とある英雄の伝説大戦(レジェンドウォーズ) 作:マッスーHERO
M78星雲、光の国から二つの光が宇宙へと上っていくのを赤いマントを身につけたウルトラセブンが見つめていた。
「心配ですか?ゼロのことが」
突然の声に振り向くとそこには白いマントを身につけたウルトラマンが立っていた。彼の名は『ウルトラマンレオ』。かつてセブンと師弟のなかだったウルトラマンだ。
「心配はいらないさ、俺の息子で、お前の弟子だ。同行のウルトラマンも実力者を送っている」
「実力者…ゼロと並べる戦士となると兄弟以外では…」
「ウルトラセブン!」
レオの思考を大きな声が止める。二人が声の方を向くと、そこにはウルトラセブンに酷似したウルトラマンが立っていた。そのウルトラマンの後ろにもう一人の赤と銀のカラーリングのウルトラマンも立っている。
「お前たちは確か…勇士司令部のネオスと宇宙保安庁のセブン21!」
「ウルトラ兄弟に名前を覚えていてもらえるとは光栄です。ウルトラマンレオ」
ネオスが一礼しながらレオにそういった。彼らはかつて別の宇宙の地球を守り、戦った戦士であり、ゾフィーとも親しいウルトラマンたちでその実力はウルトラ兄弟と比べてもひけをとらないとまで言われており、ゼロとともにリベンジャー討伐の任務を受ける候補の一人として名前があがっていた。セブン21はレオを無視してセブンに詰め寄る。
「セブン!ゼノンから聞いたが、ゼロの同行者にマックスを送ったというのは本当か?」
「何、マックスだと!」
「…」
セブン21の言葉にレオが驚く。
「メビウス、ゼロだけでなくマックスも送るほど事態は緊迫しているのか?」
「リベンジャーはこれまでの敵とは明らかに違う。それらに対抗するのにはいろいろな状況に対応できる戦士が必要だ。だからこそ別の次元での戦闘経験のある戦士であることからマックスを推薦した」
「だからといって、マックスを…メビウスと共闘経験もあるヒカリやグレートたちだっているだろう」
「ヒカリにはリベンジャー関連の調査を、グレートやパワードたちには他次元宇宙の監視をゾフィー兄さんを通じて命令している。マックスとゼロ、そしてメビウス、コスモス…いくつもの死戦を潜り抜けた戦士たちだ。あの二人を送ることがリベンジャーという未知の驚異に他の戦士たちほど力を貸せない私たちの最低限出来ることだと、私は思っている」
セブンの言葉に三人が黙りこむ。さきほどから話題になっている『マックス』はメビウスの一世代…といっても僅か1000歳違いの比較的若いウルトラマンであり、見た目はセブン、セブン21と酷似しているウルトラマンである。セブン、セブン21とは近縁のウルトラマンであり、現在は勇士司令部に在席している。ルーキー時代はその高すぎるスペックから『ウルトラ兄弟を継ぐもの』とまで言われていたが、元々戦闘よりもかつてセブンのような文明の監視などに強く感心があり、そちらの道を進んでいた。しかし、赴任した他次元で人間と融合し、怪獣や宇宙人を倒している間に自らの力を平和のために使おうと考えるようになり、帰還後は勇士司令部に転属したのだ。勇士司令部とは光の国の中でも最強と言われるような戦士集団で数々の宇宙の危機を救っている。
「べリアルとの戦いの時、マックスは任務で100体近い怪獣と戦った直後でマックスギャラクシーも破損した状況だった。今現在もマックスギャラクシーの修理の目処はたっていない…それでも平和のために戦うことの大切さを知る戦士だ。だからこそ私はマックスを選んだのだ」
それだけ言うとセブンはゆっくりと空を見上げた。
場面は変わり、学園都市第七学区。昼下がりのファミレスには一方通行の姿があった。
「…」
一方通行は目を閉じ、ピクリとも動かない。眠っているわけではない。彼は頭のなかである戦いのシュミレーションを行っているのだ。
「(… こンなもンかァ)」
ゆっくりと目を開けた一方通行は冷めきったコーヒーを少しすすった。
「(あの迷惑野郎との戦い…RX以外で奴に勝つ方法はいくつかあったァ)」
彼がシュミレーションしていたのはスーパーアポロガイストとの戦いでRX・バイオライダー以外のカードを選んでいた場合の結果である。例えば、仮面ライダーサガに変身し、ジャコーダーによりアポロフルーレを奪い、攻撃を仕掛ける。例えば、スカイライダーに変身してからの空中殺法で翻弄する。例えば、電王・ガンフォームに変身し、レンジ自在の銃撃を浴びせる。例えば…と無限に等しい可能性の1つに勝利することもできたであろう可能性が存在したのかもしれない。しかし一方通行の問題はそこではなかった。
