とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ)   作:マッスーHERO

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今回はいろいろと詰め込みました。


目覚めよ魂の戦士(後篇)

この話の数日前、倫敦塔から一人の脱獄者が出た。

 

 

それから数日後、イギリスのとある山の奥

 

「はあ!」

 

ゴキブリのような怪人の群れと一人の戦士が戦っていた。

 

[Beat]

 

「たあ!」

 

黄金の鎧を纏う戦士の右腕のレリーフが輝く。輝く右腕のパンチが怪人たちを吹き飛ばす。さらに戦士の大剣が怪人たちを切り裂いていく。その姿をスーツ姿でサングラスをかけた男が見つめていた。

 

「まだだ!お前の力はその程度ではないはずだ!」

 

「ふむ」

 

男の叫びに戦士は大剣を地面に突き立て、新たに竜の装飾の入った剣をどこからともなく取り出す。さらに戦士は剣の竜の装飾を変形させ、鍵をセットし下部のボタンを押す。

 

[ファイナルクラッシュ・竜王魔弾斬り]

 

剣から声が響き、その剣で戦士は怪人たちを真っ二つに叩き斬り、殲滅した。

 

「…これで俺の教えることは、もう何もない…」

 

スーツの男は戦士に背を向け、その場を去る。その姿を戦士は一礼して見送った。

 

 

 

 

同じころ、イギリス・イングランド・ロンドン自然史博物館付近

 

「はあ!てりゃ!」

 

赤いマスクにローブを着た戦士が岩のようなボディを持つ怪人と戦っていた。かつてイギリスに現れたウィザードに似ているが、その戦士は細部が微妙に違っている。

 

[コネクト・プリーズ]

 

[ドラゴタイマー・セットアップ]

 

戦士はブレスのようなものを手に装備した。

 

 

 

 

イギリス・北アイルランド・ジャイアンツ・コーズウェーでは同デザインの青い戦士が、スコットランド・ネス湖では緑色の戦士が、ウェールズ・カーディフ城では黄色い戦士が現れ、怪人と戦っていた。

 

[ブリザード・プリーズ]

 

[サンダー・プリーズ]

 

[グラビティ・プリーズ]

 

戦士たちは怪人を殲滅させると、どこへともなく去っていった。

 

 

 

 

舞台は戻り、学園都市第一九学区

 

DG3-Xはケルベロスのトリガーを引く。薬莢と銃弾をまき散らしながら、悪魔のように唸るケルベロス。しかしその銃弾はアギトではなく、周囲の街灯を撃ち抜いていく。四秒が経過し、ケルベロスが空回りを始めたころには辺りは暗くなり、アギトにはDG3-Xの姿すら見えなくなってしまう。

 

「な、なにを…」

 

「あぶりだすンだよォ、真の敵って奴をなァ」

 

暗闇からディケイドの声がしたとアギトが認識した瞬間、突如眩い光があたりを照らす。

 

「こ、このひかりは…」

 

アギトは眩さゆえに目を手で隠しながら、下を見る。その時、彼女は異変に気付いた。

 

「影が…できてない?」

 

そう、普通なら発生するはずの影がなぜかできていなかったのだ。

 

「どうやら成功みたいですね」

 

「俺の計算に間違えなかったにゃあ」

 

眩い光を浴びるディケイドの横に、ゴセイブルーとシンケンブルーが空から降り立つ。いきなりの状況に困惑するアギト。

 

「一体、どういう…」

 

「お前はこのところのォ怪奇現象をアギトの力の副作用とでも思っているようォだがァ、おかしいとはァ思わなかったのかァ?」

 

「なにがよ?」

 

「副作用に苦しむ中ァ、急に謎の組織からの接触があったことォ…そもそもなンで副作用が自分よりも周りを襲ったのかァ…」

 

ディケイドはゆっくりと語り始めた。

 

「副作用で自分が傷つくことなら、オマエの性格上とくに問題にしねェだろうがァ…他人、とくに親しい人物がァ襲われるとなるとォ、オマエも精神的にダメージを受けるだろォ。それが奴らの狙いだったんどよォ」

 

「つまり、『脅威』は結標さんを仲間に引き入れることが本当の目的ではなく、偽の副作用で結標さんを惑わせ、自滅させることが狙いだったんですね?」

 

「あわよくば味方に、そうでなかったとしても『驚異』にとっての驚異が1つ減るわけにゃあ」

 

