とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ)   作:マッスーHERO

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書き終わってから予告と話が変わってしまったことに気づいた。



目覚めよ魂の戦士(中編)

「はいよ、この辺でいいか?」

 

「どうもありがとうございます。僕はそのまま直帰しますので、帰りは大丈夫ですから、それでは」

 

第七学区某所に停まったライトバンからそんな会話をしながら海原が降りた。海原はライトバンに背を向け、人混みのなかに消えていく。

 

「それにしても、場所と海原くんだけ指定して、仕事内容は言わないなんて…一甲さん、大丈夫ですかね?」

 

「まあ、ちゃんと料金は払われてるし、店長も許可したんだからいいだろう」

 

ライトバンには浜面と霞兄弟が乗っており、これから次の仕事へ向かう途中だった。

 

「ほら、俺たちも早くしないと遅れるぞ」

 

「…わかりました」

 

消えた海原を心配しつつも浜面はアクセルを踏んだ。

 

 

人混みのなかにいた海原はふと、人気のない路地の中へと入っていく。それから数秒して元の人混みのなかへと戻った海原だったが、その姿はトゥモローリサーチの制服ではなく白いスーツ姿に変わっていた。彼はそのまま歩き続け、とある喫茶店へと入る。喫茶店の中にはほとんど客はいなかったが、海原は奥の方の目立たない席に座り、コーヒーを注文した。無愛想なマスターがコーヒーを海原の前のテーブルに置き、カウンターに戻ってから、数十秒後に両隣の席に一人ずつ座っていた一方通行と土御門が海原の座るボックス席に目立たないように移動する。

 

「「「…」」」

 

三人に再開の喜びのようなものは毛ほどもない。一方通行は無言でコーヒーをすすり、土御門は携帯ゲームをもてあそび、海原は店の雑誌をめくっている。端から見れば相席した他人にも見える三人はそれぞれがバラバラに店を出て、散り散りにどこかへと行ってしまった。しかしそれから三十分後、彼らは先程のディケイドが戦った路地に集結していた。

 

「つまり、 この戦士があの『結標淡希』さんだと言うわけですね」

 

仮面ライダーアギトの写真を見ながらの海原の言葉に土御門が頷く。

 

「ああ、その通りだにゃあ」

 

「それにしても土御門さん。どうして彼女がこの戦士であると断定できるんですか?そもそもなんで我々を集めたんですか?」

 

海原の問いに土御門は次のように答えた。土御門は学園都市の学生であるとともに、元魔術師の多角スパイという一面も持っている。TPCはそんな彼に上条や御坂以上の情報を与えていた。土御門的に言えば、『情報をたくさんやるからあまりへんなことはかぎまわらないで』ということなのであろう。そんな情報の中に土御門の恩師、月詠小萌が伊達健太を通して、TPCへとある相談をしたという内容の情報があり、詳しく調べるとそれは彼らの元同僚結標に関することであるとわかったのだという。

 

「だがよォ、なんで結標なンかのために俺たちが時間を潰さなきゃならねェンだァ?オマエだって恩師のためにってキャラじゃねえだろォ?」

 

「…」

 

一方通行の指摘に土御門は少し真面目な顔になり、サングラスを外した。

 

「今この学園都市に新たな驚異が生まれようとしてる…TPCはそれに対して対抗できない…そしてそれが俺たちの大切なものを奪おうとしているということだ」

 

「「…」」

 

「更に重要なのはその驚異が結標を狙う…いや仲間に引き入れようとしているってこと」

 

新たなる驚異…それが結標を、いや仮面ライダーアギトの力を引き入れようとしている。もしそれが成功すれば、驚異はさらに力を増し、やがては彼らの大切なものを奪うかもしれない。土御門の真剣な表情に二人はことの深刻さを痛いほど認識した。

 

「奴らは結標を引き入れるためにはなんでもやるだろう。現に奴の保護者の月詠小萌は襲われた。あの驚異が拡大すれば、何が起こるかは俺にも予想できない。その前に奴らの企みを阻止せねばならない」

 

「「…」」

 

二人は暫し無言で土御門を見つめていた。やがて、一方通行が口を開いた。

 

「我ら羊、群れ集う…どうもオマエラとは縁があるようだなァ」

 

「そのようですね…」

 