「結局、俺は昔と何も変わっちゃィねェ…」
カップをゆっくりとテーブルに下ろして、一方通行は窓の外を見た。外は下校途中と思われる学生で溢れていた。
一方通行…その能力はこの世のベクトルの向きを自由に操るというものであり、彼は学園都市の7人のレベル5でも第一位と呼ばれている。しかしそんな彼も何度となく敗れ、苦汁を舐めてきた。上条当麻には能力の効かない右手に敗れ、木原数多には能力を逆手に取られ、杉谷にはジャミングで能力を一時封じられ、グレムリンの魔術師には能力者としての力を利用された。いくら強い力でも、人間の使う力には必ず弱点が生じるのだ。
「手札は無限…だが、どれも過去の遺物かァ…」
一方通行の変身するディケイドは九つのライダーだけでなく、サブライダーや昭和ライダーへの変身が可能である。それにより変身できるライダーは約80種、一見すると多種多様な能力があるディケイドだが、そこには大きな弱点が存在する。それは偏りだ。たとえば39種のスイッチを操るフォーゼもマグネットやクロウ、シールドなどのスイッチに、15種類のメダルを操るオーズもクワガタ系やタジャドルコンボなど自分の得意な戦法に偏りがちだ。ディケイドはこの二人よりもライダーの選択に重要性が生じる。なぜなら、スイッチは4種、メダルは3種の組み合わせが効果を決定する二人とは違い、ディケイドは決定した1種にすべてをかけねばならないからだ。そこで生じる偏りは時に致命的な弱点を生み出してしまうこともある。前回のバイオライダーの時もその弱点を的確に狙われた結果、敗北に繋がってしまった。
「(この偏りをなンとかしねェと俺は勝てねェ…)」
現状で偏りがちなのは、やはり強い力を持つ戦士だろう。高い戦闘力を持つRX、高速戦闘能力を持つファイズ、カブトシリーズ、ミラーワールドへの侵入を可能とする龍騎シリーズ…少ないとは言えないが、これらのライダーにばかりの偏りは危険…いや、全てのライダーへの対抗策があるなら、ただ昔のライダーの能力や戦いかたではすぐに破られてしまうだろう。
「考えてもしかたねェか…」
これ以上は実戦で見つけていくしかない、そう考えた一方通行はコーヒーを飲み干し、席をたった。
同じ頃、上条当麻は未だに教室にいた。彼の前にはたくさんの問題がびっしりと詰まった用紙が何枚も置かれている。いわゆる補習と言うやつである。
「だあ、こんなもん終わるわけないで!」
「そうだ!こんな量は横暴だ!」
「はい、はい、いいから黙ってやれ」
青髪ピアスと上条の悲鳴に近い声を健太はスルーした。今日、小萌は用事のため、代理で健太が二人の監督をすることになったのだ。
「土御門は逃げるように帰っちまったし、俺たちも早く帰りたいです!」
「なら、早くやれ」
健太はマンガ雑誌を読みながら、冷淡に答えた。こんな調子でもう一時間だ。さすがの健太もめんどくさくなり、適当に答えていた。
「なあ、先生…前から気になったんだけどさ」
「なんだ?」
それから三十分ほどたったところで上条がふと健太にあることを質問した。
「いや、大したことじゃないんだけどさ…先生たちは色んな奴に力を分け与えてるんだろう?なんか基準とかあんのかと思ってさ」
「う~ん、基準とかはねえが…まあ、力との相性とかそいつの人格とか…人によって違うからな、中には誰に能力がいったかわからないのもあるし」
「わからない?」
健太は雑誌を机に置き、立ち上がる。
「再現された力が勝手に持ち主を決めて飛んでしまったり…渡した本人とコンタクトがとれなかったりとかな…」
「例えばどんなヒーローの所在がわからないんや?」
「ええっと、確か『ジュウレンジャー』『アバレンジャー』『仮面ライダーブレイド』『カブト』あとは確か…」
健太は腕組をして唸り、やがて最後の戦士の名を思い出した。
「そうそう、『アギト』!『仮面ライダーアギト』だ」
路地裏で一人の少女が道を歩いていた。少女の目元にはくまが浮かび、足取りも重い。その時、突如として近くにあったごみ箱が火柱をあげながら爆発を起こす。爆発の炎と煙が少女を包み込む。通常の人間ならまず耐えられないだろう。しかし、煙が止んだところで立っていたのは少女ではなく、金色のボディに二本の角を持つ戦士だった。
第七学区の道路をゆっくりと歩いていく一方通行。ふと彼は路地へと入っていく人影を見た。
「(うン?あれは…)」