「ちょっとあんたたち、さっきから何を…」

 

アギトは最後まで言葉を言い切る前に突然何かの気配を感じて後ろを振り向いた。アギトの視線に全身が黒い怪人が飛び込んでくる。

 

「こ、こいつは!?」

 

「それが副作用の正体だァ」

 

怪人はキョロキョロと何かを探すような動作をしている。この怪人は先ほど小萌を襲った怪人と同じ怪人である。

 

「『Shadow』影の記憶を持つゥガイアメモリで変身した怪人。シャドードーパントってところかァ」

 

「残念ながらあなた好みの影はもうありませんよ」

 

キョロキョロと影を探すシャドードーパントにゴセイブルーがいい放つ。

 

「ハワイの『ラハイナヌーン』を応用して、俺がモジカラで人口太陽に近い光源を上に設置したぜよ」

 

「光線は真上からしか降り注がないので、影は発生しません」

 

そう今までの戦いの目的は2つ、1つは夜まで時間を稼ぐこと、もう1つはこの場所に結標とシャドードーパントを誘い込むことだったのだ。二人の戦いのあいだにゴセイジャーの能力でシンケンブルーとともに飛行し、シンケンブルーが上空にモジカラで光源とその光が遠くからは見えないように偽装していたのだ。

 

「ちょっとまってよ。私だって噂でガイアメモリについて少しは知ってるわ。あれは超人的な身体能力とメモリに応じた能力を使用者に与えるだけなんじゃ…」

 

「はァ…」

 

アギトの言葉に呆れるようにため息をつくディケイド。

 

「バカだなァ、相変わらず」

 

「な、何よ!」

 

「オマエを誘った組織の目的はァなんだァ?」

 

「え?確か高位能力者による…!」

 

「そうだァ、こいつはガイアメモリと自身の能力でェお前を惑わしていたンだよォ」

 

今までガイアメモリは能力のないスキルアウトや大人の犯罪者が 使用することが多かったために目立たなかったが、ゾディアーツスイッチを使った魔術師や結標の変身するアギトのように元の能力を生かした戦い方をする者は少なくない。まして『高位能力者による学園都市の支配』を掲げる『驚異』がそれをしてこないはずがないのだ。

 

「でも、鳥を殺したり、血を緑にしたり…そんなに応用力のある能力なんていったい…」

 

「血を緑にしたのはァ、自分の能力を知られないためのトリックだァ」

 

ディケイドはそう言うとアギトの方を向く。

 

「オマエの保護者は化学の先生だったなァ?」

 

「それがどうしたのよ?」

 

「部屋には薬品とかも置いてあるンじゃねェのかァ?」

 

「そういえばあの日、次の日の実験の予行演習をするって、薬品を何個か…」

 

「そのなかに硫黄はあったかァ?」

 

「硫黄…そういえば黄色い粉末が…」

 

「硫黄は血液中のヘモグロビンとォ結合すると緑色に変色するンだよォ」

 

指を切った結標が血から目を話した隙にシャドードーパントは部屋にあった硫黄を流れた血に混ぜ、変色させたのだ。

 

「それをのぞくとすると彼の能力は…パイロキネシス系の」

 

「いや、そうじゃねェ。それを解く鍵はァ、お前の行ったレストランにあったァ」

 

「レストラン?」

 

「あのレストランは大学生向けェ…そしてこの街の税制度と法令から考えると、必ずあると思ったァ。そして案の定、あの店にはあったぜェ、喫煙シェルターが…」

 

「喫煙シェルター…」

 

学園都市は学生の街ゆえに漫画やゲームには税が厳しく、逆に煙草などの税は緩い。だが、学園都市内は禁煙制度がきついため、しっかりとしたシェルターのある店も少なくない。

 

「あの日も店が賑わっていたならオマエは喫煙席であるシェルターの中にいたんじゃねェのかァ?」

 

「確かにそうだけど、それがどうしたの?」

 

「レストランではキッチンが爆発し、人が窒息したァ。そして同居人の体調不良…こいつの能力は大体3つの現象を起こしている…その正体はズバリ、ガスだァ」

 

「ガス?」

 

「気体を操作する能力はそんなに珍しくねェ、こいつは恐らく大気を三種類のガスに変換する能力…『気体変換<チェンジガス>』ってところかァ」

 

「三種類のガス?」

 

「1つは可燃性の高い爆発ガス、1つは有毒性高い有毒ガス、そして最後の1つはァ…何の影響もないただのガスだァ」

 