「そんじゃあ、グループ再結成といくぜよ」

 

サングラスをかけ直した土御門が調子のいい声でいった。

 

「では、私は結標さんを捜索しましょう。お二人はその驚異について調べて貰えますか?」

 

「おう」

 

「へますンじゃねェぞォ」

 

こうして海原は結標の捜索へ、二人は驚異とあの怪人の正体を探ることになった。

 

 

 

 

「…で、なんで俺はここにいるんだ?」

 

浜面は仕事場でぼそりとそういった。その言葉に依頼主は呆れながら言う。

 

「そりゃあ、仕事受けてきたんだろ」

 

「浜面、超バカですね」

 

「大丈夫、私はバカな浜面を応援してる」

 

「だから、なにが悲しくて自分の住んでるとこの修繕依頼されなきゃいけないんだ!」

 

浜面が現在いるのはルームシェア中のマンションの部屋。目の前には依頼人である麦野、絹旗、滝壺の三人が立っている。部屋は先日怪人との戦いで壁紙の一部が剥がれ、窓ガラスが割れていた。

 

「なんだ、浜面の知り合いのだったのか」

 

「なら、お前はこの子たち連れて喫茶店でも行って来いよ。このぐらいなら俺たち二人で充分だから」

 

「でも…」

 

「いいからさ、ほら行って来い!」

 

一甲に後押しされ、浜面はしぶしぶ三人を連れて部屋から出ていった。

 

 

それから数分後、一人の金髪の少女が浜面たちの住んでいる部屋の前にやってきた。彼女の名はフレメア=セイヴェルン。この部屋に住む四人とは並々ならぬ因縁をもつ少女である。

 

「そっと入って、浜面たちを大体びっくりさせる。突撃!」

 

フレメアはドアを少しだけ開けて中を覗く。

 

「!?」

 

中を覗いたフレメアは驚いて目を丸くした。部屋の中で二つの影が残像のできるほどの高速で動いているのだ。黙ってドアを閉めて、すこしぼうっとするフレメア。

 

「お、お化け!」

 

やがて正気に戻ったフレメアはそういいながらマンションを飛び出した。

 

「ん?」

 

「どうした兄者?」

 

「いや、気のせいか…(いま、誰かいたような)」

 

部屋の一甲はドアの方を見ながら首をかしげた。

 

 

 

 

 

「ここがアイツの住ンでたアパートかァ…建築基準違反してねェかァ?」

 

「ボロ屋なのは認めるにゃあ」

 

一方通行と土御門は小萌と結標が住むアパートの近くに来ていた。土御門から渡された資料を読む一方通行に土御門が指さしをしながら事件について説明していた。

 

「事件の始まりは一週間前、結標はあそこのゴミ捨て場にゴミを出していたところ、突如として周囲のゴミが爆発。音をきいて駆けつけた同居人の月詠小萌がそこで倒れている結標、いや仮面ライダーアギトを発見した。アギトはすぐに変身が解除され元の姿に戻ったが、それいこう結標の周囲で立て続けに怪奇現象が発生することになる」

 

アパートの中では小萌が体調不良を訴えたり、調理中についた傷からの出血の色が緑色に変色したりといったことが起こり、それらの怪奇現象について友人に相談しようと入ったレストランでは、キッチンの爆発や集団で人が倒れる等、いく先々で起こる怪奇現象に悩んだ結標は置き手紙を残してアパートを出てしまったのだ。

 

「相変わらず紙メンタルは治ってねェようだなァ」

 

「俺でもそんなことあったら一人になりたくもなるぜよ」

 

「アイツはこの現象をアギトの力の一端だとォ考えてるわけかァ?」

 

「あいつだけじゃなく、俺やTPCの奴らもにゃあ。まあ、アギトってのは力自体があまり解明されてないライダーなんだから可能性も充分に…」

 

「…オイ、土御門。この資料のレストランはどんな店だァ?」

 

「えっ?洋風な大学生向けの店ぜよ。結構流行りの店でランチ時は混むらしいにゃあ」

 

「この倒れた奴らの症状と鳥の死因はいっしょじゃねえのかァ?」

 

「鳥の死因はわからないが、レストランの人が倒れた原因は窒息、酸素の欠乏にゃあ」

 

「ふーん、大体わかったァ」

 