一方通行は人影の後を追い、路地へと入っていく。人影はどんどん奥へと入っていき、先ほどの爆発の起こったところへとやってきた。
「…やっぱり、ここにきたんですね」
人影が爆発したごみ箱の破片を見つめながら、ぼそりと言った。その時、人影の後ろに突然黒いボディの怪人が現れ、手刀で人影を攻撃する。人影は寸前でそれに気づき、それを避けつつ、ポケットからあるものを取り出した。
「ファイブピンク!」
人影の姿が一瞬にしてファイブピンクへと変わり、Vサーベルを構え、謎の怪人に戦いを挑む。その姿を物影から一方通行が見つめていた。
「あいつは確かァ、黄泉川の同僚…それにしてもあの怪人…どこから出てきやがったァ?」
一方通行は頭に疑問を浮かべながらもディケイドライバーを腰に巻く。
「変身!」
[Kamen Ride Decade]
一方通行は変身し、怪人とファイブピンクの戦いへと乱入する。ディケイドのキックが怪人を吹き飛ばし、更にディケイドが怪人のもとへと走り込みパンチを喰らわせる。普通ならここでファイブピンクの援護が入るはずだが…
「ァ?」
ディケイドが怪人と戦いながら周りを見るが、そこにファイブピンクの姿はない。どうやらどこかへ逃げてしまったようだ。
「…どういうこったァ?」
ディケイドは更なる疑問に首を傾げながらも怪人に挑む。怪人は軽やかな動きでパンチやキックを繰り出す。
「(目に目を…スピードにはスピードをだァ)」
[Kamen Ride Inpera]
ディケイドの姿がスマートで茶色の仮面ライダーインペラーへと変わる。Dインペラーは横のビルの壁に向けてジャンプし、壁をキックしながら縦横無尽に動き、怪人を翻弄する。
「(この変身は六十点てところかァ…)」
一方通行は自身の変身にそう採点をつけた。減点と考えられるのはインペラーのジャンプ力があまりいかせないところと鏡などの反射物が周囲にないところだろう。ミラーワールドへの浸入ができないことはかなりのマイナス点だと判断したのだろう。しかし、Dインペラーの空中キック戦法は怪人を少しづつ追い詰めていく。
「どうしたァ?その程度かァ?」
「…」
形勢不利と判断したのか、怪人はDインペラーに背を向けて、路地の奥へと逃げる。
「逃がすかァ!」
Dインペラーが逃げていく怪人を追いかける。怪人が路地の曲がり角を曲がるのを追いかけるDインペラー。しかしそこでDインペラーは驚愕した。
「…消えたァ?」
Dインペラーは周りを見渡すが、そこはただの袋小路でありどこにも逃げ道はないはずである。Dインペラーはカードを一枚取り出して、バックルに装填する。
[Form Ride Ixa Burst]
Dインペラーの姿が今度は白いアーマー姿の仮面ライダー『イクサ』へと変わる。Dイクサのマスクのセンサーが周囲を探知を開始した。一通り辺りを探知した後、Dイクサは後ろを向いて言った。
「…出て来いよォ、金髪アロハ君」
「へえ、そいつのセンサー、なかなかだにゃあ」
Dイクサの言葉になんと、何もない場所から返答があった。そして返答のあった場所にシンケンブルーの姿がゆっくりと浮かび上がる。
「姿を消して高みの見物とはァ、ずいぶんと偉くなったじゃねェか」
「勘弁してくれにゃあ。小萌先生にこんなところにいるとこ見られると大目玉をくらうぜよ」
そういいながら変身を解除する二人。
「オマエが絡ンでいるということはァ、また魔術がらみかァ?」
「今回はそうじゃないにゃあ。なに、お世話になってる恩師にすこしは恩返しをと…」
「それだけのためにわざわざ変身して姿を消すとは思えねェがなァ」
一方通行の言葉に土御門は微笑して、サングラスをかけなおす。
「本当に魔術がらみじゃないが…俺たちに全く関係がない話でもないにゃあ」
「なにィ?」
土御門の言葉に一方通行が首をかしげる。
「話は歩きながらしようぜえ、もう一人の関係者にも来てもらわないといけないからにゃあ」
「もう一人…そういうことかァ」
「さすが、第一位。理解が早くて助かるぜよ」
そういうと二人は路地から表通りに向かった。
「はあ…はあ…」
先ほどの路地とは別の路地裏で、荒い息を吐きながら仮面ライダーアギトは膝をつきながら変身を解除した。
「最悪な気分ね…」
辺りには死んだ無数の鳥が地面に落ち、ゴミ箱や室外機は爆発して煙を上げている。アギトだった少女はビルの背中に寄りかかり、顔を伏せた。
「能力をやっと使いこなせるようになったというのに…今度はこんな力を押し付けられるとはね…」
少女…結標淡希は周りの惨状を見ながらぼそりといった。