「ちょっと待ってください、最初の2つはわかりますが…最後の1つはどういうことですか?」

 

ディケイドにゴセイブルーが疑問をぶつける。

 

「レストランで、人を窒息させたのは、シェルターの空調を止めて、大気を一気にそのガスに変えたからだァ。可燃性なら煙草の火でドカン、有毒性なら死人が出て騒ぎになンだろォ」

 

「なるほど」

 

「さすがは一方通行。学園都市ナンバーワンの能力者だ」

 

ゴセイブルーの言葉に続いて、今まで口を開かなかったシャドードーパントが声をあげた。

 

「俺の能力は確かに大気をガスに変える力だ。すこし違うのはそのガスに含まれる有毒性と可燃性の割合を変えられるってことだけどな」

 

シャドードーパントはそういいながらあるものをどこからか取りだし、手に持った。

 

「なあ一方通行。俺たちの組織に入らない「断る」か?」

 

シャドードーパントがすべてを言う前にディケイドはそれを拒否した。

 

「俺はこの力をそンな下らねェことのために使う気はねェ」

 

「…そうかい、でもあんたはそのうち俺たちに協力しなきゃならなくなるのさ。そう俺のリーダーが言っていたぜ」

 

そう言うとシャドードーパントは持っていたものを地面に叩きつける。そこから大量のアーナロイドが現れた。

 

「やっちまえ!」

 

「ちっ、めんどくせェなァ!」

 

ディケイド、シンケンブルー、ゴセイブルーはアーナロイドとシャドードーパントに挑む。しかしアギトはその場を動けずにいた。

 

「…」

 

無言で立ちすくむアギト。彼女は今、心の中で悩んでいた。

 

「(例えあれがこの力によるものでなくても、私はこの力を使おうとは思えない…)」

 

アギトは戦う三人を見つめる。

 

「(あの三人には守るものがある、そして私にも…でも、私のように心の弱い人間にこんな力は…)」

 

「(それは違うよ)」

 

「(!?)」

 

突如アギトの脳裏に男の声が響く。そして次の瞬間アギトの目の前が光に包まれ、次の瞬間見たことのない夜のビル郡が拡がっていた。

 

「こ、ここは?」

 

「まずは謝らなければならないね、アギトの力が勝手に宿主を決めてしまったために君にとんでもない迷惑をかけてしまって申し訳ない」

 

男の声にアギト=結標が振り返るとそこにはいたのは…

 

「あ、あなたは!?」

 

「こんばんは。俺は仮面ライダーアギト、よろしくね」

 

軽い口調でそう名乗ったのは仮面ライダーアギトだった。対面する二人の仮面ライダーアギト。周りから見ればかなり異質な光景だが、周りに人の気配はなくだれも気にするものはいない。

 

「本当に悪かったね、こんな力を君に押し付けるような真似をして」

 

「い、いえ…」

 

軽いながらも丁寧な口調に結標アギトはすこし慌てながら答える。

 

「アギトの力はほかの再現されたライダーたちとは違い、簡単には返却してもらうことはできないけど、敵から襲われないように力を封じることならすぐにでも…」

 

「ま、待って!」

 

力の封じ方を言おうとするもう一人のアギトを静止する結標アギト。

 

「いくつか聞かせてほしいことがあるの、それによってはこの力を使いつづけるか、手放すかのか決めさせてほしい…」

 

「ん?いいよ、どうぞ」

 

結標アギトはすこし息を吸って吐き、心を落ち着けて口を開いた。

 

「…あなたはその力を使って戦ってきたのよね?そんな強い力をどうやって扱い続けてきたの?そしてこの力は何で私みたいな人間を選んだの?」

 

「…俺だってこの力を完全に自分のものとしてたわけじゃないよ」

 

もう一人のアギトはマスクの下ですこし笑っているようだった。

 

「めちゃくちゃ強い奴に負けて、アギトであることをやめたくなったこともあったし、一度はそれを捨てたこともあった…周りの人から疎まれて、絶望しかかることもあったけどね…多くの人に支えられて、この力の意味をしった。そして俺の手が人を守るための手だと教えられた。だから俺は俺のために、アギトの為に、人間の為に生き、戦うことを決めたんだ」

 

「…」

 

もう一人のアギトの言葉に結標アギトは黙り込んだ。

 

「ならなおさら、こんな私にこの力はふさわしくないんじゃ?」

 

