」

 

「し、しかし!」

 

「話は終わりです。さあ飯にしましょう」

 

それだけ言うとアニェーゼはオルソラのいるキッチンのほうへと消えていった。残されたルチアは歯軋りをしながらちぎれたチラシを見つめた。

 

 

 

第一二学区の拝星教本部のあるビルの前に上条とインデックスは来ていた。

 

「ほら見ろよインデックス。ロビーにひとがいないだろ?もう閉まってるよ」

 

「…」

 

暗く静まりかえったビルの中を指差して上条はそう言うが、インデックスは何も返答しない。みるとインデックスの表情は先程の怒りだけのものではなく、妙に冷静なものになっている。

 

「どうした、インデックス?」

 

「このビル…微かにだけど魔術の気配を感じるんだよ」

 

「なに!?」

 

再びビルを見上げる上条。インデックスのこの手のことに関する能力はかなり…いや100%信用できる。もしそうならこのビルのなかに魔術師がいるということだ。

 

「…そうとわかりゃあ、せめて目的だけでも調べねえとな」

 

真剣な表情でフォーゼドライバーを取り出す上条。

 

[3・2・1]

 

「変身!」

 

フォーゼへと変身し、いざ突撃!…とはさすがにせずにフォーゼとインデックスは近くの生け垣に隠れ、静かに機を待っていた。そして…

 

「はあ、一階だけの警備なんていなくても変わらないよな」

 

警備員があくびをしながら自動ドアをくぐった瞬間フォーゼは行動を起こした。

 

[Stealth On]

 

「インデックス、行くぞ」

 

ステルスモジュールを出現させ、インデックスを抱えて姿を消すフォーゼ。そして警備員の上をジャンプして通過し、建物の中へと飛び込み、そのまま二階へとかけあがる。

 

「うん?いま何か通ったような…気のせいか」

 

首をかしげつつも警備員はそのまま外へと出ていった。

 

 

 

「やっぱり二階以上は防犯設備がないな…あの警備員の言った通りだ。インデックス、魔術の防犯装置かなにかはあるか?」

 

「とりあえず近くにはないんだよ。なにかの儀式の邪魔になるから設置してないのかな…」

 

二人がいるのはビルの二階の階段の前だった。フォーゼはすでに変身を解除している。

 

「集会をする部屋は…25階!?嘘だろ」

 

案内板を見ながら上条は言った。隠れて侵入している以上エレベーターは使えない…つまりこれから階段で20階以上を登らなければならないことになるのだ。

 

「行くしかないか…」

 

覚悟を決めて階段を登り始めた二人。苦しく長い階段を登り終えて、漸く目的の階にたどり着いた二人はすこし息切れをしている。

 

「はあ、はあ…なんでこんな高いところに…」

 

「お、おそらく星座を使った魔術儀式のためだと…思うんだよ…」

 

息を整えて二人は慎重に25階のフロアを探索し始めた。

 

「奥の部屋が集会場か…」

 

「部屋の配置からボタンの位置にいたるまで魔術的な要素で溢れてるんだよ…とてつもない魔術なのはわかる、でも一体なんの魔術のためなのか…」

 

ぶつぶつといいながら周りを観察するインデックス。そんな彼女と上条を静かに見ているものがいた。そして…

 

「動くな!」

 

ドンっと何かが着地する音とともに上条の首筋にナイフのようなものが突き立てられる。さすがの上条もこの状態にはすこし慌てる。

 

「…何だ、あなたたちでしたか」

 

後ろの人物はそう言うとナイフを引っ込める。上条が振り向くとそこにはルチアとアンジェレネが立っていた。

 

「お、お前ら!こんなとこでなにやってんだ?」

 

「それはこっちの台詞です」

 

ルチアは果物ナイフを懐にしまいながら言う。

 

「私たちはこの新興宗教について調査していたのです」

 

「シ、シスタールチアと文句を言いに来たら、魔術の気配を感じて潜入したんです。あそこから」

 

そういいながらアンジェレネは上の空調ダクトを指さした。お前らは仮にも女の子だろうと上条は心の中で突っ込むが、口にはださない、絶対に…俺だって命は惜しいのだ…。そんなこと考えていた上条だったが、ふとあることに気づいた。

 

「…なあ、ルチア。あのダクトって奥の集会場にはつながってたか?」

 

「え?ええ、つながってましたが、それがどうしたんですか?」

 

「いや、それがわかれば…」

 

 

 

そのころ、25階の集会場では何人ものローブの人間が手をつなぎ輪になって空を見上げていた。その中心にはアタッシュケースが鎮座している。

 