一方通行は資料を土御門に向けて投げつけるとゴミ置き場へと向かった。ゴミ置き場にはその時の爆発の跡がくっきりと残っているが、新しいポリバケツが何個か置いてあった。

 

「…ここには前にもポリバケツが置いてあったンだよなァ?」

 

「ああ、それがいったい…」

 

「…爆発したのはポリバケツ…大体わかったァ」

 

それだけを言うと、一方通行はすたすたとどこかへ歩き出してしまう。土御門が慌てながらそれを追う。そして二人がたどり着いたのは結標が友人に相談しようとしたレストランだった。

 

「いらっしゃいませ。お煙草はお吸いになりますか?」

 

「…やっぱりなァ」

 

店に入った一方通行はそう呟くと店を後にする。土御門は店員に頭を下げたのち、一方通行をさらに追った。

 

「おい、一方通行。お前いったいなにを…」

 

「怪奇現象の正体は大体わかったァ…後はお前に1つ確かめれば終わりだァ」

 

「なに?なにを確かめると言うんだ」

 

「お前の言う『驚異』ってのはなンだァ?そいつが俺の予想通りならァこの事件の全貌がわかるゥ」

 

「…あくまで俺の掴んでいる限りだが、奴らの目的は『真の学園都市の創造』…そしてそいつらの正体は…」

 

 

 

 

とにかく人のいないところへ、結標の足は自然に寂れた第一九学区へとのびていた。人のいない路地のビルの壁に背中を預け、へたれこむ。

 

「お疲れのようですね」

 

「…またあなた?しつこいわよ」

 

路地の奥から声にぶっきらぼうに答える結標。声の主は実に品がよく、優等生を絵に書いたようなスーツ姿の男だった。

 

「真の学園都市の創造には貴女のそのお力が必要です。どうか私たちに力をお貸しください」

 

「それはお断りしたはずよ。そんなことに力を貸すほど私は暇じゃないわ」

 

「何故です?貴女も我々の行動によって、利益を得る人間のひとりでしょう?」

 

「利益?笑わせないで!」

 

結標が地面に落ちていたコンクリート片を男の頭上に能力で転移させる。座標移動<ムーブポイント>によるものだ。コンクリート片は男に当たらず、男の一歩前に落ちる。いや、そうではない。正確には男が一歩後ろへと移動したのだ。足を動かさずに…

 

「あなたも空間移動系能力者なの?」

 

「貴女たちほど優秀ではありませんがね」

 

男は皮肉まじりにそう言う。

 

「そんな能力を持っているからあんな馬鹿馬鹿しいことを考えられるのよ…高位能力者による学園都市の完全支配なんて」

 

「私たちのリーダーならば可能です。次に会うときはいいお返事を待っていますよ」

 

男はそれだけ言うと、瞬時に姿を消した。残された結標は弱々しく立ち上がりながらも強い目で路地の億を睨む。

 

「冗談じゃないわ、こんな力に踊らされるくらいなら…自分で処分してやるわよ」

 

結標はそう言って、どこかへと歩き出した。

 

 

 

「高位能力者による学園都市の完全支配…なるほどなァ」

 

「夏の『スタディ』とかいうのの事件とはまるで逆だ。高位能力者連中がリベンジャーからメモリなんかを買い集めて武装し、学園都市を完全な能力者主義の場所へと変えようとしているというわけぜよ」

 

「下らねェな、そンなことを本当にできると思ってンのかァ?」

 

「何かしらの奥の手があるんだろう?その1つが結標を引き入れることなのかもしれん」

 

その時、土御門の携帯が鳴る。

 

「海原か?結標を見つけた…なに!?解ったすぐにいく」

 

「どうしたァ?」

 

通話していた土御門の顔が変わったのを見た一方通行が土御門に訊ねる。

 

「結標のやろう…とんでもないことをしようとしてるぜよ…」

 

 

 

第一九学区のビルの屋上に結標は立っていた。夕日が彼女を照らし、彼女の背後には大きな影が出来ている。彼女はゆっくりとビルの端へと近づき、転落防止用の柵を乗り越えて、ビルの縁にたつ。

 

「(あの力が私を守ろうとするかもしれない…それでも、これ以上周りに…小萌に迷惑はかけられない)」

 