「そんなことはないぞ」

 

「へ?」

 

結標アギトが振り返るとそこには三人目のアギトが立っていた。もう一人のアギトよりも低い声で落ち着いた感じの人物のようだ。

 

「アギトが…二人?」

 

「オマエはかつて自分の力に悩みながらも最後には自分のトラウマを乗り越えて、前へと進んだじゃないか」

 

「…」

 

「俺もかつては、この力を恐れ、悩み、人からも何もかもからも逃げようと考えていた…でも、多くの人たちに戦うことの意味を思い出させてもらい、アギトとして戦うことができた」

 

二人のアギトが結標アギトの前に並び立つ。二人のアギトは姿や体格こそ同じだが、にじみ出るオーラは両者に違いがあり、どちらもすさまじいものだった。

 

「君のアギトの力はほかの戦士とは違い、力自体が君をふさわしいと選んだんだ」

 

「後はオマエ自身が決めることなんじゃないのか?」

 

「…」

 

黙り続けていた結標アギトは二人に背を向ける。

 

「私がこの力にふさわしいかはわからないけど、私にも守りたいものがある。能力の時のようにはいかないかもいけないけど…しばらくこの力は借りておくことにするわ」

 

それだけ言うと結標アギトはどこへともなく走り出す。その先に、先ほどの光が現れ結標アギトを包み込んでいった。残された二人のアギトはその後姿をじっと見つめていた。

 

「なんだか洗脳っぽくなってしまったかな?」

 

「そんなことありませんよ芦河さん。遅かれ早かれあの子は戦う覚悟を決めたはずです。あの子は強いですから」

 

「そうかな」

 

「きっとそうですよ。それに…彼女はジョウブそうだからダイジョウブですよ」

 

途端に周りに冷たい風が吹いた。

 

「…寒いな」

 

「アレ?」

 

 

 

 

アーナロイドと戦うディケイドたちだったが、そのあまりの数に押され始める。

 

「ちっ!うじゃうじゃとォ!」

 

「ハア!」

 

その戦いの輪に覚悟を決めたアギトが乱入、すさまじいパンチでアーナロイドの胴体を貫通する。

 

「ずいぶん苦戦してるじゃない」

 

「なンだァ?やっと覚悟ができたみたいじゃねェかァ」

 

「まあね!」

 

倒れこむアーナロイドの一体がアギトのサッカーボールキックで吹き飛ばされる。吹き飛ばされたアーナロイドの破片がゴセイブルーとシンケンブルーを取り囲んでいたアーナロイドたちに直撃し、動作不能にへと追い込む。

 

「お二人とも!あの影の怪人を追ってください!」

 

「このアンドロイド共は俺たちに任せるにゃあ!」

 

二人の言葉を受けて、ディケイドとアギトはアーナロイドの後方で高みの見物としゃれ込んでいるシャドードーパントのもとへと向かう。

 

「さあ、行きますよ!ツイストルネードカード、天装!」

 

テンソウダーを構え、バックルからカードを取り出し装填するゴセイブルー。

 

[エクスプロージョン・スカイックパワー]

 

電子音とともに強力な竜巻が発生し、アーナロイドたちを空へと巻き上げる。

 

「今度はこれです。コンプレッサンダーカード、天装!」

 

[スパーク・スカイックパワー]

 

上空に舞い上げられたアーナロイドたちが次々に雷に撃たれ、黒こげになりながら爆発していく。

 

「これで決めます!天装!」

 

[サモン・ランディックアックス]

 

今度は大型の斧である『ランディックアックス』を呼び出し、向かってくるアーナロイドたちを迎え撃つゴセイブルー。

 

「はああ!」

 

ランディックアックスをジャイアントスイングの要領で振り回し、次々にアーナロイドたちを吹き飛ばす。

 

 

「さあ来るにゃあ!」

 

「ウィーン!」

 

指をクイクイさせてアーナロイドを挑発するシンケンブルー。一体のアーナロイドがそれに乗ってナイフをシンケンブルーに振る。これをシンケンマルのディスクの唾で受け止めながら、その衝撃を利用しディスクを回す。セットされた『双ディスク』の効果により、シンケンマルが二本に増え、一本がナイフを弾き、もう一本がアーナロイドを真っ二つに切り裂く。

 

「スペシャルにゃあ!」

 