「宇宙に夢を!星に願いを!」

 

「宇宙に夢を!星に願いを!」

 

「宇宙に夢を!星に願いを!」

 

人々は空に向かって祈りをささげている。その姿を修道服の男たちが周りから眺めている。それは異様な光景だった。もちろん科学サイドにとってもだが、これは魔術サイドからみても異様といえた。先ほどインデックスもつぶやいていたが、この魔術儀式自体は確かに規模の大きい物だが、それが何の結果を生み出すのかまったくわからないのだ。さらに言えば、魔術を行使すればダメージを喰らうはずの能力者たちも涼しい顔で儀式に参加していることも奇妙だった。

 

「おい、この魔術はなんのためのものなんだ?」

 

「さあ、しかし白王さまの仰った通りなら我々の十字教への恨みを晴らし、願いをかなえるものだろう…」

 

周りの魔術師たちがそんなことを話している。その姿を空調ダクトからあるものが見ていた。

 

「いいぞ、バガミール」

 

そう、本当に久しぶりに登場したフードロイド・バガミールである。最近新たな改良が施され、TPCメモリーディスプレイへと映像が送れるようになったのだ。

 

「最初からこうすればよかったかも…」

 

「そういうなよ…それよりインデックス。この儀式はなんのためのものかわかるか?」

 

「…なにかのエネルギーを中央の箱に貯めようとしてるみたいなんだよ…」

 

「記号としてこのビルを宇宙として置き、あのアタッシュケースを地球とおいてるところまではわかるんですが…」

 

インデックスとアンジェレネがそう解析する。その時、突如としてバガミールからの映像が乱れる。

 

「ど、どうしたんだ、バガミール?いったん戻れ」

 

上条の命令通りバガミールが戻ってくるが、回路がショートを起こしてかなり危険な状態だ。

 

「(おかしい、どこからも攻撃を受けたわけでもないのに…)」

 

バガミールには外部から攻撃を受けた気配が少しもない。そのままバガミールはフードモードへと戻り、カメラスイッチが排出されてしまう。しかしカメラスイッチにはダメージの跡がない。

 

「どういうことなんだ?」

 

疑問を浮かべる上条だったが、その原因を探す余裕はすぐになくなった。なぜなら…

 

「あ、あぶない!」

 

ルチアの叫び声を聞いて、上条が身を屈める。その上を槍のようなものが凄まじい勢いで通過した。

 

「く!」

 

そのまま後ろを見ずに前転し、フォーゼドライバーを腰へ巻きながら上条は周囲を見た。そこには七体の怪人たちが立っていた。

 

「体に星座…ゾディーアーツか!インデックス!隠れてろ!」

 

「うん!」

 

「ルチア!アンジェレネ!行くぞ!」

 

「言われるまでもありません!」

 

「はい!」

 

三人は変身アイテムを構え、ゾディーアーツたちに立ち向かう。

 

[3・2・1]

 

「変身!」

 

「チェンジソウル!セット!レッツ!ゴー・オン!」

 

「ガオアクセス!サモン!スピリット・オブ・ジ・アース!」

 

三人の体をスーツとマスクが包み込み、ヒーローの姿へと変貌させる。

 

「宇宙キター!仮面ライダーフォーゼ!お前らの幻想、殺させてもらうぜ!」

 

「キラキラ世界!ゴーオンシルバー!」

 

「麗しの白虎!ガオホワイト!」

 

名乗りを終えて三人は七体のゾディーアーツと挑む。

 

[Crow Radar]

 

[Crow Radar On]

 

「ジェットダガー!」

 

「イーグルソード!」

 

七体のゾディアーツに近接武器で応戦する。さらにその際にフォーゼはレーダーモジュール でゾディアーツたちをスキャニングする。

 

「『No Date』!?新種のゾディアーツか…どんな能力なんだ?」

 

「落ち着いてください。ボディの星座で大体の能力はわかります」

 

「…あのルチアさん?上条さんのような馬鹿高校生は自分の星座の形すら全くわからないのですが…」

 

「なら死になさい」

 

「率直!?」

 

ゴーオンシルバーはそういうが、星座の形なんていちいち覚えている人間そうはいない。作者は魚座だが、オリオン座と白鳥座くらいしか形を知らない。一般的に黄道十二星座の名前くらいは知っていてもその他の星座の名前を知っている高校生は滅多にいないだろう…。

 

「とうま!今目の前にいるのはアウリガ、つまりぎょしゃ座の怪人なんだよ!」

 

「ぎょしゃ…座?」

 