大きく深呼吸をして、目を閉じる結標。足の震えを抑えながら、一歩踏み出そうと力む。

 

「逃げんのかァ?」

 

「!?」

 

突如かけられた声に驚きながら振り替える結標。そこにいたのは一方通行だった。

 

「相変わらず、薄っぺらいメンタルだなァ」

 

「…久しぶりじゃない…一方通行」

 

「便利だよなァ、そうやって死ねば全て他人に任せられンだからよォ」

 

「あなたに何がわかるというの?こんな力をてにいれてしまった…周りを傷つけるしかない力を持ってしまった私の気持ちが!」

 

結標は能力で一方通行の近くに転移し、そういい放つ。

 

「わからねェなァ、その力をてにいれたやつを何人か知ってるが、そんな風に絶望するやつはいなかったァ」

 

そういいながら、ディケイドライバーを取り出す一方通行。それを見た結標は驚く。

 

「あなたもその力を…」

 

「そンなに死にてェなら、俺が殺してやるよォ。そんな方法よりも簡単で確実だァ」

 

ディケイドライバーを腰に巻き、杖を横に投げ捨てる一方通行。

 

「変身!」

 

ディケイドへと変身した一方通行はあろうことか結標をライドブッカーで切りつける。能力を使いそれを避ける結標。

 

「な、何を!?」

 

「ほらァ、死にてェンだろォ?かかってこいよォ!」

 

「くっ!」

 

結標は仕方なく、左腰のあたりに両手を持っていき、そのあとすぐに右腕を素早くたたむような動作を行う。すると腰に『オルタリング』と呼ばれるベルトが出現した。結標はさらにゆっくりと右腕を前へと伸ばしていく。

 

「変身!」

 

掛け声とともにオルタリングの両側のボタンを手で勢いよく押すと、勢いのいい音とともに光が結標を包み込み、やがて金色の仮面ライダーへと変身した。マスクはクウガに似ているが、体の装甲はクウガよりも整っており、女性の結標が変身していることもあって全体的にインペラーよりもスマートな印象を受ける。

 

「ようやくやる気になったかァ」

 

「こうなったら、とことんやってやるわよ。昔のパンチの分も返してやるわ!」

 

一気にディケイドに接近したアギトの鋭いパンチがディケイドのほほをかすめる。さらに強烈な回し蹴りがディケイドを襲うが、ディケイドはこれをしゃがんでこれを躱し同時にカードをバックルに装填する。

 

「やっぱ、アギトにはこいつだァ」

 

[Kamen Ride Gills]

 

ディケイドの姿がグリーンカラーの野性味あふれるライダー『ギルス』へと変わる。

 

「姿を変えた…それがあなたの能力ってわけね」

 

アギトの攻撃を抜群の跳躍能力で避け、さらに腕から『ギルスクロー』と呼ばれるかぎづめを出現させ、アギトを攻撃する。あまり知られていないがギルスの戦闘能力は全体的にアギトの今の姿『グランドフォーム』よりも高い。このままの戦い方ではDギルスの優勢だろう…このままならだが…

 

「ハァ!」

 

Dギルスの腕から今度は『ギルスフィーラ』と呼ばれる触手型ムチでアギトを拘束する。

 

「くっ!女性相手にあまり感心しない攻撃ね…」

 

「女性ってたまかよォ」

 

「でも、学園都市第一位の一方通行にしては迂闊な攻撃ね」

 

そういった途端、アギトの姿が突然消え、拘束していたギルスフィールが地面に落ちる。

 

「座標移動かァ!」

 

「それだけじゃないわよ!」

 

Dギルスの背後に能力で転移したアギトはベルトの左側のスイッチを叩く、するとオルタリングの中央から青い短めのロッド型武器『ストームハルバード』が出現する。アギトはストームハルバードをオルタリングから左腕で引き抜き、Dギルスの腹部を突く。衝撃で後ろへと吹き飛ばされるDギルス。アギトは追撃せず左腕のストームハルバードを体の正面へと持っていく。するとオルタリングの中央のカラーが金から青にかわり、アギトのボディと複眼、左腕の色が青へと変化し、『ストームフォーム』へと変身する。さらにストームハルバードの両側が展開し、かなりの長さへと伸びる。

 

「はぁ!」

 