アーナロイドとの戦いの中で両方のシンケンマルのディスクを入れ替えるシンケンブルー。そして再びアーナロイドの攻撃を利用し、ディスクを回す。それにより右手のシンケンマルは烈火大斬刀に、左手のシンケンマルはウッドスピアへと変化する。二つの長物がアーナロイドを切り裂き、叩き潰す。

 

「とっておきぜよ!」

 

さらにシンケンブルーは烈火大斬刀を高く投げ、ウッドスピアにショドウフォンで『吸』のモジカラを使用する。落ちてきた烈火大斬刀をウッドスピアに吸着させ、巨大な槍のような武器を作り出す。

 

「名付けてバーニングスピアぜよ!」

 

バーニングスピアと命名された大槍がアーナロイドたちを蹴散らしていく。さらに槍に炎を纏わせながら、回転させるシンケンブルー。

 

「喰らえ!百花晩成!」

 

オリジナルの必殺技が炸裂し、あたり一面が火の海となりアーナロイドたちのボディがドロドロに溶けていった。

 

 

 

 

アーナロイドたちを潜り抜け、シャドードーパントのもとへとたどり着く二人の戦士。彼らの眼光が影の記憶を司る怪人を貫く。

 

「くっ!」

 

「さてとォ、これで終わりにしようかァ?」

 

「小萌と私の友人たちを傷つけた罪をその体で払ってもらうわ!」

 

怒りをあらわにするアギトはその拳を強く握り、シャドードーパントへと走りこむ。

 

「く、このクソアマがあああああ!」

 

アギトのマスクへと拳を叩きつけるシャドードーパント。しかしその拳は届くことはない。

 

「なあ!?」

 

アギトの姿がとつじょ消え、拳は空を切り、逆に後ろへと座標移動で転移したアギトの延髄蹴りが炸裂する。その威力によって吹き飛ばされたシャドードーパントをディケイドが野球のバッターのようにライドブッカーを両手で構えて待ち構える。

 

「ストライクボールだァ!」

 

「ぬあああ!」

 

ライドブッカーの一撃がシャドードーパントの頭部を襲い、更に空へと吹き飛ばす。空高く舞い上がり、頭から落ちてくるシャドードーパントの背後へとアギトは能力で跳ぶ。そして足と両腕を抱きつくように胴体をロックし、そのまま頭を地面に叩きつける。所謂プロレス技のパイルドライバーだが、落下高度が段違いであり、その衝撃にシャドードーパントは悶絶すらせずに倒れた。

 

「えげつねェ、ホントに女子かよォ」

 

「あんたにだけは言われたくないわ」

 

アギトはそう否定するが、地面のアスファルトには亀裂がはしり、着地点を軽いクレータにしてしまうような人間(変身しているが…)を女子とは言いたくないものである。

 

「…ふふふ」

 

そんな二人の耳に怪しい笑い声が響く。見るとシャドードーパントがアスファルトの破片を持ちながらよろよろと立ち上がろうとしていた。

 

「まだ痛め付けられてェとはァ、相当のマゾ野郎だなァ」

 

「余裕がるのも…そこまでだぜ…」

 

「なにを…まさか!」

 

「そのとおりィィィ!」

 

シャドードーパントが持っていたアスファルト片を地面に叩きつける。そこから出た僅かな火花がシャドードーパントの放ったガスに引火し、大爆発を起こす。モジカラにより、周囲は昼間のように明るいがそれでも炎と煙が真っ赤な花のように開いていく。そして爆炎の中から丸焦げとなったディケイドライバーのバックル部分が飛び出してきた。

 

「ふふふ、ハハハハ!勝った!第一位にこの俺が!」

 

ディケイドとアギトの敗北を確信し、高笑いをするシャドードーパント。彼は気づいていなかった。爆炎のはるか上空を金色の戦士と等身大のバッタのような戦士が空を舞っていたのを…

 

「ハハハ…はっ!?」

 

地面にできるはずのない影が存在していたのを見て、彼は慌てた。空を見上げることも忘れて、背を向けながら逃げようと走る。シャドードーパントの能力でその陰に飛び込んでも、ほかの場所に影がないため、逃げることができないのだ。

 

「遅ェよォ!」

 

「これで終わりよ!」

 

爆炎の上に転移したアギトが特殊なポーズをとると、足元に紋章が浮かび上がり、頭部の二本のクロスホーンが六本へと展開し、紋章が足へと吸収されていく。Sライダーバックルの効果で仮面ライダー1号へと変身したディケイドは爆風を利用して高く舞い上がりながらカードを装填する。