槍を装備し、騎士のような装備を身に付けているゾディアーツを指さして言うインデックスだが、フォーゼにはいまいち伝わっていない。そんなフォーゼにこんどは別のゾディアーツが襲いかかる。

 

「こいつはなに座なんだ、インデックス!?」

 

凄まじい怪力でクローモジュールを曲げてゆくゾディアーツに慌てながら、フォーゼはインデックスに尋ねた。どうやら水生動物のようで胸部には穴のようなものがある。

 

「そいつはセタス…日本語だとくじ…」

 

インデックスの言葉のすべてをフォーゼは聞き取ることができなかった。なぜならセタスゾディアーツの胸部の穴から発射された真空弾がフォーゼを吹き飛ばし、壁に叩きつけたからだ。

 

「な、なるほど…く、くじら座か…覚えとくぜ!」

 

[Elek]

 

[Elek On]

 

すばやくクロースイッチとエレキスイッチを入れ替え、エレキステイツへとステイツチェンジを行いセタスゾディアーツへとビリーザロッドを構えて突っ込むフォーゼ。しかしその間にべつのゾディアーツが立ちはだかる。しかしフォーゼはすばやく反応し、バックステップをしながらプラグを中央に差し込み、柄にエレキスイッチを装填する。

 

[Limit Break]

 

電子音とともにビリーザロッドの刃に凄まじい電流がほとばしる。

 

「(なんだか今日はいつもより帯電する電気が多いような…)まあいいや!ライダー100億ボルトシュート!」

 

セタスゾディアーツともう一体のゾディアーツに雷光の刃が迫る。しかしもう一体のゾディアーツはこれを避けようとせず、徐に手をかざす。同時にゾディアーツの掌に描かれた時計の針が目まぐるしく動き出す。そして不思議なことが起こった。

 

「な、なに!?」

 

突如、雷光の刃の動きが遅くなり、その隙に二体のゾディアーツはそれを軽く避けてしまう。

 

「さすがのバカ上条さんでもあいつの星座は見当がつくさ…おそらく時計座だな。周囲の時間を操るっているのか…」

 

とりあえず自分が相手をしなければならないのはくじら座のセタスゾディアーツ、時計座のタイムゾディアーツ、そしてぎょしゃ座のアウリガゾディアーツである。一番厄介なのは時間を操るタイムゾディアーツであるが、いまだに正体の掴みきれていないぎょしゃ座のアウリガゾディアーツも不気味であるといえる。

 

「(他の二人は大丈夫か?)」

 

フォーゼはちらりと他の二人を見る。ゴーオンシルバーは燭台のようなデザインのゾディアーツと体に鱗のついたゾディアーツと戦っており、ガオホワイトは獣のようなゾディアーツと黒い羽毛に包まれたゾディアーツと戦っている。

 

「(蝋燭座、さかな座、獣座、鳥座か…そんな星座あったんだ…)」

 

戦闘では結構知略的な一面を見せる上条だが、実際はただの高校一年生である(しかもバカ)。蝋燭座はともかくさかな座なんてものがあればうお座は形無しになってしまうし、獣座や鳥座を認めたら獅子座や白鳥座はどうなるのか聞いてみたいものだ(そんなこと言ってる作者もこんな星座があることは原案を貰ったときに初めて知ったが…)。ちなみにゴーオンシルバーが戦っているのはろ座のフォルナクスゾディアーツととびうお座のボランスゾディアーツ、ガオホワイトが戦っているのはオオカミ座のラプスゾディアーツときょしちょう座のツカナゾディアーツである。

 

「きゃあ!」

 

その時あたりに悲鳴が響く。フォーゼが驚いて周りを見ると自分と戦っていたアウリガゾディアーツの姿がない。周囲を探すとアウリガゾディアーツは隠れたインデックスに襲いかかっていた。

 

「インデックス!てめえ!インデックスを離せ!」

 

フォーゼの叫びにアウリガゾディアーツは応じるかのようにインデックスを投げつける。戦闘の余波で割れた窓のほうへと…

 

「イ、インデックス!」

 

[Rocket]

 

[Rocket On]

 

すばやくベースステイツへと戻り、ロケットモジュールでビルの外へと飛び立つフォーゼ。落下していくインデックスをフォーゼは左手でキャッチし、地面に降り立った。

 

「大丈夫か、インデックス!?」

 

「う、うん…」

 

さすがのインデックスも25階からの落下は肝を冷やしたようで、顔色が悪い。そんな二人のもとにゴーオンシルバーと彼女に担がれたガオホワイトが続けて降り立った。

 

「禁書目録は無事ですか?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

フォーゼとゴーオンシルバーが話をしている間に七体のゾディアーツも彼らを囲むように地面に降り立つ。

 