ストームハルバードの連激がDギルスを襲う。これを両腕からギルスクローを展開して受けるDギルス。しかし、鍔迫り合いとなる前に能力で後ろへと転移され、それをDギルスの野生的感覚で受け止めるといういたちごっこになってしまう。五度目のぶつかり合いでDギルスの防御が間に合わず、ストームハルバードの直撃を受けてしまい、かなりの距離を飛ばされる。

 

「ならァ、こいつだァ!」

 

[Kamen Ride G3-X]

 

Dギルスが新たなカードをバックルに装填すると、今度は全身が機械のアーマーによって守られた仮面ライダー『G3-X』へと変身する。DG3-Xは右太ももに装備された『GM-01スコーピオン』を右腕で持ち、アギトへと発砲する。それをストームハルバードで弾くアギト。

 

「くっ!(転移する隙に撃たれたら不味いわ…)」

 

「…こいつはあまり面白くねェ武器だなァ」

 

アギトの焦りとは裏腹にDG3-Xはそういうとスコーピオンを投げ捨てる。

 

「(なんだか知らないけど…ここで一気に接近する!)」

 

銃弾が止んだところでアギトがストームハルバードを構えながら接近するが、DG3-Xは慌てずにカードをバックルに装填する。

 

[Attack Ride GM-05 Cerberus]

 

バックルの電子音とともにアタッシュケースのようなものが右手に転送される。DG3-Xはそのアタッシュケースのようなものでストームハルバードを弾きながら、側面の三つのボタンを押す。

 

[解除シマス]

 

電子音とともにDG3-Xはアタッシュケースを大型ガトリング銃『GM-05 ケルベロス ガトリングモード』へと変形させる。

 

「オラァァァァァ!」

 

トリガーを引くとともに、秒間30発の弾丸がアギトを襲い、大量の薬莢があたりに飛び散る。

 

「きゃあ!」

 

不意打ちだったこともあり、アギトは衝撃で吹き飛ばされて倒れ、グランドフォームへと戻ってしまう。時間にしてわずか四秒間の間の攻撃で弾丸を使い切り、ケルベロスの砲身が空回りを始める。

 

「まだまだ、弾はあるぜェ!」

 

DG3-Xは弾倉を外し、背中のエネルギーバッテリーの下部にある予備弾倉を新たにセットする。

 

「踊れェ!」

 

倒れこむアギトに更なる銃弾が襲いかかる。アギトは体を回転させながらそれを避けつつ、今度は右側のボタンを押し、前回ディケイドも使用したフレイムセイバーをオルタリングから取り出すアギト。同時に右腕とボディが赤く染まり、『フレイムフォーム』へと変身するアギトはそのまま立ち上がる。

 

「(弾丸の間隔は四秒…次の弾切れがあなたの最後よ!)」

 

フレイムフォームの超感覚が弾丸を察知し、それをかわすアギト。そして四秒が経過し、ケルベロスの砲身が空回りを始める。

 

「チッ!」

 

DG3-Xが舌打ちをしつつ、弾倉を交換しようと背中に手をやろうとした瞬間、アギトは彼の後ろへと転移した。

 

「これで終わりよ!」

 

フレイムセイバーを降り下ろすアギト。鋭い金属音が辺りに響く。

 

「な!?」

 

驚愕の声をあげたのはアギトだった。予備弾倉をとっていたはずのDG3-Xの腕には小型ナイフ『GM-06 ユニコーン』が握られており、それでフレイムセイバーを受け止めてたためだ。

 

[Attack Ride GM-03 Destroyer]

 

更にDG3-Xは右腕のケルベロスをすて、新たに剣型武器『GM-03 デストロイヤー』を装備する。高速震動する刃がアギトのボディを襲う。

 

「っ!」

 

アギトはそのままバランスを崩し、屋上から落下する。能力による転移でなんとか着地するアギトの前にケルベロスを構えたDG3-Xが降り立った。

 

「なるほど…あえて私の得意なレンジに誘い込み、接近武器で攻撃する作戦だったのね…」

 

「…そういうこったァ」

 

ケルベロスの銃口がアギトへと向けられる。辺りはすでに暗くなっており、周囲の照明だけが彼らを照らしている。

 

「チェックメイトだァ」

 

DG3-Xはケルベロスのトリガーをゆっくりと引いた。

 

 


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