 

[Final Attack ride IIIIchigou]

 

二人の仮面ライダーが彗星の如く、シャドードーパントへと突っ込んでいき、片足を突き出す。二人のダブルキックが直撃した瞬間、周囲が電光のように光り輝いた。二人のライダーは蹴った反動で後方へとバク転しながら着地した。

 

「く、こ、ここで終われるか…!」

 

意味深な言葉を残しながら、シャドードーパントは大爆発を起こした。爆炎が治まったがそこにはシャドーメモリだけしかなく、本体となった能力者の姿は文字通り影一つなかった。

 

「ちっ!能力で爆炎を避けながら逃げたかァ!」

 

ディケイドは周囲を見渡すが、やがてモジカラの効果が消え、辺りは暗闇へと戻ってしまい、能力者を探すことは困難になってしまった。

 

 

 

 

 

 

戦いが終わり、街灯の光の下に四人は集まっていた。

 

「グループとして戦うのはこれっきりにしたいものね」

 

「今回のことの原因がなにいってんだにゃあ」

 

「どちらにしろ、リベンジャーや『脅威』がある限り、またともに戦うこともあるでしょう。その時はよろしくお願いします」

 

「オマエラがァ邪魔するようなことがァあればいつでもたたきつぶしてやる」

 

四人はそれだけ言うと、お互いに背を向けて暗闇へと消えていった。彼らが再びともに戦うことがあるのか…それは誰にもわからない。だが、この短い間の会話を他者がみれば彼らの不思議な縁を感じることができたはずだ。彼らの道が再び交差する日は近いのかもしれない。

 

 

それから数十分後、結標は小萌のアパートの部屋の前へと来ていた。ドアのノブをひねるのが辛い。それは彼女が小萌に避けられることを恐れているからではない。ドアを開いたとき、小萌はきっと笑顔で自分を迎えてくれる…それが少しつらかったのだ。彼女は小萌に何というか少しの間に考え、やがて簡単な答えにたどり着きドアをあけた。

 

「ただいま、小萌」

 

 

 

 

 

どこかわからないがうす暗い部屋でシャドードーパントの本体だった少年がよろめきながら椅子に座る少年に頭を下げていた。

 

「す、すまねえ!大事なガイアメモリを…」

 

「…」

 

椅子に座る少年は少しの間黙っていたが、やがて口を開いた。

 

「おいおい煙田、そんなこと気にすんなよ」

 

「え?」

 

「誰にでも失敗はある、だからこそ人間だろ」

 

笑顔でそういう少年だが、煙田(シャドードーパントの本体)は少年の口が開くごとに少しずつ震え、顔から血の気が引いていく。

 

「…ん?俺ってそんな怖い顔してるかな、煙田?」

 

「い、いや…そんなことはないさ…藤岡」

 

「それにしても、すまなかったなあ煙田。あれの準備ができてなかったとはいえ…お前にきつい任務を与えちまって、今日はゆっくり休んでくれよ」

 

「あ、ああ…」

 

椅子に座っていた少年、藤岡は申し訳なさそうな顔をする。その言葉を聞いた煙田はすばやく立ち上がり、逃げるように部屋から出ていった。それと前後して物陰から一人の少年と結標を誘惑したスーツ姿の少年が現れた。

 

「彼に罰は与えないのですか、藤岡さん?」

 

「ああ、人間の失敗をいちいち罰してたら、優秀な人材は消えちまうだろう。人は失敗して強くなる生き物だからな」

 

そういいながら、机の上のグラスに入った茶色い液体を飲み干す藤岡。

 

「う~ん…どうも俺には酒の味の違いはわかんないなあ」

 

「まだ未成年でしょう、藤岡さん」

 

「いいだろ、瞬。この街の解放のためにこれからつらい戦いが待ってんだからこのくらい」

 

瞬とよばれたスーツ姿の少年はしかたないというような表情で微笑する。しかしもう一人の少年は難しい顔で藤岡をにらんでいた。

 

「そうだ!俺たちの組織の名前、やっと決めたんだ『フューチャー』ってのはどうかな?」

 

「『フューチャー』…ですか?」

 

「そう!学園都市の未来を創りあげる組織…だから『フューチャー』。藤岡のイニシャルとも合うし」

 

「藤岡なら『H』だろ?フューチャーは『F』だ」

 

少年は初めて口を開き、そういった。

 