「インデックス。逃げろ!土御門か、アニェーゼにこのことを伝えにいくんだ」

 

フォーゼの言葉にインデックスは黙って頷き第七学区のほうへと走り出した。残されたフォーゼたちはゾディアーツと乱戦を開始する。

 

「はあ!おりゃあ!」

 

しかし多勢に無勢、七対三ではさすがに勝負が見えている。ゾディアーツ軍団の猛攻に三人は吹き飛ばさてしまう。

 

「く、こうなったら…」

 

[N Magnet Launcher Gatling S Magnet]

 

[N][S][[ Magnet On]]

 

共鳴する電子音とともに重装甲のマグネットステイツへと変身したフォーゼはさらにランチャー、ガトリングのスイッチをオンにする。

 

[Launcher Gatling On]

 

これこそ現在のフォーゼ、最高火力を持つ姿である。すこしの前のスーパーアポロガイストとの戦いでは押し負けているが、ノーマルゾディアーツには負けない威力があるだろう。

 

[Limit Break]

 

[Launcher Gatling Limit Break]

 

「喰らえ!ライダー超電磁トライデントボンバー!」

 

凄まじい破壊力を持つ攻撃がゾディアーツたちを貫く!…という理想は脆くも打ち砕かれてしまった。別に防がれたわけではない。

 

「ぬわぁ!?」

 

フォーゼが反動に耐えきれず空中で回転しながら吹き飛ばされたのだ。3つの攻撃は明後日の方向へ飛び散り、ゾディアーツにダメージを与えることは出来なかった。

 

「(馬鹿な…いくら威力があるとは言え、マグネットステイツが反動で吹き飛ばされるようなことがあるわけないだろ)」

 

確かにスーパーアポロガイスト戦ではフルパワーでの長時間発射により後方へ飛ばされることはあった。しかしあそこまで吹き飛ばされるような威力があるわけではない。

 

「(まてよ…ライダー100億ボルトシュートもやけに威力が…!もしかしてバガミールが壊れたのは…)」

 

倒れこみながらあることを察するフォーゼ…しかし、そのことを確認する暇もなく押しかかる七体のゾディアーツ。ゴーオンシルバーとガオホワイトが応戦するが、とても防ぎきることはできない。何とか立ち上がりマグネットステイツのパワーで襲い掛かるセタスゾディアーツと応戦するフォーゼだが、そんな彼の鼓膜を不気味なエンジン音が揺らす。

 

「な、なんだこの音は…」

 

セタスゾディアーツの後ろを見る、フォーゼ。そこにはオートバイに跨り、エンジンを吹かすアウリガゾディアーツの姿があった。

 

「ぎょしゃって、ぎょ者…つまり騎士みたいなもんなのかよ!?」

 

驚いた一瞬の隙を突かれ、セタスゾディアーツに背負い投げの要領で投げ飛ばされるフォーゼ。

 

「ぐお!」

 

満足な受け身などとれるはずもなく、地面に叩きつけられて悶絶するフォーゼ。さらに彼を襲う獣のように獰猛なマシン。

 

「く!なめるな!」

 

なんとか立ち上がりアウリガゾディアーツのオートバイを避けるフォーゼだが、アウリガゾディアーツはターンして追撃を仕掛ける。攻防は優れたフォーゼ・マグネットステイツだが、スピードでは他のステイツに明らかに遅れをとっている。ステイツを変えようにもスイッチを変えることすらできない連撃に苦しむフォーゼ。

 

「うわあ!ぐわ!く…マッシグラー!」

 

フォーゼの叫びに呼応し、マシンマッシグラーがフォーゼのもとへとやってくる。そしてアウリガゾディアーツのオートバイを弾く。その隙にフォーゼはベースステイツへと戻り、マッシグラーに飛び乗る。そしてスロットルを思いきり捻ってアウリガゾディアーツに突っ込む。二人のマシンが何度も交錯し、火花を散らす。

 

「これならどうだ!」

 

マッシグラーをターンさせ、後部のブースターからの噴射でアウリガゾディアーツを吹き飛ばすフォーゼ。これにはアウリガゾディアーツも反応できず、地面に叩きつけられる。さらにフォーゼはウィリー走行で他でゾディアーツたちを次々に弾き飛ばしていく。

 

「おりゃ!」

 

「ふん!」

 

しかしセタスゾディアーツは怪力でマッシグラーを受け止めてしまう。懸命にスロットルを捻るフォーゼだが、マッシグラーはすこしも前へ進もうとしない。セタスゾディアーツはマッシグラーをフォーゼごと投げ飛ばし、フォーゼはマッシグラーの下敷きになってしまう。なんとかマッシグラーをどけて立ち上がるフォーゼだが、ダメージが大きいのかふらついている。