「うん?ああそうか、駿河は知らないんだったな。俺って『H』って嫌いでさ、自分のイニシャルは『F』ってことにしてるんだ」

 

駿河と呼ばれた少年はなおも難しい顔で藤岡をにらみつける。藤岡は酒の瓶を傾けながら、駿河の視線に気づき、尋ねた。

 

「おいおい、どうしたんだよ。おれの顔になんかついてる?」

 

「いや、人間は失敗する生き物って、さっき言ってたよな?それならそれはなんだ?」

 

駿河はそういいながら酒の瓶を指さした。

 

「これ…どっかの洋酒だけど?」

 

「そうじゃない…その中の手首は何だと聞いているんだ」

 

酒の瓶の中に浮いているのは紛れもなく人間の手首だった。

 

「ああこれ…このあいだへまやったレベル0に落とし前をつけさせたんだよ。カナダでは指を入れるらしいから、うまくなるかと思って」

 

「へま?笑わせるな、ジャッジメント狩りのノルマをあと一人だけでクリアできなかっただけでか?」

 

「いいの、いいの。だって…」

 

藤岡は邪悪な笑みを浮かべて答えた。

 

「低能力、無能力者は人間じゃないんだから。俺たちがどう扱ってもさ」

 

いま、まさに学園都市は邪悪な未来へと進み始めていた。

 




御「なんか最後作風崩壊してたわね」

黒「あまりそこは触れない方がいいですの」

佐「強引に突破してヒーロー紹介行きましょう」

初「はい」

仮面ライダーアギト 変身装置 オルタリング 変身者 結標淡希

身長180㎝(オリジナルより15㎝低い) 体重70㎏(オリジナルより25㎏軽い)

仮面ライダー生誕30周年記念の仮面ライダー。
他の平成ライダーに比べ、遠距離攻撃や単独での空中戦闘ができない反面、格闘能力に優れた仮面ライダー。
モチーフは龍。
通常形態のグランドフォーム、優れたスピード・ジャンプ力・敏捷性を誇り、専用武器『ストームハルバード』を操るストームフォーム、パワーの上昇と知覚の鋭敏化で専用武器『フレイムセイバー』を居合のように操るフレイムフォームの3フォームへとチェンジする。
今作では能力の制限を受けているものの『座標移動』により、自分を得意なレンジへと移動させたり、敵の攻撃を避けたりと、原作より戦闘能力は飛躍的に向上している。
元々はオリジナルのアギトが変身者を選抜しようとしたのだが、アギトの力自体があまり解明されていなかったこともあり、力自体が勝手に結標を選んでしまった。
そのことに苦しむ結標だったが、覚悟を決めた後は蹴りやパンチを主体とした戦法やプロレス技などの戦法で怪人と戦う。


御「ただでさえ格闘能力の強いアギトに座標移動…強力なライダーね」

黒「Dアギトよりも強いかもしれませんの」

佐「敵にならなければいいですけど…」

初「因縁深いからなあ…二人と」




御「今回の解説は一方通行の新たな戦法とこれまでに登場した正体のわかっていないヒーローについてよ」

黒「前回のスーパーアポロガイスト戦での敗戦から強い能力に依存しやすいという自分の悪い点を反省し、状況に応じた変身やそのライダーの全能力を最大限にいかす戦い方ですの」

佐「たとえばインペラーのジャンプ力とビルの壁キックを使った戦法とかG3-Xの接近戦とかね」

初「それ以外でも今回の最後の必殺技にも生きてますよ。1号の『電光ライダーキック』の弱点であるエネルギーのためを爆風で補う戦法を使ってます」

御「今後の戦闘に期待ね。次に正体のわからないヒーローたちについて」

黒「まあ、隠していても結構わかりますけどね」

佐「中にはノーマルモードじゃないヒーローもいましたね」

初「あの戦士の持ってた剣も気になりますね」

御「まったく正体のわからない戦士もいるし、今回伊達先生の挙げた戦士も気になるわね」

黒「次回以降もいろんな戦士が登場しますから見逃せませんの」

初「さて次回予告…の前にネット版二話投稿のお知らせです」

佐「明日か明後日中には更新します。内容は、今まで謎に包まれていたヒーロー選考の基準です。お楽しみに」

御「さて次回予告…のはずなんだけど、作者がちょっと立て込んでて今回はなしよ」

黒「ちゃんとアップはする予定なのでお楽しみにですの」

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