 

「「きゃあ!」」

 

ゴーオンシルバーとガオホワイトもゾディアーツ軍団の攻撃でダメージを受けて、フォーゼのもとへ飛ばされてしまう。

 

『ふふふ…』

 

ゾディアーツたちが三人に止めを指そうと迫る。絶体絶命を絵に書いたような状況だった。しかしその時…

 

[Advent]

 

電子音とともに拝星教ビルのガラスから赤い龍が出現し、ゾディアーツたちを吹き飛ばした。

 

「な、なんだあの龍は…」

 

「イノケンティウスと違ってそいつはじゃじゃ馬でね。ここまで操れるようになるのには僕でも骨が折れたよ」

 

フォーゼの言葉に答えるかのように聞き慣れた男の声があたりに響く。フォーゼが周囲を見渡すとその戦士は拝星教ビルのガラスの中にいた。赤いボディに龍の紋章…そう仮面ライダー龍騎である。

 

「が、ガラスの中に!?」

 

「面白いだろう、鏡や反射物を入り口にしてもうひとつ世界に入ることができるんだ。武器やあの龍が鏡の中から出てきたから何かしら秘密があると思って、調べて見たら見つけてね。君みたいに無駄にたくさんの能力を持つよりもこういう特殊な能力がひとつある方がよっぽど優秀だよ」

 

そう言いながらゆっくりとガラスの中から出てくる龍騎。

 

「随分と手酷くやられているじゃないか、そんなことであの子を守れるのかい?」

 

「ちょっと事情があってさ…本気が出せないんだよ」

 

「ほう、君の口からそんな弱気な負け惜しみが聞けるとはね」

 

立ち上がったフォーゼは龍騎と並び立ちゾディアーツを睨む。その後ろには先程の赤い龍が飛行し、ゾディアーツたちに威嚇をしている。

 

「…一時退却すべきだな」

 

アウリガゾディアーツは低い声でそういうと、七人のゾディアーツは一瞬にしてその姿を消した。おそらくクロックゾディアーツの能力で加速したのだろう。残された四人はゆっくりと拝星教ビルを見上げた。

 

 

 

次の日、拝星教ビルの向かいの少し背の低いビルの屋上には上条、土御門、そしてステイルの姿があった。三人の視線は拝星教ビルに向けられていた。

 

「じゃあ、お前らは前からあの宗教団体ことをマークしてたのか?」

 

「ああ、怪人騒ぎの始まったころ、数名のローマ聖教が突如としてある宗教へ宗旨替え(信じる宗教を変えること)を宣言したにゃあ。それが拝星教ぜよ」

 

「学園都市へ潜入したと情報が出たため、僕が派遣されて内部の土御門や建宮たちとともに制圧を考えていたんだが…馬鹿のせいですべて台無しだ」

 

「あれは、俺じゃなくてインデックスが…」

 

「まあまあ、上やんたちのおかげでやつらの武装がだいぶわかったから、結果オーライぜよ」

 

二人の喧嘩を止めて、土御門は再び拝星教ビルを見つめた。

 

「どうもあそこの教祖の白王ってやつの能力に惹かれてローマ聖教の奴ら宗旨替えしたらしいぜよ」

 

そういいながら電子パッドを操作し、上条とステイルに見せる土御門。それは世界的に有名な動画サイトのある動画の映像だった。動画の題名は『拝星教・教祖白王』となっていた。動画は白王と思われる白装束の人間が様々なことを予言し、最後に火や水の球体を発生させてそれらを合わせて小さな水蒸気爆発を起こして終わった。

 

「実際にこの予言は何個か現実になってる。どこかの教会が燃えるとかどこぞの場所に怪人が出るとか…」

 

「この動画も外の人がみりゃあ超能力者のいたずらに見えるけど…見る人によっては能力じゃないって思うな」

 

一人の能力者が使える能力は一つであり、そこに例外はない。深く考えれば一つの能力であると考えられなくもないが、そこまで考えてみる人間も少ないかもしれない。

 

「魔術的な記号なども見えないから興味を持つ人間もいるかもしれないね」

 

「そうやって教徒増やしているのはわかるんだが…なにが目的なのかがわからんぜよ…」

 

「…目的はだいたい見当がついてる」

 

「なに?」

 

「どうようことぜよ?」

 

上条の言葉に二人が興味を示した。

 

 

フォーゼ=上条が気づいたこととは一体何か?そして拝星教の、白王の目的とは?

後篇に続く


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